FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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パーティ

エクリプスから現れた8頭のドラゴン。そのドラゴンと対峙し、無事に世界を守りきれたということで、城側が魔導士達を城に招いてパーティをすることになった。

その際、やはりいつもの格好ではダメだったのだが、城側がタキシードやドレスなどを総じて用意してくれており、それらを着込んで王宮でパーティが始まろうとしていた。

 

「な、なんで私まで……」

 

「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん。」

 

「て、天空の滅神魔導士!?」

 

ドレスを着こんでいる女性陣。マホーグもそれに参加していた。というよりも、あの後偶然ルーシィ達に見つかって連れてこられた、というのが正しいのだが。

 

「や、やっぱり参加したくなかった……似合ってない……」

 

「そんな事ないよ〜、すごい似合ってるよ?」

 

「か、顔近い……!」

 

物陰にかくれながらも、なんだかんだ断りきれずに参加するはめになったマホーグだったが、存外嫌な気持ちにはなっていなかった。彼女自身も、なぜなのかは理解していないが。

 

「ウェンディ、似合ってるわよ?」

 

「そ、そうですか?」

 

嬉しそうにはにかむウェンディ。魔導士とはいえ、未だ年頃の少女である。綺麗な服を着飾りたい、という願いはあるものである。

 

「そ、そう言えば……マルク、は?」

 

「え?もうそろそろ来てると思うけど……」

 

マホーグがウェンディにマルクの所在地を問い掛けるが、ウェンディはそれに確信がある答えを言うことは出来なかった。

 

「あれ?マルクどうかしたの?」

 

「それが、何か用事があるから先に城に入っててくれ……って。」

 

「用事?何してるんだろ。」

 

顎に手を当てて考え込むルーシィ。途端に、何か思いついたのか顔が驚愕の色に染まる。

 

「まさか、見知らぬ子と駆け落ち!?」

 

「か、駆け落ち!?」

 

「……さ、流石にそれは…ない、と思う。」

 

冷静にツッコミを入れるマホーグ。流石に冗談だったのか、頭を撫でて苦笑するルーシィだったが、ウェンディはどうやら軽く真に受けてしまったようだ。

 

「さ、流石にすぐに来ると思うし……ね?」

 

「う、うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……珍しい、と言うべきなのか。俺は君のことを良く知らない。

だから、何故呼ばれたか聞かせて欲しい……マルク。」

 

クロッカスから離れた場所、とある岩陰にジェラールとメルディはいた。そして、その場にいるのは評議院のドランバルトと……マルクだった。

 

「ウェンディはいいのかよ、城でパーティって聞いたぜ。」

 

「……重要な事だから。だから、わざわざ2人を呼び出しました。」

 

「ジェラールはともかく……よく俺がいるってわかってたな。」

 

「ラハール…さんがいるんだ、付き添いできてるだろうと思っただけです。」

 

真剣な顔で、2人を見るマルク。一体、何の話をされるのかと3人は身構える。

 

「……悪魔、悪魔について調べてほしいんです。」

 

「……何があった。」

 

ドランバルトが、睨みつける。好き好んで悪魔を調べようとするものは少ない。

そして、彼の中ではマルクは好き好んでそんなことを調べる性格ではないと思っていた。

 

「時間が戻った……事を知ってますか?」

 

「…直後の相手の行動が見えた、あれ?」

 

口を開いていなかったメルディが、そこで口を開く。どうやら、メルディ以外の2人も覚えがあるのか、驚く様子はなかった。

 

「それ、です……その中で俺は━━━」

 

マルクは、自身の身に起こったこととそれの影響で起こったことを話した。こと細かく、鮮明に。

 

「……体が化け物になって、ドラゴン一頭を仕留めた。そして、もう一頭を仕留める前に……」

 

「気がついたら元の体に戻っていて、仕留めたドラゴンも蘇った。」

 

「……はい。」

 

「だがな、幾ら何でも情報が曖昧すぎるぜ。それが悪魔なのかどうかってのもわからん。

魔龍の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なんて訳わかんねえ力を持っているんだ、それの影響ってのも考えなかったのか?」

