聖十大魔道、序列4位の座にいるウォーロッド・シーケン。彼からの依頼を受けたナツ達は、彼が向かったという氷漬けの村に行くことに。
その村は所謂巨人の村だったのだが、ナツの炎では氷は全く溶けず、またグレイが触っても何も起こることがなかった。
この村に来てから、悪寒が止まらないマルク。『氷が未だ溶けていないのは、氷に魔力が篭っているのでは?』と考えた彼が、氷の魔力を抜こうとしたが、触るだけで激痛が走る。
どうしようかと悩んでいたその時、突如3人の男が現れたのだった。
「トレジャーハンターギルド…」
「
「ドゥーン。」
その名を言った男達だったが、ナツ達の反応が全くなかったのを、聞こえていないと判断したのか、顔を見合わせてからもう一度、突如現れた風として表情を戻す。
「トレジャーハンターギルド…」
「風精の迷宮。」
「ドゥーン。」
「いや、分かった。」
単純に、唐突に出てきたせいで反応に困っただけであり、聞こえていなかったと言う訳では無いのだ。
「トレジャーハンターギルドって…」
「まぁ、名前の通り……だと思う。」
「宝探しが専門って所かしら。」
「悪ぃが、ここに眠る宝はウチらのもんだ。邪魔は勘弁な。」
向こうの1人が発した言葉に、ナツ達は首を傾げる。宝がある、とは聞かされてないからだ。別段、あれば取りに行くという話ではないが。
「宝?」
「んなもん興味ねぇよ。」
「永遠の炎狙いじゃねぇのかよ!!」
「じゃあ魔導士がどうしてこんなとこに超いるんだ!!」
「ここの氷を溶かして住人を助けに来たんだ。」
ハッピーの台詞に、向こうの三人は顔を見合わせる。だが、すぐに顔をこちらに向け直す。
「それを邪魔っていうんじゃねーか!!」
「ドゥーン!!」
「はぁ……?」
ちょっと意味がわからない、と言わんばかりに首を傾げるマルク。というよりも、相手側に少し呆れ始めているのだ。
「永遠の炎は何百年も燃え続ける幻の炎よ。俺達トレジャーハンターの間じゃあ、超S指定されてる超お宝だ。」
「けど、村を守る巨人達のせいでお宝には近づけなかった。」
「それがどういう訳かドゥーンって凍っちまっただろ?」
「今が永遠の炎を狙う絶好のチャンスってわけ。」
トレジャーハンター達は目的を唱える。が、その目的に流石にこちらはいい顔をしなかった。
永遠の炎は、所謂この村の守り神的存在であり、それを奪うのはやはりいいとは思えなかったからだ。
「でも、その炎はこの村の守り神でとても大切なものだと聞きました。」
「勝手に取っちゃうなんてドロボーじゃない。」
「というかトレジャーハンターなら、村の宝じゃなくて洞窟とかの財宝取ってろよ。」
再びトレジャーハンター達は顔を見合わせる。ウェンディ、ルーシィ、マルクの言い分になにか、思うところが━━━
「トレジャーハンターに宝をとるなって言うのかよ!!」
「そんなもん取られた方が超悪ぃに決まってんだろ!!」
「ドゥーンドゥーン!!」
「こうしちゃあいられねぇ!!魔導士どもに邪魔される前にお宝頂いちまおうぜ!!」
無かったようだ。激昂して、トレジャーハンター達はその場から離れ始める。だが、永遠の炎が凍っているのにも関わらずどうやって持って帰るつもりなのか。
「頂くって……残念だが、その炎も凍ってるって話なんだけどな。」
「トレジャーハンターの超お宝力、舐めんなョ。この超秘宝『
そう言って、トレジャーハンター達は小瓶に入った少量の液体を見せる。
「なーっ!?」
過去に、ナツ達はムーンドリップに関連する事件に出くわしていた。その際に知り合ったのが、リオンやシェリア達である。
そして、そのムーンドリップがあれば如何なる氷であっても溶かすことが出来るのは、彼らも知っているのだ。
「ムーンドリップって……」
「ガルナ島でリオン達がやっていた魔法……」
「液体にできたのか……」
「……てかアレがあれば村を元に戻せんじゃねぇか!!」
ナツが、その事実に気づく。そして、他の者もそれに気づいた時にはもう遅い。一同は、完全にトレジャーハンターのムーンドリップを奪う気でいた。
