FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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長めです


竜王祭

ドラゴンが8匹。そして、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が8人かつまもなく9人。

多種多様のドラゴン達は、魔導士達の攻撃はビクともしない。だが、滅竜魔導士の攻撃だけは別であった。ドラゴンを滅ぼす為の魔法は、本当のドラゴンに初めて向けられる。

 

「だらァァァァ!!」

 

「痛くも痒くもない!鱗に傷をつけられないようでは無理な話よ!!」

 

「クソがっ!!」

 

マルクは、紫電を纏うドラゴンであるヴァレルトと戦っていた。だが、今のマルクの体は力が入らないも同義であった。

そして、魔法もヴァレルトには通じないという状況になっていた。

 

「ふははは!あっしに傷を与えられない故、逃げながら戦うか!逃げることだけは得意なのだな!!」

 

「っ……」

 

街の中には少なくとも木々があった。それを利用するために、ある程度移動しながら、巨体を持つヴァレルトの死角を突きながら戦っていく。

だが、それでもまともにヴァレルトにはダメージが通らない。段々と、マルクは意図せずして城の方へと近づいていた。

 

「ふはははは!!む?なんと、ここはさっきいた所か。」

 

「え……?ウ、ウェンディ!?」

 

「マルク!?無事だったの!?」

 

シャルルに背負われ、空を飛ぶウェンディ。そして、その隣には魔人化したミラと、1匹のドラゴンがいた。

 

「なんだジルコニス!餌と遊んでいる場合か!?なんなら、食ってしまおうかその餌を!!」

 

「ヴァレルト!余計な手出しをするな!!こいつらはワシが食う!!」

 

「なら時間をかけずにさっさと食わんか!!人間の女はお前の好物だろう!!」

 

「餌、だと?」

 

ジルコニスとヴァレルトの会話の1部に反応するマルク。その声でようやく存在に気づいたのか、ジルコニスがマルクに視線を向ける。

 

「何じゃヴァレルト、お前も人間で遊んでおるではないか!」

 

「思いの外すばしっこくての!!中々仕留められんぶぇ!」

 

突然舌を噛むヴァレルト。その原因としては、自分の下にいた人物が魔法を使ってヴァレルトの下顎を打ち上げたからだろう。

 

「……食わせるかよ、ウェンディを!!」

 

「何だ、まだやるって言うのか人間!!」

 

「ジルコニス!てめぇも後でぶん殴ってやる!!」

 

「……む?あの小僧、なぜワシの名を……いや、ヴァレルトが叫んだからか。」

 

一瞬名前を呼ばれたことを疑問に思ったジルコニスだったが、すぐにどうでも良くなり、ウェンディ達の方に視線を向け直す。

 

「む?あの小娘共は━━━」

 

「天竜の咆哮!!」

 

「ぐおおお!?」

 

「隙だらけ、なのよ!!」

 

ウェンディとミラのコンボが、空を飛んでいたジルコニスを襲う。城の目の前で、ウェンディとミラとマルク、そして2匹のドラゴンが戦いを始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、街にいるのはドラゴン8匹だったんじゃねーのか。」

 

「……わ、私も知らない…!こんな、ちっちゃいのがいたなんて……!」

 

マルク達が戦い始めてしばらくたった頃、ようやくマホーグに運ばれてクォーリはクロッカスの街に戻ってくる。

だが、街の中には小型のドラゴンのような生物が大量に闊歩しており、魔導士の殆どがそれの相手をしなければならない状況になっていた。

 

「……あの空飛んでる2匹のドラゴン。なんで争ってる?」

 

「そ、それも分からない……」

 

そして、空では2匹のドラゴンが争っていた。1匹は、体が炎で出来ているかのようなドラゴン。もう1匹は金属で出来ているかのような体をしたドラゴンであった。

 

「……炎の奴は味方、って考えるべきか?」

 

「そ、そうだと思う……」

 

「……なら、あの小型を倒していくぞ。数が多そうだからな。」

 

「う、うん…!」

 

