FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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結末

とある田舎の依頼を受けたマルク、ウェンディ、シャルル、リリー、ガジル。

そこまで向かった先に受けた依頼は『猪の討伐』だった。しかし、その村は実はまともな村ではなく、依頼と偽って村に来たものを猪へと変える呪いを持った村だった。

それを知ったマルク達は、自分達を猪へと変えようとする村長を止めようと戦闘を開始するが、どれだけ攻撃を仕掛けても村長には傷一つつけることが出来なかった。

靄のような姿を取った村長は、マルクが魔力をどれだけ吸収してもそのたびに復活するために決定打にかけてしまっていた。

そして、その先頭の折に村長は光を発して━━━

 

「……あ、あれ?」

 

「……何とも、ねぇみてぇだが……」

 

「な、なんだったんですか今の……」

 

「なん…だと…!?何故だ!なぜ猪の姿にならん!そこの猫2匹は兎も角としても!貴様らは確実に猪の姿になるはずなのに!!」

 

激昂する村長。理由は分からなかったが、兎も角この地の呪いを受けることはないという事だけを、三人は理解した。

 

「なら……この村長を相手取る必要もなくなったってことだな!!」

 

「けどどうするんです!?土地の呪いなんて、俺もさすがに吸収するなんて無理ですよ!?」

 

「簡単な話じゃねぇか……この村、ぶっ飛ばすぞ。」

 

「……はぁ!?」

 

ガジルの素っ頓狂な作戦に、村長の事も忘れて驚いた声を上げるマルク。しかし、どうやらガジルは本気のようだった。

 

「ふはは……土地の呪いが村全体だけに広がっていると思っているのか?笑死!この山には数々の魔水晶(ラクリマ)が眠っている!それを中継することで範囲はかなり広がっている!!

貴様らが猪にならないのはきっとまだ呪いが体に浸透していないせいだ!もっと!もっと時間をかけさせねばならない!いでよ我が眷属達よ!!」

 

村長が声を上げると、村中から猪の鳴き声が聞こえてくる。どうやら村長の意思ひとつで村人を猪と人間に切り替えられるようだった。

だが、そんなことよりもマルクは気づいたことがあった。

 

「……ガジルさん!此処吹っ飛ばすの任せましたよ!!」

 

「おう!リリー、そいつに翼貸してやれ!!」

 

「お前が言うのならば、何か策があるのだろう……ならば行くぞ!」

 

「シャルル!私達も!!」

 

「えぇ!!」

 

シャルルはウェンディを、リリーはマルクを掴んで村長の家から一気に村の外へと出る。

 

「ふん……子供二人と猫二匹に何が出来る……」

 

「へ……知ってるか?世の中にはよォ……普通のやつよりも魔力に敏感な奴だっているんだぜ。」

 

「……なんだと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここか!山の頂上の遺跡!!」

 

マルク達は、一度訪れていた山の頂上の遺跡に訪れていた。そこに放置してあったラクリマを再び見て、マルクは確信した。

また、魔力が宿っていたのだ。

 

「多分、壊さないといけないやつだったんだろうな……よっと。」

 

マルクはラクリマを破壊して、ウェンディに向き直る。まだ、仕事は終わっていないといわんばかりに。

 

「ラクリマは元々空っぽだったんだ。それが呪いを帯びた魔力に犯されることによってだんだんと魔力を帯びていった。

そんでもって、中継地点は多分いくつもあるはず……それをどうにかして見つけて破壊しないといけない。」

 

「……壊すのはいいんだけど、どうやって見つけるの?村でやったように魔力を広げて探すの?」

 

「流石に時間が無い今にやることじゃない。けど……ここが魔力の中継地点なら……多分反対側とか、一定距離感覚で置かれてる可能性が高い。」

 

「なるほど……そこを虱潰しに探すわけか……」

 

「そうなったら、後はガジルさんが村を呪いごとふっ飛ばして、あとは評議院にでも任せてはい終了……って訳さ。」

 

ガジルの意思を説明していくマルク。その説明に納得したウェンディ達はすぐさま他の中継地点がある場所を探し始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギヒ……鉄竜の咆哮!!」

