FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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白影氷

「はぁっ!!」

 

ホワイトドライブ、シャドウドライブ、アイスドライブ。3人がそれぞれそう呼んだその形態は、今までと何かが違っていた。

真っ先に飛び出してきた、スティングの攻撃。ナツはそれを両腕でガードするが……

 

「聖なる白き裁きを!!くらいなぁ!!」

 

「ぐっ!!」

 

即座に打ち込まれた2打目にナツは、ガードを崩されてしまう。

 

火竜(サラマンダー)!!」

 

「ナツさん!!」

 

「人の心配してる余裕があんのかァ!?」

 

ガジルにはローグが、マルクにはクォーリが立ちはだかる。

 

「ぐぉ!?」

 

「影は捉えることが出来ない━━━」

 

「こいつ……ッ!」

 

ガジルが捕まえようと腕を伸ばすも、影となったローグにはそれはすり抜けて空振りに終わってしまう。

 

「氷は糧さえあればどれだけでも作れる━━━」

 

「その前に壊せば!!」

 

マルクが攻撃するも、攻撃したのは精巧に作られた氷の人形だった。壊した氷人形の後ろから、クォーリはマルクに一撃を与え体を凍らせていく。

 

「ぐっ……!がァっ!!」

 

「残念そいつも人形だ……はっはー!!」

 

パワーアップした3人に、苦戦を強いられるナツ達。そのままの勢いを、スティング達は増やしていく。

 

「俺はずっとあんたに憧れてたんだ!そしてあんたを超えることを目標にしてきた…今がその時!!」

 

スティングがナツに何かを打ち込む。攻撃用、と言うにはあまりにも小さなものだったが……

 

「白き竜の爪は聖なる一撃!聖痕を刻まれた体は自由を奪われる!!」

 

「影なる竜はその姿を見せず……確実に獲物を狩る……」

 

「氷の竜は、いるだけで相手を凍えさせる。冷えきった体、凍りついた獲物を確実に仕留める……!」

 

スティングによって体を動けなくされたナツ。ローグにフェイントを織り交ぜられ、背後から攻撃をされかけているガジル。クォーリによって、体そのものを凍りつかされているマルク。

 

「これで俺は!!あんたを超える!!」

 

スティングの、ローグの、クォーリの一撃がそれぞれ迫ってくる。だが━━━

 

「……確実に獲物を……何だって?」

 

「っ!?」

 

攻撃される瞬間、実態化する隙を突いてローグの腕を捕まえるガジル。

 

「凍りついた獲物……そんなのがどこにいるんだ?」

 

「ごがっ!?なぜ、だ……!?」

 

「体から魔力を噴出させれば、こんな薄い氷なんてすぐに砕けるに決まってんだろうが。魔力がこもってることで強度を保ってんなら尚更だ。」

 

体の表面の氷を、体から魔力を噴出させて無理矢理砕けさせたマルク。そのまま飛び込んできたクォーリを殴り飛ばした。

 

「ばがっ!?な、なぜ動ける!?っ……聖痕が、焼き消されて……」

 

体を拘束させる力を持った聖痕、ナツはそれを自身の炎で焼き消していた。

 

「中々やるじゃねぇか。だけどまだまだだ。」

 

「あんまり調子に乗んなョ、コゾーども。」

 

「つい最近最強と呼ばれてた?それは結構。だが、あんまり━━━」

 

「「「妖精の尻尾(フェアリーテイル)を舐めんな!!」」」

 

ガジルはローグの顎に肘を叩き込み、ナツは更にスティングを殴り飛ばし、マルクはそのままクォーリの腹に蹴りを叩き込んだ。

 

「っ……やっぱり最高だぜあんたら!!こっちも全力でやらなきゃな…白き竜の拳は炎さえも灰燼に還す。

滅竜奥義!!ホーリーノヴァ!!」

 

魔力の塊とも言うべき、圧倒的な魔力の拳がナツに襲いかかる。それはナツに当たった瞬間に盛大な爆発を起こした。

 

「……」

 

「な、あ……!?」

 

だが、それだけだった。拳はナツに片手で受け止められ、魔力によるダメージもナツには一切入っていなかった。

 

「ガジルゥ!!」

 

「もどきがァ!!」

 

完全に戦い方を見切られたローグは、ガジルに一撃入れられる。そしてクォーリもまた、動きを見切られてかわされては魔力を喰らう一撃を叩き込まれ始める。

 

「ヤジマさん!!これは一体……!」

 

「ウム……」

 

3ヶ月の修行と、第二魔法源が三人をここまで強くしていた。スティングの動きも、ローグの動きも、クォーリの動きも……全てが、ナツ達に負けていた。

 

「……格が違いすぎる。」

 

「こ、こんな展開!!誰が予想できたでしょうかー!?剣咬の虎(セイバートゥース)の三竜!妖精の尻尾の前に手も足も出ずー!!

