FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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ドラゴン

ガジルが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達を呼んで、とある場所に連れていった。

そこはドラゴンの骨が大量にあるドラゴンの墓場のような場所であった。

そこで何があったのか……それを知るために、ウェンディは自身の滅竜奥義、ミルキーウェイによってその場にある骨から魂の残滓を感じ取り、声を聞こうと試みる。

試みは成功し、ウェンディの滅竜奥義によって呼び出されたのは、翡翠の竜ジルコニス。

彼はここで起きたことを語り始めるが、その際に話された『人間との共存を歩む派のドラゴン』と『それに反対するドラゴン』との派閥争いがあったことを話す。

そして、その戦争に初めて滅竜魔導士が生まれた……と語ったのであった。

 

「滅竜魔導士達の力は絶大であった……人間との共存を選んだドラゴン達の勝利は目前と迫っていた。

反対派も、色々策は打ったが……ドラゴンである以上、滅竜魔導士達には太刀打ちできんかった。」

 

「……その、策っていうのは?」

 

「他の生物を喰らい、自分の力とすること……あくまでも無理矢理に、じゃがな。

そうすることで自分の使う属性を増やした。」

 

反対派のドラゴン達がしたことに、その場にいた一同の視線がナツに移る。まさしくそれは、ナツの雷炎竜のことを表していたからだ。

 

「……そう言えば、悪魔を食らった奴がいたのう。」

 

「悪魔?」

 

ふと、思い出したかのようにジルコニスは指を顎に当てて考える仕草をとる。

悪魔、と聞くとマルクは悪魔の心臓(グリモアハート)のマスター、ハデスが作り出した土塊の悪魔を思い出す。

しかし、恐らくはあのような生み出されたものではなく純粋種のようなものだと、認識を改めた。

 

「あぁ……当時は、ドラゴン同士の戦争であったが故に、全く気にしておらんかったが……その悪魔の力を取り込み、共存派を薙ぎ払うつもりだったようだ。」

 

「そのドラゴンって……」

 

「紫電竜ヴァレルト……確か、そんな名前だったような気がするのう。」

 

「紫電竜……ヴァレルト……」

 

電気系の魔法を使うドラゴンなのだろうか、とマルクはふと思う。『紫電』と名のついている滅竜奥義を持つマルク。そのせいか、ヴァレルトの事が無性に気になっていた。

 

「……とまぁ、少しズレたが……滅竜魔導士達は反対派のドラゴンを次々と倒していった。

しかし、ここで一つの誤算が生じる。」

 

「誤算?」

 

「力を付けすぎた滅竜魔導士達は、人間との共存を望むドラゴン達さえも殺していった。

そして、人間の中の1人に……ドラゴンの血を浴びすぎた男がおった。」

 

段々と、余裕の笑みを浮かべていたジルコニスの顔が、陰り始める。まるで、それ以上語りたくないかのように。

 

「その名を口にするのも恐ろしい……男は、数多のドラゴンを滅ぼしその血を浴び続けた。

やがて男の皮膚は鱗に変わり……歯は牙に変わり……その姿はドラゴンそのものへと変化していった。」

 

「人間がドラゴンになったの……!?」

 

「それが滅竜魔法の先にあるものだ……ここに眠るドラゴン達も、その男により滅ぼされた。男は人間でありながら、竜の王となった。竜の王が誕生した戦争……それが『竜王祭』」

 

少し答えづらそうに、しかし覚悟を決めたのかジルコニスは口を開く。

 

「王の名は……アクノロギア。ドラゴンであり、ドラゴンならざる暗黒の翼。」

 

「アクノロギア……!?」

 

「あれが……」

 

「元は人間だった!?」

 

「ばかな……!」

 

ジルコニスの口から出た意外な名。かつてナツ達に襲いかかり、滅ぼそうとした存在。

それが元は人間だったというのだ。それだけで、驚きに値する。

 

「奴により、ほとんどのドラゴンは滅んでいった……それが今から400年前の話だ。

ワシは、貴様らに━━━」

 

突然、ジルコニスは言葉を終えぬまま姿を消す。まだ聞きたいことなどがあるのにも関わらず、ジルコニスは完全に姿を消した。

 