そう言って、2人は小型をなぎ倒していく。一体一体の強さはそれほどでもないのか、一撃を与える度にすぐに戦闘不能になっていく。

 

「こいつらは雑魚、雑魚だが……!」

 

「か、数が多すぎる……!」

 

「お前未来予知できるんだろ!?だったらその目で全部攻撃よけれるだろ!!」

 

「無、無理言わないで…強制的に見せられるから……頭の中、さっきから気持ち悪くて……」

 

「ちいっ……!!」

 

クォーリは辺り一面を凍らせる。その氷の中には、両手の指では足らないほどの小型が全て凍りついていた。

だが、それでもその後ろから新たな小型が姿を現す。

 

「うっぶ……!」

 

そして、マホーグは攻撃しながらも魔眼の強制発動がずっと続いているため、脳に負担がかかり始めていた。

そのため、彼女の体調は悪くなる一方だった。

 

「……減らねぇ減らねぇ!!」

 

「ちょっと無理……あと頑張って………指示だけする…………」

 

「はァ!?お前ふざけ……邪魔だァ!!」

 

マホーグに怒りたくなる気持ちもあったが、それ以上に小型の殲滅の方が先だと判断したクォーリ。

だから仕方なく、怒らないままマホーグの指示に従って小型を仕留めていくのであった。

 

「次はどこだ!!」

 

「私の、後ろ以外の……全方向に、それぞれ………3匹…………」

 

「畜生無駄に数が多い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ……!」

 

「はぁ……飽きた、飽きてきてしまった。」

 

「んだと……!?」

 

「あっしは食うことよりも戦う事の方が好きでな。だが、久々に自分よりも弱い者を相手取ったせいで、変に高揚してしまっていた。

だが、その熱も冷めた。」

 

「舐め、やがって……!」

 

傷だらけのマルク。起き上がろうとするが、ヴァレルトはそれを上から自分の手で押さえつける。

 

「その言葉はお前にも帰ってくる言葉だな。」

 

「は……?」

 

冷めた目で、ヴァレルトはマルクを見下ろす。マルクは、ヴァレルトの言っていることがわからずに、ついヴァレルトの目を見返していた。

 

「ハナから効かない……というのはあるが、それ以上にお前はあっしに攻撃をするのを遠慮している。

それでは興も冷めるというもの……まぁいい、今から我がブレスをぶつけて、それで終わりとしよう。」

 

そう言いながら、ヴァレルトは自身の口の中に雷を溜め込む。だが、それが魔法である以上マルクにとってそれは餌なのである。

 

「何をニヤついているかは知らんが……まぁ、期待はせん。」

 

「いや何……ついさっきまで魔法を使ってなかったなと思ってな。」

 

「あっしはただ、肉体と肉体のぶつかり合いが好きなだけだ。」

 

「そうか、なるほどな……!」

 

肉体のぶつかり合いが好きだと語るヴァレルト。その言葉どおりであり、先程までのマルクとの戦いでは魔法を一切使用していなかった。

 

「では、さらばだ。」

 

そう言って、ヴァレルトはマルクを押さえつけてる手を退けた瞬間にブレスを放つ。

そのブレスを、マルクは食べ始める……が、ここで意外な盲点があった。

 

「うごっ!?」

 

「ほう、我が魔力を食らうか……だが、食らっても電撃の感電は防げまいて……雷属性の滅竜魔導士でも連れてくればよかったな。」

 

マルクは、ある程度こそ耐えられるが魔力を食らう際にナツやガジルの様に物の特性を完全に無視できる訳では無い。

火に耐性なんて持ってないから熱いものは熱く、鉄を噛み砕けるほどの顎を持ってないため、噛み砕くことが出来ない。

そしてそれは、電撃も同じことであった。

 

「うぐ、ぐぅ……!」

 

だが、マルクもここまでの電力だと思っていなかった。ある程度の無視が効くために、例え少しでも感電するとしてもそれも無視できる範囲だと考えていた。

だが、それは早計だった。ヴァレルトのブレスは、地面を焼くほどの熱量と、電気を通しづらいはずの石でできた辺り一面は、帯電していたのだ。

 

