FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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ブランクの埋め立て

「あのばーさんがグランディーネ!?」

 

「ウェンディの探してるドラゴン……って事か?」

 

「ウェンディ、本当か?」

 

「分かりません……でも、あの匂い……あの声……私のお母さん、天竜グランディーネと同じなんです。」

 

七年という合間のブランクを埋めるために、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の顧問薬剤師のポーリュシカに会いに行ったナツ達。結局は追い返されてしまったが、なんとウェンディが言うにはポーリュシカの声と匂いが、ウェンディの親であるドラゴンのグランディーネであると話し始めた。

 

「こいつはちょっと確かめに戻る必要があるな。」

 

「待てよ……もし本当にグランディーネか化けてるとしても、少しおかしくねぇか?」

 

「そうよ。ナツやウェンディ…ガジルにマルク。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のドラゴンが姿を消したのは七年前……正確には14年前の777年。

ポーリュシカさんはそれよりも前からマスターと知り合いなのよ?

つまり、ドラゴンがいた時代とポーリュシカさんのいた時代が被るのね……これじゃ辻褄が合わないわ。同一人物のはずが無い。」

 

ルーシィの言葉に少し落ち込むウェンディ。しかし、それよりも納得の気持ちの方が大きいようだった。

 

「生まれ変わりとか化けてるって線は無さそうだな。」

 

「確かに、落ち着いて考えてみればそうなんです。おかしいんです。声や匂いが同じでも口調や雰囲気が全然違う……」

 

「あんた前に言ってたもんね、グランディーネは人間が好きって。」

 

「どーしよう、猫は嫌いだったら……」

 

「グランディーネは優しいドラゴンなんです……」

 

「優しいドラゴンってのも想像出来ねーな。」

 

「アクノロギアを見ちゃったからね……」

 

「イグニールも優しいぞ。」

 

それぞれが推論を立てていく中、マルクは1人でウェンディの言っていることを考えていた。何か、覚えがあるような気がしたからだ。

 

「……グランディーネは人間好きで、ポーリュシカさんは人間嫌い…口調や雰囲気も違って、種族も人間とドラゴンって違いもある……けど、声や匂いは同じ……()()()()()()()()()()()()()()()()……?」

 

「優しくなくて悪かったね。」

 

突如として現れるポーリュシカ。いきなり声を出したので、グレイとルーシィは驚いていた。

 

「ポーリュシカさん……」

 

「びっくりしたぁ〜……」

 

「……隠しておくこともないね、あんたらだけに話しておくよ。」

 

ウェンディと目を合わせるポーリュシカ。その瞳には、人間嫌いは混じっていないように思えた。

 

「私はあんたの探してるグランディーネじゃない。正真正銘人間だよ。」

 

「でも人間嫌いって……」

 

「人間が人間嫌いで文句あるのかい!?」

 

「いえ……」

 

ナツを萎縮させてから、ポーリュシカは話を戻す。『あんたの探してるグランディーネじゃない』という言葉が、マルクには妙に気になったが、詮索をしないでおいた。

 

「悪いけど、ドラゴンの場所は知らない。私とドラゴンとは直接には何の関係もないんだ。」

 

「じゃあ、あなたは一体……」

 

「こことは違うもうひとつの世界、エドラスのことは知ってるね?アンタらもエドラスでの自分に会ったと聞いてるよ。」

 

「エドラスって……」

 

「まさか……」

 

「え、何?」

 

「……やっぱり…」

 

この世界(アースランド)の人間から見た言い方をすれば、私はエドラスのグランディーネという事になる。何十年も前にこっちの世界に迷い込んだ。」

 

この言葉に、マルク以外の全員が驚いた。マルクもマルクで、予想はしていたようだが、やはり信じられない、という表情をしていた。

 

「あんたは、驚かないんだね。」

 

「全く違う同一人物……って言うのは早々忘れられるものでもないでしょう。」

 

「それもそうだね……話を戻すよ。私は、ひょんなことからマカロフに助けられてね。私もすっかりアースランドが気に入っちゃったもんだから、エドラスに帰れる機会は何度かあったんだけど私はここに残ることにした。」

