FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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冥府の門編
心機一転


「……勝手に上がっていいもんなんでしょうか。」

 

「ナツやグレイも上がっているが、口だけの文句で済んでいる。」

 

「それ多分、あとから気にしなくなってるだけで、普通にその場では怒ってると思いますよ。」

 

とある仕事を終えたウェンディ、マルク、エルザ、シャルル。帰りにエルザが、ルーシィの家に行こうと言い出しそれ自体は3人ともOKしていた。

だが、エルザは当然のごとく窓から入ってそれに何とか続く形で他の3人も入っていた。

因みに寄った理由としては、報酬でもらったケーキがかなり多かった、というもので所謂お裾分けである。

 

「にしても、最近仕事の依頼増えてきてません?今回の依頼とかもそうですけど…特に、指名する人も増えてきていて。」

 

「確かにそうね、私は大魔闘演武に出場してないからそういうこともないけれど…ウェンディも指名で来てたものね。」

 

「病院の手伝いなんて滅多にしないから、あの時は大変だったなぁ……」

 

「エルザさんも何度か指名来てませんでした?」

 

マルクが話を振る。エルザは少し自慢げにうんうんと頷きながら、その目はキラキラと輝いていた。

 

「洞窟のモンスター退治、超巨大モンスターの退治、山賊に海賊、挙句の果てには犯罪組織……全部倒してきたぞ。」

 

「全部討伐系……というか犯罪組織って何ですか。」

 

「ふっふっふっ…」

 

余程報酬がお気に召したのか、はたまたその倒した記憶が嬉しいのか、エルザはものすごく自慢げな顔になっていた。

 

「そう言えば、この間雷神衆の皆さんと依頼受けに行ったんですよ。」

 

「珍しい組み合わせだな…どんなクエストだったんだ?」

 

「そうですね、たしかその時の内容は━━━」

 

マルクが依頼内容を語ろうとしたその時、部屋のドアが開く音が聞こえる。どうやら、家主であるルーシィが帰ってきたようだ。

 

「おかえりなさい。」

 

「邪魔をしているぞ。」

 

「お邪魔してます。」

 

「なんか懐かしー!!」

 

ツッコミを入れるルーシィ。自分の家に、知らない間に誰かが入っていた時の反応ではない。

どれだけ昔から勝手に入られているのだろうかと、マルクは内心そう思っていた。

 

「すみません、勝手にお邪魔しちゃって。」

 

「中々いい部屋じゃない。」

 

「報酬で貰ったスイーツだが……ちょっと私たちでは多すぎてな。お裾分けに来たというわけだ。」

 

「わぁありがとう!」

 

切り替えが早いのか、はたまたスイーツに釣られたのか。マルクはルーシィが偶に見せるチョロさに、何だかんだ図太さを見ていた。

 

「じゃあ仕事上手くいったんだね!」

 

「え、まぁ……」

 

「……そう、ですね…」

 

「バッチリだ。」

 

再び自慢げな顔を見せるエルザ。仕事内容は、劇団の劇の手伝いだったのだが……まぁ、失敗もいいところであった。

何故か向こうは感謝していたが。

 

「それより、ハッピー達はまだ帰ってきてないの?」

 

「あ、そう言えばいませんね。」

 

「簡単な仕事って言ってたのに……遅いね。」

 

「馬鹿な……もう3日も経っているんだぞ。」

 

ナツとグレイの2人だけという珍しい組み合わせ。よく喧嘩をする2人が、珍しく一緒にクエストを受けたので、妖精の尻尾(フェアリーテイル)全員が驚きながらも送り出したのはよく覚えていた。

 

「近場のはずだから、ちょっと見に行ってみようか。」

 

「別に心配してるわけじゃないんだけど……」

 

「そうだな……あの二人の実力でこれほど遅いとなると、些か気になる。」

 

「何かトラブルでもあったんですかね?」

 

「とりあえず……行きましょう。」

 

「待って!!あたしも行く!!」

 

こうして、帰ってこない2人を迎えに行くために5人は迎えに行くことになった。

ただ、全員が少しだけ思っていることがあった。『喧嘩をしているのではないだろうか』と…

しかし、2人とも既に何度も死線をくぐり抜けてきた仲であり、流石に喧嘩を優先するほど子供でもないだろうと……そうも思いながら向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、依頼場所に到着する……が、一同の目の前には巨大なモンスターが倒れていた。