 

「考えました、考えましたけど……何というか、直感です。」

 

「直感ねぇ……だが、悪魔だけにしても情報が曖昧だ。もう少し、何かないのか?情報がよ。」

 

マルクは考え込む。そして、一つのとある情報にたどり着いた。だが、その情報が自分に繋がるのだとすれば、全てが繋がるが……自分が何者か、という答えを得てしまう。

マルクは、それが何故か妙に恐ろしく思えてしまった。

 

「……『暴食』」

 

「……暴食?食いすぎる悪魔…いや、この場合何でも食べてしまう悪食の意味合いで使われていそうだ。」

 

「……まぁ、それならなんとか調べられそうだがな。つーかなんで俺お前を手伝おうと……」

 

「お願いします。」

 

「……頭下げられて断るわけにもいかねーな。」

 

踵を返して、軽くを手を振りながらドランバルトはその場を後にする。少し離れた後で、ジェラールが口を開く。

 

「……やはり、ウルティアだろうか。」

 

「時間が戻った理由…多分、そうじゃないかと思います。」

 

「……」

 

「……ウルティアさんは、多分この町のどこか……いないとしても周辺にいると思います。

それでも、2人に会いに来ないのは……会いに来れない事情が━━━」

 

「会いに来れない事情って?」

 

マルクの言葉を遮って、メルディが言葉を発する。少なくとも、ウルティアを知る者で1番彼女を好いている人物だろう。

 

「……ごめん、当たってもしょうがないのに…」

 

「……俺の方こそ、無神経でした。」

 

再びその場は沈黙に染まる。このままでは埒が明かないと思ったのか、ジェラールは立ち上がる。

 

「君は城に戻れ。これ以上いれば、流石に怪しまれる。それ以上に……俺達といるべきじゃない。」

 

「……わかりました。」

 

「君の言っていた悪魔の件……俺達の方でも独自に調べておくとしよう。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

そして、その後すぐにジェラール達とマルクは別れた。自分に対する不安は、ドラゴンとの戦いが終わってからの方が強かった。

だが、そればっかりを考えてはいられない……そう思ったマルクは、その不安を考えないようにして、王宮に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!遅いよマルク〜」

 

「ごめんごめん、そのドレスよく似合ってるぞウェンディ。」

 

「えへへ、ありがと………ね、ナツさん見なかった?」

 

「へ?今来たばっかだからなぁ……え、ナツさんいないの?」

 

「うん、ルーシィさんもグレイさんもみんな見てないって。」

 

「ウェンディ!やっぱりここ何かいるよ!!」

 

談笑するウェンディとマルク。そして、遠くから顔を真っ青にしてシェリアが何かに怯えていた。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーだけにしかわからない存在、初代マスターメイビスが、シェリアの持っているゼリーに狙いをつけているだけなのだが。

 

「ずっと姿見せてないの?」

 

「そうみたい。」

 

「俺が来るまで割と時間あったと思うんだけど……なんか、嫌な予感するなぁ……」

 

「な、ナツさんが怪我をするとか!?」

 

「そういうのよりも……『いつもの妖精の尻尾』って感じの嫌な予感…」

 

マルクがそう呟くが、ウェンディは首を傾げるばかりである。対してマルクは、その嫌な予感に対して呆れ顔になっていたが。

 

「あれ、なんかあっちの方が騒がしいね。」

 

ウェンディが、何かに気づいたようでそちらに視線を向ける。続いてマルクもその方向に視線を向ける。

 

「━━━待てーい!それはうちも黙ってられんな!!」

 

「何の騒ぎですかこれ。」

 

「ん?いや、ユキノ争奪戦というやつだ。」

 

「ゆ、ユキノさんを……?」

 

話が飲み込めないマルクとウェンディ。争奪戦、と言うからには原因があるはずだと少し周りを見渡して……すぐにその原因が理解出来た。

 

「ふじゃけるなー!ユキノは人魚の踵(マーメイドヒール)のものらー!!」

 

「カグラ、さん……」

 

「酔ってる……お酒、弱いんだ………」

 