 

アースランドでドラゴンだった者が、エドラスでは人間。その事実でナツは気になったのかとあることを聞きだす。

 

「もしかしてイグニールやメタリカーナやイービラーも、向こうじゃ人間なのか!?つーかこっちにいるのか!?」

 

「知らないよ、会ったこともない………けど、天竜とは話したことがある。」

 

「え!?」

 

「会ったわけじゃない、魔法こなんかで私の心に語りかけてきたんだよ。」

 

そう言いながら、ポーリュシカは懐を探して、一束にまとめられた書類を取り出してウェンディに渡す。

 

「あんたら、強くなりた言ってたね。そのウェンディって子だけなら何とかなるかもしれないよ。

天竜に言われた通りに書きあげた魔法書だ。二つの天空魔法『ミルキーウェイ』『照破・天空穿(てんくうせん)

アンタに教えそびれた滅竜奥義だそうだ。」

 

「グランディーネが私に……」

 

「会いに来たら渡してほしいとさ。その魔法はかなりの高難度だ。無理して体を壊すんじゃないよ。ありがとうございますポーリュシカさん!グランディーネ!!」

 

ポーリュシカに対して、頭を下げるウェンディ。そして、グランディーネにも礼を言う。

誰も気づくことは無かったが、この時のポーリュシカの顔には笑顔が浮かんでいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対出るんだー!!出る出る出る出る!!」

 

「出ねぇ出ねぇ出ねぇ出ねぇ!!絶対、認めねぇ!!あれにはもう二度と参加しねぇ!!」

 

ギルドに帰ってきたナツ達。しかし、帰ってきた矢先に4代目マスターであるマカオとその息子であるロメオが何やら言い争いをしていた。

 

「ただいま。」

 

「お!帰ったのか。いい薬はもらえたのか?」

 

「ウェンディだけね。」

 

「えへへ……」

 

マックスが反応してくれるが、気づいていないのかはたまたそれ以上のことを話し合っているのか、ロメオ達は言い争いを続けていた。

 

「父ちゃんにはもう決める権限ねーだろ!マスターじゃねぇんだから!!」

 

「俺はギルドの一員として言ってんの!!」

 

「え、4代目辞めたんですか……じゃあ5代目はまた?」

 

「わしは六代目、5代目はギルダーツじゃ……5代目は一時間も持たずに六代目を指定してきよったがの。」

 

マカロフの言葉で苦笑するマルク。元鞘なので、あまり深く突っ込むことはしなかったが。

 

「……で、何の騒ぎだ?」

 

「親子喧嘩にしか見えないわよ?」

 

「出たくない人!はーい!!」

 

「「「はーい!」」」

 

「あれだけはもう勘弁してくれ……」

 

「生き恥晒すようなものよ〜……」

 

マカオが挙手を募ると、残された者達の殆どが手を上げる。アルザックとビスカの子供であるアスカも手を挙げているが、特に意味の無い挙手みたいなものだろう。

 

「だけど今回は天狼組がいる!ナツ兄やエルザ姉がいるんだぜ!妖精の尻尾が負けるもんか!!」

 

「けど天狼組には7年のブランクがなぁ……」

 

先程から会話に残されている天狼組。何の話かさっぱり分からないので困惑しきっていた。

 

「さっきから出るとか出ねぇとか何の話だよ!?ルーシィのお通じじゃあるまいし。」

 

「そんな話皆でするか!!」

 

「ナツ兄達のいない間にフィオーレ一を決める祭りができたんだ。」

 

「おー!」

 

「そりゃ面白そうだな。」

 

「フィオーレ中のギルドが集まって魔力を競い合うんだ。その名も……大魔闘演武!」

 

ロメオの説明で、驚きや期待などが入り交じる天狼組。フィオーレ一を決める祭りに参加できる、つまりはこれに優勝すれば妖精の尻尾が一番に返り咲く、という事である。

 

「しかし……お前らの実力で優勝なんざ狙えるかのう……」

 

「そうだよ!そうなんだよ!!」

 

「優勝したら3000万J(ジュエル)入るんだぜ!」

 

