FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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リュウゼツランド

大魔闘演武三日目、結果としてAチームBチームが競技パート1,2フィニッシュで決めてその日は終了した。

そして、大魔闘演武も折り返し地点に来ているということなので、その日の夜の酒場で、レビィからみんなに提案があった。

 

「プールだと?」

 

「わぁ!」

 

「近くにあるの?」

 

「フィオーレ有数のサマーレンジャースポット『リュウゼツランド』ってところがね。」

 

「行くしかねーだろー!」

 

「あちぃもんな。」

 

「プール……」

 

各々が反応を示すなか、妖精の尻尾(フェアリーテイル)総出で夜のプールに赴くことになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたー!」

 

「広いですね。」

 

「んー、気持ちいいな。」

 

ただのプールではなく、サマーレンジャースポットというだけあって、リュウゼツランドはかなり大きいプール施設であった。

人工的に波を作り出すプールや、ウォータースライダー、さらにプールから直接繋がっている水族館まで兼ね備えている。

そして何より、とんでもない広さを持っていた。

 

「……確かに広いみたいですね、ええ。いえちゃんと見てますし見えてますよ。」

 

「あんた目隠ししてるのに、見えてるわけないでしょう……」

 

マルクは目に布を巻き付けて視界を完全に閉ざしていた。一応、水着は着ているものの、プールに来てまで目隠しする必要性はあるのか、という話である。

 

「そんなに恥ずかしいのなら、お前は残っていた方が良かったんじゃないか?」

 

「……ウェンディに危険が迫らないように、です。プールにも事故はありますから。」

 

「ぞっこんね〜」

 

「……」

 

ウェンディはマルクに黙って近づいて、彼がつけている目隠しの結び目を解く。

当然、目隠しは外れてマルクの視界は明るいプールのライトと、水着を着ている人々で埋め尽くされる。

 

「なっ!?う、ウェンディ!?」

 

「……ちゃんと着てるんだし、見てくれないとちょっと寂しいかも。」

 

「は、はい……」

 

お互い顔を真っ赤にさせながら、一緒に歩き出す二人。そんな二人を見てルーシィとエルザは、密かにニヤニヤと笑っていた。

 

「ウェンディー!」

 

「あ!シェリア達も来てたの!」

 

シェリア・ブレンディ。蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の魔導士であり、天空の滅神魔法の使い手でもある。

ウェンディとバトルパートで戦い、引き分けの後に友達となった。

 

「今日はいい戦いだったね、怪我大丈夫?」

 

「はい!おかげさまで!」

 

「また敬語になってる。」

 

「あ……癖で、つい……」

 

友人らしく、和やかに会話する二人。するとシェリアはマルクの存在に気づいたのか、マルクの方にも視線を向ける。

 

「……ウェンディの『愛』してる人?」

 

「ぶはっ!?」

 

「ち、ちちち違うよ!?え、えっと、違わないけどそうじゃなくて……!」

 

シェリアの言葉で、真っ赤になるウェンディとマルク。シェリアはニコニコしながら二人を見ていた。

 

「愛情は色々あるから、そこまで焦らなくでいいんだよ?ほら、ウェンディとあなたも一緒に向こうで遊ぼ?」

 

「う、うん!」

 

「あ、あぁ……ん?」

 

赤面していたマルクだったが、一瞬冷静な顔になったかと思えば、小さく魔力の塊を生み出して、よくわからない方向へと投げた。

 

「マルク?どうしたの?」

 

「ん?いや、下心ありで見ていた人をちょっと狙っただけだ。」

 

「「……?」」

 

シェリアとウェンディは顔を見合わせて、疑問符を浮かべていた。ウェンディの頭の中に、ウォーレンの通信の魔法で聞こえてくるウォーレンの悲鳴が何か関係しているのかと、ウェンディは気になったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて自己紹介、俺の名前はマルク・スーリアって言うんだ。マルクとでもなんとでも呼んでくれ、よろしくな。」

 

「よろしくマルク、私の事もシェリアでいいよ。でもなんで天井向いてるの?」

 

「ん、いや気にしないでくれ。天を仰ぎたくなる性格なんだ。」

 

「……」

 

シェリアの体を見て、自分の胸に手を当てるウェンディ。水着としては柄を除いて、ほとんど同じビキニのような水着を着ている二人だが、スタイルの違いが如実に現れていた。

簡単に言えば、スタイルの格差社会である。

 

