FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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S級魔導士昇格試験編
S級魔導士昇格試験


「……なんか、最近やけにギルドか騒がしいですよね。ミラさんは何か知ってますか?」

 

ずっと慌ただしい中のギルド。マルクはしっちゃかめっちゃかになっている中をどうにかこうにか移動して、ミラの元までたどり着いていた。

 

「あら、その質問はさっきも聞いたわ。ルーシィから。」

 

「ルーシィさんも同じ事聞いてたんですか……で、何なんですかこの騒がしさ。

いつも通りの人もいるにはいますが……基本、みんな騒いでばかりです。」

 

「そうね……じゃあ、ひとつだけヒントをあげます。騒いでいる人の共通点、騒いでない人の共通点、騒いでいる人と騒いでない人の違うところ……この三つを考えれば、少し答えに近づくと思うわ。」

 

「共通点と、違うところ……?」

 

依頼書を渡され、それを承認してまた別の依頼書を渡されてそれを承認して……ミラは仕事をしながらマルクと話していた。

そして、マルクはじーっと風景に目をやっていた。ミラのヒントがなんなのかを探るために。

 

「……騒いでないのは、リリーとシャルルとウェンディと……エルザさんにミラさん。それとルーシィさん……今いるのは俺を含めた7人。

全員に共通することって……?」

 

「ふふ……」

 

悩むマルクを見て微笑みながら、ミラは仕事をこなしていく。結局、マルクはこの日答えがわからないままに帰路に着いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、マルクがギルドに来た時には既に妖精の尻尾(フェアリーテイル)には沢山の人が集まっていた。

 

「ウェンディ!シャルル!!」

 

「あ!マルク!」

 

「この騒ぎ何かわかるか?」

 

「マスターから何か重大発表があるんだって。」

 

「興味無いわ。」

 

見つけたウェンディに声をかけるが、やはり何故ここまで人数が集まっているのか分からなかった。

すると、奥にかかっていた垂れ幕が広がる。そこに居たのは、マスターとエルザとギルダーツとミラの四人が立っていた。

 

「マスター!」

 

「待ってましたー!!」

 

「早く発表してくれー!!」

 

「今年は『誰』なんだー!?」

 

口々に声を出す妖精の尻尾のメンバー達。どうやら、殆どの人物がこの騒ぎの正体を知っているようだった。

 

「コホン……妖精の尻尾古くからのしきたりにより、これより……S級魔導士昇格試験出場者を発表する。」

 

マスターのこの発言により、妖精の尻尾中が声を荒らげる。そして、マルクも前日のミラのヒントに、ようやく合点がいっていた。

 

「だからルーシィさんより前に入ってた人達は知ってたわけだ……」

 

「今年の試験会場は、天狼島……我がギルドの聖地じゃ。」

 

「S級試験……何をするんだろうね?」

 

気になったウェンディが、シャルルとマルクに視線を向けて尋ねる。しかし、二人も知らなかったのだから望む答えが出るわけがない。

 

「さぁ?多分、こういう直前までバレないようになっているんじゃないかしら?」

 

「ただ……どっちにしろハードなことには変わりなさそうだな。」

 

「各々の力、心、魂……わしはこの1年見極めてきた。参加者は八名。

『ナツ・ドラグニル』『グレイ・フルバスター』『ジュビア・ロクサー』『エルフマン』『カナ・アルベローナ』『フリード・ジャスティーン』『レビィ・マクガーデン』『メスト・グライダー』」

 

「……メスト・グライダー…?」

 

聞きなれない名前が心に引っかかるマルク。しかし、自分が聞いたことないだけだろうと、気にしないでいくことにした。

 

「今回はこの中から合格者を一名だけとする。試験は1週間後、各自、体調を整えておけい。」

 

「っ!!」

 

突然、何か驚くようなものでも見たような表情になるシャルル。マルクとウェンディはすぐさまそれに気づく。

 

「どうかした?シャルル。」

 

「べ、別に……」

 

だが、はぐらかされてしまったため、気のせいだと思って再びマスターの方へと視線を戻す。

 

「初めてのものもおるからのう。ルールを説明しておく。」

 

「選ばれた八人の皆は、準備期間の1週間以内にパートナーを一人決めてください。」

 

「パートナー選択のルールは二つ。一つ『妖精の尻尾のメンバーであること』二つ『S級の魔導士はパートナーに出来ない』」

 

エルザとミラの説明で、理解と納得をするマルク。S級の試験なのに、確かにS級をパートナーに出来てしまえば怖いものがなくなるからだ。

 

「……けど、それでも一人だけなんだな。厳しいな、意外と。」

 

