FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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時の狭間

「え、えっと……つまり?」

 

「私が知る限り、マルクはこの世界には来ていないと考えてたの。けれど、違った。実際は通っていたのよ。

ただ、エクリプスの影響で……少しずれた位置に出てきてしまったみたいだけれど。」

 

「俺が魔力を食べたから、時を超えるその魔力が俺自身に働き掛けてしまった……?」

 

「そう、そのせいでマルクは恐らく何度か同じ時間を繰り返していた…それが原因なのか、マルクのことをこの時代で認識したその後から、さっき言った時の狭間が生まれたのかもしれない。」

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は400年前の過去から来た。この説明を聞いた後、アンナはマルクのことを説明する。

マルクが時を何度も超えていたおかげで、時のズレが生じていた、と。

 

「……あの後もう一度お城に行った、と言ったけれど……初めて扉を通った時にエクリプスは王様に破壊することを提案して、それっきり。

レイラとも……再開することなく彼女は亡くなってしまったわ。」

 

「……話を続けてもらえるか。」

 

自分の子孫だからなのか、気のおける友人関係にでもなっていたのか、アンナは目頭を抑えていた。

エルザは、話を進めることを促すことであまりそのことを思い出させないようにしていた。

 

「そうね……異変には直ぐに気がついた。この魔力に満ちた時代に流れる異なる魔力、それはいかなる元素でもなく、光でも闇でもない無の魔力。」

 

「無の魔力?」

 

「そう、この時代にあるべきではない魔力と言うべきかしら。そして見つけてしまったの、時の狭間を。

さっきも言ったけれど、マルクが何度も時を行ったり来たりしていること、それと私達が400年の時を超えたせいで本来の時間の流れが歪んでしまったみたいなの。

時間という概念の修正力とでも言うべきかしらね、そうした私達の理解を超えた力が生まれてしまったのよ。」

 

時を超えるエクリプスの代償と言うべきなのか、はたまた全く別物なのか。

そうした理解を超えた何かが、今この世界に生まれてしまっているのだ。

 

「時の狭間の中はまさに『無』誰も生きられないし、誰も存在できない。たとえアクノロギアだろうと。」

 

「そこへアクノロギアを誘導して、閉じ込めようというのか!?」

 

「えぇ…」

 

「しかし……!信じられん!時の狭間なんてものが何年も発見されなかったなんて……」

 

ジェラールは、この場にいる全員の気持ちを代弁するかのように驚きを隠せていなかった。

しかしそれは、言葉にならないだけで他の者達も同じである。そのようなものが、今まで発見出来ていなかったというのも不思議な話だと感じているのだ。

 

「私が隠してきたのよ。」

 

「本当に、その空間は時の狭間なんですか?」

 

「1年前の大魔闘演武でエクリプスが開いた。あの穴は大きく反応した……間違いないわ。」

 

「エクリプスが開いたことまで知ってるんですね……」

 

「……穴?」

 

アンナが言ったことにエルザが疑問を持ったのか、その言葉の意味を確かめるかのように質問する。

 

「そうよ、普段は見えてないわ……大きさもこのみかんくらいなの。だけど、間違って触れたら最後……二度と出ることは出来ない。」

 

「なんか……毒虫みたいですね。」

 

「ふふ、そうね……さしずめ、肉眼では見えない即死毒を持つ虫って所かしら。」

 

マルクの例えを、受け取ってそれを返すアンナそして、今からがアクノロギアを倒す作戦となる。

 

「作戦は至ってシンプル!」

 

一夜が現れ、そしてモニターに映されたイメージ図を使って説明を行っていく。

 

「我々は時の狭間を迂回し、アクノロギアを待ち構える。追尾してきたアクノロギアは時の狭間に触れ……消滅メェーン!!」

 

「そんなに上手くいくのか?」

 

「やるしかないのよ。」

 

