FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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滅竜魔導士対決の行く末

「こ、ここここれは……妖精の尻尾(フェアリーテイル)だー!!三竜敗れたりー!!

勝者、妖精の尻尾ー!!ここに来て一位に躍り出たー!!」

 

実況の興奮と、観客の興奮が最高潮に達した。肩で息をするマルクと、それを隅から見守るナツ。

終わった後マルクは、尻餅をついた。

 

「疲れた……」

 

「これにて大魔闘演武四日目終了ー!!1日休日を挟んで、明後日最終戦が行われます!!

最終日はなんと全員参加のサバイバル戦!果たして優勝はどのギルドか!?皆さんお楽しみにー!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

実況の声が遠い声に聞こえてくる。そんな会場の地下で戦っていたマルクは、倒れている三竜を見る。

 

「……聞こえているかわかんないけど、言っとく。

正直なところ、これが試合じゃなかったら俺はお前らをもっとボコボコにしてる。

そうやって倒れてるのなんて、絶好の機会だからな。」

 

「……」

 

一切反応しない三人を見るが、マルクは続ける。

 

「けど、それをしないのはこれが試合なのもあるが……ナツさん本人が気にしてないから、やらないだけだ。

俺個人としては……しばらくはお前らを許さない。ルーシィさんを笑ったお前らをな。」

 

マルクはそう言ってナツと共に上へと登っていく。残された三竜の内、クォーリだけが動き始めていた。

 

「……んだよ、そんな顔して。」

 

「うるせぇ……今生まれてから一番機嫌が悪いんだよ。」

 

「いつもの喋り方……今日に限っては、全然無かったな……」

 

「それっぽい喋り方なだけだ……んなことはどうでもいい……」

 

「……俺達は完敗したんだぞ?しかも、ナツさんやガジルさんはもっと強い。」

 

クォーリは何とか座り込み、地面を殴る。その表情は、誰が見ても憤怒と取れるものだった。

 

「……やけに執着するな。」

 

「当たり前だろ……魔法を食らう滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)って存在がありえねぇのに、あいつは自分の事を滅竜魔導士だと言い張る……その上であいつに負けたことが腹が立つ。」

 

「……そもそも、滅竜魔導士自体が異常なのに何言ってんだ。」

 

「それでもだ。そもそも滅竜魔導士は、自分の属性に関しては耐性がかなり高い。

だが、あいつは魔法を食らうと言っておきながら魔法に対する耐性が皆無だ。少し存在する程度……」

 

「……何が言いたい?」

 

「滅竜魔導士とは、違うんだよあいつは。自分で気づいてねぇのか、やけに自信満々に否定してくるがな。

滅竜魔導士は自分の属性のものなら、食えるし耐性もある。あいつは食えるのに耐性がない……それでどうやって滅竜魔導士だと思えと?」

 

「……半分言いがかりじゃねぇか。」

 

「俺がそう思ったんだ……少なくとも、あいつは滅竜魔導士なんか、じゃ……ねぇ…………」

 

体をふらつかせ、再び倒れるクォーリ。スティングは、そんなクォーリの様子を見て、溜息を付いていた。

 

「無理するからそうなるんだっての……」

 

空を見上げながら、スティングは思う。このあと自分がどうなるのかを。

剣咬の虎(セイバートゥース)マスタージエンマ、彼は最強たる剣咬の虎を保とうとするために、厳格な体制を敷いていた。

それこそ、『負ければ紋章を消せ』というものである。カグラに負けたユキノも、ジエンマの命令によって服を脱がされ紋章を消されるという恥ずかし目を受けた。

恐らく自分たちも、何かしらの罰はあるだろうと考えていた。

 

「……どーすっかねー」

 

「……」

 

「……ローグ?さっきから何黙ってんだ?」

 

「……いや、俺はどれだけ思い上がっていたのだろう…と思ってな。」

 

ローグの反応にため息をつくスティング。しかし、どちらにせよ彼らが負けたという事実は、彼らの心に何かしらの変化を訪れさせていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ナツ、ウェンディ、マルクはガジルに呼ばれて地下に案内されていた。

 

「一体何があるんですか?ガジルさん。」

 

「黙ってついてこい。」

 

「何で俺たちだけ……」

 