話の大筋が、大体理解出来た。スティング辺りが、ユキノを再度剣咬の虎(セイバートゥース)に誘おうとして、それをカグラが遮る。

すると藪蛇の如く他のギルドも次々と、ユキノを誘い始めた……と言ったところだろう。

 

「マスター、何とかあの人たちを止め━━━」

 

「やってやろうじゃねぇか!」

 

「大会の憂さ晴らしに丁度いいぜ……」

 

「回るよ。」

 

「若い頃の血がゾクゾクしちゃうわ〜」

 

マルクは、マカロフに助けを求めようとしたが、マカロフどころか他のマスターたちまでやる気満々になっていたのだ。

 

「マスター達まで!?」

 

「どうしよ…」

 

「愛だね。」

 

そして、そのままユキノ争奪戦はリアルファイトという形で実行される。大会であろうがなかろうが、どこに行っても暴れるのが魔導士ギルドである。そう言わんばかりに争い始める。

 

「あわわわ……どうしよう……!?」

 

「まぁ……放っておけばその内止まるでしょ。言葉で止まらないだろうしさ、この状況。」

 

「マスター達も、乗り気だもんね〜」

 

ウェンディは焦っていたが、マルク、シェリアの2人はそのまま争いには加わらず、ゼリーや他の食べ物を頬張る。

混じらない事が今この場での正解だと言わんばかりに。

 

「妖精の尻尾的には、ユキノさん入っている場面みたいだけど?」

 

「結局選ぶのはユキノさんだし……結局元鞘になると思うけど。」

 

「ほ、放っておくのが……1番……」

 

「そうそう……で、いつの間に俺の足元に?」

 

「今。」

 

気づけば、何故かマルクの足元にはマホーグがいた。どうやら、ずっとテーブルクロスの内側に隠れていたらしい。

 

「……わ、私…招かれざる客、なのに………」

 

「気にしないでいいと思う。本戦に出てるギルドだけかと思ってたけど……よく見たら本戦にいなかった黄昏の鬼(トワイライトオーガ)がいるし。」

 

骨付き肉を頬張りながら、マルクは呆れ顔で暴れているギルドメンバー達を見る。

本当に、実はひっそりと混じっているのだ、本戦に参加していないギルドのメンバーが何人か。

 

「皆の者!!そこまでだ!!陛下がお見えになる!!」

 

「やっぱり止められた。」

 

正装をしたアルカディオスが、大きな音と声を出して暴れている者達の注目をひかせる。

当然、止まれ、と言われて止まる者達でもないが……流石に王様の前では、止まるようだ。

 

「この度の大魔闘演武の武勇と、国の危機を救った労をねぎらい、陛下直々に挨拶をなされる。心せよ。」

 

アルカディオスのその言葉が終わってから、奥の垂れ幕から人影が見えてくる。しかし、その人影は妙に見覚えのある姿で━━━

 

「皆の衆!楽にせよ!!かーっかっかっかっかっかぁ!!」

 

「返すカボ!!」

 

「ぶーっ!?」

 

ナツであった。王冠を被ったナツと、奥から大臣とマトー君が大慌てで出てきていた。

そして、あまりの出来事にマルクは食べていたものを吹き出してしまっていた。

 

「俺が王様だーっ!!王様になったぞー!!」

 

「ナツさん……」

 

呆れ顔になる妖精の尻尾、真っ白になって燃え尽きているマカロフ。その他一同も呆れていたり顔を青くしていた。

 

「いいだろ優勝したんだからっ!!俺にも王様やらせろよ、お前ら子分な!あーっはっはっはっ!」

 

「返すカボ!!返すカボ!!」

 

「ふふ……もう、やりすぎなのよ。」

 

あまりにも突拍子のない出来事に、笑う妖精の尻尾の一同。ドラゴンとの死闘があった後でも、いつも通りであるナツを見て夢のようにも思えたからであった。

 

「でも……流石にあれまずいですよね、マスター燃え尽きてますよ。」

 

「……まぁ、なんとかなるだろ。」

 

でもやっぱり、王冠を奪ったことだけは不安を感じざるを得ないのであった。


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