FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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バトルパート

「そう言えば……第一試合見てないけど誰と誰が対戦したんですか?」

 

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の少女と、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオンだ……恐らくレイヴンの方はリザーブ枠だろう。

試合は魔水晶映像(ラクリマビジョン)に録画されてある。」

 

「分かりました、見直してみます。」

 

そう言って、一旦観客席にリサーナと戻るマルク。次の試合は妖精の尻尾(フェアリーテイル)BミラジェーンVS青い天馬(ブルーペガサス)のジェニー・リアライト……リザーブ枠である。

 

「おかえりー、二人とも。」

 

「そう言えばリザーブ枠の選手は選手席にいなくてもいいんですね。」

 

一日目は実況席にいたジェニーを見てマルクがそう呟く。カナは酒瓶を飲みながらマルクに指さす。

 

「そりゃあねぇ、正式な参加者じゃないんだから。けどまぁ、2つ枠があるんだからあんたあっち(Bチーム)に行きなさいよ。」

 

「考えときますよ……今は試合に……っ!? 」

 

苦笑いをしながらマルクは試合に目を向ける。しかし、向けた瞬間に顔を真っ赤にしてしまっていた。

 

「こんな感じ?」

 

「こう?」

 

何故か二人はビキニを着て、見せ付けるような体勢になっていた。真っ赤に赤面してしまい、言葉が出なくなってしまったマルクに変わって、リサーナが声をかける。

 

「ふ、二人ともグラビアアイドルだから……こんな勝負になっちゃってるの?」

 

「そうそう、魔法が変身系でグラビアアイドル。だから特別な形の試合になってるってわけよ。」

 

「元グラビアモデル同士!そして共に変身系の魔法を使うからこそ実現した夢のバトル!

ジャッジは我々実況席の三人が行います。」

 

「責任重大だねぇ…」

 

「どっちもCOOL&ビューティ!!」

 

実況席が盛り上がりを見せる中、試合は進んでいく。お題がスク水になり、ビキニニーソになり、眼鏡っ娘になったり、猫耳をつけたり、ボンテージになったりと……段々とマニアックになっていく。

 

「両者一歩も引かず!このままではラチがあかないので次を最後の1回とさせていただきます!」

 

「ミラ!これが最後よ!!」

 

「うん!負けないわよ!」

 

「今までの流れに沿って、私達も賭けをしない?」

 

「いいわね、何を賭けるの?」

 

ミラの言葉で、ジェニーがニヤリと微笑む。まるで勝ちを確信したかのような笑みであった。

 

「負けた方は週間ソーサラーで、ヌード掲載ってのはどうかしら?」

 

観客席の男達が一部を除いて喜んでいた。尚、それもマルクにはほとんど聞こえないほどには意識が飛んでいた。

 

「いいわよ。」

 

「な、なななんと!!とんでもない賭けが成立してしまったー!!」

 

そして、ミラも即答で引き受ける。リサーナは心配しているが、他の女子達はあまり心配はしていなかった。

 

「まぁミラが負けるって早々ないと思うけどねぇ……おーい、少年生きてるかー?」

 

「………」

 

「こりゃダメだ、あんだけウェンディ好き好きオーラ出してる癖に、思いのほか純情だ。

つーか海合宿とかどうしてたんだろうね、この子。」

 

マルクの様子を見てカナが溜息をつく。しかし、そんなの関係なしに試合は進んでいく。

 

「最後のお題は、戦闘形態です!!」

 

「これが私の戦闘形態!!」

 

ジェニーが、自身の戦闘形態のお披露目をする。そして、ミラも同様なのだが━━━

 

「じゃあ私も行くわね?今までの流れに沿って賭けが成立してたんだから……今までの流れに沿って、最後は力のぶつかり合いってことでいいのかしら。」

 

「え?」

 

「お、あれは……」

 

「魔人……ミラジェーン・シュトリ。多分ミラ姉の中で一番強いサタンソウルだと思う。」

 

表したミラの戦闘形態。カナが真面目な顔になり、リサーナが解説をする。禍々しくも圧倒的なオーラを放つそれは、伊達にS級魔導士ではないということである。

 

「私は賭けを承諾した。今度はあなたが力を承諾してほしいかな……ねぇ?」

 

その瞬間、ジェニーがミラに一撃で倒される。それは一瞬の出来事であった。

 

「グラビア勝負から一転……最後は力の勝負に!」

 

「まぁこれが本来のルールだスね。」

 

「COOLCOOLCOOL!!」

 

「勝者!ミラジェーン!!」

 

「ごめんね?生まれたままのジェニー、楽しみにしてるわね。」

 

「いーやぁー!!」

 

観客席も勝利と勝利とはまた別の喜びで包まれていた。その別の喜びをしているのは、一部を除いた男性陣だけだが。

 

「……はっ!?」

 

「意識の彼方からおかえり、勝負はミラが一撃で終わらせたよ。」

 

「そ、そうですか……」

 

「あんた海合宿とかホントどうしてたんだい……と、今日の最終試合だ。」

 

