「
おっとぉ!?同じくガジルもレンとイブを撃破!!そして残ったヒビキが逃げた先で、グレイが回り込んでヒビキを撃破ー!!
またもやトップに並んだー!!妖精の尻尾ー!!」
「すげぇ!どうなってやがる!!」
妖精の尻尾メンバー、試合開始後は全くと言っていいほど動かなかったが、それは初代マスターメイビスの指示によるものだった。
そして、メイビスは適宜指令を下しながら妖精達を動かしていく。それは、先程までポイントを一切溜め込んでいなかったチームを1瞬で1位まで帰り坂せるほどのものであった。
「聖十のジュラ!天馬のリーダー一夜を破って5p獲得ー!!そしてシェリアがリズリーを破り49pに!!1位に並んだーっ!!」
妖精の尻尾、
「息詰まる攻防戦の続く大魔闘演武!!ここから更なる熱戦が予想されます!!
そして今!図書館エリアで妖精の尻尾グレイと剣咬の虎ルーファスが激突ー!!」
「……グレイさんがルーファスとぶつかったか。」
実況の声を聞きながら、物陰で休むマルク。彼が受けた指令は既に叶っている。
ゲッターの撃破、並びに全員に刻印の打ち込み。一人を除いて、その命令は完全にこなせていた。
「……小賢しいもんだ、お前。」
「隠れてたか?……いや、単純にジュラさんとかとぶつからなかっただけか。」
マルクの背中から話しかけてくる人物、クォーリ・クーライ。メイビスが唯一『倒さなくていい』と言った人物。
「俺が六人目……というのは、予想か?策士の。」
「そんなところだ。」
「……魔力を相当消耗している。いくら休んでいたとはいえ、勝てると思ってるのか?俺に。」
「俺を狙うのか?作戦があるならともかく……無いのに、ポイントを一切持ってない俺を狙うのなら、おかしいぞお前。」
マルクは、クォーリを睨みつける。どこまで執着する気なのか、それだけがただマルクの闘志に火をつけていた。
「……ルーファスは、負ける。グレイに。
いや……スティングもローグも、お嬢もオルガも全員負ける、多分。」
「……お前の仲間だろ?なぜ信用してやらない。」
「いらない、仲間なんてな。」
「いらない、だと?」
クォーリの言葉に眉を寄せるマルク。そもそも仲間なんて言うものがいらない、と言わんばかり。
「だったら1人で武者修行の旅でもしてろ。何故ギルドに入ってる?」
「……力を見せたかっただけだ。」
「分からないな……お前のやっていることも、言っていることも……滅茶苦茶だ。」
クォーリは構える。マルクの言った言葉に対して激昂した……というわけでもなく、ただ目の前にいるから相手にする……というものでもない。
マルクに、殺気をぶつけていたのだ。
「俺は倒す。お前を……なんとでも言うがいいさ……最後に勝つのは、俺だ……!」
「……まぁいい、誰が相手するわけでもねぇんだ……相手してやるよ。」
「おーっと!?グレイとルーファスがぶつかっている今!!別のエリアでは、剣咬の虎クォーリと妖精の尻尾マルクが一触即発の気配だーっ!!」
実況のの声で、盛り上がる会場。しかし、ピリピリと二人の間には闘志がぶつかり合っていた。
「氷竜の━━━」
「魔龍の━━━」
「「咆哮!!」」
2人のぶつかり合いで、そばにあった建物に穴が開く。だが、ブレスはマルクに取っては餌でしかなかった。
マルクのブレスは、クォーリのブレスの魔力を吸収していき、段々とクォーリを押していく。
「ぐっ……うおおぉ!」
「っ!?」
だが、負けじとクォーリはブレスの途中で地面を凍らせる。ブレス途中で使われると思っていなかったため、マルクは地面が凍っていくのを黙って見ていくしかなかった。
「ふっ!!」
「ちっ……!」
「さて……凍らされた地面で、どうやって戦うつもりだ?今は大して魔力も残ってないだろ?」
「……ふん、相変わらず地面を凍らせるしかできねぇのか。」
「その負け犬の遠吠えが、耳に心地いいぜ……何としてでも勝たなきゃいけねぇんだわ。
仲間の力、とやらは必要ねぇって事を……!」
「ナツ、天井も全部塞がってるよ。」