「追え!!トレジャーハンターを捕まえるんだ!!」
「奪えーっ!!」
「取っちまえばこっちのもんだ!!」
「魔導士なんかに捕まるかよ!!」
「あいつらさっきまでの超綺麗事どこに行ったんだ…?」
「ドゥーン。」
「まてぇー!!」
「その雫があれば巨人を助けられるんだ!!」
「冗談じゃねぇ!このムーンドリップを手に入れるのにどんだけ苦労したと思ってんだ!!」
「超悪魔ばっかりの島に行って超必死に探したんだぞ!!」
「つーか巨人が蘇ったらドゥーンって怖ぇだろーが!!」
ひたすら続く追いかけっこ。しかし、全く追いつく気配がなかった。かと言ってトレジャーハンター側は、撒ける気配がなかった。
「あれ?そう言えばエルザは?」
「何かほかの手掛かりを探すって村に残ってます。」
「大丈夫かなぁ……なんか、嫌な予感する。」
「まさかと思うけど巨人を壊しちゃったりしないよね?」
「大丈夫って信じたいわ……」
追いつく気配も撒ける気配も全くしないまま、森を駆け抜けていく。この終わらなさそうな追いかけっこに飽きあきしてきたのか、トレジャーハンター側に動きがあった。
「ドレイク位置につけ!!魔導士ごときに舐められちゃ超終わりなんだよ!!邪魔な奴らは排除する!!」
「トレジャーハンターは危険な仕事だぜ、ドゥーン!」
「危険な仕事はお互い様だろ!」
「やるなら話ははえぇ、ぶっ潰す!」
「依頼の邪魔はさせねぇぞ!!」
「ドゥーン!」
「うぉ!」
トレジャーハンターの1人が、ハンマーのような武器をナツ目掛けて振り下ろす。しかし、その武器の形はまるで手のようだった。
「
「なら……火竜の鉄拳!!」
速攻で決める、と言わんばかりにナツはハンマー使いであるトレジャーハンター、『ハンマー・ララ』に魔法を使う。
だが、手が閉じている状態から開くことで、この武器は盾にもなるらしくナツの魔法を封じていた。
「ドゥーン!!」
「うおおおあああ!」
そして、防いだ直後に拳を閉じられて、ナツは投げ飛ばされてしまう。その直後にマルクが貯めていた魔力を使う。
「だったら……魔龍の咆哮!!」
『ブレスで吹き飛ばせばいい』と、マルクはブレスを放つ……が、放った瞬間にブレスは突然姿を消した。
「なんで!?魔力は充分に……」
「ドゥーンドゥーン!!」
「がはっ!?いっで!?」
隙を見せてしまったマルク。そのまま殴り飛ばされて、地面を滑っていく。氷が皮膚に触れたのか、激痛が走って身をよじっていた。
「こいつら…」
「意外と、強い…!?」
他のメンバーも、残り2人のトレジャーハンターに翻弄されていた。魔導士だから、と油断してしまっていたのだろう。気を引き締めて、かかることにしてのであった。
「お前ら魔法も使わねぇのにすげーな…」
「おいおい、俺達風精の迷宮をそこらのトレジャーハンターギルドと超一緒にしないでくれよ。
フィオーレ1のトレジャーハンターギルドを決める、大秘宝演舞超優勝ギルドだぜ!!」
「ドゥーン!!」
そんな祭りがあったことは、正直知らなかったと一同は思った。どうでもいい、という程でもないがその祭りを知らなかったため、反応に困るのだ。
「トレジャーハンターさんの世界にも、同じようなお祭りあったんですね…」
「お、おめでとう……」
「それはすげぇ!!」
「本気で感心するな。」
「ナツさんその祭りのこと知らないでしょ。」
何故かナツだけは、本気で感心しているが…だが、少なくとも魔法を使う魔導士と互角に渡り合えるくらいの力は、あるということである。
「分かったらとっとと帰りなョ。そこらの魔導士じゃ俺達とはやりあえないぜ。」
「それが、そこらの魔導士じゃねぇんだな……じゃん。」
グレイは、ムーンドリップの入った瓶をトレジャーハンター達に見せつける。それに対して、やはり驚きを隠せない様子だった。
「何っ!?」
「ムーンドリップが!?」
「アイスメイク……盗賊の手、ってね。」
「いつの間に!!」
「あー!ドロボーだ!超ドロボーだ!!」
「あんた達が言えたことか!!」
「ドレイク撃てーい!!」