 

「でかっ!!」

 

「これは……」

 

「依頼書のモンスターです!!」

 

「普通に倒されてますね……って事は…いや、まさか3日も連続で……?」

 

絶句している一同の茂みから、音が鳴る。そこから現れたのは、木の棒を杖替わりにして歩いているハッピーであった。

 

「シャルルゥ〜……助けてぇ……」

 

「ハッピー?」

 

「どうした、何があった。」

 

「それが……」

 

エルザがハッピーの側により、ハッピーに事情を聞こうとする。しかし、それ割も先に一同の耳に聞こえてくる声があった。

 

「いい加減にしろよクソ炎!!」

 

「それはこっちのセリフだ馬鹿野郎!!」

 

グレイとナツの声であった。その声は、仲良くしてるそれとは程遠い…完全に喧嘩をしている様子だった。

 

「てめーが考えなしに突っ走るから……! 」

 

「てめーがモタモタしてっから……!」

 

殴り合いながら文句を言いづける2人。既に顔はぼこぼこに腫れ上がっており、見るからに長時間の殴り合いを続けているようだった。

 

「あぁ……なんだいつもの事か。」

 

「心配してたのに……」

 

「清々しい程に予想通りでしたよ。」

 

呆れる一同。この2人の喧嘩はいつもの事だが、今回この2人にハッピーという組み合わせだったので、止めるものがいなかったのだ。

 

「3日もこれ続けてんの?」

 

「寝たりご飯食べたりはしてるよ……」

 

「あら、可愛らしい喧嘩ですこと。」

 

シャルルがそう呟くが、当然皮肉である。そして、軽くため息をついたあと、エルザが2人のそばによって笑顔で語りかける。

 

「こらお前達、その辺にしないか。」

 

手を叩いて、2人に静止を呼びかけるエルザ。しかし、喧嘩をしているので当然2人は今は気が立っているのだ。

声をかけたものに、無差別に殴り掛かるほどに━━━

 

「「━━━うるせぇ!!」」

 

2人は、ほぼ同時にエルザに殴っていた。顔を、1回で狙えるほどに。当然、2人はすぐにエルザを殴ったことには気づかない。

そして、エルザ以外にこの場にいた面々は恐怖と驚きで一瞬で満たされた。エルザがこのようなことをされて、キレるはずがないからだ。

 

「……ほう?」

 

「エルザー!?」

 

「なんでここにー!?」

 

全ての原因は、ナツとグレイにあり。故に、エルザからの折檻を受けている2人を庇うことは出来ない。

というよりも、単純にキレてるエルザがとてつもなく怖いだけでなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「あはははははっ!!」」」

 

妖精の尻尾で。ナツとグレイを連れ戻してきた一同は、一旦ギルドに戻ってきていた。

そして、ナツとグレイの話をすると笑い話の種にされていた。

 

「仕方ねぇなぁ二人とも。」

 

「もうこいつとは行かねー」

 

「こっちから願い下げだ馬鹿野郎。」

 

「二人ともガキじゃないんだから……」

 

ロメオは呆れていたが、それで収まるほど2人は仲良くできていない。最早この二人の仲の悪さは、笑い話になるほどであった。

 

「ナツ!グレイ!またお主ら2人を指名じゃ!!」

 

「またかよ!!」

 

これを聞いて、ルーシィは1人納得していた。この指名があったからこそ、ナツとグレイという水と油の組み合わせがクエストに行っていたのだと。

 

「せっかくの指名だ!今度は仲良く行ってこい。」

 

当然といえば当然だが、エルザも未だ怒っているのだ。だが、いつもならこうなったエルザを前にするとナツとグレイは、萎縮して表面上は仲良くするのだが、今回ばかりは違った。

 

「もうこいつとは行かねーぞ。」

 

「俺も行かねー」

 

「触んな!!」

 

また喧嘩を仕掛ける2人。だが、エルザが睨みをきかせているおかげか、その程度ですんでいた。

 

「む?むむむ……?」

 

「なんだよじっちゃん。」

 

「い、いや……行かねばならぬ。そして、絶対に粗相のないようにせよ……」

 

いつになく真剣なマカロフ。その真剣さに何かを感じ取ったのか、ナツもグレイも黙っていた。

 

「依頼主の名は、ウォーロッド・シーケン、聖十大魔道序列四位であり、イシュガルの四天王と呼ばれる方々の1人じゃ…!」

 