「滅竜魔導士に関する何か、って事ですか?」

 

マルクの言葉に、各相棒であるエクシード達も反応を示していた。

 

「そうだろうな。」

 

「なんだろう……」

 

「……と言っても、野次馬もいるけどね。」

 

シャルルが、視線を動かすと、その先にはグレイとルーシィがいた。ルーシィはまだ傷だらけではあったが、ちゃんと動けるくらいまでには回復しきっていた。

 

「馬ってやつがあるか。」

 

「だって気になるじゃない。」

 

仕方なく、グレイ達も一緒に連れていく。しばらくして目的の場所についたのか、ガジルが止まる。

 

「……ここだ。」

 

「これは……!?」

 

「なんだこりゃ……」

 

「動物の、骨……」

 

「いえ……これは動物というより……」

 

ガジルが案内した場所。そこは、ある生物の骨が大量に存在していた。ルーシィが言ったように、動物ではあるが……

 

「━━━ドラゴンの……骨、ドラゴンの……墓場…………」

 

「これ、全部ドラゴンの骨!?」

 

「凄い数……」

 

「ドラゴンの存在を確定づける場所か……」

 

大量にあるドラゴンの骨。何故大魔闘演武の会場の下に、こんなものがあるのか……何故ここまで一箇所に集中しているのか、そのすべてが謎に包まれていた。

 

「なんなんだここ。」

 

「知るか。」

 

「どうなってんだこりゃ……こんなに大勢のドラゴンが……」

 

「ここで何かあったのかしら……」

 

ここまである大量の骨を見て、滅竜魔導士達は不安に駆られることは無かった。

自分の親はここにいない、という確信ともうひとつ……

 

「俺達のドラゴンが姿を消して14年だ……ここに眠ってるのはそれよりも遥かに古い遺骨だろうな。」

 

「苔まで生えちゃってますもんね……しかも、幾らか風化しかけてるのだってある。

14年経ったとしてもここまでにはならない……」

 

「そもそも、14年前でも普通にこの街はあったはずだ。流石にドラゴンみたいなでけーのが、死ぬ為にここに移動したら、見つかって大騒ぎだろ。」

 

「そ、そっか……」

 

滅竜魔導士達の言葉で、理解するハッピー。すると、今まで考え込んでいたウェンディがハッとして顔を上げる。

 

「ミルキーウェイ……」

 

「どうしたのウェンディ?」

 

「ミルキーウェイです。ポーリュシカさんから教えて貰った滅竜奥義の1つ……『ミルキーウェイ』

天ノ川へと続くドラゴンの魂の声を聞け……私、てっきり攻撃系の魔法かと思っていたんですが……もしかしたらこの事なのかも……」

 

「……その、ミルキーウェイで何が出来るんだ?」

 

「ミルキーウェイ……多分、魂となったドラゴンの声を聞く魔法かも。」

 

「何!?」

 

「それって……」

 

ウェンディのミルキーウェイの説明を聞き、いよいよ高まってくる緊張感。その結末はどこへ向かうのか。

 

「ここに眠るドラゴンの声が聞こえれば……ここで何があったか分かるかも知れません。

そして、いなくなった私達のドラゴンのことも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、ウェンディはその場に魔法陣を書き始めていた。他の滅竜魔導士達には割と無縁のものなので、存外みんな新鮮に感じ取っていた。

 

「魔法陣?」

 

「やっぱり!攻撃用の魔法だと思ってたからここの文字が違ってたんだ……」

 

「何やってんだウェンディ?」

 

「あんた話聞いてなかったの?」

 

「ミルキーウェイだって。」

 

しばらくすると、ウェンディを中心として魔法陣が書き上がっていた。

 

「これでよし!皆さん少し下がっててください……さまよえるドラゴンの魂よ、そなたの声を私が受け止めよう……ミルキーウェイ……」

 

ウェンディが、言葉をつむぎ、ウェンディを中心とした魔法陣が光り輝いて洞窟の天井に、まるで星空のような輝きがきらめく。

魔力が渦を巻き、一箇所に集まり始めたかと思うと……一斉に骨達が震え始めた。

 

「ひゃあ!?骨が……」

 

「大丈夫なのかウェンディ?」

 

「ドラゴンの魂を探しています……この場にさまよう残留思念はとても古くて……小さくて……っ!!見つけた!!」

 

