FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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ドロマ・アニム

竜鎖砲により、妖精の尻尾(フェアリーテイル)やマグノリアにいた人々の魔力や命によって生み出された、魔水晶(ラクリマ)。王国側の真の目的は、そのラクリマをエドラス唯一の魔力を持つ種族である『エクシード』の街、エクスタリアにぶつける事で、ラクリマとエクシードの両方を犠牲にして永遠の魔力を得ることだった。

アニマの影響を受けなかった滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のナツ、ウェンディは同じくアニマの影響を受けなかったエクシード、ハッピーとシャルルの力を借りてエドラスへ。

同じく滅竜魔導士であるマルクはその後に、ミストガン……エドラスにおけるジェラールの力を借りて、異世界エドラスへと降り立つ。ガジルもまた、滅竜魔導士であったので、三人が送られたあとに遅れて送られることに。

紆余曲折あり、ウェンディとシャルルはエクスタリアに向かいエクシード達に王国側の作戦を伝え、ナツとラクリマから開放されたグレイ、星霊ホロロギウムの能力により無事だったルーシィと共に竜鎖砲のところまで行った。

その間、グレイと同じくラクリマから開放されたエルザは、エドラスのエルザ、エルザ・ナイトウォーカーと対峙することに。

マルクもまた、同じようにエドラスのマルクであるマルク・オーグライと戦った。

しかし、王はオーグライがマルクから吸い取った魔力と、オーグライが体に埋め込んでいたラクリマに溜め込んでいた魔力、そして彼の命を糧にして竜鎖砲に魔法で壊せないようにカバーを作った。

竜鎖砲を破壊することは無理だと判断したナツ達は、ラクリマが乗った浮遊島を止めるために、エドラスの王国側にいるココのレギオンの力を借りることに。

そして、エクシード達はエクスタリアを守るために奮起して、ナツ達と同じように浮遊島を止めようとする。

その気持ちが、想いが実ったのか浮遊島は押し返され、ほぼ同時にミストガンがアニマの残痕を使ってラクリマを元の世界へと戻した。

それに皆が喜んでいたのも束の間、王国側が大量のレギオンを率いて、そこにいる全員の魔力を得るために、始末しに来たのであった━━━

 

「まだだ、まだ終わらんぞーーーッ!!」

 

「向こうのエルザ!!」

 

「てめぇ良くも……!!」

 

「誰か……リリーを助けて!!」

 

「任せてください!!」

 

エクシード唯一の王国側、パンサー・リリーはナイトウォーカーの武器により体を魔法によって貫かれる。

 

「スカーレットォォォ!!!」

 

「ナイトウォーカー……」

 

ナイトウォーカーに、戦闘を仕掛けようとするエルザだったが、ミストガンがこれを前に立ち、手で静止をかける。

 

「エドラス王国王子であるこの私に刃を向けるつもりか?エルザ・ナイトウォーカー。」

 

「くっ!!」

 

ナイトウォーカーが、ミストガンに攻撃するのを躊躇していたその時、どこからともなく声が聞こえ始める。

 

「ワシは貴様を息子などとは思っておらん。」

 

「王様の声!?」

 

「どこ!?」

 

「7年も行方をくらませておいて、よく戻ってこれたものだ……貴様が地上(アースランド)でアニマを防いで回っていたのは知っておるぞ。この、売国奴め。」

 

どこからともなく聞こえてくるエドラス王の声。その声の出どころは耳や鼻が常人よりもいい滅竜魔導士でも、追えないものだった。

 

「この声どこから……」

 

「おい!姿を見せろ!!」

 

「まだ戦おうとするのか…!?」

 

「貴方のアニマ計画は失敗したんだ。もう戦う意味など無いだろう?」

 

ここで、マルクや他の滅竜魔導士は森の方から聞こえてくる音を聞き逃さなかった。なにか巨大なものが歩いてくるような、そんな足音を。

 

「意味……?戦う意味だと?これは、戦いではない。王に仇なす者への報復……一方的な殲滅。」

 

