FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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白影氷/魔天剣

「━━━燃えてきたぜ。」

 

「見せてやろう、抗えぬ欲の魔『R(レスト)I(イン)P(ピース)』を。」

 

ローグの影を喰らい、白と影…二つの性質を持った白影竜となったスティング。

そして、氷帝竜となり氷竜の力を最大限に発揮し始めているクォーリ。2人の力が合わさり、目の前にいる敵…スプリガン12(トゥエルブ)が1人であるラーケイド・ドラグニルと戦うこととなった。

 

「俺はずっとナツさんの背中を追いかけてきたんだ。あんたみてーなのはすげー邪魔なんだよ。」

 

「私はこの手でナツの魂を浄化する。君らごときは初めから眼中にない。」

 

「よく言うぜ、俺の攻撃は一心不乱に避ける癖によ。」

 

「確かにな……ま、とりあえず試してみろよ…俺達3人の力…セイバーの真髄をな!!」

 

2人はラーケイドに突撃する。白き光を持っているスティングは、圧倒的な速度でラーケイドに詰寄る。

一瞬で殴り飛ばされたラーケイドだったが、すぐさま態勢を建て直してスティングに向かって攻撃を放つ。しかし、それもまた『白』なのだ。

 

「ふん!!」

 

「魔法が、消えて…!」

 

「白い魔法はスティングの力が相殺し……」

 

「っ!!」

 

ラーケイドの周りが凍りつく。ラーケイド自身を凍らせられないのならば、ラーケイドの周りを凍らせることで逃がさないとクォーリはそういう結論に至った。

 

「俺の氷がお前を拘束する!」

 

「そして!ローグの影があんたを破壊する!!」

 

逃げ場を一瞬でも失ったラーケイドに、影を纏ったスティングの一撃が刺さる。

そして、間髪入れず最大限の魔力を込めてスティングは攻撃を放つ。それに合わせてクォーリも攻撃を放つ。

 

「「そんでもって3人の力が合わされば!!」」

 

巨大な魔力の一撃が、ラーケイドに直撃する。だが、致命傷には至っていないのか、ラーケイドはところどころ凍っているだけで済んでいた。

 

「何人合わさろうが、最後の欲には抗えない…!永遠なる死の眠りを!!『R・I・P』!!」

 

「っ!?」

 

「これは……!」

 

「くっ…」

 

「睡眠欲、ってやつか……!」

 

ラーケイドの最後であろう攻撃が、彼らに遅いかかる。凄まじい眠気が、彼らに襲いかかっているが今は戦場である。眠ってしまったが最期と言っても過言ではないのだ。

 

「目を閉じた時が君達の最後だ。」

 

「くそおおおお!寝るな寝るな寝るな寝るな!!」

 

スティングは必死に眠らないように自身の体の傷を抉っていく。だが、それでも痛みよりも眠気の方が優ってきていた。

 

「人間は欲には逆らえない。アクノロギアでさえね……故に私こそがアクノロギアにも勝ちうる究極の魔導士……」

 

「━━━は、自分でそんなこと言ってても…全く意味が無いぜ。」

 

「……何だと?」

 

クォーリが、ラーケイドに対して挑発を入れる。眠いのは彼も一緒だ。いや、なんだったら纏っている氷の冷気のせいで下手をすれば余計に眠くなっているだろう。

だが、それでも今のラーケイドの一言は、クォーリに取って嘲笑するに値することだった。

 

「じゃあ、なんでゼレフはこんなことしてんだよ…ただ侵略する為だけに、妖精の尻尾(フェアリーテイル)だけを狙わねぇだろうよ…きっと、あのギルドに、なんかあるんだろ…?」

 

「……だから、どうした?」

 

「それを手に入れるのはなんの為だ…?あの黒魔導士が、ただただ侵略をしたいだけじゃ、無いだろうに……」

 

「何が言いたい!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「━━━」

 

指をさして、鎧の奥で表情こそ見えていないがクォーリは笑みを浮かべていた。そして対照的に、ラーケイドは憤怒の表情となっていた。

ただでさえ、ナツに意識を向けていることが気に食わないのに、それに加えてゼレフに頼られていないという言葉が、彼の心に突き刺さる。

 

