FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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オリジナル話です


仕事

「……という訳で、仕事に行こうと思います。と言っても……それなりの仕事を回してもらってないので……簡単な奴しかないけど。」

 

「どういうわけだよ、おい。」

 

「お金……ないもんね……」

 

「ガジル……お前も、仕事で報酬を貰ってきた方がいいと思うぞ。鉄が食えなくなっても知らんからな。」

 

「うぐっ……そこら辺のもん食っときゃあいいだろうが!」

 

「そこら辺に鉄が落ちてるならな。」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドで騒ぐナツを除いた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達とハッピーを除いたリリーとシャルルのエクシード組。

アクノロギアに襲撃され、皆無事に帰ってきたら七年の月日が経ってしまっていたという事実。

それは、金銭的な問題が強く出てしまっていた。そう、家賃や食費などである。

 

「けど、多分どの仕事も大して報酬もらえないわよ?今このギルド……弱小ギルドだし。」

 

「……そればっかりは、どうにもならないから……」

 

「つかよ。火竜(サラマンダー)はどうしたんだよ。」

 

「何でも、食費入れてた金庫が無くなったので、ルーシィさんのお父さんにいい仕事紹介しに行ってもらうのだとか。」

 

「は?じゃあなんでついて行かなかったんだよ、そっちの方がいい仕事貰えるってこったろ?」

 

「まぁ……あんまり大勢で行くのも迷惑かかりますし。それに、こっちにも探せば実りのいい仕事が……お、これなんかどうですか。

上手く行けば家賃くらいまでならなんとか稼げそうですよ。」

 

そう言ってマルクは一つの依頼書を取る。そして、その紙をウェンディ達に見せる。

 

「えーっと……『凶暴な暴れ猪の退治、1匹につき1000J』……ってこれ、すっごく危ない依頼なんじゃ……」

 

「ウェンディに危険な真似はさせねぇよ。下、確認してみ。」

 

「へ?……『治療の心得がある方がいる場合、別途で報酬追加』……」

 

「……話がうま過ぎやしねぇか?」

 

「だが、弱小ギルド扱いとはいえ正規ギルドに詐欺まがいの以来は出さんだろ……やるしかないだろうな。」

 

「んじゃ、これに決定という事で!」

 

マルクは、ミラに依頼書を見せてクエストに向かう。依頼した者は、山奥にある静かな村の一つ……家賃やその他もろもろを稼ぐ為に、多少危険な真似に手を出さねばならない状況を治すため、マルク達はそこに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ……あんたらが依頼を受けてくれるのかね……まさかかの有名な妖精の尻尾に来てもらえるとはのう……」

 

依頼者は1人の老人だった。だが、既に弱小ギルドとなっているのにかの有名なと付けるこの老人に、少しだけ心配が入る。

 

「……おい、この爺さんボケてねぇか?」

 

「こんな山奥ですし……もしかしたら致命的なレベルで情報が伝達されてないだけでは……」

 

「それはそれで……」

 

ボソボソと小さい声で話し合う中、老人はそれに気づかずにそのまま依頼内容を話し始める。

 

「実はのう……ココ最近、謎の猪の群れが現れての……それの駆除に当たって欲しいんじゃ……どこからともなく現れた猪に、村の者達も傷だらけで最早蹂躙されるほかなくてのう……既に食料も食い荒らされて

ココ最近は水場も取られてしもうた……」

 

「……分かりました、ならその猪達を退治すればいいんですね?」

 

「……つってもよ、具体的に何頭くらいいるんだよその群れは。10匹程度じゃあすぐに終わっちまうぜ?」

 

ガジルの質問に、老人は視線を上に向ける。目を細めておおよその数を把握しているのだ。

 

「……奴らは、山の頂上付近にある遺跡に群れを構えておるのじゃ。未だすべてを見た訳じゃないが……恐らく、50はくだらんじゃろう。」

 

「それはまた随分な数だな。」

 

「とりあえず、俺とガジルさんで行きましょう……」

 

「おい、何勝手に……」

 

「リリー、ウェンディとシャルルを頼むな?」

 