気を取り直して、マルク達は試合へと意識を移す。組み合わせは人魚の踵(マーメイドヒール)カグラ・ミカヅチと、剣咬の虎(セイバートゥース)ユキノ・アグリアであった。

 

「……あのユキノって人、どっかで見覚えがあるような……」

 

「リサーナじゃない?髪の色とかそっくり。」

 

「そんなに似てないと思うよ、うん。」

 

リサーナが食い気味に否定するが、マルクは言われればリサーナに似ている気がしていたが、少なくともリサーナとはまた別の既視感を覚えていた。

 

「これはまたしても美女対決となったー!!」

 

「まぁさっきみたいな特別試合は行われないだろうねぇ……あのカグラって奴の武器は明らかあの刀だし。」

 

「ですね……けど相手は剣咬の虎……どっちが勝つのやら。」

 

「カグラの強さは皆さんもうご存知の通り!人魚の踵最強の魔導士であり、現在週ソライチオシ女性魔導士です。

対するユキノは今回初参戦、しかし最強ギルド剣咬の虎に所属しているというだけでその強さに拍車がかかります。」

 

実況席の解説を聞いて、考え込むマルク。しかし、その考えがまとまる前に試合開始の合図が出される。

 

「あの……始まる前に私達も賭けというものをしませんか。」

 

「申し訳ないが、興味ない。」

 

「敗北が恐ろしいからですか?」

 

「そのような感情は持ち合わせていない。しかし、賭けとは成立した以上必ず行使する主義である故、軽はずみな余興は遠慮したいのだ。」

 

「……では、重く致しましょう。()()()()()()()()()()。」

 

ユキノのこの一言で、会場全体がどよめく。この賭けになんの意味があるのか、理解できるものは少ないだろう。

 

「随分と自信があるんだねぇ……あの子。」

 

「けど、それだけ強いっていう自覚があるんだと思う。」

 

「けど……多分、あのユキノって人は自分が負けることを知らない……もしくは負けること自体がありえないと思っているんでしょう。」

 

「つまり?」

 

「……はっきり言えば、ものすごく油断していると思います。『剣咬の虎は最強だ』って先入観みたいなのが、多分剣咬の虎全体にあると思います。」

 

戦車(チャリオット)の時も、わざわざ参加しておいてリタイアを狙うくらいだからねぇ……」

 

真面目な顔で話し合う3人。先程までの空気はどこへやら、会場全体の空気が一気に引き締められた。

 

「その覚悟が誠のものなれば、受けて立つのが礼というもの。よかろう、参られよ。」

 

「剣咬の虎の前に立ったのがあなたの不運……開け、双魚宮の扉。」

 

「星霊魔導士!?」

 

「ルーシィさんの持ってない黄道十二門……」

 

「━━━ピスケス!」

 

現れたのは二匹の巨大な魚。凄まじい速度で迫ってくるそれらを、カグラはジャンプして回避する。

だが、その瞬間をユキノは見逃さなかった。

 

「開け、天秤宮の扉!ライブラ!!」

 

「二体同時開門!?しかも、また黄道十二門……」

 

「これ……」

 

「あぁ、この会場に黄道十二門の全部が揃ってるんだねぇ……」

 

ピスケスの攻撃を避け続けるカグラに対して出したもう一体の星霊。ユキノはそれに指示を出す。

 

「ライブラ、標的の重力を変化。」

 

「了解。」

 

「くっ……!」

 

「あの星霊……重力操作ができるんだ。」

 

「けどありゃダメだね、愚策だ。」

 

「え?」

 

カナが発した一言にマルクが反応するよりも早く、ユキノはピスケスに指示を出して、体を重くしたカグラを攻めようとする。

だが、カグラは重くなった重力帯からいとも簡単に抜け出した。

 

「ほらね、重力操作は人魚の踵には少なくとも愚策さ。」

 

「あ……同じ魔法を使う人がいるから! 」

 

「正解、仮にも大魔闘演武まで出場したギルドの最強格だ。強力な魔法なら、その魔法や魔導士の弱点を突こうと何かしら学ぶはずさ。」

 

「……確かに、重力操作はかなり強力ですもんね。悪魔の心臓(グリモアハート)にもいましたもんね。」

 

「ブルーノート……あいつのは、規格外すぎるけどね。」

 

試合の行く末を見守る3人。ピスケスとライブラだけでは足らないと確信したのか、ユキノはある決断をする。

 

「……私に開かせますか、十三番目の門を。」

 

「……ん?あいつ今なんて言った?」

 

「聞き間違いじゃなかったら、十三番目の門って言ったような……」

 

「黄道十二門の鍵に……十三番目が……?」

 

十三番目の門というキーワードが引っかかるが、その答えはすぐに明かされた。

ユキノは懐から1本の鍵を取り出す。銀でもなく金でもなく、禍々しい色の鍵であった。

 

「それはとても不運なことです……」

 

「運など生まれた瞬間よりアテにしておらん。全ては己が選択した事象━━━」

 

「開け、蛇遣座の扉━━━」

 

「━━━それが私という存在を未来へと導いている。」

 