「くははは……無駄無駄、我が紫電は全てのものに滞留する。全てを麻痺させ、その間に食らうのさ。」

 

「ぐ、うぅ……!?」

 

ずっと電気を食べ続けているマルク。しかし、ブレスは勢いを一切緩めず放ち続けている。

その勢いに、次第にマルクは押され始める。下手に魔法を使えば、この電撃をまともに食らうことになるからだ。

 

「さぁ、早く消し飛ぶが良い。電撃を喰らおうとも……たかが人間が、耐えられるものではないわ。」

 

「━━━そうか、なら。俺でも耐えられないか試してみろよ。」

 

「誰だ……ぬぐぅぅぅぅ!?」

 

ヴァレルトの頭に当てられる電撃。それはヴァレルトを苦しめて、怯ませる。

 

「……へぇ、頭吹き飛ばねぇか。結構本気でやったんだがな。」

 

「ら、ラクサスさん?」

 

「ほれ、お前はウェンディの加勢にいけ。一人じゃああいつもきつい。」

 

「ら、ラクサスさんはどうするんですか?」

 

「最初はウェンディに加勢するつもりだったんだがな……俺ァこのドラゴンを相手にする。

何け電撃だ……俺と相性がいいだろうよ。」

 

「……お願いします!!」

 

そう言って、マルクは立ち上がってウェンディの元へと向かう。それを軽く見送ってから、ラクサスはヴァレルトに向き直る。

 

「お前も人間か?しかし、あっしにダメージを与えたところを見ると……滅竜魔導士か。」

 

「あぁそうさ……しかも、属性は雷。お前との相性はバッチリってわけだ。」

 

「ほほう……あの小僧よりは楽しめそうだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウェンディ!!」

 

「マルク!あっちのドラゴンは!?」

 

「ラクサスさんに任せた!!俺には……あのドラゴンは、倒せないから…」

 

ウェンディと合流するマルク。戦闘能力的な意味で、倒せないというのもあったが、ヴァレルトにも言われたこと。『攻撃するのを遠慮している』というのが、マルクの心に響いていた。

 

「……何かあった?」

 

「…いや、他人が親に似てたって話だ……それを、俺がただ気にしすぎているだけだってことも……ともかく!やるぞ!!」

 

「う、うん!!」

 

「ふん!!ガキが一人増えたところで!!」

 

そのまま、また戦いは再開される。舐めているのか、ウェンディと戦っていたジルコニスは地面に降り立っていた。

 

「魔龍の咆哮!」

 

「天竜の翼撃!」

 

2つの魔法がジルコニスの体を捉える。だが、どちらの攻撃も致命傷にはなりえなかった。

 

「まったく……面白くない!!」

 

「何を……」

 

「がァ!!」

 

「ウェンディ!!」

 

薙ぎ払うように、ジルコニスは腕を振るう。ウェンディに直撃しそうなそれを、マルクはウェンディを突き飛ばして当たらないようにさせる。

 

「がはっ……」

 

「マルク!!」

 

だが、代わりにマルクが吹き飛ばされる。幸い、爪で切り裂かれた訳ではなく、ただ吹き飛ばされただけだったので何とか立ち上がることは出来た。

 

「俺は大丈夫だ!!けど、これじゃあ……」

 

「皆、疲弊するしかないよね……でも…」

 

「あぁ、やらないと!!」

 

「ふん、ワシを倒せん時点で諦めるべきじゃろうに。」

 

「だったら……一気に倒す!」

 

2人は、並んでジルコニスに向かって走り出す。ジルコニスはニヤリと笑ったまま、腕を上げて、振り下ろす。

それに対して、マルクはそのままの勢いでジャンプしてありったけの魔力を放つ。

 

「滅竜奥義!紫電魔皇殺!!」

 

「ぬぅ!!」

 

鞭のように長い魔力の刃を振るい、マルクはその腕を弾く。ダメージこそ与えられないものの、弾き飛ばせただけでもOKである。

その一瞬の隙を突いて、ウェンディはジルコニスの下に入りそのまま魔力を解放する。

 