このまま試合は終わってしまうのかー!?」

 

「終われるものか……」

 

「……負けねぇよ、負けられねぇんだよ。レクターの為に……!」

 

「負けるわけ、ねぇだろうが……こちとら最強の……ギルドだ!!」

 

3人の魔力がさらに上がる。顔に紋様が浮かび、オーラも桁違いのものとなる。

『ドラゴンフォース』滅竜魔導士が持つ力。だが、ナツはこれを過去2回発動させていたが、どちらも他から魔力を供給された結果である。

しかし、目の前にいる3人は、自力で発動することができるのだった。

 

「なんだこの魔力は……!」

 

「これが、第三世代って奴ですか……」

 

「……ローグ、クォーリ、手を出すな。俺一人で十分だ。」

 

スティングの自信がありそうなその表情に、ナツ達はスティングに対する認識を改める。

事実、改めなければならぬほどにその魔力の上がり方は凄まじかった。

 

「な、なんと!!先程まで劣勢だった剣咬の虎!!まさかの1対3宣言!!」

 

「余程自信があるんだろうね。」

 

「凄いです!ありがとうございます! 」

 

観客席と、実況席の盛り上がりが更にヒートアップしていく。その分、フィールドの緊張感も高まっていった。

 

「……舐めやがって。」

 

「けど、この感じ……」

 

「あぁ…強えぞ。」

 

「━━━はぁっ!!」

 

飛び出してくるスティング。ナツがなんとかガードをしようと試みるが、それよりも前にスティングの一撃がナツの顔を捉える。

 

「ナツさん!!」

 

「ぜァっ!!」

 

ガジルが薙ぎ払うように足を振るうが、それもかわされて逆に魔力の塊を飛ばされて、一撃をもらう。

 

「クソっ!!」

 

ナツが飛びだして、スティングに一撃を入れようとするが、片手で防がれる。

その一瞬の隙を突いて、マルクが上からかかと落としを決めようとするが、これもまた片手で防がれる。

 

「オラァ!!どうしたどうした!!」

 

「うぶっ!!」

 

スティングは、マルクをそのまま地面に叩きつけ、ナツの腹に膝を叩き込む。

そのままナツをガジルの方に投げ、マルクを蹴り上げてガジルの方に蹴り飛ばす。

 

「白竜の……ホーリーブレス!!」

 

飛び上がり、スティングはブレスを打ち込む。その威力と範囲はとんでもなく、闘技場フィールドの床が崩壊するほどであった。

 

「試合は続行されます!!皆様は魔水晶映像(ラクリマビジョン)でお楽しみください!!」

 

「まだまだこれからだぜ!!」

 

落ちながら、迫ってくるスティング。ナツは身を翻して、瓦礫に乗る。

 

「火竜の、劍角!」

 

「鉄竜の咆哮!!」

 

ナツの一撃がスティングを穿つ。その隙に、スティングの上まで登っていたガジルがブレスを撃ち込んで地面へと叩きつける。

 

「魔龍の翼撃!!」

 

そして、ダメ押しと言わんばかりにマルクが更に追撃を入れる。

だが、土煙から現れたスティングには、まともにダメージが入っているように見えなかった。

 

「白き竜の輝きは万物を浄化せし……ホーリーレイ!!」

 

「ぐあああああ!」

 

何本も放たれたレーザーの雨は、3人を穿った。

なんとか3人地面に降り立つことは出来たが、その隙を狙ってスティングがナツに向かって拳を振るおうとしていた。

 

「……飛べよ。」

 

その拳を、なんとかガードしたナツだったが、ガードなんて関係ないと言わんばかりに、そのまま吹き飛ばされる。

地下にある古い建物に飛ばされて、建物が崩壊していた。

 

「ぐはっ!!」

 

「がっ!!」

 