「オイ!」

 

「消えた!!」

 

「まだ聞いてねぇことあるだろ!!」

 

「ウェンディ!!」

 

催促されるが、ウェンディは首を横に振った。それはもうジルコニスは完全に姿を消したということである。

 

「ダメです……この場から完全に思念が消失しました。東洋の言葉で言う、成仏というものでしょうか。」

 

「……なんだか、エライ話になってきたな。」

 

「スケール大きすぎよ……」

 

話の大きさに、頭の処理が追いつかないグレイとルーシィ。しかし、当人である滅竜魔導士達は別の問題に、驚いていた。

ジルコニスの言った『滅竜魔法の先にあるもの』が滅竜魔導士の竜化だと言うのだ。

 

「滅竜魔法使いすぎると本物のドラゴンになっちまうのか!?」

 

「それは困る!」

 

「どうしよう……」

 

「流石にドラゴンのままだと妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいられなくなるよなぁ…」

 

「━━━それはありえんよ。」

 

「誰!!」

 

後から聞こえてくる声。そして、金属が軽く擦れ合うような音とともに、男の声が近づいてきていた。

 

「話は聞かせてもらった。やはり我々の研究と史実は一致していた……」

 

「研究だと?」

 

「君達はゼレフ書の悪魔を知っているかね?」

 

男のその声により、グレイの顔が少し曇る。過去に、デリオラというゼレフ書の悪魔に因縁があったのだ。

 

「アクノロギアはそれに近い。1人の滅竜魔導士をゼレフがアクノロギアにしたと推測される。」

 

「ゼレフが!?」

 

「つまり……全ての元凶であるゼレフを打つことが、アクノロギア攻略の第一歩となるのだ。」

 

「ゼレフを倒す!?」

 

「誰だテメェ!!」

 

「ユキノ!?」

 

目の前には白い鎧を身にまとった騎士、そして元剣咬の虎(セイバートゥース)のユキノがいた。

 

「私はフィオーレ王国軍、クロッカス駐屯部隊『桜花聖騎士団』団長アルカディオス。」

 

「同じく臨時軍曹のユキノ・アグリアでございます。」

 

突然現れた二人、ユキノも臨時的に王国軍になったということで、一同には困惑と警戒があった。

 

「軍のお偉いさんがなんでこんなところに……」

 

「ユキノ……あんた剣咬の虎の一員じゃなかったの?」

 

「辞めさせられたって言ってたよね?」

 

「はい、その通りです。」

 

「私から説明しよう。極秘に進めていたある作戦に、星霊魔導士が必要だった。そこでユキノ軍曹に力を借りているという訳だ。」

 

「星霊魔導士……?」

 

アルカディオスの言い分に、ナツが憤慨し始める。

 

「ちょっと待て!!何の話かわからねー!!ややこしい話はパスだ!!用件をいえ!!」

 

「ですね……少し唐突すぎます。用件しだいによっては……」

 

軽く構えるマルク。だが、憤慨しているナツも警戒を目に見えて表しているマルクも、アルカディオスは他人事のように無視していた。

 

「マルク・スーリア君だね?その若さであの三竜を破るとは、素晴らしい実力……ナツ・ドラグニル君にも匹敵するのでは━━━」

 

アルカディオスの顔の横に、魔力の塊が通り過ぎる。そして、ナツがアルカディオスに近寄る。

 

「んな事ァどーでもいい。わざわざ、お膳立てしねぇといけないようなことを今からしようっていうの?」

 

「こっちは星霊魔導士が必要とかどうとかってのに引っかかってんだ。

言いてえ事があるならはっきり言いやがれ。」

 

「二人とも……わかってると思うけど偉い人だよそれ……」

 

「そう思うなら、『それ』というのはどうかと……」

 

二人の行動を止める者はいない。ルーシィが狙われた、という事実は既にあるのだ。

もし同じような手を使われるのなら……と考えていた。

 

「ついてきたまえ。」

 

「おい!てめぇ!!」

 

「ルーシィ様……私からもお願いします。」

 

アルカディオスは背を向けて歩き始める。その直後に、ユキノが頭を下げる。

 