「くそっ!!折角ここまで来たのに!!」
「ミイラ取りがミイラになる……ね。」
「情けないです……」
ルーシィを救出するために動いていたナツ達。王宮に忍び込めたのはよかったものの、それは既に王妃が気づいていたことだった。
閉じ込められていた牢から、目の前の通路へ出ていたナツ達だったが、通路が開き、王宮地下へと……死の都、奈落宮へと落とされていた。
「こんな事なら、体に地図でも描いてくるんだったな……」
空を飛べるエクシード達が、率先して辺りを探す。落とされたとはいえ、道がないということもないだろう。
何せ、この街は地下空洞が広がっているのがわかっているのだから。
「……」
「ウェンディ様?どうかなさいましたか?」
ルーシィと同じ牢に閉じ込められていたユキノ。ルーシィ達と同じく、彼女も一緒に落とされていた。
「いえ……ちょっと、心配事が。」
「マルクの事?怪我でもしたの?」
「そうじゃなくて……昨日、凄く真剣そうな顔をして悩んでたんです。でも何に悩んでるのか聞いても、一向に答えてくれなくて……」
「男の子にも色々あるのよ、きっと。」
「うーん……」
頭を傾げるウェンディ。心配なことは変わらないが、性別関係の悩みなのだろうかと思ったからだ。
「みんな!こっちに通路があったわ!!」
「おっ!」
シャルルが道を見つけて、その道を通っていく一同。但し、とんでもなく狭い通路の為に、通るのは一苦労だったが。
「狭いわね……! 」
「ここを抜ければ……」
「っ!誰かいますよ……?」
一同の先を行っていたウェンディ。警戒するように呼びかけるが、そこに居たのは傷だらけで倒れているアルカディオスだった。
「アルカディオス様!!」
「おい大丈夫か!!しっかりしろ!!」
「何でこんなところに……」
「う……」
苦しそうに目を開けるアルカディオス。一旦ほっとしたが、苦しそうなその声にやはり警戒を持たざるを得なかった。
「逃げ、ろ……」
「━━━パーン。ジュワー」
唐突に、一同後ろから殴りかかってくる人物。その拳から放たれた液体は、時面にかかると跡を残しながら地面を溶かしていく。
つまりは、酸である。
「タイタイターイ!!タイ?大漁ォ〜!!」
その直後に、ナツ達は吹き飛ばされる。酸を撒く人物と吹き飛ばした人物。
だが、まだ終わりではなかった。地面から植物が急激に生え、咲いた巨大な鼻からもう1人、更にどこからともなく飛んできた紙が人のような形に纏まり、また新たな人物の姿に。
「影から王国を支える独立部隊……王国最強の処刑人……餓狼騎士団……!」
「餓狼騎士団、一五〇〇任務開始。」
現れた人物達の間に、リーダーらしき男が現れる。全員、見た目も性別も別れているが……全員が、ナツ達を敵認定していた。
「フィオーレ独立部隊、餓狼騎士団特別権限により……これより罪人の死刑を執行する。」
「……ぶはっ!!ぶはははははっ!!あはははははっ!!」
餓狼騎士団を目の前にして笑い始めるナツ。流石に水を刺されてしまったからなのか、ルーシィが窘める。
「ちょっとナツ、こんな時に……」
「だってどう見ても騎士団ってナリじゃねぇだろ!!」
「……たしかに。」
「特にお前。」
「タイ」
所謂あほ面、というのに近い顔をした男が答える。髪はモヒカン、頭に捻った布を巻き付けている……パッと見たイメージでは、漁師というのがふと思いつく見た目であった。
「見た目に惑わされるな……奴らの使う魔法は━━━」
「……人を、殺す魔法。」
後ろから聞こえてくる声。ナツ達が振り返るとそこには一人の少女……マホーグ・オロシがいた。
「あんた、レイヴンの……なんでここに。」
「み、道に迷って……気がついたら、こんなところに……しかも、あいつら私を返してくれない……」
「……お前いつからここにいんだよ。」
「……さぁ?し、しばらく外に出てないから……」
マホーグの登場で、少し緩む空気。しかし切り替えるように、ナツは再び餓狼騎士団に目を向ける。