「アクノロギアを倒すためだけに、なら…お前を使えば確かに倒せるだろうな……けどな、ゼレフはそう思わなかったってー訳だ……」

 

「……さい…」

 

「お前を頼ることより、自分のとる方法の方が確実だと判断したわけだ。」

 

「……る、さい…!」

 

「お前は!自慢げに語っている父親に見向きもされてねぇってことだ!!」

 

「うるさいって言ってるだろう!!」

 

意地が悪い、と言うのは理解している。だが、ここまで欲とやらに振り回されすぎてしまっていたことに対しての、鬱憤を晴らしていたのだ。

自分の魔法は、相手には通じている。しかし、空腹やら睡眠欲やらでろくに当てられていないことに、腹が立っていた。

 

「じゃあ……黙っておいてやるよ…その代わり━━━」

 

「しまっ━━━」

 

クォーリの傍を通り、『影』がラーケイドに襲いかかる。クォーリの挑発にひっかかり、ラーケイドはスティングの存在を完全に忘れてしまっていた。

その影こそが、スティングなのだ。

 

「は!簡単に挑発に引っかかったな!!」

 

「私、も…!」

 

「カグラ、お前…」

 

いつの間にか目を覚ましていたカグラが、クォーリに並ぶ。先程は通じなかった不倶戴天だが、力を合わせるにこれほど申し分ないものは無いだろう。

 

「これが俺達の合体技だ!!白影竜の絁!!」

 

影と光の爪がラーケイドを切り裂く。だが、追撃はまだ2撃残っているのだ。クォーリとカグラは、魔力の全身全霊を持って挑んでいく。

 

「不倶戴天!!」

 

「氷帝竜の雪刃氷牙(せつじんひょうが)!!」

 

クォーリの副腕も含めた一撃が、ラーケイドを切り裂きつつ凍らせていく。そして、トドメと言わんばかりに不倶戴天がラーケイドを一閃。

その連撃は、ラーケイドを戦闘不能にするには十分に足りているダメージとなった。

 

「━━━眠るのは、あんたの方だったみたいだな。」

 

「……はー、疲れた。」

 

氷の鎧を解除して、クォーリは地面に倒れ込む。自身があそこまでの力を発揮するとは思っていなかったが、魔力は完全に尽きてしまった。あれほどの力をもっと上手く使いこなせれば、なんとでもなるだろう。

 

「……さて、あっちの方は充分かね……」

 

空を見上げるクォーリ。考えているのはマルクの事だった。この戦い、ラーケイドはあと二人強いのがいると言っていたが……せめてその2人を倒せる奴がいるとすれば、クォーリとしては気に食わないがマルクだけだと感じているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少しだけ戻る。

マルク、ナツ、グレイの3人が死闘を繰り広げて、それにエルザが仲裁に入った後のことであった。

後からウェンディやジュビア、ルーシィ達が来て1度全員安全なところに避難しようとしていたのだが、それよりも早くアイリーンが襲撃。

マルクはともかくとしても、ナツとグレイは今は気絶しているので完全に戦えない状況となっている。

こんな時に狙われてしまうと、守ることしか出来ない……そんな状況となっていた。

 

「私はお前…お前は私……」

 

「何を言っている。」

 

「くく……くっ…!?」

 

静かに笑っていたアイリーンだったが、突如顔を赤面させて体を軽く悶えさせていた。

 

「くふ…これは…ラーケイドか…!」

 

「っ!今のうちにナツ達を安全なところへ!!」

 

「わかった!!」

 

「あい!」

 

エルザはその隙を見逃さず、ハッピー達に指示してナツ達を運んでもらうように指示を重ねる。

しかし、ただ飛ぶだけではあまりにも時間がかかりすぎる。

 

「わた、私がやる……!」

 

「お願い!!」

 

その場にいたマホーグが、ハッピー達に触れながら一気にジャンプを繰り返していく。

ただ飛ぶよりも、簡単に移動はできるのだ。

 

「さて……こいつの言葉の真意を確かめねばな…!」

 

「くっ……」

 

エルザはアイリーンに向かって刀を振るおうと突撃する。が、アイリーンは咄嗟に魔法を行使する事で、エルザを迎撃しようと考える。

だが、その攻撃は届く前に霧散していた。

 

