「だはーっ……!」
「ぶはーっ……!」
「げほっ、げほっ……」
森の中で息が切らしているナツ、グレイ、マルク。その周りには大量の人が倒れていた。
闇ギルド
そして、中核であろう2人が思いのほか強く、ナツとグレイは既に若干ボロボロになっていた。マルクは二人が相手している間に残りすべてのメンバーを相手していたせいで体力と魔力をかなり消費していた。
「何だよ、コイツら雑魚じゃなかったのかよ……!」
「意外とやるじゃねぇか……!」
「当たり前じゃない!相手はギルド一つなのよ!?何考えてんのよあんた達!」
途中までマルクの移動役として
「オイ!ぎゃほザル!お前らのアジトはどこだ!!」
「ぎゃんっ!言うかバーカ!ぎゃほほほ!!」
答えない奴は必要ない、と言わんばかりにナツはアフロの男を殴って気絶させる。
そして、もう一人の方へと掴みかかっていった。
「オイ!デカザル!!」
「本当めちゃくちゃねあんた達……」
「西の廃村……?そんな所に構えてたのか。」
「よっし!!行くぞ皆!!」
「何であんたが仕切っているのよ!」
ウェンディとハッピーがいるであろう場所の情報を手に入れたナツ達。そのまま四人全員がその場所に向かって走っていく。
「……マルク、あんた何怖がってるのよ。」
「……怖がってるって、何がだよ?俺が闇ギルドと戦ってビビったって言いたいのか?」
途中、シャルルがマルクにこっそりと話しかける。マルクはウェンディが何かされてないかという心配に加えて、先ほどの戦いの疲労が蓄積していた。
「違うわ。今回の作戦……ニルヴァーナって魔法がどんなのかが分からないけど、少なくとも地面や木々に何かしらの影響を与える物だって言うことはわかったわ。
あんたの
「……それは━━━」
「ここか!?ハッピー!!ウェンディー!!」
応えようとした矢先、西の廃村に到着したらしく声を出すナツ。それに焦ってシャルルが注意する。
「ちょっと!?敵がいるかもしれないのよ!またあんなワラワラと出てきたらどうするのよ!!」
ナツの声でうやむやになってしまったが、マルクはシャルルの先程言った事に対しての答えは『Yes』であった。
だが、それを口に出すと余計に不安になりそうで、何かがポロポロと崩れそうでしょうがなかったのだ。
だが、そうやって考えていると目の前から何かが高速で近づいてくる気配がした。
「っ!何か来ます!!」
しかしそれを注意した頃には既に4人は弾き飛ばされていた。視認することの出来ないほどの高速の何かが、攻撃してきたのだ。
「またアイツだ!!」
「アイツ!?」
「ンなこと後でナツから聞いとけ!!ここは任せて早く下に行けナツ!!」
「おし!!」
「……行かせるかよ。おっ!?ぎゃっ!!」
目の前にいた男、
「シャルル!今だ!!羽!あっ!!」
しかしシャルルは先程のレーサーの一撃で伸びていた。
「しゃーねえ!これで行ってこい!!」
そう言ってグレイが氷の滑り台を作り出す。ナツはシャルルを抱えて、マルクはそのまま飛び乗って勢いよく滑り落ちていく。
乗る直前で目が覚めたのか、シャルルの悲鳴がよく響いていた。
「ナァーツー……!」
「ハッピー!」
「あの中よ!!」
村に降り立った三人。探し始めた矢先にハッピーのナツを呼ぶ声が響き、三人は廃村にあった洞窟の中へと入っていく。そしてその中には五人の姿があった。
「な、なんだ……これ……」
「そんな……」
一人はウェンディ、一人は六魔将軍の一角ミッドナイト。
「ごめんなさい……私…!」
そして六魔将軍のブレイン……そして━━━
「ジェラール……!」
「ごめん、なさ……うぇっ、うえっ……!この人は私の恩人、な、の……!」
泣き始めるウェンディ。状況的に蘇らせてはいけない人物、ということが理解出来たマルク。
しかしマルクは簡単には動けない。ウェンディの前にジェラールという人物と六魔将軍のブレインが立ち塞がっていたからだ。
「ん……?ウェンディ、まさか治癒の魔法を使ったのか……!?」
「何やってんのよ!その力を無闇に使ったら……!」
突如ウェンディは、意識を失う。それは相手を回復させる治癒魔法の、代償とも言える事であった。
「な、なんでお前がこんなところに……!!」
歯を食いしばるナツ。拳を握りしめ、その拳に炎を宿して明らかに怨敵を見つけたとも取れる状態であった。
「━━━ジェラァァァァァル!!」
そして、そのジェラールと呼ばれた男は突撃してくるナツに対して手のひらを向ける。
それに対して何か嫌なものを感じたマルクはナツより早く前に飛び出る。そして、マルクはナツを突き飛ばして自分との距離を開けさせる。
直後、ジェラールから大量の魔力が放たれてナツとマルクを飲み込む……かと思われたが━━━
「あぐ……んぐっ……ぷはぁ……!」
「……ほう?今ジェラールの魔法を食べたのか?意外だな、もう一人滅竜魔導士がいるとは。
にしてもあれだけの魔力を食べ切るとはな……」
「……隠してた、だけだ。」
「……お前も滅竜魔導士だったのか……」
ブレインとナツがす少しだけ驚いている中、そのまま追撃するかと思われたジェラールがブレインの方を向いて……魔法を使う。
「何っ!?ぐぉあああっ!!」
床が崩れ、ブレインは落下していった。それを見終える前に、ジェラールは再び視線を変えて出入り口を目指して歩き始める。
