FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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四日目競技パート

「さぁ始まりました。四日目競技パート。」

 

「水中相撲といったトコかね。」

 

「楽しみですね、ありがとうございます。」

 

大魔闘演武四日目。ゲストには、シェラザード劇団の座長ラビアンを迎えて始まった。

海戦(ナバルバトル)、それが今回の競技である。

ルールは単純明快、フィールドの中心に作られた巨大な水の球、そこから出たら失格であり、最後まで残った者が勝者というルールである。

但し、最後に二人だけ残った場合特殊ルールが追加される。

『5分間ルール』最後の二人になってからは、二人になった直後の5分の間に場外に出てしまった者は最下位となるルールである。

 

「Bチームからはジュビアさん、Aチームからはルーシィさんですか…」

 

「水をそのまま操れるジュビアと、アクエリアスのいるルーシィ……さて、これは面白い勝負になりそうだ。」

 

「けど……」

 

カナとマルクは、巨大水球を見る。各チームから1人ずつの為、当然剣咬の虎(セイバートゥース)も参戦する。しかも、今回はリザーブ枠で入っている……最強の5人と言われている一人が参加していた。

 

「出ました!ミネルバー!!この大歓声ーっ!」

 

「剣咬の虎の最強の5人が揃った訳だね。」

 

「ありがとうございます!!」

 

剣咬の虎最強の5人が一人、ミネルバ。どんな魔法を使うかはまだわからないが、警戒しておいて損は無い相手だった。

 

「……にしても、この絵面はなんとかならなかったのか……!」

 

「あんたには刺激が強すぎるねぇ。一人除いてみんな女子だ。」

 

ミネルバ、ルーシィ、ジュビアを除いた3人の参加者。

重力魔法の使い手、人魚の踵(マーメイドヒール)リズリー。

天空の滅神魔法の使い手、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)シェリア。

ミラと同じような変身魔法を使う、青い天馬(ブルーペガサス)ジェニー、イヴと交代である。

そして場合によっては、今回嫉妬されかねない四つ首の仔犬(クワトロパピー)ロッカー……唯一の男である。

以上7人が今回の参加者である。

 

「ルールは簡単!水中から出たら負け!!ナバルバトル開始です!!」

 

「早速だけど……みんなごめんね!開け!宝瓶宮の扉!!アクエリアス!!」

 

「オォオオオオ!!水中は私の庭よォ!!」

 

バトル開始の合図と共に、ルーシィはアクエリアスを呼び出す。アクエリアスは水を操れる星霊なので、今回に適しているのである。

 

「させない!!水流台風(ウォーターサイクロン)!!」

 

しかし、アクエリアスが水を操れるように、ジュビアもまた水を操れるのだ。

二つの水流がぶつかり合い、周りの者達は混乱する。流れが不規則になっているからだ。

 

「ジュビア!!」

 

「恋敵!!」

 

「なんだいこれは……!」

 

「互角!?」

 

「だったら今の内に……まず1人!!」

 

「ワイルドォ!!」

 

水流が不規則になっているに便乗して、ジェニーはロッカーを水中から蹴り出す。よってここで四つ首の仔犬は失格。

 

「そのあいだに貴方も!!」

 

「ぽっちりなめちゃいけないよ!!」

 

シェリアも、リズリーを出そうとしたが、重力を操るリズリーはそれを難なくかわす。

 

「あれ、アクエリアスさん消えましたよ。」

 

「デートだろ?あれ、スコーピオンと出来てるし。」

 

「スキあり!!」

 

カナの言う通り、デートの為にアクエリアスは勝手に帰っていったのである。

その隙を突かれて、ルーシィはジュビアによって吹き飛ばされる。

 

「バルゴ!アリエス!!」

 

「セクシーガードです!姫!」

 

「モコモコですみませーん……」

 

アリエスのモコモコと、バルゴの支えでなんとか水球から出ずに済んだルーシィ。

その間も他のところで乱戦が行われていた。

 

「水中の激戦が続いています!!頑張れっ!シェリアたん!妖精の尻尾(フェアリーテイル)Aよ!何故ウェンディたんを出さなかったのか!!」

 

「うるさい!!」

 

「あ゛?」

 

「マルク、気持ちはわからなくもないけど、とりあえず試合を見ような。ウェンディは誰が見ても可愛いって事だから。」

 

カナに窘められつつ、試合に視線を戻すマルク。そこで、試合が一気に動いた。

 

「全員纏めて倒します!水中でジュビアに勝てるものなどいない!!第二魔法源(セカンドオリジン)の解放により身につけた新必殺技!

