「
「四日目のバトルパートはトリプルバトル何じゃろ?」
「3対3ですか!楽しみですね!!ありがとうございます!!!」
「今回は既に対戦カードも公表されています。」
そう言って映し出される組み合わせ。
そして
この三つの組み合わせとなっていた。
「やはり注目は一触即発の妖精の尻尾対剣咬の虎でしょうか?」
「さっきはどうなるかと思ったよ。」
「熱かったです!ありがとうございます!!」
「さぁ、その新・妖精の尻尾が姿を現したぞー!!」
扉から出てくる妖精の尻尾。出てない皆の思いと、傷つけられたものの思い。
それらを背負った最強のメンバー。
「会場が震えるー!!今ここに……妖精の尻尾参上ーっ!!
一日目のブーイングが嘘のような大歓声!たった四日でかつての人気を取り戻してきたー!!」
ナツ・ドラグニル、グレイ・フルバスター、エルザ・スカーレット、ラクサス・ドレアー、ガジル・レッドフォックス……この5人が、妖精の尻尾の新しいチームである。
「━━━燃えてきたぞ。」
大魔闘演武四日目、トリプルバトル第一試合。
一夜&ギリギリで怪我が治ったイヴ&ウサギの着ぐるみ対バッカス&ロッカー&ノバーリの対決である。
「さて、ついに君を解放する時が来たよ。」
「あ、ウサギちゃんと中に人いたんだ……」
「ずっと出なかったもんねぇ……」
青い天馬にいた謎のウサギの着ぐるみ。ルール上、青い天馬のギルドに所属していないものだった場合失格になってしまう。
だが、競技にもバトルにも特に参加していなかったため、招待は謎に包まれていた。
「見せてやるがいい……そのイケメンフェイスを。」
そして中から現れたのは……
「えーっ!?」
「あ、あれって……エクシード!?一夜さんがエクシードにいたの!?」
「……よく思い出してみろ、
「あっ!!」
リリーに言われて思い出すマルク。『そういえばいた』と今思い出したのだが。
「ダボルイケメンアタック。」
「危険な
会場が悲鳴をあげた。エルザが、一夜フェイスが二つあることに倒れかけているのを尻目に、泣いたり吐いたりする人もちらほらいた。
かく言うパピーチームも引いていた。
「私と私の出会い……それはまさに運命だった。」
「ウム……あれはある晴れた昼下がり━━━」
「だっはぁー!!」
「メェーン!!」
話そうとした、その隙を突いてバッカスがエクシードの一夜……ニチヤを殴り飛ばす。
話させるわけ無かった、あるわけがないのだ。
「何をするか!?」
「一夜さん!そいつ戦えるの!?」
「当たり前だ!私と同じ顔をしている!!つまり私と同じ戦闘力!」
しかし、一夜の期待も虚しくニチヤはバッカスの一撃で沈んでしまっていた。
「……くたばってるじゃねぇか!!」
「ウソーン!?」
「俺らにはもうあとがねぇからよ!!」
「勝たせてもらうぜワイルドに!!」
イヴにノバーリ、一夜にロッカーが襲いかかる。既に負け続きのパピーは、これ以上負けるわけにはいかないのだ。
「ウサギの正体いきなりダウーン!!」
「これで3対2……」
「ドリルンロックフォーユー!!」
「酔・劈掛掌『月下』!!」
「オラァ!!」
パピーチームの攻撃がペガサスチームを追い詰めていく。雪の魔法を使うイヴも、近接メインであるパピーの猛攻に、手も足も出ていなかった。
「一夜……」
「ニ、チ、ヤ……」
ボコられる一夜。しかし、倒れない。バッカスの一撃を何度も何度も受けているにも関わらず、倒れる気配を見せなかった。
「……君に、捧げよう……勝利という名のパルファムを……!」
「一夜さん……!?」
膝をつき、肩で息をするイヴ。それ以上にボロボロになっている一夜は、懐から何かを取り出す。
その直後に、一夜の体は急激に大きくなり、筋肉質になっていく。当たり前というべきか、そのせいで上半身の服が全て破けていった。
「な、なんでぇ!?急にワイルドに…」
「こいつぁ力のパルファムだ!!」
「食らうがいい!!これが私のビューティフルドリーマー微笑み……スマーッシュ!!」
一夜の一撃で、吹き飛ばされる3人。しかし一夜の微笑みを見た瞬間、青い天馬のメンバー以外の者達は、一様に引いていた。
パピーの3人よりも、何故か観客の方が精神的なダメージを与えられていたのだ。
「ダウーン!四つ首の仔犬ダウーン!!勝者青い天馬!!」
「大丈夫かねニチヤ。」
