FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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天空の巫女、とは

「ジュラさん!ジュラさん大丈夫ですか!?」

 

マルクはジュラに呼びかける。しかし、聞こえるのはうめき声だけだった。マルクは、どうすればいいのかを冷静に考える。

敵が一夜に化けていた以上、その一夜も現状は分からないが戦闘不能になっている事は確実だとその結論にたどり着く。

 

「たとえ生きていたとしても……多分重症……なら、まずやれることは……!」

 

マルクは走り出す。少なくともここが別荘という名の建物である以上、救急箱の一つや二つはあるかもしれない、と考えたからだ。

そして、あまり頼りたくなかった自分の中の力。『滅竜魔導士』の鼻の良さをフルに使って救急箱を探し当てる。

 

「よし……まだ息があるな……ジュラさん、ちょっと痛むかもしれないけど……すいません!」

 

マルクは、すぐさまジュラの元に戻って応急手当を施していく。しかし、本当に簡易的なものである以上、傷口がすぐに開いてしまうこともありえない訳ではなかった。それに、刺された痛みというのはそう簡単に引くものでもないだろうとも。

 

「後は……一夜さんだけ。」

 

そう言って、マルクは一夜が最後に一人になったであろう場所に向かう。そう、トイレである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メェーン……助かったよ……と言うか、君は無傷なのだね……」

 

「そんなことより……ジュラさんが傷を負っているんです。何か……せめて痛みが緩和するくらいのものでもあれば……」

 

「なるほど、その点では私も手伝えるだろう……私の魔法は香り(パルファム)……つまり、香りによる効果で色々行う魔法だ。

肉体強化や敵の戦意の喪失……痛みの緩和なども可能さ。」

 

「それだ!!」

 

一夜が何とか無事だったので、彼の持つ魔法を使いジュラの痛みを何とか緩和させることに成功した。

しばらくすれば、体から痛みが消えたジュラが起き上がる。

 

「凄まじいな……助かったぞ、一夜殿。マルク殿。」

 

「俺は応急手当しかしてませんよ……それよりも、早く先に言ったみんなと合流しないと。

何が起こったかは道すがら……」

 

そのまま一夜とジュラと一緒に、先に行った者達のところへと向かうマルク。

その間に、起こったことなどの軽い情報交換を行っていた。

 

「……それにしても、ウェンディ殿が滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だったとは……」

 

「えぇ……ウェンディは回復魔法持ち、魔力を大量に消費してしまいますが、二人の傷を回復させることは可能なはずです。」

 

「……ふむ、となると君も滅竜魔導士なのかね?」

 

「……俺は……」

 

一夜からの質問に、答えを言い淀んでしまったマルク。しかし、その一瞬の間で何かに気づいたジュラが先行するように素早く駆け抜けていった。

 

「ジュラさん!?ってあれは……」

 

六魔将軍(オラシオンセイス)、まずいね……私達も急ぐぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩鉄壁(がんてつへき)!!」

 

六魔将軍からの攻撃を、ジュラが魔法で防ぐ。本気の攻撃ではなかったのか、はたまたジュラの魔法がすごいのかは兎も角としてその場にいた全員は無事だった。

 

「━━━今は一夜殿の『痛み止めのパルファム』で一時的に抑えられているが……」

 

「六魔将軍め、我々が到着した途端に逃げ出すとは……さては恐れをなしたな。」

 

「あんたボロボロじゃねぇか!!」

 

攻撃はジュラが防いだ。しかし、それ以前に全員が満身創痍で傷ついていた。流石にこのままでは六魔将軍の討伐どころか、一人も倒せないままに全滅してしまう……ということにもなりかねなかった。

 

「皆さんにも私の痛み止めのパルファムを……」

 

それを察した一夜がまずは魔法により全員の痛みを和らげていく。そして、ある程度痛みが引いたところで全員が冷静になり始める。

 

「あいつら〜……ウェンディとハッピーを……どこだー!!ぐぇっ!!」

 

ナツが走り去ろうとした瞬間、シャルルがナツのマフラーを引っ張って止める。

 

「羽!?」

 

「猫が飛んでる……」

 

「これは(エーラ)っていう魔法……ま、驚くのも無理はないですけど。」

 

「ハッピーと被ってる。」

 

「何ですって!!」

 

ナツの言葉で一瞬荒くなったシャルルだったが、それどころではないと冷静になりながら情報を把握していく。

 

