FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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一度振ったルビはその話の中では振らない事にします。


連合軍にて

「……まったく、マスターも何考えてるんだ。六魔将軍(オラシオンセイス)と言えばバラム同盟の一角……それを討伐する為に連合軍が編成されるのはわかるが……ウェンディまで連れていこうとするなんて。」

 

「そんなこと言ってる暇があるならさっさと歩きなさい。怪我させたくないのは私も一緒よ。だから今こうやってあんたの服の中に隠れてるんじゃない。

もうそろそろ出てもいいと思うけれどね。」

 

森の中を歩いていくシャルルとマルク。そしてその先を行くウェンディ。彼らは闇ギルド、六魔将軍の討伐というクエストを受けて各ギルドから集った連合軍の集合場所へと向かっていた。

 

「集合場所は、どこだったかしら?こんな森の中を指定するなんて大概連合軍のギルドとやらも化猫の宿(ケットシェルター)と似たようなものなのかしら?」

 

「スパイが紛れるのを防ぐためだろう……実際のところはよくわからないけど……あれかな。」

 

「私、先行ってるよ!」

 

そう言ってウェンディは目の前に見えた趣味の悪い建物に向かって走っていく。

マルクとシャルルもウェンディがコケないか心配しながらその建物へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあっ!」

 

「ウェンディ!」

 

そして、建物内に入ってから案の定コケるウェンディ。それを見た瞬間にマルクは走ってウェンディの側によって立たせようとする。

 

「立てるか?」

 

「ちょ、ちょっと痛いけど……立てるよ。ありがとうマルク。」

 

そしてウェンディは服を軽く叩きながら乱れがないかの確認をしつつ、その場にいた全員に顔を向ける。

マルクは、無事そうなのを確認するとホッと安堵のため息をついた。

 

「化猫の宿から来ましたウェンディです。よろしくお願いします!!」

 

「子供!?」

 

「しかも二人だと……?」

 

「ウェンディ?」

 

この場にいた各々がそれぞれ別の反応を示す。そんな中で、マルクはその場にいた桜色の髪をした自分よりも年上の青年に、何やら既視感を覚えたが……しかし今は気にしている場合ではないと頭を切り替えた。

 

「これですべてのギルドが揃った。」

 

「話進めるのかよ!!!」

 

「あれは……聖十大魔道、岩鉄のジュラ……あんなに若かったのか。」

 

ウェンディがキョロキョロしている中、連合軍の面々は思うところがあるのか一部は少し渋い顔をしていた。

 

「この大掛かりな討伐作戦にこんなお子様達を寄越すなんて……化猫の宿はどういうおつもりですの?」

 

「━━━あら、一人じゃないわよケバいお姉さん。」

 

そう言って、隠れていたシャルルが勢いよくマルクの服の中から飛び出てくる。

 

「シャルル!?付いてきてたの!?」

 

「当然よ、貴方のことが心配なのはマルク一人だけじゃないわよ。」

 

「ネコ!!!」

 

そう言えばネコは普通喋らないよな、とふと思いながらマルクが見渡すと……もう1匹、いや一人と言うべきか。シャルルと違って青い体のネコを発見した。

声こそかけていたもののシャルルに無視されていたが。

 

「あ、あの……私、戦闘は全然出来ませんけど……皆さんの役に立つサポートの魔法いっぱい使えます……だから、仲間はずれにしないでください〜!」

 

「そんな弱気だから舐められるのよあんたは!!」

 

「すまんな、少々驚いたがそんなつもりは毛頭ない。よろしく頼む、ウェンディ。」

 

緋色の髪の女性、エルザ・スカーレットが微笑みながらウェンディと話す。

ウェンディは憧れの魔導士と会えたことで感激していた。

 

「すまんが……そちらの君は何が出来る?」

 

そしてエルザはマルクに視線を向け、同じように微笑みながら尋ねてくる。マルクは答える前に少し言い淀んだが、すぐに背中にある三本の杖をすべて取り外してそれを見せながら説明を始めた。

 

「俺は……この三本の杖でサポートです。魔力による障壁、そして睡眠魔法、それと拘束の魔法の三つが使え……ます。」

 

「なるほどな、サポートの面で確かにこの二人は適任とも言えるな。私達の中にサポート枠の魔導士も少なかったから助かる。

頼むぞ……えっと……」

 

「マルク、マルク・スーリアです。」

 

自己紹介をしてから、エルザから視線を離して軽く辺りを見回すと、何故かスーツを着たホストのような3人組がウェンディを囲んで接待しているのを発見したマルク。

無言で、素早くウェンディのところまで行く。

 

「え、えっと、あの……」

 

「お引き取り、願えませんかね?」

 