「メェーンぼくない……」
絵面が強烈過ぎたために、他に印象を受けている者はいなかったが、バッカスはエルザと互角を張れるほどの強者である。
そのバッカスと、他2名をほぼ一撃でねじ伏せている事実に、やはり脅威を感じる者達はいた。
「いやー、いい試合でしたね。」
「そ、そうかね?」
「とってもキモかったです!ありがとうございます!」
そのまま続けて第二試合。
リオン&ユウカ&シェリア対カグラ&ミリアーナ&リズリーの対決。
「重力舐めちゃあいけないよ!!」
「そっちこそ!!天空は重力なんかに縛られないんだから!!」
「こっちの波動も、忘れてもらっちゃあ困るぜ。」
ユウカが魔法を無効化する波動を放ち、リオンが造形魔法で攻め立てる。シェリアは回復支援をしつつ、攻撃も当てていく。
「その縛る縄も俺とシェリアには通じねぇみたいだな。」
「むーっ!!」
「━━━ならば、斬るのみ。」
しかし、どのようなコンビネーションをしようとも、カグラがそれらをすべて切り伏せていく。
波動をギリギリで避け、風を切り裂き、氷を刻んでいく。
「チイッ!!アイスメイク━━━」
「遅い!!」
「リオン!!」
「下がれ!!」
リオンの懐に入ったカグラ。その一刀をリオンに向けるその瞬間に、シェリアが天空魔法で無理矢理吹き飛ばす。
援護をされないように、ユウカが波動でリズリーとミリアーナの魔法を無理やり封じる。
「……あのカグラって人、私の魔法が当たる直前に……」
「下がったな……なるべく立て直しを早くできるように。」
どれだけ策を弄しても、カグラにはすべてが無意味。そう思えるほどにカグラは圧倒的に強かった。
「……本気、出すしかないよね。」
「あぁ……それくらいやらねば、届くかどうかもわからん。」
「分かった!!滅神奥義━━━」
シェリアが魔法を発動させる直前にユウカ、リオン、カグラがそれぞれ飛び出す。
「邪魔はさせん!!アイスメイクドラゴン!!」
「波動ブースト!!」
ドラゴンの形を模した氷が、カグラの道を阻む。その間にユウカが波動ブーストを他二人に当てようとする。
だが、やはり二人同時に波動の中に入れるというのは至難の技であり、ミリアーナが猫のように軽やかに波動から抜け出した。
「縛られちゃえ!!」
「しまっ━━━」
「ユウカ!!」
縛られるユウカ。声こそかけたものの、リオンの視線は常にカグラに向けられていた。
「このような氷で……」
「ちっ……渾身の造形だったんだがな……!」
やはり、カグラは抜刀することなく氷を切り裂いた。この一瞬の間でユウカが戦闘不能になってしまったが、それでも一瞬の時間は稼げていた。
「天ノ叢雲!!」
ウェンディとの戦いの時に見せた奥義。とんでもない魔力の塊が振り抜いた直後のカグラに襲いかかる。
リズリーの重力魔法も、ミリアーナの縄も届かない。『カグラに攻撃が届いた』とラミアチームは確信した。
「……ふっ!!」
「嘘……!?」
だが、シェリアの渾身の攻撃もカグラには届かなかった。天ノ叢雲は、無理矢理体を捻って回転させて、刀を魔法に当てたカグラの一撃により切り裂かれていた。
「終わりだ━━━」
「っ!!」
迫り来るカグラの一撃が、シェリアにあたるかと思われたその瞬間、試合終了の合図が鳴り響く。
「30分経過!お互いに決着がつかず!!この試合はドローとなります!!」
━━━シェリアの額ギリギリで止まっている刀。鞘に入れてあるとはいえ、その一撃は恐怖させるには十分なものだった。
「やっぱつえぇな……カグラ。」
「あぁ……だが、まだ本気を出してるとは思えん。」
「あの刀……抜かないであれだけ強いのなら、抜いたらどうなっちゃうんだろ……」
悔しがるラミアチーム。カグラが本気を出してない上でのドローは、完全な敗北と言っても過言ではなかった。
「毎年そうさ……あの刀を抜かない時点で本気じゃねぇ……カグラが本気になったとこなんて誰も見たことねーんだ。」
ユウカの悔しげな声が、ラミア達によりカグラの強さを確信させるのであった。
「興奮冷めやらぬ会場ですが、次のバトルも目が離せないぞー!!」
実況の声とともにフィールドにある入口に、これから戦う二つのギルドの紋章が掲げられる。
「七年前最強と言われていたギルドと!現最強ギルドの因縁の対決!!妖精の尻尾ナツ&ガジル&マルク!