「まぁでも……人を殺す魔法?上等!!なんだ?出口が向こうから歩いてきたぞ!!」
「そうね、出口を教えてもらうのに丁度いいわ。」
「ルーシィさんとユキノさんは鍵ないんですよね!?下がっててください!!」
餓狼騎士団から、出口を教えてもらうつもりのナツ達。それに対してアルカディオスは驚き、目の前の男はその目を変わらずナツ達に向けていた。
「餓狼騎士団を前に臆さぬとは……無知なる罪人め!フィオーレ王国の土と帰れ……!」
「お、王国でも……あんた達知ってる人は……少ない。」
「行くよ?コスモス。」
「私とカミカの美しい舞……ね。」
マホーグのことを無視して、カミカと呼ばれた女性は一枚の紙を取り出して息を吹き付ける。
途端に紙は増え、塊は捻れながらナツ達に襲いかかる。
「紙吹雪、赤の舞!!」
「んなもんは燃やして……やらァ!!」
紙に対して、ナツは炎を当てて燃やそうとする。しかし、炎に当てられても紙は勢いを弱めないどころか、燃えてすらいなかった。
「あ……!?」
「燃えてない!?」
「赤い紙は炎の神……舞い散るが良い!!」
そのままナツの炎も巻き込んで、カミカの紙は進んでいく。ナツに当たる、その瞬間にウェンディが咄嗟にブレスを放った。
「天竜の咆哮!!」
ウェンディのブレスは、カミカの放った紙を尽く消していく。だが、そのウェンディの隙をついて、彼女を喰らおうと下から植物が現れる。
「美しいわ……美しく踊る人形、それは血の咲く骸の花。」
「ウェンディー!!」
ウェンディが食べられかける、と思われた瞬間に魔人化したミラが殴ってその植物を爆散させていた。
「タイタイターイ!」
「ひ、人を殺す魔法……け、けど……敵意なら……『見る事が出来る』」
ナツ達の足元が、途端にマグマへと変化する。先程まで地面のあった場所からマグマになったことで、ナツ達は空中へと身を投げ出されていた……マホーグ以外は。
「タイ!?」
「土地変化の魔法……
マホーグは持っている大剣を変形させて、タイタイ言っている男を吹き飛ばす。
「さ、流石に……魔法は壊せないけど……土地変化だと。」
「ぱーんっ!」
「っ!!」
咄嗟にかわすマホーグ。後ろには酸を撒く男が既に立っており、マホーグの立っていた場所に酸を撒き散らしていた。
「紙吹雪……紫の舞!」
「なんだ!?」
「体が動かない!!」
カミカが、紫の紙をナツ達に飛ばして貼り付ける。張り付かれた先から、ナツたちの体は動かなくなっていっていた。
「紫の紙は縛りの神。」
「これぞ美しき連携……グロウ・クロウ!」
そして、ナツ達の頭上に巨大な花が咲く。その花の中心は奥が見えず、そして何より……ナツ達を吸い込もうとしていた。
「……」
「あ、あんた魔法相手なら強いんじゃないの!?」
「……か、紙は……殴っても殴っても止まらない……1枚しか、壊せないから……動けたとしても……あの花、殴る前に食べられちゃう。」
「よく今まで生きてこれたわね!!」
吸い込まれながら、シャルルはマホーグに文句を言う。しかし、その文句が褒め言葉と捕えられたのか、マホーグは照れていた。
「そ、それほどでも……」
「褒めてなーい!!」
「体の不自由を解除!状態異常回復魔法レーゼ!!」
ウェンディの治癒魔法により、体が動かないというのは解除される。しかし吸い込まれてることには変わりないので……
「壊す!!」
「OK!!」
「うおおおおおお!!」
ナツ、ミラ、リリーの3人で花に懇親の攻撃を仕掛ける。そのパワー故か、盛大な爆発が起こり皆散り散りに吹き飛ばされるのであった。
「みなさーん!どこですかー!?」
「……お腹減った…」
ウェンディは、マホーグといた。出口と吹き飛ばされたメンバーを探す為に、とりあえず歩いていた…だが。
「美しい……いえ、美しいと言うより可憐……でも、処刑よ。」
「あ……花使い。」
吹き飛ばされた先で、コスモスと呼ばれた女性を相手取るウェンディとマホーグ。
脱出と皆を探すために、戦いは始まるのであった。