「な、なにあれ!?」

 

「ワシの前に立ちはだかるつもりなら、たとえ貴様であろうとも消してくれる。跡形もなくなぁ……!」

 

そして、その姿を他の面々も目にする。その姿、大きさに驚愕を隠しきれなかった。

 

「父上……!」

 

「父ではない。ワシは、エドラスの王である。そうだ……貴様をここで始末すればアースランドでアニマを塞げる者はいなくなる。

また巨大なラクリマを作り上げ、エクシードを融合させることなど何度でもできることではないか。

フハハハハハッ!王の力に不可能はない!!王の力は絶対なのだ!!」

 

そして現れる大型の機械。何かの生き物のようなそのフォルムは、何処と無くドラゴンを彷彿とさせる姿でもあった。

 

「ドロマ・アニム……」

 

「ドロマ・アニム……こっちの言葉で、竜騎士の意味……ドラゴンの強化装甲だと!?」

 

「ドラゴン……」

 

「言われてみれば、そんな形……」

 

「強化装甲って何!?」

 

対魔専用魔水晶(ウィザードキャンセラー)が、外部からの魔法を全部無効化させちゃう搭乗型の甲冑!王様があの中でドロマ・アニムを操縦してるんだよう!!」

 

ドロマ・アニムは、空中で飛んでいるエクシード達を見ると、すぐに兵士達に命令を飛ばす。

 

「我が兵達よ!エクシードを捕らえよ!!」

 

「はっ!!」

 

そして、命令により兵士達はエクシード達を捕まえるためにレギオンを動かす。

当然、エクシード達にはレギオンどころか、兵士達を退けさせる手段を持ちはしない。

 

「マズイ!!逃げるんだ!!」

 

「「「わー!!」」」

 

エクシード達は散り散りになって逃げ始める。だが、それを王国側が逃すわけがなかった。

 

「逃がすなーっ!!」

 

何かの掃射装置を使い、それから発せられる光をエクシード達に向ける。すると、その光に当てられたエクシード達は、すぐさまラクリマに変換させられる。

 

「逃げろー!!」

 

「捕まったらラクリマにされちまう!!」

 

「エライこっちゃ!!」

 

「うわー!!」

 

エクシードをラクリマに変換する装置。それを見たエクシード達は、恐怖で我先にと逃げ出す。

しかし王国側はそれを何の躊躇いもなく追い始める。

 

「王国軍からエクシードを守るんだ!!ナイトウォーカー達を追撃する!!」

 

「そうだね。」

 

「あのデカブツはどうする?」

 

「相手にするだけ無駄だよう、魔法が効かないんだから。」

 

「かわしながら行くしかない!!今のエクシード達は無防備だ!!俺達が守らないと!!よし、行くぞ!!」

 

エルザ達の乗るレギオンも、王国のレギオン部隊を追い始める。だが、ドロマ・アニムに乗る王は、エクシードをラクリマに変換する邪魔をする者達を逃がす、ということは無かった。

 

「人間は一人として逃がさん!!全員この場で死んでもらう!!

消えろォオオオオオオオオオォォォ!!」

 

「魔導砲!?くそ、んなもん装備してんのかよあのデカブツは!!」

 

マルクは、ドロマ・アニムから発せられる光線に少し悔しさを感じていた。今の腕を負傷している自分では、滅竜奥義である『紫電魔光壁』が使えないからだ。

だが、その光線を咄嗟にレギオンと光線の間に入ってきたミストガンが止める。

 

「ミストガン!!」

 

「ミストガン?それがアースランドでの貴様の名か!?ジェラール。」

 

「くぅう……!エルザ!今の内にいけ!!」

 

「しかし……!」

 

「行くんだ!!3重魔法陣……!鏡水!!」

 

ミストガンは、ドロマ・アニムから発せられた光線を、自分の魔法により跳ね返し、それをドロマ・アニムに向ける。

 

「跳ね返し……!ぬう……!」

 