届け!愛の翼!!グレイ様ラブ!!」

 

ジュビアはハートマークを撒き散らしながら、強大な水流を起こす。どこからかグレイの叫び声が聞こえてきたが、これは流石に恥ずかしいだろうと、この場にいる全員が思っていた。

 

「姫!しっかり!!」

 

「モコモコガード全開です!!」

 

ルーシィはなんとかその水流に流されないで済んでいたが、ジェニー、リズリー、シェリアの3人は流れを止めることが出来ずに、そのまま水球の外へと弾き出された。

 

「なんと!ジュビアがまとめて3人も倒してしまったー!!水中戦では無敵の強さだジュビアー!!」

 

「やるじゃんジュビア!」

 

「流石に水中戦ではかなり━━━」

 

「え?」

 

しかし、直後にジュビアは何故か水球の外に出てしまっていた。自分で作った水流に流される……というヘマは犯していない筈なのに。

 

「大活躍でしたが残念!場外!!しかしそれでも3位!6pです!残るはミネルバとルーシィの二人のみ!さぁ……勝つのはどっちだ!

剣咬の虎か、妖精の尻尾か。ここで5分間ルールの適用です。今から5分間の間に場外となった者は最下位となってしまいます。 」

 

「何のためのルールかね?」

 

「最後まで緊張感を持って見るためですよ!ありがとうございます!」

 

ミネルバ、今の今までほとんど動くことのなかった魔導士。しかし、ジュビアを一瞬で外に追いやったであろう彼女の魔法は、やはり侮れないものだろう。

 

「妾の魔法なら、一瞬で場外にすることも出来るが……それでは興が削がれるというもの。

耐えてみよ、妖精の尻尾……!」

 

ミネルバが手を動かすと、ルーシィの隣に空気の塊ができる。それが熱の塊だと理解するのに、さほどの時間はいらなかった。

それは、ルーシィの隣で爆ぜてルーシィにダメージを与える。

 

「きゃあっ!?」

 

「今のは……熱の塊……けど、温度を操る魔法って分けてもなさそうだ。」

 

「うああっ!!」

 

次にルーシィを襲ったのは、熱とはまた別の魔法。思い一撃を受けたルーシィは頭から血が出てくる。

 

「ルーシィ!!」

 

「熱かと思えば今度はまた別の一撃……あの魔法、一体……」

 

「今度は重い……鉛のような……やられてばかりじゃいられない!!あれっ!?私の鍵が……!?」

 

ルーシィは星霊を呼び出そうと、鍵に手を伸ばす。しかし、その鍵はいつの間にかミネルバが手に持っていた。

 

「きゃあああ!!」

 

「ルーシィ!このまま場外に出ると最下位だー!!」

 

吹き飛ばされたルーシィ、水球ギリギリでなんとか止まり、出ることだけは回避した。

だが、耐えてもその直後にまたミネルバの攻撃が襲いかかる。

 

「あたしは……どんな攻撃も耐えてみせる……!」

 

ミネルバの魔法によって、一方的に傷ついていくルーシィ。鍵を取られてしまえば、彼女は一切の魔法を使うことは出来ない。

得意のムチも、支えのない水中では重荷になるだけだ。よって、耐えることしか出来なかった。

 

「そろそろ場外に出してやろうか……」

 

「こんな所で止めたら……ここまで繋いでくれたみんなに、合わせる顔がない……!あたしは、みんなの気持ちを裏切れない。だから絶対に諦めないんだ。」

 

ルーシィを場外に出そうとしたミネルバ、ここで攻撃の手を止める。そして、そのまま時間だけが過ぎていく。

 

「……ど、どうしたのでしょう?ミネルバの攻撃が止まった……そのまま時計は5分経過!後は順位をつけるだけとなったー!!」

 

「っ!?」

 

「マルク、いきなり顔を引きつらせてどうし━━」

 

ミネルバが、5分間ルールが終了した直後に攻撃を仕掛け始めた。しかし、先程の比にはならないほどの激しい攻撃。

 

「ああああ!!」

 

マシンガンのような激しい攻撃。ルーシィの体は、先程以上の速度で傷ついていく。

 

「頭が高いぞ妖精の尻尾!我々をなんと心得るか!!我らこそ天下一のギルド!!剣咬の虎ぞ!!」

 

「きゃあああ!!」

 

吹き飛ばされるルーシィ。誰もが、そのまま場外に行くと確信しただろう。

だが━━━

 

「これは流石に場外……消えた!?」

 

ルーシィは姿を消したかと思えば、ミネルバのすぐ側まで移動していた。無論、ルーシィの意思ではない。

 

「場外へ吹っ飛ばされたルーシィ!何故かミネルバの前にー!!」

 

「あいつの魔法かい!?何だってあんなことを……」

 

「………痛めつける為ですよ。ルーシィさんの言葉を聞いて、勝つのではなく痛めつけることを優先した……!」

 

何が彼女の琴線に触れたのか、それは分からない。だが、彼女に取ってルーシィの言葉それほど面白くないものだったのだろう。

 

「ぐがっ!!」

 

「ははははっ!」

 

ミネルバの笑い声、そして痛々しい音が響く。それがひたすら続いていく。

ルーシィはただ傷ついていくだけ。だが、それでも……彼女は耐えようとしていた。既に、意識のほとんどが無くなっているとしても。

 

「こ、ここでレフリーストップ!競技終了!!勝者ミネルバ!!剣咬の虎やはり強し!!