片方の手でウェンディの腕を掴み、もう片方の手で杖に手を伸ばしているマルク。

ホスト……青い天馬(ブルーペガサス)からのメンバーに軽く睨まれていたが、それ以上の睨みを見せながらマルクは引き下がろうとはしなかった。

 

「止めておかぬか……これで全員が揃ったのだ、作戦の説明をせねばなるまい。」

 

「━━━と、その前にトイレの香り(パルファム)を……」

 

「そこはパルファム付けるなよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夜がトイレに行き、しばらくして戻ってきてから青い天馬による今回の作戦の説明が始まった。

 

「ここから北に行くと、ワース樹海が広がっている。古代人達はその樹海に、ある強大な魔法を封印した……その名は、ニルヴァーナ。」

 

ニルヴァーナ、その名を聞いてこの場にいる青い天馬以外の魔導士達はざわついていた。何せ、殆ど知られていない魔法だったからだ。聖十大魔道であるジュラでさえもその名を知らないのだからある意味当然なのだが。

 

「マルク……知ってる?」

 

「……いや、教えられたことは無いな。マスターに聞けば何かわかるかもしれないけど………」

 

「古代人達が封印するほどの破壊魔法という事だけは分かっているが……」

 

「どんな魔法かは分かっていないんだ。」

 

「六魔将軍が樹海に集結したのはきっと、ニルヴァーナを手に入れるためなんだ。」

 

「我々はそれを阻止するために、六魔将軍を討つ!」

 

「こっちは13人、敵は6人……だけど侮っちゃいけない。この6人がとんでもなく強いんだ。」

 

そう言って青い天馬が一人、ヒビキ・レイティスが自身の魔法を使い六人の人物の写真を映し出す。

 

「毒蛇を使う魔導士コブラ、その名からしてスピード系の魔法を使うと思われるレーサー、天眼のホットアイ、心を覗けるという女エンジェル、情報が少ないがミッドナイトとよばれている男、そして奴らの司令塔ブレイン。

それぞれがたった一人でギルドの一つくらいは潰せるほどの魔力を持つ。我々は数的有利を利用するんだ。」

 

「あ、あの……私は頭数に入れないで欲しいんだけど……」

 

「私も戦うのは苦手です……」

 

「ウェンディ!弱音吐かないの!!」

 

ヒビキの説明により少し臆したのか、ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーの一人であるルーシィ・ハートフィリアとウェンディが少し弱音を吐く。だが実際、戦闘力に自信がない者では恐ろしく強い者と戦うと言われれば基本的に臆してしまうのは必然とも取れる。

だが、そんな弱気になった二人を安心させるかのように、一夜は注釈を付け加えた。

 

「安心したまえ、我々の作戦は戦闘だけにあらず。奴らの拠点を見つけてくれればいい。」

 

「拠点?」

 

一夜の言葉に、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオン・バスティアが疑問を抱く。しかし、その疑問は青い天馬のレン・アカツキによって解消された。

 

「今はまだ奴らを捕捉していないが、樹海には奴らの仮設拠点があると推測される。」

 

「もし可能なら、ヤツら全員をその拠点に集めてほしい。」

 

レンの言葉に続けるように言った一夜の言葉で妖精の尻尾の面々がそれぞれの反応を示す。

 

「どうやって?」

 

「殴ってに決まってんだろ!」

 

「結局戦うんじゃない……」

 

「集めてどうするのだ?」

 

その疑問に答えるように、少し自慢げに青い天馬の面々は対策を話す。

 

「我がギルドが大陸に誇る天馬、クリスティーナで拠点もろとも葬り去る!!」

 

「おお!?」

 

「魔導爆撃艇!?」

 

魔導爆撃艇を用いるということに驚きつつも、それを使わなければならないほどの相手だという事を面々は同時に思い知らされていた。

 

「普通ならたった六人を相手に使うもんでもないはずなのに……噂以上って事か、六魔将軍は……」

 

「本当に人間なのかしら、それ。」

 

シャルルの呟いた疑問にマルクは答えることは出来ない。たった6人で数多くの闇ギルドを従えている程だからだ。余程の馬鹿か大物でない限りはそれに畏怖し、恐怖を抱くことになるだろう。

 

「おしっ!燃えてきたぞ!!六人まとめて俺が相手してやるァー!!」

 

「ナツ!!」

 

「作戦聞いてねぇだろ!!」

 

最初に飛び出したのは、滅竜魔導士のナツ・ドラグニル。それに続き妖精の尻尾の面々が飛び出し、蛇姫の鱗からはジュラを除いた二人が、青い天馬からは一夜を除いた面々が次々に飛び出していった。

 

「ウェンディ!行くわよ!」

 

「わっ!わっ!!」

 

「あ!待ってよ~」

 