「滅竜奥義!照破・天空穿!!」

 

「ぬぐおおおお!?」

 

腹に、滅竜奥義を受けたためかジルコニスは大きく苦しむ。だが、それでもまだ倒すには届くことは無かった。

それどころか━━━

 

「この、小娘がぁ!!」

 

「きゃあ!」

 

ジルコニスは吹き飛ばされきるギリギリで、後ろ足を使い自分の下にいたウェンディを大きく空へと飛ばす。

 

「ウェンディ!!」

 

「邪魔だァ!!」

 

地面に降り立ったが故に木陰に隠れていたシャルル。咄嗟に飛び出してウェンディを助けようとするが、ジルコニスはそれを許さずにシャルルを前足で殴って落とす。

 

「がははっ!このまま食らってやる!!!」

 

「っ!!やめろォ!!」

 

足に魔力を貯めて、マルクは空中に飛び出す。ジルコニスが叩き落とそうとするが、その攻撃に自身の魔力を当てて無理やり行わせないようにする。

 

「っ!!て、天竜の━━━」

 

「遅いわ!!」

 

空中でなんとか体勢を立て直したウェンディ。そのままブレスで何とかジルコニスを吹き飛ばそうとするが、ジルコニスはそのまま飛行してウェンディに魔法を使われる前に口を開く。

 

「あ━━━」

 

「させる、がァ!!」

 

ウェンディが、ジルコニスによって食べられるかと思った直前。マルクはジルコニスの体を登りきり、ウェンディをまた突き飛ばす。

勢いがあったせいで、怪我をしないだろうか……と検討ハズレなことを考えるマルク。

 

「マル、ク━━━」

 

腹部と、背中……と言うよりもマルクは体に違和感を覚えていた。足の感覚がなかったのだ。

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「マルク、マルクやだよ、やだよ……!」

 

ウェンディは必死に治癒魔法を使う。マルクの腰全体に。体温が低くなる感覚を味わいながら、マルクはぼーっと泣きじゃくるウェンディを見て考える。

 

「かー……男を食らってしもうた。不味い不味い。」

 

泣かせたのは誰だ、悲しませたのは俺だ、だが原因が分からない、ウェンディが傷だらけ、したのは誰だ、あのドラゴンだ

なぜ泣かせた?なぜ怪我を負わせた?何故蹂躙した?何故?何故?何故何故何故何故何故━━━

 

「マルク……?なんで、足が……」

 

「………」

 

足が生えた、あるける、たおせる、Tぶセru、kろセ瑠。

 

「……何だ、貴様。人間では、無かったのか。」

 

「マルク……!?体が、変わって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わる体。マルクの体は真っ黒に染まる。腕が太く固く、足も太く固く、爪は鋭くそして長く、牙も長くそして鋭くそして色んな方向に。

体も大きく。目の前のドラゴンを裂くために。

彼にとっての全てのトリガーはウェンディだ。何があったとしても、ウェンディがキーとなる。

ふと、過去の記憶が蘇る。小さな頃の記憶、一時的に魔法を使いたくなくなってしまった忌まわしき記憶。

 

「ひぃ!?来るなァ!!こっちに、こっちに来るなぁ!!」

 

だが、それは自分の記憶していたものと違った。自分は笑っていた。手や服を真っ赤に染めて、2人いたもう1人を追いかける。

次第に追いつき、馬乗りになり、殴りかかる。ただの殴る行為ではなく、貫き殴る行為。

余計に真っ赤に染まっていく。その記憶の中で、ふと合点がいった。魔法を使いたくなくなったのは、人を殺してしまうという恐怖でなく、自分が自分でなくなるという恐怖。

マルクはそれを本能的に感じていた。

 

「ヴォォォォォォォォ!!」

 

「貴様!人間ではない!ましてやドラゴンでも無い!!悪魔だ!!全てを食らう悪魔だ!!」

 

恐怖、何の恐怖。ウェンディを殺そうとするものは全て、彼女が好きな妖精の尻尾を壊そうとするものがあるならば━━━

 

「……全tツぶsu!!」


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