ルーシィ…さっきから動いていませんが、大丈夫でしょうか!?」

 

首を掴み、水球の外へ出すミネルバ。そこにはルーシィをいたぶったことに対する感情の一切を持ち合わせていない笑顔を、観客に向けていた。

 

「ルーシィ!!」

 

「ルーシィさん!!」

 

Aチームが飛び出し、それに続くかのように観客席から何人かが飛び出そうとする。

最早、競技どころではなく剣咬の虎に対する怒りだけで頭がいっぱいになっていた。

 

「行くなっ……!」

 

「けどマスター!!あいつら━━━」

 

「……今は、行くな。」

 

皆を止めるマカロフ。しかし、その顔は完全にキレていた。その上で皆を止めていた。

 

「何て事するんだコノヤロウ!!」

 

「大丈夫か!?しっかりしろ!!」

 

ミネルバ以外が、ルーシィに駆け寄る。シェリアとウェンディが治療に回るが……

 

「その目は何か?妾はルールに則り、協議を行なったまでよ。むしろ感謝して欲しいものだ。2位にしてやったのだ……そんな使えぬクズの娘を。」

 

ナツが殴りかかろうとする……が、それをエルザが止める。それと同時に他の剣咬の虎のメンバーが止めに入る。

 

「おーっとこれは……両チーム一触即発かー!?」

 

「……最強だか、フィオーレ一だか知らんが……一つだけ言っておく。

お前達は一番怒らせてはいけないギルドを敵に回した……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室。そこではベッドでルーシィが眠っていた。そして、AチームBチームの両方がそこにはいた。

 

「ウェンディのおかげで命に別状はないよ。」

 

「いいえ、シェリアの応急処置が良かったんです。」

 

「あいつら……!」

 

「言いてぇことはわかっている……」

 

目に見えて怒りを見せるナツ。しかし、その気持ちは皆同じものだった。

 

「う……」

 

「ルーシィ!」

 

「ルーシィさん!?」

 

「みんな……ごめん……」

 

謝るルーシィ、それはまた負けたことに対する謝罪なのだろう。だが、それを咎めるものは誰もいない。

 

「何言ってんだ2位だぞ?8pだ。」

 

「あぁ、よくやった。」

 

「か、鍵……」

 

「ここにあるよ。」

 

「良かった……ありがとう……」

 

ハッピーから星霊の鍵を受け取り、それで安心したのか眠りにつくルーシィ。

だが、他のメンバーは未だ気持ちが晴れなかった。

 

「眠っちゃったみたいね……」

 

「なんか、こう……モヤッとするねあいつら!!」

 

「……AチームBチーム全員集まっとったか。丁度よかった。」

 

医務室にやってくるマカロフ。どうにもルーシィの様子を見に来ただけではなさそうなその雰囲気に、皆息を飲んだ。

 

「これが吉と出るか凶と出るか……たった今AB両チームの統合命令が運営側から言い渡された。」

 

「何!?」

 

「ABチーム統合だと?」

 

「あ……そっか、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)がいなくなったから。」

 

「そういう事じゃ……奴らがおらんくなったから、バトルパートが奇数になる……それは困るというので、二チームいる妖精の尻尾を統合してくれとな。」

 

マカロフからの説明により納得する一同。しかし、そうなると色々と問題が起こる。

 

「点数はどうなるの?」

 

「低い方……つまりAチームの35pじゃな。」

 

「リザーブ枠はどうなるんです?Aチームはウェンディ、Bチームは俺とカナさんでしたけど……」

 

「それはこちらでまた新たに決めて良いそうじゃ……まぁ、あくまでもリザーブとして参加したメンバーと、ABのメンバーの内の誰かに絞られるらしいが。」

 

シャルルとマルクからの質問で、ある程度の疑問は解消されたのか、これ以上質問する者はいなかった。

 

「けどよ、今から五人決めても残る種目はこれからやるトリプルバトルだけなんだろ?」

 

「いいや、明日の休みを挟んで最終日、五人全員参加の戦いがあるはず。慎重に選んだ方がいいよ。」

 

「俺は絶対にルーシィの敵を取る!仲間を笑われた!!俺は奴らを許さねぇ!!」

 

「……それはみんな同じ気持ちです。奴らには……一発殴らないと気が済まない。」

 

こうして、AB両チームが統合されて四日目のバトルパート……三人が戦うトリプルバトルが始まるのであった。


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