 

「ぬううう!まさか、本気で村を吹き飛ばす気か!?」

 

「当たり前だろ?それがお前を消す一番手っ取り早い方法なんだからよ。

で、お前が逃げないように今ほかの中継地点を壊させてるってわけだ。

お前、複数に分かれても戦闘能力が元々皆無なんじゃあ……これを止める術はねぇよなぁ!」

 

魔法によって村の家屋や猪や地面などを、まとめて吹き飛ばしていくガジル。

彼を止めようと猪達が一心不乱に攻撃をしていくが、彼の鋼鉄の体にはそんな攻撃は一切通用しない。

 

「所詮は猪!身の丈が俺の倍くれぇの奴なら話は変わるだろうけどな!!さぁ!いつまで持つかな!!」

 

「ぐうう!なれば……!」

 

村長は姿を消す。その瞬間、猪達がガジルから離れる様に散り散りになっていく。

それを見たガジルは、すぐに村長がラクリマのある中継地点に向かうつもりなのだと理解したが、関係なく村を吹き飛ばすためにひたすらにブレスで周りを荒らしていく。

 

「ギヒッ……逃げたとしても無駄だぜ……もうこれを止められなかった時点でお前は詰んでるんだからよォ……!」

 

悪役のような笑い声と笑みとともに、ガジルはこの村にあるであろうラクリマを探すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マルク!何かくる!」

 

「どうせ俺たちを止められないと悟った村長の悪足掻き!猪たちは無視してラクリマを破壊していく!!」

 

「うん!」

 

イノシシたちの足音と怒号。激しく響き渡るその音に、マルク達は怯むことがなかった。

しかし、正確なラクリマの個数が今まで彼らはわからなかった。しかし、こうして村長が焦った事で、少しだけその配置がわかるようになるだろうと、マルクは考えていた。

 

「……にしても、猪達が全員こっちに来てる訳じゃあなさそうだしな!だったら……」

 

「手分けができる!って事!?」

 

「そういう事!猪達がいるところに、それぞれ向かうとしよう!」

 

「確実性はないが……だが、守るべき場所は一番警備が厳重にせざるを得ないからな……おそらく、その通りだろう……!なら、三手に別れる方が都合がいいな。」

 

「じゃあリリー!ウェンディ!シャルル!みんな頼んだ!」

 

マルクのその掛け声とともにリリーはマルクを離して、ウェンディとシャルルと共にそれぞれ山を探索し始める。

 

「……にしても、討伐報酬で金が貰えると思っていたのに……ちくしょー!!」

 

さけびながら、マルクは猪達を吹き飛ばしながらラクリマを破壊していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅ!ぐううう!」

 

「いたいた……猪達一匹に乗り移るので精一杯みたいだな。」

 

「何故だ!何故だなぜだなぜだ!」

 

猪に乗り移った村長が、発狂したかのように荒れ狂う。その様子をマルク達はただ見ていた。

 

「あんたの境遇は同情されるものだ。確かに、理不尽で不可解で……そこまで恨みを募らせるのもわかる。

だがな、それでもあんたのやったことは許されることじゃないんだ。」

 

「だから消えろと!?呪いをかけられたこの恨み!この怨念!この執着!例え人の世が終わろうとも尽きることが許されないこの呪い!」

 

「知らねぇよ、俺らをてめぇの都合に巻き込むんじゃねぇ。」

 

「貴様らの都合なぞ知らぬ!我が恨み!晴らすためには他者を巻き込まねばやってられぬ!」

 

「そういうのを……八つ当たりというんですよ。可哀想だとは思います、けどそれと同時に……貴方もまた、貴方に呪いを与えた人達と同じになってるんですよ。」

 

「そんなこと、認めぬ、認めぬぅぅぅ!」

 

マルク、ガジル、ウェンディの言葉でさらに発狂する村長。もはや、言葉らしい言葉も届いていないのがはっきりと見て取れた。

 

「……ま、幽霊だってんならそんなもんだろう。」

 