そして、これを聞いて妖精の尻尾中が大騒ぎになり始める。何せ、あのジュラよりも上の聖十大魔道からの依頼。

本来、ギルドに依頼を頼むことが必要なのかさえも、分からないほどの強者。故にイシュガル四天王。

 

「一体……何が起こってるんだ……!?」

 

「じょ、序列四位って……」

 

「ラミアのジュラさんよりも上…要するに、ジュラさんでさえ叶わない相手ってことになるけど……」

 

「イシュガル四天王が依頼ってなにごとだよー!」

 

クエスト内容よりも、ただ頼んできた人物だけで妖精の尻尾は大荒れであった。

一体これから何が起こるのか……誰も想像ができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ナツとグレイは件のイシュガル四天王のところへと向かう。だが、その付き添いとしてルーシィ、エルザ、ウェンディにマルクが来ることとなった。無論、ハッピーとシャルルも一緒である。

 

「のどかなところですね。」

 

「うん、空気も美味しいし。」

 

「風も心地いいな。」

 

「なんか、ピクニックみたいで楽しいよね。」

 

「そうね。」

 

一同は、道中を楽しんでいた。野ウサギや、野鳥などが自由に動き回れ、尚且つ人の手が、ほとんど加わって無さそうな場所だった。

だが、一同が楽しんでいる中マルクは、後ろを見て呆れ顔になっていた。

 

「まぁ、あれがなかったら俺もそんな気分だったかもな……」

 

「そうね、全く同じことを考えていたわ。」

 

マルクの視線の先、そこにはナツとグレイがいた。先程まで中が悪かった2人が、当然仲良く移動しているわけもなく……

 

「俺の肉食っただろぉ!」

 

「テメェのもんなんか食うかよ!!」

 

「てか服着ろよ!!」

 

「髪の色が目にいてぇ!!なんとかしろよ!!」

 

「……ほとんど言いがかりレベルの喧嘩ですねあれ。」

 

呆れ返る一同。いい意味でも悪い意味でも変わらないのは結構な事だが、全魔導士の中でも、トップクラスの実呂を持つ魔導士に会いに行くのですらこうなっているのだ。

中々、これはその人に見せるには厳しいものがあるだろう、と一同は感じていた。

 

「おまえたち、いい加減にしろ。これからとても位の高い人に会いに行くんだぞ?」

 

「2人だけじゃ心配だからついてきたけど……先が思いやられるわ。」

 

呆れていたルーシィだったが、ふと何かを思い出したかのように喋り始める。

 

「聖十大魔道って言えば、評議院が定めた大陸で最も優れた魔導士10人……だっけ?」

 

「そうだ、ウチのマスターやラミアのジュラもその1人だ。かつては、ファントムのジョゼやジェラールもその称号を持っていた。

中でも、序列上位の4人はイシュガルの四天王と呼ばれる第魔導士だ。」

 

「イシュガル?」

 

聞きなれない名前に、聞き返すウェンディ。少なくとも彼女の記憶には、イシュガルという名前の地名はなかったからだ。

 

「この大陸の古い名だ。」

 

「そんなすごい人がなんで……あんなのをご指名で…」

 

ルーシィ達は再びナツ達の方に視線を向ける。口論に飽きてこないのか、未だに口論を続けていた。

 

「てめぇなんかエルザに食われちまえ!!」

 

「てめぇこそエルザの糞にまみれてろよ!!」

 

「……今、わたしがディスられているのか。」

 

「ほらほら!もう喧嘩やめてくださいよ二人とも!流石に、序列四位の人の目の前で喧嘩なんてしてたら……何が起こるかわかりませんよ!!」

 

マルクが仲裁に入る。その一言で、ぴたっと口論が━━━

 

「てめぇ俺の服どこに持って行きやがった!!」

 

「てめぇが勝手に脱ぎ捨てたもんなんざ知るかよ!!」

 

止まるわけもなかった。少し考えたあとに、エルザ達の方に振り返るマルク。先に少しだけ進んでいた。

そして、意を決して2人の近くに行く。

 

「……エルザさんがそろそろブチ切れますよ。」

 

「「……」」

 

ぴたっと喧嘩が止んだ。それを見てから、マルクは走ってエルザ達と合流する。

目指すは序列四位ウォーロッド・シーケンが住まう家である。


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