「やっぱりお胸なんですか。」

 

「う、ウェンディ?なんか戦った時より迫力があるんだけど?」

 

ジト目でシェリアの胸を凝視するウェンディ。流石に恥ずかしいのか、シェリアは自分の胸を隠していた。

 

「そ、そう言えば!マルクはどんな魔法使うの!?」

 

「え、あぁ…俺も滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だよ。魔龍……魔法の魔力とかを食べるんだ。」

 

「……魔力、を……?」

 

少し気まずくなり、マルクに話を振るシェリア。だが、マルクの言ったことに疑問を抱いたのか、首を傾げていた。

 

「どうしたの?」

 

「……ううん、随分珍しい魔法もあるんだなぁって。属性が分からないのって、珍しいね。」

 

「属性……確かに、深く考えたことなかった。」

 

「でも私は神様を殺せる魔法だし……珍しさで言えば変わらないのかな。」

 

シェリアはそれで解決していたが、改めて気付かされた自分の魔法の異質さに、マルクは首を傾げていた。

しかし、今は楽しい時間なのである。難しいことは後で考えようとして、一旦頭の隅に追いやったのであった。

 

「あ、ボート借りてこようよ。レンタルできるんだってさ。」

 

「じゃあ俺が行ってくるから、二人はここで遊んどいてくれ。どんなボートがいい?」

 

「バナナのとか楽しそうだし、それお願いできる?」

 

「ん、バナナね。」

 

そう言ってマルクは一旦上がって、店にまで歩いていく。二人が乗れるくらい大きなのを見つけて、それを借りようと決めてから店員に話しかける。

 

「すいませーん、このバナナボート貸して……」

 

「い、いいいいいらっしゃい……ませ……!」

 

「……大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の奴が、なんでこんなところに?」

 

そこにいた店員は、大鴉の尻尾のメンバーであり、マルクを誰も見えないところで襲ってきた本人。マホーグ・オロシであった。

 

「バ、バイト……お、お城の人が……お、教えてくれた……から……」

 

「……まぁいいや、今ここで暴れない限りは手を出すつもりないし。えっと、バナナボート。」

 

「……ひ、一つだけ……聞かせて?」

 

「何だよ。」

 

マホーグは、怯えながらもマルクの目を見る。マルクも、それに唯ならぬ雰囲気を感じて見返す。

 

「な、なんで……あの時()()()()()()()()()()()()()()……?」

 

「あの時……あぁ、襲ってきた時か。いや、だって……あんな怯えてたら攻撃する気失せるし。」

 

「で、でもあの筋肉猫おばけは……ずっと私を攻撃しようとしてた……」

 

「ん?あの時のリリーは防御一辺倒だったような……」

 

「こ、攻撃しようとする直前に……な、何度もぶつけて、攻撃させなかった……」

 

技術いらず。相手の攻撃を読める『眼』と、相手のパワーを簡単に超える魔法さえあれば、技術が無くとも攻撃の対処は出来るのだ。少なくとも、このマホーグには。

 

「通りで……」

 

「で、でも……相手が攻撃してこないと、『眼』は……つ、使えない、から……何を、どうしたらいいのか、全く……何もわからなかった……」

 

「そりゃあな……あんな怯えられてて攻撃しようとするなんて、さすがの俺もそこまで畜生じゃあないよ……」

 

「……そ、それで……なんで、攻撃しなかったの……?」

 

「いや、だから怯えてるやつに攻撃できないよ。それに……つらそうにしてたから余計に。」

 

「……そ、そう……」

 

赤面するマホーグ。急に真っ赤になった理由がわからないマルクは、首を傾げていた。

 

「……マホーグはぁ…優しくされたら誰彼構わず惚れるぅ…チョロい子ぉ…」

 

「っ!?」

 

唐突に後ろから聞こえてきた声に対して、驚いて咄嗟に振り向くマルク。しかし、その場には誰もいなかった。

代わりに、足元に赤い髪が落ちていたが……マルクはそれに気づくことは無かった。

 

「げ、幻聴……?オレまだ疲れてるのかな……」

 

「ど、どうした……の?」

 

「い、いや……」

 

「……はい、バナナボート……」

 

「あ、ありがとう……」

 

バナナボートを手渡すマホーグ。マルクも恐る恐る受け取ってから、金を払ってその場を後にする。

 

「……逃がさない、から……」

 

「ひっ!?」

 