覚悟を決めたアンナの目。しかし、この作戦でしかアクノロギアを時の狭間に押し込めないだろう。

危ない橋を渡っているが、それをしなければならないのだ。アクノロギアを倒して、この世界を守らないといけないのだから。

そして、マルクとウェンディはアンナと一緒に時の狭間に近づくまで話をすることにした。色々、マルクとウェンディには思うところがあるのだ。

 

「私、その……あまり良く思い出せなくて……」

 

「俺も…」

 

「仕方ないわ、ナツ達も私のことは覚えてないでしょう。きっと幼い体でエクリプスを通った代償かもしれないわ。」

 

「思い出したいんだけど……すいません。」

 

「その気持ちだけで十分よ。いずれ思い出すわ、物事には順序というものがあるの。」

 

マルクとウェンディの頭をアンナは撫でる。しかし、時間は待ってくれないのか、一夜が大急ぎでアンナのところに現れる。

 

「アンナさん!指定の座標に近づいて来ましたぞ!!」

 

「……みんな!始めるわよ!!」

 

アンナの号令が、船中に広がる。操作をするのは、青い天馬(ブルーペガサス)のメンバーであるヒビキ達だが、1番緊張しているのは彼らだろう。

時の狭間は、みかんほどの大きさでありなおかつ見えないのだ。それであっても、触れた瞬間全員が一瞬で終わるのでハイリスク過ぎるのだ。

 

「時の狭間まで後400m!」

 

艦内に声が響く。400mというのは、直ぐに到達してしまう距離だ。かするだけでもアウトになってしまいかねないため、全員に極度の緊張が走る。

 

「300……!」

 

さらに、これをアクノロギアに気づかれてもダメなのだ。ギリギリで回避しつつ、さらに船体を時の狭間の真横に通さなければならない。小さくて見えないものを、気づかれないように通る。正に針の穴に糸を通すような作業だろう。

 

「200……!」

 

まだ船は真っ直ぐに飛び続ける。それに加えて速度もあげていく。このままアクノロギアに気づかれないように時の狭間を回避し、アクノロギアにはぶつけるように動かなければならない。

 

「100…!」

 

「みんな!何かに捕まって!!」

 

「バレルロオォール!!メェーン!!」

 

そして……船体は無事のまま時の狭間を通過する。何事もなく、アクノロギアに気づかれた様子もなく、時の狭間を通過することが出来た。

 

「あとはアクノロギアがあそこを通過すれば…!」

 

「時の狭間に触れて……!」

 

「消える!!」

 

モニター画面に映る、デフォルトにされた船体とアクノロギア。そして、船は時の狭間から遠ざかっていきアクノロギアは時の狭間に近づいていき━━━

 

「当たった!!」

 

「━━━いや、まだだ!!」

 

アクノロギアが時の狭間にぶつかった……と思ったその瞬間だった。アクノロギアが、クリスティーナの船体にその体を乗せていたのだ。時の狭間を、アクノロギアが認識して回避したとは思えないし、またアクノロギアが偶然回避出来たようにも見えなかった。

 

「ばかなっ!?」

 

「時の狭間を……」

 

「通り抜けてきたの!?」

 

一同に驚きと困惑、そして焦りが生まれる。時の狭間に触れられなかったこともそうだが、何よりも今は船体に取り憑かれてしまったのが大きいのだ。

 

「どうなっているんだ!!」

 

「奴は確かに時の狭間に触れただろぉ!?」

 

「まずいぞ!船に取り憑かれた!!」

 

「こんなことありえないわ!!狭間を視認できる状態に戻して!!」

 

アンナにそう指示されて、一夜が時の狭間を認識できる状態に戻す。再確認した時の狭間だったが……その姿を見てアンナはさらに驚きの表情となっていた。

 

「そんな…時の狭間が……閉じている…!」

 

「このままじゃまずい!船ごとやられるぞ!!」

 

「くそぉ!!」

 

「なんで、一体どうして……」

 

効かなかったことにより、アンナの思考は困惑仕切っていた。だが、現状閉じているだけなのならば、まだ打開策はあるかもしれないとアンナは思考を切り替える。

 

「一夜!滅竜魔導士搭乗用の魔水晶(ラクリマ)を壊せ!!」

 