「……ともかく、ウェンディとオスネコの事は心配ですけど……闇雲に突っ込んでも勝てる相手じゃないってわかったでしょう。」

 

「シャルル殿の言う通りだ。敵は予想以上に強い。」

 

「それに……」

 

シャルルはそれ以上言わず、視線だけを変える。そこには一夜の痛み止めのパルファムが効かず、腕を抑えながら苦しむエルザの姿があった。

そして、エルザはルーシィのスカートのベルトを取り外してそれを腕に巻き付ける。そして自分の持っていた剣を地面に投げ捨て、痛む腕を突き出す。

 

「━━━斬り落とせ。」

 

「馬鹿な事言ってんじゃねぇ!!」

 

「分かった、俺がやろう。」

 

「っ!リオンてめぇ!!」

 

剣を広い、リオンは即座に腕を切り落とすことに賛成する。エルザが戦えるためには仕方が無いこと……だが、エルザを除いた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々はやはりそう片腕を斬り落とすことは嫌なのか、反対の意思を示す。

 

「今この女に死んでもらうわけにはいかん。」

 

「やるんだ!早く!!」

 

「やめろリオン!!」

 

反対派と賛成派による言い争いをしている中、リオンは淡々とその剣をエルザに向かって振り下ろす━━━

 

「……貴様はこの女の命より腕の方が大事か?」

 

だが、妖精の尻尾のそれはグレイ・フルバスターの氷の造形魔法によって腕を斬る前に静止される。

 

「他に方法があるかもしれねぇだろ?短絡的に考えるなよ。」

 

そして毒の痛みで限界が来たのか、エルザは倒れる。周りにいた面々は焦るが、シャルルが一歩前へと踏み出す。

 

「ウェンディなら助けられるわ。

今更仲間同士で争っている場合じゃないでしょ?力を合わせてウェンディを救うの。

……ついでにオスネコも。」

 

「……ウェンディは、解毒以外にも解熱や痛み止め……傷の治癒も出来ます。それなら、みなさんの傷も治すことが出来るはずです。

……あまり、使わせたくはありませんが。」

 

シャルルに続いてマルクが説明する。それに皆関心を寄せて、そして同様に少しだけ驚いていた。

 

「治癒って……失われた魔法(ロストマジック)じゃなくて?」

 

「まさか天空の巫女って言うのに関係あるの?」

 

マルクは言葉を詰まらせたが、ここで情報を渡さない事にはウェンディに対する信用を得られないと考えて渋々話す。

 

「……ウェンディは、天空の滅竜魔導士……天竜のウェンディ。」

 

「滅竜魔導士!?」

 

「詳しい話は後、今私たちに必要なのはウェンディよ。そして目的は分からないけれど、あいつらもウェンディを必要としてる。」

 

皆が驚いてる中でシャルルが冷静に目的を作り出す。倒れたエルザの為、そしてハッピーとウェンディ自身を助けるために。

 

「行くぞォ!!」

 

「「「オォッ!!」」」

 

一致団結し、今ここにウェンディ&ハッピーの奪還作戦が行われることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━天空の滅竜魔導士ってさぁ……何食うの?」

 

「空気。」

 

「うめぇのか?」

 

「さぁ?」

 

「……それ、酸素と違うのか?」

 

ウェンディとハッピーを助け出すため、今連合軍のメンバーをほぼギルドごとに分けて森の中を走っていた。

マルクは、ナツとグレイについて行くと決めたシャルルを守るために三人について行くことにしたのだ。

 

「……ウェンディは……ナツさん、同じ滅竜魔導士である貴方に会えるんじゃないか?って思って志願したんです。

もし、彼女が参加していなかったら多分参加してたのは俺だけだったと思います。」

 

「何で俺?」

 

「七年前に滅竜魔法を教えてくれたドラゴン……天竜グランディーネ。七年前の七月七日にいなくなったドラゴンを探すために。もしかしたら居場所を知ってるんじゃないかと思ったらしくて。

……それに、俺も……」

 

「イグニールとガジルのドラゴン……それにウェンディも七年前……んがっ!」

 

考え事をしていたせいで、ちょうど頭の位置ぴったりの木の枝がナツに直撃して、ナツは転ぶ。

そして、シャルルはマルクの肩に乗っていたが、耳元で呟く。

 

「……自分が滅竜魔導士ってことは教えないの?」

 

「……今言う事でもないだろ。俺はなくても戦える。今必要なのは天竜の滅竜魔導士のウェンディであって……魔龍の滅竜魔導士じゃない、治癒魔法を使えない魔龍の滅竜魔導士はお呼びじゃないんだ。」