「私も戦います!」

 

「俺も…サポートしますよ。」

 

「ウェンディ!マルク!!」

 

「付加術…!?それに、陛下が仰っていた天然物の悪魔……にしても、誰一人としてラーケイドの魔法が効かぬとは……ガキ共め…!」

 

「ガキ?よく分からんが、このまま畳み掛ける…!」

 

ラーケイドの快楽の魔法。それは範囲的に効果を及ぼすものと個人を狙った光の触手の二つがある。

前者は味方にも被害が出てしまうため、今アイリーンはそれに苦しまされているのだ。無論、その時の彼はすぐさまその範囲攻撃をやめたため━━━

 

「はっ…!」

 

「ちっ…止められた…!」

 

「はぁ……ラーケイドめ…」

 

持っている杖で、マルクの一撃を止めるアイリーン。付加術を行使して弱体効果をつけようとも考えたが、マルクにはその類の魔法は通じないと彼女は既に知っているのだ。

 

「しゃがめマルク!」

 

「っ!」

 

「おおおおおおお!」

 

マルクは言われたとおりにしゃがむ。すると後ろからエルザが不意打ちのごとく刀を振るって、アイリーンを切り裂こうと動く。

だが、アイリーンの杖はそれをいとも容易く捌いていく。

 

「肩借ります!!」

 

「はっ…!」

 

エルザが刀を振り抜いた瞬間に、マルクはエルザの肩に乗ってアイリーンに殴りかかろうとする。

だが、乗った瞬間にまるでそれを見越していたかのように、杖の先端を2人に向けて突き出す。

 

「っと…!」

 

「ふっ…!」

 

だが、マルクは上に飛びエルザは体を下に倒してをそれを回避。マルクは腕に魔力を、エルザは足の指に挟むかのように剣を取り出して足で二刀流を行う。

 

「おおおおおお!」

 

「はあああ!」

 

エルザはまるでコマのように回転しながら、次々と斬撃を足で繰り出していく。マルクはそのまま空中で飛びながらアイリーンに向かって両手足全てを使って殴る蹴るを繰り返していく。

そして、エルザにはウェンディの付加術(エンチャント)もあり、並の魔道士ならここまですれば簡単に倒せるだろう。

 

「ふふ…」

 

だが、アイリーンはその全てを捌いていく。マルクの攻撃も、エルザの攻撃も同時にたった一本の杖で捌いていく。

 

「くっ…!」

 

「ちっ…!」

 

1旦2人は距離を取って、体勢を立て直そうとする。だが、そんな事すらもアイリーンは隙として、見逃すはずがないと言わんばかりに間髪入れずに攻撃を行うのだ。

 

「はっ!」

 

アイリーンが手を握って、すぐさま開く。まるで子供がするかのような行為だが、その一瞬の行為だけでエルザ達がいる地面が大爆発を起こす。

 

「━━━天輪━━━」

 

「━━━魔龍の━━━」

 

だが、その爆発を利用してエルザは空高く舞い上がる。そして、土煙の中からマルクが渾身と言えるほどまでに、魔力を溜め込んでいた。

 

繚乱の剣(ブルーメン・ブラット)!!」

 

「咆哮!」

 

エルザの剣が、マルクのブレスが……直撃したかのように思えた。だが、その場にいる3人は未だ気を緩めてはいない。

当たり前だ、相手しているのは西の大陸最強の1人なのだから。

 

「━━━なるほど、無数の剣による無差別な斬撃。これだけの剣を同時に操れるとは大したものだ。

それに、魔力そのものを食らうと言われる者とペアを組んで遜色ない力を発揮出来る……よく出来ました。花マル!」

 

拍手をしながら、アイリーンはまるで何事も無かったかのように解説を始める。

そして、土煙が晴れた頃にはエルザが飛ばした剣で文字通り花マルが出来ていたのだ。

その強さは理解出来ていたが、エルザとマルクの同時攻撃でまともに傷すら負わせることができていないと言うことに、ウェンディは相手の強さを思い知った。

相手するは西の大陸最強の女魔導士、マルク達はこの人物に勝つことが出来るのであろうか。


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