「分かった。気をつけていけよ二人とも。」

 

「けっ……リリーに免じて何も言わねぇでおいてやる。」

 

こうして、ガジルとマルクは山の頂上まで登ることにした。猪を借り尽くすために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つか、なんで俺たち二人にした?リリーもこっちに連れてきてたら楽だったろうよ。

俺一人でも十分だがな。」

 

「もし入れ違いになった時困るでしょ、ウェンディだけだと押されかねないから……」

 

「……ほんと、過保護だなお前。」

 

「そう、ですかね……あ、見えてきましたよ。お爺さんが言ってた遺跡。パッと見は何もいなさそうですけど……」

 

見えてきた遺跡。そして、ほぼ同時に二人の滅竜魔導士としての嗅覚は、この辺り一帯の獣臭さを捉えていた。

 

「……血の匂い……こりゃあ、村の人間のもんか?」

 

「ですが……濃い匂いでも無いので人喰い猪とかではなさそうですけど……」

 

「……ま、確かめてみりゃあ済む話だな。」

 

ガジルのその言葉に納得して、二人は遺跡へと向かう。しかし、言われていた猪達の姿はその場には影も形も存在していなかった。

 

「……どういう事だ?獣臭さはここが一番強え……の割に、ガキの猪すら見当たらねぇ。」

 

「……あれ?」

 

「あ?どうした。」

 

何かを感じ取ったマルク。遺跡の真ん中まで歩いていき、そこで突然地面に耳を当て始める。

 

「なんだ?そこになんかあんのか?」

 

「変な音っていうか……いえ、音自体はこうやって地面に耳をつけてないと、分からないくらいなんですけど……変な魔力を感じます。」

 

「……ちょっとどいてろ、鉄竜棍!」

 

ガジルが、マルクの指定した部分を破壊する。すると、いとも簡単にそこの部分だけ床は崩れ、中から水晶……否、魔水晶(ラクリマ)が現れる。

 

「んだこれ?」

 

「さぁ……?でも、なんかすごく嫌な予感と言いますか……とりあえず良くないものだってのはわかります。」

 

「そうだな……」

 

「とりあえずこれだけ回収して魔力の吸収しておきますね。破壊するより安全でしょうし。」

 

「おう。」

 

マルクは手を伸ばして、そのラクリマを回収する。そして、軽く自分の魔力を通してそのラクリマから魔力を無くす。

 

「なんか変わったこと起きたか?」

 

「……うーん、別段変わったことは起きてなさそうですけどね。とりあえず一旦村に戻りましょうか。」

 

少し腑に落ちないながらも、それっぽいものを破壊した二人は一旦村に戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マルクー!!ガジルさーん!!」

 

「ウェンディ!?どうした!?」

 

「……んだあの猪の群れ?」

 

シャルルに運んでもらいながら、道中でマルクとガジルに合流するウェンディ。

シャルルとリリーも付いているが、何故かリリーは戦闘モードである人並みの大きさになっていた。

 

「知らん!気づいたら囲まれていた!!」

 

「ウェンディを追ってきてるってことは……ま、とりあえず一旦あの猪の群れを退治しますか。」

 

「ギヒ……上手く行けば晩飯の材料だな。」

 

「かなりの数確かにいますが………なんとか、行きましょうか!!」

 

そうして、マルクとガジルはウェンディとリリーと共に猪の群れに対して魔法を使っていく。

確かに血気盛んで、猪突猛進を体現したかのような攻撃性を猪達は秘めていたが、マルク達によってすぐに追い返されてしまう。

 

「よし、とりあえず追いましょうか。もしかしたら巣を移動させた可能性だってありますし。」

 

「そうだな、追うとしよう……どうしたガジル、怪訝な顔をして。」

 

「……いや、何でもねぇ。」

 

ウェンディとガジルはシャルルとリリーに掴んでもらい空を飛び、マルクはそれを追いかけるように地面を走っていく。

猪達の群れは村の方に走っていっており、面々はそれを追いかける……が、村についた時点で見失ってしまう。

 

「……あれ?確かに村の方に来ましたよね?」

 