そしてシャルルに引っ張られながらもウェンディが続き、青色のシャルル……ではなく、妖精の尻尾のハッピーがそれを追い掛ける。

そしてこの場には一夜、ジュラ、マルクの3人が残っていた。

 

「はぁー……じゃあ、俺も行きます。」

 

そう言ってマルクは外に出ようと一歩踏み出すが、その肩に一夜は手を置いてマルクを静止させる。

 

「?どうしたんですか?肩に何か付いてましたか?」

 

「いや、ただ少しだけ確認したいことがあってね。何、すぐに済むからすまないが少し付き合ってくれないか?ジュラさんも。」

 

そう言いながら一夜はマルクとジュラを呼び止める。すぐに行けば間に合うので、『すぐに済む』というからマルクも付き合うことにしたのだった。

 

「む?どうしたのだ一夜殿。」

 

「いや、かの聖十大魔道と言われた貴方ですが……その実力はマスター・マカロフに匹敵するもので?」

 

「滅相もない。聖十の称号は評議会が決めるもの。ワシなどは末席、同じ称号を持っていてもマスター・マカロフと比べられたら天と地程の差があるよ。」

 

遠慮がちにジュラは一夜の言葉を訂正する。それを聞いて一夜は何故か微笑んでいたが、その真意をマルクはすぐに知ることになった。

 

「ほう、それを聞いて安心しました。マカロフと同じ強さだったらどうしようと思ってまして。」

 

直後、やけにつーんとする匂いが漂ってきた。そして、それを吸ったであろうジュラは口元を押えながら膝をつく。

 

「うっ……!?な、何だこの匂いは……!」

 

「相手の戦意を消失させる魔法のパルファム…だってさ。」

 

「一夜殿!これは一体!?」

 

そして、その答えを言うまでもなく一夜はジュラをナイフで突き刺した。味方だと思っていた相手が、突如攻撃を仕掛ける。この状況でジュラもマルクも困惑し続けていた。

 

「あんた、何を……!?」

 

しかし、それは一夜では無かった。その体は泡立っていき、段々と一夜の姿を保てなくなってから……一気にその姿を変化させた。

 

「ふぅ。」

 

「戻ったー」

 

「一夜って奴エロい事しか考えてないよ。」

 

「考えてないね!ダメな大人だね。」

 

その姿は、小さな二人の人影……いや、それはもう人間ではなかった。そして、奥から新たな人影が現れる。

 

「はいはい!文句言わない。」

 

「これは……!?」

 

現れたのは女。しかし、ただの女ではなかった。銀の髪、胸元をはだけさせた、羽根を集めて作ったたような服装。そして気だるげな表情。マルクはその顔を今さっき確認していた。

 

「六魔将軍の……エンジェル!?」

 

「あー……あの汚い男ねー…コピーさせてもらったゾ。おかげで貴方達の作戦は全部わかったゾ。」

 

「「僕達コピーした人の考えまで分かるんだー」」

 

「無、無念……逃げるのだ……!」

 

ジュラはそう言って気絶した。一夜の姿をコピーしたということは、一夜もまたやられているということ。それを理解したマルクはすぐさま逃げようとするが……

 

「逃がさないゾ。ジェミニ!」

 

「「ピーリピーリ」」

 

ジェミニと言われたそれは、また一つになりその姿を変える。今度は、マルクの姿に変わってマルクに襲いかかる。

 

「ジェミニってことは……黄道十二門の星霊!!」

 

「そういう事。サポート役がここに残ってくれて……ん?」

 

マルクに変化して、マルクに馬乗りになったジェミニ。しかし、何かに気づいたのかナイフを握った手を止めていた。

 

「どうしたんだゾ?」

 

「……へぇ、お前も滅竜魔導士………しかも魔力そのものを食らってしまうってまたとんでもないな。一夜のパルファムがあんまり効いてないのも、魔力を食べる……つまり、魔法そのものを食べたからか。

けど……なるほど、昔その力を使って一般人に傷を負わせてしまって━━━」

 

「っ!!言うなぁ!!」

 

マルクは手に紫色の魔力を宿し、ジェミニを殴ろうとする。しかし、軽々とジェミニに躱されてしまった。

 

「へぇー……いい情報ゲットしたゾ。とりあえず……撤収するゾ。ブレインのところに一旦戻らないといけないし……開け、彫刻具座の扉……カエルム!」

 

エンジェルは星霊を呼び出し、その星霊からビームが放たれる。咄嗟に避けて反撃しようとするが、既にエンジェルは退散していた。

マルクは、倒れるジュラを見て拳を握りしめ、やけくそ気味に床に叩きつけた。




マルク・スーリア
魔力を食べて自身の糧とする滅竜魔導士。
しかし今のところはあまり使おうとしない。

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