蹴られ、殴られ、吹き飛ばされ……ナツ達はスティングに手も足も出ないまま、防戦すらも許されることなくタコ殴りにされるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、しばらくして。

3人はスティングの前で倒れていた。対してスティングは、ほとんどと言っていいほど、ダメージを受けてなかった。

 

「時代は移りゆく……七年の月日が、俺達を真の滅竜魔導士へと成長させた。」

 

「……終わってんだよ、旧世代。」

 

ローグとクォーリが降りてくる。最早、確定的。勝敗は決したものだと誰もがそう思っていた。

 

「でも……やっぱり強かったよ、3人とも……」

 

「褒めるなよ、もどきを。」

 

「3者ダウンかー!?」

 

「━━━ちょっと待てって。」

 

その声とともに、ナツ達は何事も無かったかのように立ち上がる。その姿に、スティングは驚いていた。

 

「いってぇー……」

 

「思ったよりやるな。」

 

「そもそも、二人とも様子見しすぎですよ……」

 

「いいだろ、別に……けど、おかげでお前の癖は全部見えた。」

 

「何!?」

 

ナツはニヤリと笑みを浮かべる。ナツの言葉に、スティング達の表情がさらに驚愕の色に染まる。

 

「攻撃のタイミング、防御の時の姿勢、呼吸のリズムもな。」

 

「ばか、な……こっちはドラゴンフォースを使ってんだぞ!!」

 

「おう!大した力だ。体中痛えよこんちくしょう。

例えば、攻撃の時軸足が11時の方を向く。」

 

「いーや、10時だな。」

 

「11時だよ。」

 

ナツの言葉に、突然反応するガジル。マルクは頭を抱え『また喧嘩してる』と、溜息をつく。

 

「半歩譲って10時30分!11時じゃねぇ!」

 

「11時だ!23時でもいい!!」

 

「それ一回転してるじゃねぇか!!」

 

「うるさい。」

 

「おわっ!?」

 

ナツは、ガジルを突き飛ばしそばにあったトロッコに、無理やり乗せる。そして、そのままさらに近くのレバーを引いて、トロッコを動かす。

 

「オイ!!てめ……こ、これは……うぶ、うおー……!」

 

「ギヒッ。」

 

「が、ガジルさーん!?」

 

トロッコは乗り物なので、滅竜魔導士の弱点とも言える乗り物酔いが、ガジルを襲った。

そのまま運搬されていくガジルを、マルクは試合中ということもあって見守ることしか出来なかった。

 

「舐められた分はきっちり返さねぇとなぁ……」

 

「……ナツさん、俺もいるのに一人でやる気ですか?」

 

「ん?なんだ横取りか?」

 

「いや、俺いいとこなしだし……そろそろ挽回したいんですけど。」

 

「どーせ最後に五人対戦あるんだ、そっちで……いや待てよ……」

 

考え込むナツ。マルクも、スティング達も呆然と見ていた。やがて一つの考えに至ったのか、マルクの肩を叩く。

 

「よし、頑張れマルク。」

 

「……一応、何考えたか聞かせてもらっても?」

 

「最終日の方が、いろんな奴ら倒せて俺の方が強ぇってことを証明できるだろ?」

 

「……存外、分からなくもない理由ですね。」

 

苦笑いをするマルク。軽くため息をついてから、マルクはナツの前に出て、剣咬の虎の三竜を見る。

 

「なら……来いよ剣咬の虎。俺一人に勝てないようじゃ……ナツさんの雷炎竜どころか、普通のナツさんにも勝てないぞ?」

 

「一人で、俺達三人と戦うだと……?ふざけやがって……!ナツさんとやらせろ!!」

 

「お前に用はない……ガジルとやらせろ。」

 

「だったら、俺を倒してみろよ。じゃないとナツさんには勝てないぞ。」

 

マルクの挑発に、再びドラゴンフォースを発動させるスティング達。そして、先程と同じようにスティングから仕掛ける。

 

「ドラゴンフォースは竜と同じ力!!この世に、これ以上の力なんてあるはずねぇんだ!!」

 

魔力を込めて殴り掛かるスティング。先程のと同等レベルの魔力の質、量。だが、()()()()()()()()()()

 

「……」

 

「なっ……おれは、この力で白竜(バイスロギア)を……殺したんだァ!!」

 

「力だけに固執してるから負けるんだ。確かに、お前らのその力は強いよ……けどさ━━━」

 