派手な爆発音と、土煙が舞う。しかし、その中から現れたドロマ・アニムは傷一つついていなかった。

 

「ドロマ・アニムに、魔法は効かん!!」

 

そして、ドロマ・アニムの肩部から現れた砲台により、ジェラールは撃ち落とされる。

 

「ぐああ!!」

 

「ミストガン!!」

 

「ファーハッハッハーーーー!!!」

 

「ミストガーン!!」

 

ミストガンを撃ち落としたドロマ・アニム。今度はレギオンに乗っている者達だと言わんばかりに、その照準をエルザ達の乗るレギオンに向ける。

 

「貴様には地を這う姿が似合っておるぞ!!そのまま地上でのたれ死ぬが良いわーーーっ!!

次は、貴様らだァ!!」

 

「くそっ!!アレをかわしながら戦うのは無理だ!!」

 

だが、口から再び光線を放とうとしたドロマ・アニムの首に誰かからの一撃が加えられる。それは、炎の一撃だった。

 

「何っ!?ぬぉっ!?」

 

そして、次は下から胴体と足に一撃ずつ加えられる。それは鉄と魔との一撃だった。

 

「誰だ!?魔法の効かん筈のドロマ・アニムに攻撃を加えているものは!!」

 

「天竜の……咆哮!!」

 

そして、止めと言わんばかりに天からの咆哮が加えられる。足を払われ、胴体を下から攻撃されて少しだけ宙に浮いていたドロマ・アニムは軽く吹き飛ばされてしまう。

 

「やるじゃねぇかウェンディ、マルク。」

 

「いいえ、攻撃としてはナツさん達の方がダメージとしては有効です。」

 

「俺も……足しか使えないから攻撃としてはダメージはそこまで見込めてないと思いますよ。」

 

「野郎……よくも俺のネコを。」

 

「ぬううう……!」

 

ドロマ・アニムに対峙するのは4人の滅竜魔導士。王は、多少とはいえドロマ・アニムにダメージを入れられたことが、気に食わなかったようだ。

 

「ナツ!」

 

「ウェンディ!マルク!」

 

「ガジル……」

 

残ってレギオンに乗っている者達が、滅竜魔導士達を心配する。だが、あれを相手取るには4人の力が必要だということも、少なからず理解していた。

 

「行け、ネコ達を守るんだ。」

 

ナツの言葉に、エルザは無言で頷く。時間が無いのだ、急がなければならない。

 

「そっちは4人で大丈夫なの!?」

 

「問題ねぇさ……相手はドラゴン、倒せるのはあいつらだけだ。ドラゴン狩りの魔導士……滅竜魔導士!」

 

そして、エルザ達の乗るレギオンはエクシード達のところへと向かうために、飛び始めた。

それを確認した4人は、ドロマ・アニムに本格的に攻撃を仕掛け始める。

 

「行くぞ火竜(サラマンダー)。」

 

「またお前と共闘かよ!!」

 

「おのれ小僧共!!」

 

ドロマ・アニムは、口にある砲門を再び開く。しかし、それと同時にウェンディも動いていた。

 

「援護します!!天を駆ける瞬足なる風を……!バーニア!!」

 

「ワシを誰だと思っておるかァー!!」

 

そして、砲門から魔導砲が放たれる。だが、ナツとガジルは速度強化魔法のバーニアをかけられているため、難なくそれをかわす事が出来た。

そして、ウェンディとマルクは━━━

 

「んぐ、んぐっ……ぷはぁっ!へへ、魔力ご馳走さんっと。」

 

「何っ!?」

 

魔導砲から放たれた魔力マルクによって食べられてしまう。それに驚いた王は、左右から来るナツとガジルに隙を見せてしまっていた。

 

「火竜の鉄拳!!」

 

鉄竜棍(てつりゅうこん)!!」

 

「魔法を通さぬはずのドロマ・アニムが、微量とはいえダメージを受けているだと!?」

 

「ダメ押しの魔龍の咆哮!!」

 

「ぬううう!!」

 