対剣咬の虎スティング&ローグ&クォーリ!!」
フィールドに並び立つ6人の魔導士。
火の
鉄の滅竜魔導士、ガジル・レッドフォックス。
魔を喰らう滅竜魔導士マルク・スーリア。
白の滅竜魔導士スティング・ユークリフ。
影の滅竜魔導士ローグ・チェーニ。
氷の滅竜魔導士クォーリ・クーライ。
「この6人は全員が滅竜魔導士!!全員が竜迎撃用の魔法を持っているー!!」
「待っていたぜこの瞬間を……」
「ついに激突の時ー!!勝つのは妖精か!?虎か!?戦場に6頭のドラゴンが放たれたー!!夢の滅竜魔導士対決!!ついに実現!!間もなく試合開始です!!」
最高潮とも言えるべき盛り上がり、それに反してフィールドにいる滅竜魔導士達は皆静かに佇んでいた。
「試合━━━」
ただ相手を見据えて、滅竜魔導士達は睨み合う。そして、その長い一瞬を終えるかのように━━━
「開始ィ!!」
「行くぜぇ!!」
「おう!!」
試合開始の合図とともに身構えるセイバーの滅竜魔導士達。しかし、身構えた時点でもう既に遅かった。
「がっ!?」
一瞬で詰め寄った、妖精達がそれぞれ殴り飛ばしたのだ。ナツはスティングを、ガジルはローグを、マルクはクォーリをそれぞれ相手取って。
驚く観客達、だがこれでは終わらない。
「ふん!」
ナツは更にそこからスティングを蹴り飛ばし、ガジルは殴り落としてから、蹴り上げて吹き飛ばす。
マルクはそのまま詰め寄って追加で拳を叩き込む。
「ダララララララァ!!」
「ぐっ……!?」
声を荒らげながら、ガードしている腕に、空いている腹に、ガードの隙間から顔面に、魔力を込めてひたすら殴り込んでいく。
「白竜の咆哮!!ヤッハァ!!」
「レーザー!?」
白竜の咆哮は白いレーザー、自在に曲げられるその技で、ナツ諸々他二人を焼き払う算段だった。
「うぉっと!!」
「こんなレーザー如き!!」
ガジルは避け、マルクはそのまま防ごうとした。だが、その隙をついてローグとクォーリが行動を起こす。
「影竜の斬撃!!」
「氷竜の領域!!」
ローグはガジルの後ろから攻撃を当てようとし、クォーリは氷を作り出してレーザーを屈折、反射を行ってマルクの背中にレーザーを当てる。
「鉄竜剣!!」
「っ!」
「おらぁ!!」
だが、ガジルはローグの攻撃を自慢の硬度で防ぎ、ナツの方へ投げ飛ばした。
そして、マルクの方も━━━
「……だから、効かねぇよ!!」
「なっ!?」
「魔龍の翼撃!!」
レーザーに対してビクともしないマルクに、完全に虚を突かれてクォーリはスティングの方へと吹き飛ばされる。
「ローグ!!クォーリ!!」
「おおおおおおおおおお!!」
ローグの顔面に拳を入れて、そのままスティングの所まで走っていくナツ。ほぼ同時に、クォーリの方もスティングに迫っていた。
「火竜の翼撃ィ!!」
トドメにナツの一撃が入る。何とか体勢を立て直して、フィールドに立ち上がる3人だったが、誰がどう見ても圧倒的だった。
「こ、これはどういうことでしょうか!?あのスティングとローグが!!フィオーレ最強ギルドの滅竜魔導士達が押されているー!!」
「やっぱつえぇなぁ……こうじゃなきゃ……」
「ガジル……」
「もどき如きが……」
三人を見据えて、いまいち納得のいってない表情をするナツ。それはガジルもマルクも同じだった。
「お前らその程度の力で本当にドラゴンを倒したのか?」
「倒したんじゃない……殺したのさ、この手で。」
「自分の親じゃなかったのか?」
「アンタには関係ねえ事だ……今から竜殺しの力を見せてやるよ。」
3人に魔力が溜まり始める。スティングは光り輝く魔力、ローグは影の如き黒く揺らめく魔力、クォーリは冷気のように冷たい魔力。
「ホワイトドライブ……」
「……シャドウドライブ。」
「アイス、ドライブ……!!」
「……行くぜぇ…!」
白く輝くスティング、影のオーラをまとったローグ、魔力によりそれだけで足元が凍りついていくクォーリ。
ただならない力を発し始める三人。トリプルバトル最終戦は、まだ始まったばかりである。