「出る!!」

 

「マスター!!」

 

賞金に釣られて、マカロフも参加を決意する。だが、どうしても残された者達の方は参加をしたくないのか物凄く否定的になっていた。

 

「無理だよ!天馬やラミア、剣咬の虎(セイバートゥース)だって出るんだぞ!?」

 

「因みに、過去の祭りじゃ俺達ずっと最下位だぜ。」

 

「えばるなよ……」

 

「そんなの全部蹴散らしてくれるわい……!」

 

シャドーボクシングをするマカロフ。『多分あなたは戦えませんよ』とマルクは言いたくなったが、何も突っ込まないことにした。

 

「燃えてきたぞー!!」

 

「やかましい!!」

 

「その大会いつやるんだよ!」

 

「三ヶ月後だよ。」

 

「十分だ!それまでに鍛え直して……妖精の尻尾をもう1度フィオーレ一のギルドにしてやる!!」

 

ナツの言葉で全員がやる気と勢いを出し始める。無論、それらを出しているのは天狼組だけなのだが。

 

「マジかよ……」

 

「本気で出るのか?」

 

「や、やめといた方が……」

 

「ナツが考えてるようなバトル祭とはちょっと違うわよ。」

 

「え?ちがうの!?」

 

「地獄さ。」

 

「出ると決めたからにはとやかく言っても仕方あるまい!目指せ3千……コホン、目指せフィオーレ一!チームフェアリーテイル!大魔闘演武に参戦じゃああ!!」

 

マカロフの号令と共に、妖精の尻尾は大魔闘演武に参加することに決めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大魔闘演武。それは七年に一度フィオーレ王国で行われるギルド同士での大会。

優勝すれば、その年の最強と賞金が手に入る。しかし、行われるのは何もバトル一辺倒という訳では無い。

例えば徒競走などの戦いを行わない競技も存在する。しかし、共通するのはどの競技においても魔法を使用可能だと言うこと。

但し、どの競技かはその競技が始まる直前まで分からないというのもあり、ただ強い魔法を覚えているから……という簡単な理由ではすぐに負けてしまう大会でもある。

だが、魔力を持っていても損は無い。寧ろ、多ければ多いほど有利になる可能性が高くなる。

しかし主に参加を表明した天狼組は、空白の7年のブランクが存在している。

そのためには特訓特訓、ひたすら特訓あるのみだった。三ヶ月間の猶予をうまく活かすために━━━

 

「海合宿……ですか。全員が水着着て、海で特訓……いいですね、うん。」

 

「女子達と真反対の方向向いて無ければその言葉を素直に受け入れたんだろうけどな。」

 

「はしゃいでません。別にウェンディの水着が可愛いから直視できないとかそんなんじゃありません。」

 

「まぁお前には刺激が強すぎるな。色々。」

 

女子達ははしゃぎ、水着をろくに見ることが無かったマルクは恥ずかしさで視線を逸らし、それを何かを食べながらドロイが少し呆れながら見ていた。

 

「海だァー!!」

 

「よっしゃあー!!」

 

ナツとグレイもはしゃいでいた。泳ぎ勝負、砂の城作り勝負、大食い勝負、日焼け勝負。そこまでしてから宿に戻り始めていた。

女子陣の水着を見れているので、初日くらいはと大目に見るドロイとジェット。

しかし流石に初日からこれでは、というのもあり午後からきちんと特訓を始める妖精の尻尾。

 

「……はぁー……ふぅー……」

 

「何してんだ?」

 

「燃費の悪さの解消……ですかね。相手から魔力を奪えるとはいえ、俺の技はどれも魔力の消費が多いんですよ。

だから……もっと少ない魔力消費でいつも以上の威力を……って。」

 

「ふーん……」

 

特に驚くこともなく、返事を返すジェット。じーっと見つめていたが、しばらくしたらどこかへと去っていく。ちゃんとみんなが修行しているか……という確認のために見回っているのだろうとマルクは思ったが、特に気にすることもなくそのまま修行を続けるのであった。

そのまま、その日は午後から特訓三昧を過ごす一同なのであった。


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