二人の攻撃は、ドロマ・アニムの顔を捉え、マルクは二人のその攻撃の間にドロマ・アニムの上へと跳んでおり、追撃としてブレスを直接叩き込んでいた。そして4人の攻撃はどうやら少なからず、ドロマ・アニムにダメージを与えていたらしい。

 

「なんなんだこの硬さは!!」

 

「天を切り裂く剛腕なる力を……!アームズ!!」

 

「これは……!」

 

「攻撃力強化の魔法です!」

 

「おっしゃあ!!」

 

ナツとガジルの二人に、新たな魔法がかけられる。ナツは、ウェンディの説明の後にすぐさまドロマ・アニムの顔を攻撃していた。その一撃は、ドロマ・アニムに先程よりも大きなダメージを与えているように見えた。

 

「くっ!あの小娘か!!竜騎弾発射!!」

 

王は、ウェンディが貴重な強化の魔法をかけられる人物だと認識し、まずウェンディに照準を合わせる。

そして、ドロマ・アニムに背面装甲の一部が開いたかと思えば、そこから大量のミサイルがウェンディめがけて発射されていた。

 

「しまった!!ウェンディが!!」

 

「ウェンディ!!!」

 

「私なら大丈夫です!!」

 

ウェンディはミサイルが地面に直撃するのを見計らって、その瞬間に自身にも速度強化をつけ、回避する。

しかし、一部のミサイルは確かに地面に直撃していたが、残りのミサイルは急に角度を変えてウェンディに向かって飛んでいた。

 

「追尾型!?」

 

「フハハハハハハ!!」

 

「きゃっ!!」

 

ウェンディは面食らって、転けてしまった。そして、ミサイルは無情にもウェンディに向かってと飛んできて、ぶつかると思われたその瞬間。

 

「魔龍の咆哮!!」

 

「マルク!」

 

マルクが、ブレスによりウェンディに向かって飛んできていたミサイルをすべて壊していた。

 

「まだまだァ!!」

 

「出させるか!!」

 

再びミサイルを撃とうとしたドロマ・アニムだったが、ガジルの一撃により、開けないようにべこべこにされる。

 

「ぬうう小賢しい!!」

 

「ぐぉっ!!」

 

ガジルはドロマ・アニムの尻尾の一撃を食らう。そしてミサイルが2発、ウェンディ達のところに再び飛んでくる。

 

「まだ2発残ってた。」

 

「ならもう一回ブレスで━━━」

 

「マルク駄目!さっきまでのとは違う!!」

 

「っ!?」

 

マルクはウェンディに言われ、咄嗟にブレスを放つのをやめてウェンディを庇うようにウェンディの前に立つ。

そして、飛んできた2発のミサイルは爆発して、とんでもない爆炎を生み出す……が。

 

「うおああああああああああ!!」

 

「なんだと……!?爆炎を……」

 

咄嗟に入ってきていたナツが、その爆炎を食らっていた。炎となれば、ナツの大好物だからだ。

 

「っ!!こいつは尻尾を食っている!?」

 

そして、尻尾の一撃を受けていたガジルだったが、そのまま尻尾にしがみついて、鉄装甲であるドロマ・アニムそのものを食らっていた。

 

「ふぅ……強ェな……ドラゴンというだけあって。」

 

「一国の王だというのに、護衛もつけないなんてよほどの自信があるんだ。」

 

「そりゃあ、わざわざ持ち出してくるくらいのものだからな。相当なもんなんだろう。」

 

「燃えてきた……!」

 

驚いていたのか、少しの間面食らっているようにも見つけられたドロマ・アニム。しかし、その体色が突如として黒く染まり始める。

 

「なんだ!?」

 

「色が変わっていく……!?」

 

そして、それが真っ黒に染まった時、再びドロマ・アニムは咆哮を上げる。

 

「まずは貴様ら全員の戦意を無くしてやろう!!ドロマ・アニム黒天の力を持ってなぁ!!」

 

黒く染まったドロマ・アニム。それは先程までとは明らかに違う重圧を放っていたのだった。


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