弱いものには手を出さない、と言わんばかりに気絶しているウェンディ、ハッピー、シャルルを無視して出入り口へと歩いていった。
「……クソっ!!アイツ手当たり次第に攻撃しやがって!!何がしたいんだよ!!ぶっ飛ばして……!」
「止めてくださいよ……いきなり攻撃しかけてきているのは本当ですけど、流石に今は目的が別なんですから。」
今すぐにでもジェラールに殴りかかると言わんばかりに暴れるナツ。気分が悪そうにしながらもナツが暴れ出さないように押さえつけていた。
「マルクの言う通りよ、今はウェンディを連れて帰ることの方が重要でしょ……エルザを助けたいんでしょ!!」
「……っ!!分かってんよ!!あいつ……行くぞハッピー!!」
「あいさ!!」
「……シャルルは、ウェンディを連れて行ってくれ。俺は自力で這い上がれる……!」
「……そうさせてもらうわ。頑張って戻ってきなさいよね。」
「うん、分かってるさ……!」
そしてシャルルはウェンディを、ハッピーはナツを抱えて魔法で飛び去っていく。
それのあとを追うかのように、マルクは洞窟を出る。
廃村はまるで円柱状にくり抜かれたかのような場所に作られていて、周りは崖しかない。しかし、グレイが作ってくれた氷の滑り台はある。
「……ブレスで、逆に登れないかな。」
滑るのを利用して、滅竜魔法の一つであるブレスの勢いを利用して、氷の足場を滑って登ろうとマルクは考えていた。
先程までいた洞窟を少しだけ見て、アレでブレインが倒せていれば……という考えが起きたが、正直あの攻撃でもブレインを倒すには足りないだろう……とも思っていた。
「考えててもしょうがないか。んじゃ早速……『魔龍の……咆哮』!!」
飛び乗った瞬間に魔法を使い、氷の滑り台を逆に登っていくマルク。この付近で戦っていたレーサーとグレイは少しだけ移動していたのか、戦闘音は聞こえど姿は見えず……という状態だった。
「……グレイさんと一緒に戦うべき…だな。あの有名な
そう言ってマルクは戦闘音のする方へと走っていくのだった。
「━━━デッド
グレイのいる場所に追いついたマルク。しかし、レーサーが魔導二輪を大量に呼び出している場面に出くわした。
「うわっ!?」
大量の魔導二輪はグレイを弾き飛ばし、レーサーがそれに乗ってどこかへと走り去っていく。
グレイも咄嗟に乗り込んでそのままレーサーとともに去ってしまう。
「……流石に、魔導二輪を動かすのは無理だ……くそっ……って、補助しかできない奴が何かを手伝うのも、難しいのか……?
仕方ない、ナツさん達の所に行くか……飛んでいった方角は……あっちだな。」
魔導二輪に乗っていったグレイ達には追いつかないと判断して、ナツ達を追い始めるマルク。しかし、自分がなんの役にもたってない事を少しだけ口惜しく感じながらもそのあとを追いはじめる。
「……あれは……」
途中、マルクは集団を見かけた。明らかに自分達の連合軍には居なかった面子。恐らくは闇ギルド、六魔将軍の傘下のギルドであろうと予測をつけた。
そして、その集団は何やら大急ぎでどこかへと向かって走っていた。その方向は自分と同じ方角、つまりウェンディ達がいる方向だという答えにマルクはすぐに辿り着く。
ならば……通すわけには行かない。そう考えたマルクはそのまま先回りして闇ギルドの進行方向に立ち、ほぼ不意打ちで魔法を唱える。
「人数が多いから……こうだ!
その場にいた大半の闇ギルドの面々は、とっさの事で反応が追いつかず寝てしまった。
だが、その中の数人だけは魔法の効果範囲に入りながらも眠ることはなかった。
「……睡眠魔法、なるほどなるほど。なら俺らにゃあ効くこたァねぇぜ。ガキんちょ。」
「なっ……」
「闇ギルド
んでもって、そのうちの1割は睡眠魔法の解除と無効化ができる……自分達の使う得意魔法の対処法は学んでおくべきだろ。
じゃないと自分たちが眠らされた時に困るからなぁ?」
マルクの戦闘スタイルは相手を眠らせることによる戦闘行為の無力化。しかしそれが使えないとなると、最早マルクには滅竜魔法しか残っていないのだ。
「どうやら相手を倒す魔法は持ち合わせちゃあいねぇみたいだな……やるぞてめぇらァ!!六魔将軍に褒美をもらうのは俺達だァ!!」
そして眠らせた者達が軒並み起こされてしまい、窮地に立たされるマルク。
使える魔法が防御系統のそれしかないマルクは逃げ回るしかなかった。たとえ敵と言えども、滅竜魔法を使わない方を選んでしまったのだ。
そしてその内、体力が切れてきてマルクは逃げ回ることすらも出来なくなってきていた。
「げへへ、追いついたぜ。
さて、てめぇ人質に取ってあいつらが手だしできないようにしねぇといけねぇなぁ。」
「そういあやぁよ、正規ギルド連合軍の中には女いるらしいぜ女。さっきちらっと見えた空飛んでたガキとかよ。」
「っ!」
闇ギルド達の言葉にマルクが反応する。空を飛べるのはシャルルとハッピーだけ、そしてその二人に関係するのはナツとウェンディである。
「あのガキとか妖精の尻尾の奴ら売ればいくらになるんだろうなぁ。」
「……おい、今なんて言った?」
「……あ?ぐぼっ!?」
マルクは、男の一人を殴り飛ばした。飛ばされた男は近くの木にぶつかり、気絶した。
「……ウェンディに手を出す奴らは、たとえ誰であろうと……潰す!!」
「何だこいつ……急にやる気出しやがって……」
構える闇ギルドの面々、怒るマルク。今この場で、恐らく初めてマルクの本気が垣間見れるだろう……