ローグがマルクの背後に周り、攻撃を仕掛けようとしていた。ほぼそれと同時に、マルクはスティングを殴り飛ばしていた。

 

「力に頼り切りすぎなんだよ。だから最初、あれだけボコボコにされた。」

 

「影竜の咆哮!!」

 

「……すぅーっ!!」

 

息を大きく吸い込み、マルクはローグのブレスを吸収しきる。マルクの後ろから、クォーリが仕掛ける。

 

「魔龍の咆哮!!」

 

「な、にぃぃ……!?」

 

クォーリはそのまま、マルクのブレスで吹き飛ばされる。

だが、即座に空中で身を翻して、別の魔法を使う。

 

「氷竜の領域!!スティング!ローグ!!」

 

「「おう!!」」

 

空間が凍りつき、氷の柱などが無造作に並んでいく。スティングは光となり、ローグは影となってその氷の空間を自由自在に動き回る。

 

「氷は光を屈折、時に反射させる!そして、氷の柱の影は無造作に存在している!受けろ!!俺たちの必勝パターン!!」

 

「……なるほど、普通ならこれはかなり不味いな。」

 

「舐めたこと後悔させてやる!!もどき!!」

 

「けど、俺は言ったよな━━━」

 

ローグが背後から、スティングが自身の魔法も反射と屈折を利用して、背面以外の全面から攻撃を仕掛ける。

 

「『力に頼り切りすぎ』ってさ。」

 

「な……にぃ!?」

 

途端に、スティング達のドラゴンフォースと、魔法がかき消されるようになくなる。

 

「お前らの攻撃のおかげで随分と……魔力が確保できた。」

 

「確保、だと……?」

 

「おう……さっきまで殴っていたのと、ブレスやらなんやらを食っていたおかげでな。

魔法が使えない空間、作れるんだよ俺。かなり消耗が激しいから、あんまり使わないがな。それに使えてもほぼ一瞬……もう使えない。」

 

「っ……そんなに俺達の素の力を見てえって言うんだったら、素の力だけでてめぇを倒してやる!!ローグ、クォーリ!!」

 

スティングの声が響く。ドラゴンフォースも何も使わない対決。スティングはマルクに殴り掛かる。

だが、マルクは問題なくガードし逆に殴り飛ばす。

ブレスを飛ばされてもその魔力を喰らい、逆にブレスで返す。凍らされても、影からの一撃を加えられかけても、その度に反撃をして吹き飛ばしていく。

 

「……まだだ!!まだ終わらねぇ!!ローグ、クォーリ!!」

 

ボロボロになった3人は、三角形のように並ぶ。何かをするつもりなのは、分かっていた。

何が来てもいいようにと、滅竜奥義の準備だけを行う。

 

「俺たちは最強だ!!最強の滅竜魔導士なんだ!!だから、負けるわけがねぇ!!氷面鏡!!」

 

クォーリの前に丸い氷が現れる。等間隔で何枚も。

 

「そうだ、負けられねぇ……レクターの為に!!」

 

「こんなところで、負けられん……!」

 

スティングとローグの魔力が混ざり始める合体魔法(ユニゾンレイド)。二つ以上の異なる魔法が合わさることである。

 

「「「聖影竜閃氷牙!!」」」

 

スティングとローグの魔力が、クォーリの氷にあたる。途端に氷の幅に魔法が巨大になり再びそれよりも大きな氷にぶつかり通過する頃には巨大になる。

それらを繰り返して、二人の魔法はとんでもない大きさになっていた。

 

「……強かったら笑っていいのか。勝った奴が、負けた奴を笑っていいのか。

見せしめで、痛めつけるのが強者だって言うんなら……()()()()()()()()()()()()!!」

 

二人の魔法に対して、マルクもまた自身の滅竜奥義を行う。

 

「滅竜奥義!!紫電魔皇殺!!」

 

マルクの腕から伸びた、ムチのようにしなる魔法。しかしこれはモノを切り裂けるムチ。

合体魔法を、いとも簡単に切り裂いて、その奥にいる三人を切り裂く。

 

「が……」

 

「そん、な……」

 

「ぐ、が……」

 

三人は倒れる、マルクの前に。今ここに妖精の尻尾対剣咬の虎の対決は幕を閉じたのであった。




詰め込んだら長くなりましたね……因みにナツは端っこに移動して、見学してました。

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