「━━━オフィウクス!!」

 

現れたのは巨大な蛇の星霊。機械仕掛けのような見た目の星霊は、カグラに突っ込んでいく。

そしてカグラもまた一切の恐れなく入り込む。

 

「怨刀、不倶戴天……抜かぬ太刀の型……!」

 

カグラは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

体をバラバラにされたオフィウクスは、そのまま姿を消す。

 

「うそ……?」

 

「安い賭けをしたな……人魚は時に虎を食う。」

 

そして、そのままカグラはユキノを倒した。剣咬の虎が圧倒されたという事実が、観客全員を驚かせていた。

 

「し、しし……試合、終了……勝ったのは人魚の踵カグラ・ミカヅチ!!剣咬の虎…!まさかまさかの二日目0ポイントー!!」

 

「……不倶戴天。」

 

ポツリと、カグラの持つ刀の名を呟くマルク。ユキノが弱いわけではなかった。星霊の二体同時開門、そしてそれがライブラの重力操作と宙を自在に舞えるピスケスの組み合わせというだけで、勝てる者はかなり限られてくる。

 

「……まさか、エルザ以外にもあそこまでの剣士がいたとはねぇ。」

 

「エルザ、勝てるかな……」

 

「エルザさんなら大丈夫と思いますが……抜いてないのにあの切れ味、あれを防げる鎧があるようには思えませんよ、ほんと。」

 

「だね、ありゃあ危険すぎる。けど……そんな刀で、一体何を切るつもりなのかねぇ……」

 

不倶戴天の恐ろしさを身にしみながらも、大魔闘演武二日目は終了したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精の尻尾が止まる宿で、一人になってからマルクは試合の映像を見てない者達とともに振り返っていた。

蛇姫の鱗のリオンと、大鴉の尻尾の見慣れない少女。リザーブ枠だというのはエルザが言ってた通りであった。

 

「さぁ、今回のエキシビジョンマッチですが……ヤジマさん、勝負はどうなると思われますか?」

 

「そうだねぇ……レイヴンの方は見慣れない子だから、なんとも言えないね。」

 

「確かに、実力は如何程のものか?では、蛇姫の鱗リオン・バスティアと大鴉の尻尾マホーグ・オロシのエキシビジョンマッチを始めます!!」

 

ゴングが鳴り響き、エキシビジョンマッチが始まる。しかし、お互いに動こうとしない。

否、正確にはマホーグと言われた少女はうずくまっているのだ。

 

「……どうした?体調が悪いのか?」

 

「……あ、貴方も……私に危害を加えるんでしょ……」

 

「……エキシビジョンマッチだからな、戦わなければ始まらんさ。」

 

「だ、だったら……倒さないと……!」

 

瞬間、マホーグの姿は消えてリオンの後に回り込む。そして、背中に背負っていた大剣を振り下ろす。

 

「っと……いきなりやる気になるか……アイスメイク、イーグル!!」

 

リオンが、氷の造形魔法でマホーグに攻撃を仕掛ける。氷の鷹は羽ばたいて四方八方から襲いかかるが━━━

 

「こない、でぇ!!」

 

「なっ!?魔法が……」

 

マホーグが剣を振り回すと、その剣先に触れるだけで次々と砕けていく。その上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「危害を加える人は、潰して潰して……潰さないと……」

 

「……なら、これならどうだ!!」

 

リオンは数々の造形魔法を作り出して、下を除いた全方向に攻撃を仕掛ける。

だが、それでも足りなかった。

 

「怖い怖い怖い怖い怖い!!」

 

半狂乱、そして涙目でマホーグは()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あなたは……消えて。」

 

「しまっ━━━」

 

そして、またもや一瞬でリオンの側まで移動したマホーグ。いつの間にか持っていた大剣は大槌のような形になっていた。

そして、リオンをそれで殴りつけて一気に壁まで吹き飛ばしていた。

 

「しょ、勝者大鴉の尻尾マホーグ・オロシ!!」

 

その試合結果を見て、ナツとウェンディ、シャルルにマルクの4人は溜息を付いていた。

 

「なんだ、ありゃ。」

 

「……多分、リオンさんの近くまで移動できたのは魔法だと思います。どういう魔法かまでは分かりませんが……」

 

「速度、というよりは……」

 

「あれは転移ね。けどとんでもない魔力消費の上、移動できる範囲は限られてると思うのだけど……それこそ、1~2mとかね。」

 

「それに、あの剣……氷を砕いてる、ってよりは魔法を砕いてるって感じだった。」

 

話し合いは、続かない。意外な結末とよく分からない魔法の存在が皆を惑わせていた。

 

「ま、ぶつかった時にわかんだろ。」

 

「そうですね……けど、なんて言うか……」

 

「どうしたの?マルク。」

 

「……大鴉の尻尾に、合わない子のような気がして。あんな危険なギルドにいるのに、危害を加える人が怖いだなんて……」

 

マルクの疑問に答えられる者はいない。マホーグ・オロシ、その名はぶつかった時に注意するべき名としてだけ、覚えておくしかなかったのであった。


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