「試験内容の詳細は天狼島に付いてから発表するが、今回もエルザが貴様らの道を塞ぐ。」

 

「今回は私もみんなの邪魔をする係になりまーす。」

 

マスターの発表と、ミラの申告でざわつき出すメンバー。妖精女王(ティターニア)と呼ばれたエルザと魔人ミラジェーンと恐れられたミラの二人が邪魔をするのだ、不平不満は出てもおかしくはなかった。だが、まだもう一つだけあった。

 

「ブーブー言うな。S級魔導士になる奴ァ皆通ってきた道だ。」

 

「……もしかしなくても、ギルダーツさんも参加するんだなこれ。難易度が高すぎるな。」

 

「選出された8名と、そのパートナーは一週間後にハルジオン港に集合じゃ。以上!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん初挑戦だったんですね。」

 

「そうよね、なんか意外だったわ。あんた達みんなが……って言うのが余計に。

そういえば、みんなもうパートナーって決まってるの?」

 

マスターの発表のあと、ナツ達は皆一か所に集まっていた。エルフマン、ジュビア、グレイ、ナツの4人は楽みにしていたり、焦っていたりと、それぞれの反応をしていた。

 

「俺はもちろん、ハッピーだ。」

 

「あい。」

 

「ハッピーはズリィだろ!もし試験内容がレースだったら、空飛べるなんて勝負にならねぇ。」

 

「別にいいんじゃない?」

 

「俺も別に構わねぇよ、戦闘になったら困るだけだしな。」

 

「酷いこと言うねグレイ……オイラは絶対ナツをS級魔導士にするんだ!」

 

「こればっかりは仲間といえど、絶対譲れねぇ!こうしちゃいられねぇ!修行だー!!」

 

「あいさー!!」

 

ハッピーはナツの前に立ち、キリッとした顔でみんなに宣言する。そして、ナツも皆に宣言する。

そして、修行するために走ってギルドから出ていく。

 

「……S級魔導士、かぁ。まぁ魔法的に、というか……魔力的にパートナーに出来る人が限られてくるから、参加しない方が良かったのかもな。」

 

マルクはボソッとつぶやく。自嘲でも自虐ネタでも何でもない、本当にそう思ったからこその独り言だった。

 

「あの、ジュビアはこの試験を辞退したい……」

 

「えぇ!?何で!?」

 

そして、何故か突然にジュビアはこの試験を辞退する気を見せていた。やけにモジモジしているのが、マルクは少し気になったが、すぐにその答えは出た。

 

「だって……様の……パートナーに…なり……たい……」

 

「何だって?」

 

「だから、あの……ジュビアは……」

 

頬を赤らめて、言い淀んでるジュビアを見て親切心が湧いたのか、それとも野次馬魂か。ルーシィがニヤニヤしながらグレイに話す。

 

「あんたのパートナーになりたいんだって。」

 

「ア?」

 

「ほら!!やっぱりルーシィが狙ってる!!」

 

「狙って無いわよ……」

 

だが、ジュビアのそんな淡い願いはS級魔導士試験の資格を得てしまったことで、崩れてしまっていた。

 

「悪いが、俺のパートナーは決まっている。」

 

「久しぶりだね、皆……そう言えば君とは初対面だったかな?マルク。」

 

「は、はい……初めまして……獅子座の星霊のレオ……いえ、ロキさんでしたっけ。」

 

「あぁ……これから宜しくね……っと軽く自己紹介も済んだから話を戻そうか。」

 

「……昨年からの約束でな。」

 

「ルーシィ、悪いけど試験期間中は契約を解除させてもらうよ。心配はいらない、僕は自分の魔力で(ゲート)を潜ってきた。だから君の魔法は使えなくなったりしないよ。」

 

「なんて勝手な星霊なの……?」

 

ロキの行為で、ルーシィが困惑の表情を浮かべていた。それを見て少しだけ、同情したくなってしまったマルクであった。

 

「でもおめェ、ギルドの一員ってことでいいのかよ。」

 

「僕は今でも妖精の尻尾の魔導士だよ。ギルドの誇りをかけて、グレイをS級魔導士にする。」

 

「頼りにしてるぜ?」

 

「任せて。」

 

「……この二人ってこんなに仲良かったっけ?」

 

グレイとロキの様子を見て、少しだけルーシィが頬を膨らませていた。ここまで仲が良かった印象が無かったからこそ、何故か自分より優先されていることになのかはマルクには分からなかったが、嫉妬していることだけは目に見えて理解出来た。

 

「つーわけで、お前も本気で来いよ。久しぶりに熱い闘いをしようぜ。」

 

「っ!!」

 