後ろから聞こえてきた言葉に、何故か猛烈に寒気を感じてしまったマルク。冬でも入れるようにできているリュウゼツランドが、温水プールで良かったと思ったのであった。

 

「……どうしたのマルク!?顔真っ青だよ!?」

 

「わ、わかんない……何か、嫌な予感がすごい立ってる……」

 

「冷えたのかなぁ……」

 

「そんなに寒くないと思うけど……」

 

「と、とりあえず……バナナボート借りてきた。」

 

プールの水面にバナナボートを置き、水中に潜ってボートを支えるマルク。その間にシェリアとウェンディはボートの両端にそれぞれ乗る。

 

「ぷはっ……にしても、プールに来るって言うのも多少はいいもんだなぁ……」

 

ボートの上で水をかけあって遊んでいる二人を視界に入れながら、どこか遠くを見つめるマルク。

大魔闘演武では色々あったが、こういう休憩もありだろう……そう思いながら、羽を休めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何だか、寒くない?」

 

「言われてみればそんな気が……」

 

「どうしたー?冷えたかー?」

 

しばらく遊んでいる内に、寒さを感じてきていたウェンディとシェリア。マルクは肩まで水に浸かりっぱなしなので、同じように体温が下がっているためか余り感じていなかった。

 

「……う、ううん。ただちょっと肌寒いような……」

 

「そう言えばなんか寒いようなぐふぉ!?」

 

「きゃっ!?」

 

「えっ!?」

 

近くに固まっていた3人。突然、横から何かが当たってきて持ち上げられて、運ばれてしまう。

 

「いてて……ここは……」

 

「う、ウォータースライダー……?何でこんなところに……」

 

気づけばマルクを挟む形で、3人一緒にウォータースライダーに流されていた。

本来二人用であるスライダー『ラブラブウォータースライダー』という名前のそれは、カップルが抱き合う形で滑るものである。

 

「さ、三人だと狭い……」

 

「は、離れるなよ!?落ちたらやばい!!」

 

「ま、マルク近い、近いよ……」

 

しかし、3人一緒に滑るとなると……必要以上に抱き合う必要性があった。無論、三人は赤面するしかなかった。

マルクは、女子二人よりも遥かに真っ赤になっていたが。

 

「ってあれ……ナツさん!?」

 

「うわほんとだ……アトラクション壊してる……」

 

「あ!リオンもここ滑ってる!?」

 

「一緒にいるのはグレイさんか……てかあの二人ウォータースライダー凍らせてないか!?」

 

ウォータースライダーの滑り出しには、ハートマークのゲートが用意されていたのだが、ナツはそれに引っかかってそのままウォータースライダーを滑走中。

グレイとリオンは、何故か二人一緒に滑っていて……喧嘩をしながらウォータースライダーを凍らせていた。

 

「っ!二人とももっと俺のそばによれ!」

 

「へ!?」

 

「な、何を……きゃっ!?」

 

マルクは二人をより強く抱き締めて、自分の魔力を三人を覆うように溢れさせる。

その直後、マルク達が滑っていたところは見事に凍りついた。

 

「……ふぅ、なんとか成功した……」

 

「せ、狭いけどね……」

 

マルクは、ウェンディ達が凍らない様に凍結させる魔力を防いだのだ。おかげでマルク達のいるスペースだけ、凍らないですんでいた。

寒いことに変わりはないが。

 

「━━━プールを凍らせるやつが、あるかァァァァ!!」

 

「えっ……」

 

凍ることは、グレイ達の様子を見ていたのですぐに理解できた。だが、その直後にナツが魔法で氷を砕くことだけは……予想していなかった。そして、その破壊力も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ウェンディー、シェリアー、大丈夫かー…」

 

「「なんとかー」」

 

全壊したプール。ナツとグレイは、いつの間にか来ていたラクサスにお仕置きを受けてボコボコにされており、そのラクサスと一緒に来ていたマカロフとメイビスは、修繕費の問題で大泣きしていた。

 

「……服、消し飛んでないといいなぁ……」

 

「……そうだねぇ…」

 

「いきなり明日から殆どのギルドが水着着用……どんな光景だよ……」

 

なんとか瓦礫から着替えを発掘するマルク達。着替えた後、苦笑いしながらも三人別れてそれぞれのギルドへと帰っていくのであった。




原作版かOVAの方を取るか悩みましたが、若干OVAの内容と同じようにしました。

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