「え?」

 

「やつも滅竜魔導士だ!船にしがみつけなくなる!!」

 

「なるほどぉーう!!」

 

一夜は筋力をあげるパルファムを使ってムキムキになって、魔水晶を破壊する。

マルクとウェンディがそれでダウンするが、同時にアクノロギアも乗り物に弱くなってしまったので、それで突き放される。

 

「……これからどうする。」

 

「時の狭間をこじ開けるわ…何としてでもアクノロギアを倒す!」

 

それしかないと、アンナは覚悟を決める。だが、取り憑かれた時の衝撃によって、船の1部が大破してしまい先程のような速度が維持できなくなっていた。

 

「くそう!後部翼端板が大破!」

 

「速度が維持できない!!」

 

「追いつかれるぞ!!」

 

「予備の魔導ブースター添加!!」

 

なんとか加速は出来たが、それでも危機的状況には変わりない。彼はアクノロギア、ドラゴンがいる限りそのドラゴンを狩り続ける滅竜魔導士なのだから。

 

「少し時間稼いでちょうだい!!」

 

「手はあるのか!?」

 

「言ったでしょ!時の狭間を開けるわ!これでも一応星霊魔導士、扉をこじ開けるのは得意なの!」

 

瞬間、クリスティーナの側面が爆発を起こして船体が傾いてしまう。アクノロギアの攻撃だろう。

距離を離したとはいえ、既に射程距離にまで近づいてしまっているのだ。

 

「俺が時間を稼ごう。」

 

「ジェラール…」

 

「ジェラール……俺も…!」

 

「お前の今の体調で出来るとでも?」

 

「下ろしてくれさえすればいい……!」

 

「……わかった、一緒に行こう。」

 

酔っているが、マルクはジェラールと共にアクノロギアを倒すことに。船からでさえすれば調子は戻るので、マルクはそのままジェラールに担がれて、外に出ることに。

 

「━━━流れ星(ミーティア)。」

 

ジェラールは、自身の魔法により空中を飛行する。ついでにマルクも、そのままぶん投げて船から離させる。

 

「━━━モード悪魔龍、罪なる七悪魔(セブンスシンズ)。」

 

2人は空を飛び、アクノロギアへと向かう。時間稼ぎとは言ったが、実際はジェラールはアクノロギアに触れることすら出来ないので、マルクが体を抑える役割のような状態である。

 

「また貴様か…」

 

「これでも滅竜魔導士なんだよ!!」

 

呪力を貯めて、マルクはアクノロギアに向かう。魔が効かないのならば、呪で対抗するしかない。

ジェラール1人でも対抗はできるだろうが、擦れた瞬間から魔力を食われに食われてしまう。

 

「もどきに用はないが……いい、貴様も滅竜魔導士だと言うのであれば、滅竜する。」

 

「言っとけ!!」

 

マルクはアクノロギアと掴み合いを始める。お互いがお互いの両の手を掴み合い、そしてその腕を潰そうと力を込めあっていく。

魔法は、マルクにも効かない。それをアクノロギアは分かっているのか、やはり魔法を使ってこようとはしていない。

だが、マルクの呪法はアクノロギアには効く。ナツやガジルの様な、別の属性を食らって新たな力を得るのとは訳が違う。

 

「ガァッ!!」

 

「っ!!」

 

マルクのブレスを、その体制のまま器用にしゃがんで回避するアクノロギア。だが、隙を見つけたのかアクノロギアはマルクの腹に顔を埋めてもそのままブレスを放つ。

 

「ごがっ!?」

 

悪魔龍の力によりいくらかは威力を軽減できたが、それでもアクノロギアのブレスの力により海に叩きつけられてしまう。

 

「マルク!!」

 

「おれは、大丈夫だ……!」

 

しかし、アクノロギアのブレスは薙ぎ払うようにして海を割って行った。その威力の凄まじさを見て、アクノロギアの時間稼ぎが務まるのだろうか……と、一同は不安を覚えてしまったのであった。


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