グレイのセリフの後に、ジュビアは顔を真っ赤に染めて俯き始める。いつものグレイに対する愛による妄想だろうと苦笑するメンバーもちらほら。

 

「私がジュビアと組むわ!」

 

「本気かリサーナ!」

 

「私、エドラスじゃあジュビアと仲良かったのよ。それにこっちのジュビア…何か可愛いんだもん。」

 

「リサーナさん……」

 

「決定ね!」

 

リサーナは満面の笑みでジュビアの手を握る。だがジュビアは『もしかしてリサーナもグレイを狙っているのでは?』なんてことをブツブツと呟いていた。

 

「ちょっと待てよリサーナ!それじゃあ、俺のパートナーが居ねぇじやねぇか!!」

 

「そう?さっきから熱い視線を送ってる人がいるわよ。」

 

「へ━━━」

 

そう言ってリサーナが向けた視線の先に、確かにエルフマンを見ている者はいた。エバーグリーンである。

 

「あぁ……エバーグリーンさん、フリードさんのパートナーに選ばれなかったから……」

 

「そ、むくれてるみたいなのよ。 」

 

「エバーグリーン……熱い、って言うより石にされそうな視線じゃねぇか!!」

 

「……まぁ、エルフマンさんがどうするかは置いといて、今決まってるのはナツさんがハッピー、グレイさんがロキさん、フリードさんがビッグスローさん、ジュビアさんがグレイさん、になったんですね……」

 

「残りのメンバーは誰を選ぶんだろ……」

 

わいわいとはしゃぐ中、そういうパートナー選びの予想が、選ばれていないメンバーの中で予想されていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、雪降るマグノリアの中をウェンディとマルクとシャルルは歩いていた。

 

「どうしたのシャルル、朝からずっとおとなしいね。」

 

「ちょっとね……何か嫌な予感がするのよ。この試験とかいう奴……あんたは参加しちゃ絶対にダメだからね。」

 

「私なんかパートナーにする人いないし、大丈夫だよ。」

 

「それはどうかな……天空の巫女。」

 

「あ……えーっと、貴方は……」

 

突然後ろから声をかけてきた男。それはS級魔導士昇格試験に選ばれた一人、メスト・グライダー本人だった。

 

「俺はメスト。ミストガンの弟子だった。」

 

「ミストガンの弟子!?」

 

「……?」

 

メストの喋る事に、少しだけ違和感を覚えるマルク。しかし、違和感の正体がまるで掴めず、少しだけもどかしい気分になった。だが、その当の本人であるメストは、何やら顔を上に向けながら口を大きく開けていた。

 

「君の事はミストガンからよく聞いている。」

 

「……あ、あの……何をしているんですか。」

 

「雪の味を知りたいのだ。気にしないでくれ。」

 

「なんなのこいつ……」

 

「雪の味……?」

 

「マルク!?あんたも目の前の男みたいなことしないでしょうね!?」

 

シャルルに突っ込まれて少しだけ驚いたマルク。確かに今みたいな言動だとメストと同じように取られてしまうと、思い直したのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「力を貸してくれないか。」

 

「それが人に物を頼む態度なの!?」

 

「すまん……どうも俺は知りたいことがあると夢中になってしまう癖があるのだ。ウェンディ、君の力があれば俺はS級の世界を知ることが出来る。頼む、力を貸してくれ。」

 

「え、でも……私なんか……」

 

「ダメに決まってるじゃない!!」

 

「……知りたい。冬の川の中というものを俺は知りたい。」

 

そして、唐突にメストは川の中に飛び込んでいた。

 

「こんな変態に付き合っちゃダメよ!!」

 

「流石にシャルルの意見に賛成だぞ今回は!!」

 

「でも……悪い人じゃなさそうだよ?それに私、恩人だったミストガンに何一つ恩返しとか出来なかったし。 」

 

「エドラスを救ったじゃない!それで十分よ!!」

 

「でもそれは結果論でしょ?私の気持ち的には……」

 

「ダメったらダメ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、結局喧嘩して、お互いに口聞かなくなったと。」

 

「そういう事ー……」

 

翌日、妖精の尻尾に来ていたマルクだったが、メストのことで喧嘩したウェンディとシャルルを見て一人でため息をついていた。

様子を見かねたリリーも、呆れていた。

 

「にしても……お前も反対してた、ということはやはりウェンディが心配か?」

 

「あぁ……心配だな。」

 

マルクは真剣な表情になって、ギルドにいるメストに目線を向ける。確かに、試験に行くウェンディのことが心配なのは確かだが、それ以上にメストに感じる猛烈な違和感にマルクは少しだけ顔をしかめるのでたった。


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