「あぁ……おい小娘、お前が囲まれたのは村での話だよな?」

 

「は、はい……あの時はなんとか3人で村人を探してから二人に合流したんですが……何事も、無かったかのように……」

 

「……どういう事だ?」

 

「……考えるのは後にしておこう。先程のことを把握している村人もいるはずだ。その村人を探して、情報をみんなで手分けして集めるのが良さそうだ。」

 

リリーの出した提案に、マルク達は頷く。とりあえずその場は一旦解散して、全員で情報を集めることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、全員の情報を照らし合わせると……」

 

「『村人しか知らない避難場所に逃げていた』……ということになるけど……」

 

「どう考えてもありえねぇな。小娘が俺達と合流する時ならともかく、俺達があのイノシシを追いかけて村に入ったところまで確認している。

の癖に、村の奴らは外に出てた……嘘くせぇな。」

 

「嘘くさい、というと?」

 

「俺達が向かった先に、猪共はいなかった。しかも村の方から襲ってきた……となりゃあ村の奴らがなんか隠してるのは明白だろ。

猪を討伐してほしい……っつーのも、嘘かも知んねぇしよ。」

 

ガジルの言葉で、一同に沈黙が訪れる。しかし、ガジルの言っていることを是とするならば、同時に疑問も出てくる。所謂、隠している理由と嘘をつく理由だ。

 

「……で、実際なんの目的があってそんなことするのか……って話になりますよね。」

 

「村人が、流れ者を騙して流れ者を生贄に捧げるというのは、ありえない話ではないが……」

 

「ふぇ!?い、生贄!?」

 

「例えばの話に決まってるでしょう?」

 

リリーの話にウェンディは軽く驚いてしまったが、それをシャルルが制す。それを見てから、リリーは話を続ける。

 

「……この村には、それらしきものはなかった。勿論、すべてをちゃんと見た訳では無いが……そういう伝統があるならば、どこかしらに作っているはずなのだ。」

 

「作ってる……と言えば、山の上の遺跡……あれはそれっぽさこそあったな……なんの遺跡か、少しだけ気になってたんだよあれ……変なラクリマもあったし。」

 

「……変なラクリマ?どんなものだ?」

 

「ん、あぁ……遺跡の床に隠されててさ、床をガジルさんが壊してそれを見つけたんだよ。

随分と嫌な魔力を感じたから、一旦魔力を抜いておいたけど……」

 

「……今考えてても埒があかねぇなぁ…一旦、この客人用の家とやらで休ませてもらおうぜ。」

 

大きな欠伸をしながら、ガジルがそう提案する。これ以上思いつくこともやることも無いため、それに関しては一同は同意する。

しかし、心に残る不安感はあった。村に入った猪達はどこに消えたのか?何故村に入ってきた猪達を村人が認知していないのか。

 

「……考えててもしょうがないし、俺も少し休むか。」

 

そう言って、マルクはゴロンと床に寝転がって休み始める。他の者も似たように寝転がるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数時間が経過した頃にマルクは目を覚ます。特に何かを感じたわけもなく、ただ目が覚めただけである。

 

「……変な時間に目が覚めたな…」

 

そして、何となく全員の顔を見回してから立ち上がって体を伸ばす。寝転んでいたつもりだったが、どうにも眠ってしまっていたようだった。

 

「……猪達は、俺達のところに向かったきり……さて、村にはいつ来るのか……」

 

「マルク……?起きてるの……?」

 

目を擦りながら、欠伸をしつつウェンディがマルクに声をかける。マルクもウェンディの方に向き直ってから、微笑んでその頭を撫でる。

 

「んん……ほら、もう少し寝よ…?」

 

「そうだな……探索はまた明日にでもしよう……」

 

そう言ってマルクはウェンディに寄り添いながら、またまぶたを閉じる。今疑問に思っていることや、不安に感じているすべてが微睡みに消えるかのように、甘く眠気の彼方へと溶け込んでいく。

まるで怠け者の様に、その思考はまた明日でいいやとなりながら……マルクは眠りにつくのであった。


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