ウェンディが祈るようなポーズをとる。すると、洞窟内の広いところに何かが集まっていくのが他の一同にも視認できた。

 

「うおおっ?!」

 

「あれが魂なのか!?」

 

「……なんか世紀の大発明見てる気分だ……」

 

「ウェンディ?」

 

「集中しているみたいね。」

 

次第に、固まった何かから姿が見え始める。いくつもある鱗、鋭い爪に牙を持ち、それらがすべて巨大な生物……ドラゴンである。

 

「……グオオオオオオオオオオ!!」

 

「あぁあああああ!! 」

 

ドラゴンが吠え、ナツ達が驚く……が、途端に目の前に居るドラゴンは堪えきれないかのように笑い始めた。

 

「あーっはっはっはっ!人間の驚いた顔はいつ見ても滑稽じゃのう。」

 

その反応にぽかんとする一同、しかし目の前のドラゴンはそんな事を気にせず話を続けていく。

 

「我が名はジルコニス、翡翠の竜とも呼ばれておった。ワシの魂を呼び起こすとは……天竜(グランディーネ)の術じゃな?どこにおるか……」

 

しばらくキョロキョロしていたジルコニスだったが、じっと黙って集中しているウェンディを見つけると、顔を近づける。

 

「かーわええのう!こんなにちんまい滅竜魔導士が、ワシを起こしたのか!」

 

「てめぇウェンディに近づいてんじゃねぇ!!」

 

マルクがブチギレるが、ジルコニスは一切気にしない様子だった。

 

「嫌じゃ、この娘はワシが食う。」

 

「……!」

 

「なんて冗談に決まっておろうがっ!!バカな種族よ!ホレ!!幽体に何が出来ようか!?あはははっ!!」

 

「消し飛ばしていいですかいいですよね。」

 

「落ち着け、んなことするために呼び出したんじゃねー」

 

わざわざ見せつけるように、爪がウェンディをすり抜けるのを行うジルコニス。挑発されたかのようなこの態度に、マルクは滅竜奥義も発動させかねないほどだった。

 

「我が名はジルコニス、翡翠の竜とも━━━」

 

「さっき聞いたわーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで何があったの?」

 

「ここにはドラゴンの亡骸がいっぱいあって……」

 

「その真相を知るためにお前の魂を呼び起こしたのだ。」

 

話を進めようと、エクシード隊がジルコニスに質問を投げかける。しかし、ジルコニスの態度は変わることは無かった。

 

「人間に語る言葉ない、立ち去れ。」

 

「オイラ猫だよ。」

 

「……そうだな、あれは400年以上昔の事だ。」

 

ふざけた態度、という点で変わることがない……と言う話ではあるが。

 

「かつて竜族はこの世界の王であった。自由に空を舞い、大地を駆け、海を渡り繁栄していった。この世の全ては竜族のものであった。人間等は、我々の食物に過ぎなかったのだよ……ぐふふ。

だが……その竜族の支配に異論を唱える、愚かなドラゴンがおった。人間と共存できる世界を作りたい、と抜かしおったのじゃ。

それに賛同するドラゴンと、反対するドラゴンとの間で戦争が始まった。ワシは、反対派として戦った。」

 

「反対派……つまり、人間と共存する道じゃなくて、支配する側がいいと思ったドラゴン達か。」

 

「ワシは人間が好きじゃない……食物としてなら、好物であるがな。」

 

「食いもんと会話してんのかおめー……」

 

ナツが、ジルコニスの事を笑いながら見る目を変える。ジルコニスはどうにも、それが嫌だったのか嫌そうな表情をしていた。

 

「コホン……戦況は拮抗しておった……ドラゴンとドラゴンの戦いはいくつもの大地を裂くものだった。

やがて共存派のドラゴンは、愚かな戦略を打ち立てた。人間にドラゴンを滅する魔法を与え、戦争に参加させたのだ。」

 

「それってつまり……」

 

「滅竜魔法……?」

 

「滅竜魔導士の原点ってこと……?」

 

ここで知れた、意外な情報。この情報は意外であったが、ナツ達はまだ……このドラゴンの墓場の真実、そしてドラゴンの戦争の結末を……これから聞くことになるのであった。


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