 

「貴方がそう言うのなら、私は何も言わないけれど……って何これ!?」

 

シャルルが向けた視線の先、そこには葉や幹までもが真っ黒になった木が存在していた。

 

「木が…黒い……」

 

「き、気持ち悪ぃ…!」

 

四人がその異様な光景に驚いていると、横から葉が動く音が聞こえてくる。マルクとナツはそれに反応して横を見ると、見知らぬ誰かがそこにはいた。

 

「━━━ニルヴァーナの影響だって言ってたよな、ザトー兄さん。」

 

「ぎゃほー、あまりに凄まじい魔法なもんで大地が死んでいくってなァ……ガトー兄さん。」

 

「誰だ!?」

 

グレイが声を出した瞬間、四人の周りから大量の人間が出てくる。どう考えても味方の雰囲気ではなかった。

 

「ちょ……ちょっとぉ━━━」

 

「ニルヴァーナの影響だっt「さっき言ったぜガトー兄さん。」…そうかいザトー兄さん。」

 

「囲まれてるわよ!!」

 

「うほぉ!猿だ!猿が2匹いんぞおい!!」

 

明らかにどうでもいいことに驚いているナツ。マルクは背中の杖を2本取り外しつつ、静かに戦闘態勢に移る。

 

「こ、こいつら妖精の尻尾だ!!こいつらのせいで……!」

 

「オォ!もう一匹増えたー!!」

 

「……誰だ?あんたら。少なくとも味方って雰囲気じゃないけど。」

 

「六魔将軍傘下、裸の包帯男(ネイキッドマミー)……」

 

「ぎゃほぉ!遊ぼうぜぇ。」

 

嫌なにやけ面をしながら闇ギルドの一角は、全員が全員戦闘態勢に移行する。明らかな時間稼ぎ目的なのは明白であった。

 

「敵は……6人だけじゃなかったっていうの……!?やられた……!!」

 

敵が6人じゃなかったことに、イラつくシャルル。ウェンディを助けたいのにこうでは、ウェンディが明らかに危ないからだ。

しかし、妖精の尻尾の二人はそうではなかった。

 

「こいつァ丁度いい。」

 

「ウホホッ、丁度いいウホー」

 

「何言ってんのあんた達!!」

 

「拠点とやらの場所を吐かせてやる……!」

 

「今行くぞ!ハッピー!ウェンディ!!」

 

そう言いながら戦う準備なのか、冷気を出すグレイと炎を出すナツ。そして二人の発言を自分達を軽視するかのように受け取ったのか、元々まともなやつが集まらない闇ギルドのリーダー核であろう二人はそれを挑発と受け取った。

 

「舐めやがってクソガキが……」

 

「六魔将軍傘下、裸の包帯「死んだぞテメーら。」」

 

「何なのよ妖精の尻尾の魔導士は……!今の状況分かってるのかしらっ!!」

 

「……俺達だけ、って訳でもないだろう。こりゃあ傘下の闇ギルドありったけ投入しやがったな六魔将軍……!」

 

そして、戦闘は開始される。グレイが氷の造形魔法によって敵を凍らしたり氷そのものを作り出して隆起させ、それで敵を倒していく。

そしてナツがありったけの炎で敵を吹き飛ばしていく。

 

「……化物かよ、あの2人。っていうかシャルル!俺から離れるなよ!!」

 

「分かってるわよ!!」

 

そして、飛んでくる魔法をマルクは障壁で防いだり相手を眠らせるなどして何とか二人に食らいつくように敵を無力化していく。

 

「きひひっ!その猫戦闘出来ねぇみたいだなァ!!」

 

やはり、狙われるシャルル。しかしそんなことを分かりきっているマルクはシャルルに障壁を張って攻撃が当たらないようにしていた。

 

「……マルク……」

 

シャルルは自分が今足でまといになっていること、そして今頃ウェンディがどうなっているかが気になっているせいで、不安になっていた。

拠点の場所を探す……その為に、その情報をこいつらを倒すことで手に入れようとしている。

 

「すまんシャルル!羽!あった方が楽だ!!」

 

「しょうがないわね……私が傷つかないようにしなさいよ!!」

 

「分かってる!!」

 

そうして、4人はウェンディとハッピーのいるであろう六魔将軍の拠点を聞き出すために、闇ギルドの一つを叩き潰すために全力を尽くすのであった。




基本的に、主人公の視点だけを移していこうと思います

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