「……呪いをかけられた人が死んで、自分と土地の魔力で術式みたいなのを形成していた……ってことでいいんですかね。」

 

「そうだろうよ、どっちにしても……こいつに負けるこたァねぇって事だな。猪の殆どは俺らが倒した、ラクリマもなくなった……後は自然に消えるだけだが……」

 

「……一応、倒しておくべきでしょうね。いつ消えるかわからない以上、新しいラクリマを取りに行きかねない。」

 

マルクが手に魔力を込める。発狂した村長はそのまま突っ込んでいく。声にならない叫びをあげながら、もはや自分が何をしているのかわかっていないのだろうと感じながら、マルクは突っ込んできた村長に拳をぶつける。

 

「魔龍の鉄拳!」

 

吹き飛ばされた猪から、何か黒いものが消える。そして、村長の声はそれっきり聞こえなくなった。

 

「……はぁ、終わりましたね。」

 

「……で、どうするよこれ。」

 

「……ま、評議院に連絡を入れて……帰ったらマスターに報告ですかね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、結局依頼書そのものは破棄。しかもボロボロだった村を吹き飛ばしたこともあって、事情聴取で絞られて……って事?」

 

「はいぃ……お金、稼げるかなと思ったのにぃ……」

 

「ルーシィみたいな事言ってるわね。」

 

後日、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドにてミラとマルクは例の依頼のことで話し合っていた。

 

「でも、評議院からお金は貰えたんでしょう?止めてくれたことと教えてくれたことで。」

 

「……依頼の分には足りませんよ。元々大きく稼ごうと思ってしたことですし……」

 

「ならそのお金はどうしたの?」

 

「ウェンディに上げましたよ……ヘソクリすらも無くなってたんだからせめてもの足しにと思って……」

 

「優しいのね。」

 

「危険な目に晒したことへの、自分勝手なお返しですよ……」

 

悲しい顔になりながら、マルクは項垂れる。そんなマルクを見かねたのか、ミラが一枚依頼書を取ってきてマルクの目の前に置く。

 

「なら、こんな仕事なんかどうかしら?」

 

「へ?えーっと……『やる気がある方だけ募集、近くの権力だけで威張り散らしている闇ギルドが集う集会を潰してください。お一人につき30万J(ジュエル)』………あれ、これすごい既視感があるんですけど……主につい最近猪関係でこんなクエストをやりましたよね俺。」

 

「えぇ、でもお金を稼ぐには自由分でしょう?」

 

「……じゃあ、他の誰かたちを連れていって、この仕事してきます。」

 

「はーい。」

 

『ああ、これはきっとまたまともな依頼ではないのだろう。猪達の時のようにどうせ闇ギルドが貼った正規ギルドへの嫌がらせのクエストなのだろう。』とマルクは内心でずっと思っていた。

しかし、30万という数字は彼にとってはとてもとても魅力的な数字だった。

ウェンディとシャルルが誰を誘うか悩んでるマルクに声をかけ、参加を決める。ルーシィがその金額に目を見張って参加を決める。ルーシィが参加するなら、とグレイとナツとエルザにハッピーも参加する。そしてグレイが参加するということでジュビアも参加する。

 

「かなり大所帯になりましたねほんと……」

 

「……家賃が、ね。」

 

「ルーシィさんつい最近溜まってた家賃払い終えたって話でしたけど。」

 

「……これからの分を払えたわけじゃないわ。」

 

「……じゃあ、行きますか。」

 

「「「おー!」」」

 

尚、依頼主の屋敷に行ってみるとまず男女を分けられて男衆に闇ギルドの下っ端が襲いかかってくる。同時に女衆にも下っ端が襲いかかってきていたが、これを一瞬で撃沈させる。

屋敷の主も戦闘に参加しようとするが、瞬殺される。すると諦めが悪い屋敷の主が大量に下っ端を呼んで大乱戦になり、屋敷が倒壊する。

という、『またこの展開か』というオチが待っているのだが……それはまた別の話なのである。




年内最後、丁度31日に投稿できました
読んでる皆様方、良いお年を

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