「この作戦が成功すれば……ゼレフ、そしてアクノロギアを倒せます。」

 

「……アクノロギアを………?」

 

あの暴虐の塊とも言えるアクノロギア、そして不死であるゼレフ。二人を倒すというが、それを可能とする方法ならば話だけは聞く価値があると、この場にいる全員が渋々納得したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んだー!?コリャー!!」

 

「華灯宮メルクリアスですね。」

 

華灯宮メルクリアス、フィオーレの王が住んでいる城である。現在地下にいたメンバー全員がこの場に揃っていた。

 

「まず初めに………数日前、ルーシィ殿を狙い……誤って攫おうとしたことを謝罪したい。」

 

「何!?」

 

「あれ、あんたの仕業だったの!?」

 

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の仕業と思っていた、ウェンディ達の拉致。

誤って、というにしては些か無理やりにウェンディ、シャルル、ポーリュシカを攫ったと思っていたが、ここでそれを言う者はいない。

話が進まない故に、今は飲み込んでいた。

 

「勿論危害を加えるつもりは無かったが……些か強引な策に走ってしまった。

あの時は早急に星霊魔導士が必要だと思いこみ、判断を謝った……申し訳ない。」

 

「……大魔闘演武は、カモフラージュか。お前らが裏でやってる事の。」

 

「存外、頭の回転は早いようだね。ガジル君。」

 

「ケッ……」

 

「その通り、大魔闘演武は魔導士達の魔力を大量に接収する為のカモフラージュだった。」

 

『なんでわかったんだ』という風な視線を向けるマルク。しかしガジルは、今はそれに応えようとはしない。

 

「毎年魔導士達から魔力を奪ってたのかよ。」

 

「……きたねぇな。」

 

「なんと言ってもらっても構わんよ。全ては計画の為にやったこと。」

 

アルカディオスを先頭に、一同は城の中を進んでいく。そうすると、目の前に巨大な扉が見えてくる。

 

「世界を変える扉、エクリプス……これの建造の為、大量の魔力が必要だった。」

 

「……毎年、って事はジェラールが感じてた妙な魔力って……」

 

「なるほど、エクリプスとやらの魔力だったという事か。」

 

「太陽と月が交差する時……十二の鍵を用いてその扉を開け。扉を開けば時の中。400年の時を渡り、不死となる前のゼレフを討つ。

それこそがエクリプス計画。」

 

巨大な扉を見上げながら、アルカディオスは語る。その計画の、現実味の無さに一同は驚きしかなかった。

 

「と、時を渡る……?」

 

「ルーシィ様、星霊界はこの世界と時間の流れが違うと聞きます。」

 

「そう言えば、そうだったけど……」

 

「その星霊界独自の次元境界線を利用し、星霊魔導士の力でこの扉を開くのです。」

 

「当初の計画では、星霊魔導士は擬似的な魔力で代用できる予定であった。

だが、本物の星霊魔導士と十二の鍵があれば、計画がより完璧になる。もはや必要不可欠と言って良い。

太陽と月が交差する時……即ち、三日後の7()()7()()……君の力を貸してほしい、ルーシィ殿。」

 

指定された日付。その日付に、滅竜魔導士達は全員親代わりのドラゴンがいなくなっている。

それが偶然か必然か、このような大魔法が起動する時も同じ日付だったのだ。

 

「太陽と月が交差する……日蝕(エクリプス)……」

 

「━━━そこまでだ!!」

 

大声とともに、大量の足音。気づけば一瞬で、一同は囲まれてしまっていた。

 

「王国兵!?」

 

「なんでこんな!?」

 

驚きも束の間、兵士達が道を開けてそこを歩いて一同に近づいてくる人物がいた。

 

「大人しくして頂こう……アルカディオス大佐。」

 

「国防大臣殿!?これはなんの真似ですか!?」

 

突如現れた、国防大臣。同じ城の人間であるアルカディオスすらも、纏めて包囲させた人物。

なぜ今このタイミングで現れたのか。エクリプス計画という物に対しては、城の中も一枚岩ではないと……そして、嫌な予感をひしひしと一同は感じるのであった。


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