「サジタリウス!」
「何っ!?」
グレイを狙う銃弾と、サジタリウスの矢が共にぶつかり相打ちとなる。流石に驚いているのか、動揺の声が聞こえてくる。
「それがしもまた……弓の名手であるからして。」
「返せドロボー!!」
「巨人を助けるんだ、悪いがいただく。」
ソード・ヒロシ、変形武器『
変形させて、槍の形態でグレイを突こうとする。グレイはそれを避けて、即座に瓶を投げる。
「ナツ!!」
「おう!!」
「ドゥーン!!」
振り下ろされたストロンガー、それをナツは避けて更に瓶を投げ渡す。
「ルーシィ!」
「OK!!」
「チェインブレイドガンナー形態!!」
乱射を始めるヒロシ。瓶に当たってもいいのだろうか、とふと思ったマルクだったが……今はそんなことを気にしてる場合ではなかった。
「ウェンディ!!」
「はい!!」
受け取るウェンディ、未だ続けられる乱射。ウェンディは銃弾を避けながら、瓶を投げる。
「シャルル!」
「了解!!」
「撃ち落として終わらせてやるョ!!」
シャルルに投げられる瓶。それがシャルルの手にわたる前に、シャルルを打ち落とそうとする。スナイパーである、スナイパー・ドレイクはそれで勝ちを確信した。
「シャルル一旦上に飛べ!!」
「え、えぇ!!」
「ちっ、外した!!」
その瓶を、シャルルが受け取る前にマルクがキャッチ。当たらないようにシャルルに回避を促しながら、自分も乱れ撃たれている銃弾を避けていく。
「んでもって、改めて!」
「えぇ!」
シャルルは高速で飛んで、マルクの手から直接瓶を掴んで飛んでいく。そして、シャルルはハッピーに向かって瓶を投げる。
「ハッピー!」
「あいさー!!」
そして、シャルルの投げた瓶はハッピー……の頭上を通り過ぎる。そして、少し遅れて大きな音が響く。
「あ━━━」
「「「割れたー!!」」」
割れる瓶、当然の如く漏れる中身。液体版ムーンドリップは、これで全ておじゃんになってしまう。
「何てことしやがるー!!お前ら超悪人だなー!!」
「盗んだもん壊すとか…ドゥーンドゥーンドゥーン!!」
「……こればっかりは、反論出来ない。」
「ごめんなさい……」
余程悔しかったのか、泣きながらこちらを糾弾するトレジャーハンター達。
だが、漏れた中身でとある事実がわかった。
「でも、あれ見て。」
「あ……」
ルーシィが指をさした先、漏れたムーンドリップが溶かした氷は、液体がかかったところだけであった。
「たったあれだけしか氷が溶けてない……」
「やっぱり、初めからあの量のムーンドリップで、村全体を救うのは無理だったんだ。」
「永遠の炎も……これで溶けるかどうか微妙なところですね……」
『少ないムーンドリップでは無理。』という結論を出されたトレジャーハンター達。追い討ちをかけるかのごとく悲鳴をあげる。
「そんなぁ!!超駄目な計画だったのかー!」
「ムーンドリップで永遠の炎がドゥーン溶けると思ったのに……」
「ドゥーンと作戦変更だ!!」
「超やり直しだな!!」
「口調逆になってますよ。」
よほど混乱したのか、口調が入れ替わるララとヒロシ。少しだけ警戒しながら見ていた一同だったが、なにかに気づいたナツが耳を溶けた地面に押し付ける。
「なんか聞こえる……誰かの、声… 」
「え…」
「声、ですか?」
「氷の溶けた地面から、誰かの声がする。呼んでるみてーだ。」
「オイラには何も聞こえないよ?」
少し考えるナツ。既にトレジャーハンター達のことは頭になく、そのまま走り始める。
「こっちか!!」
「ナツ!!」
「ナツ待てよ!!」
「ちょっと、なんなの?」
「何を聞いたんですか!?」
「とにかく追いかけよっ!!」
「待ってくださいよナツさーん!!」
そのまま、
置いてかれたトレジャーハンター達は、というと……
「このままじゃ終われねぇ!!あいつら追うぞ!!」
「あの金髪の鍵見たか!?アレ、超レアものだぜ!!」
「トレジャーハンターが宝を持たずにギルドに帰れるかっての!!ドゥーン!!!」
先程とは打って変わって、トレジャーハンター達が追う側になったのであった。