FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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エドラス編
妖精の尻尾が消えた日


「777年7月7日?」

 

「私やナツさん、マルクに滅竜魔法を教えたドラゴンはみんな同じ日にいなくなってるんです。」

 

「そう言えば前に、ナツがガジルの竜も同じ日に姿を消したって言ってたかも。」

 

「どういう事なの?」

 

「遠足の日だったのかしら。」

 

「ルーシィさんも偶に変なこと言いますよね?」

 

「火竜イグニール、鉄竜メタリカーナ、天竜グランディーネ、魔龍イービラー……みんな、今どこにいるんだろう。」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)にて、ある日、ルーシィ、ウェンディ、シャルルは三人でガールズトークをしていた。

4人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)に共通する事柄、それぞれの育ての親であるドラゴンが消えた日が777年7月7日だった、ということである。

朝起きれば唐突に消えていた親の姿。しかも同年同日に消えていた、と言うのはおかしな話である。だからこそ『何があったのか』が気になってしょうがないのだ。

 

「……黒いドラゴン、か。」

 

そして少し離れたところで、マルクが三人の話を聞きながらポツリと呟いた。

ナツは、ギルダーツが言った黒いドラゴンの事をマルクに話していた。マルクは、そのドラゴンの事も少しだけ気にしていた。

 

「━━━シャルル!ちょっと酷いんじゃないの!?」

 

と、不意にウェンディの声が響き渡る。何事かと思い、ウェンディの近くに行くマルク。離れていくシャルルを少しだけ気にしながらも、ウェンディに何があったのかを聞くことにした。

 

「ウェンディ、どうした?」

 

「あぁ、うん……シャルルがハッピーに冷たい態度取ってたから……」

 

「あぁ……確かに、なんかハッピーには当たり強いよなシャルル。何ていうか……見ててイラついてる、みたいな。

何でハッピー見ててイラつくかは、分からないけど……」

 

「……私、ちょっとシャルル追いかけてみる!!マルクはここにいて!!シャルル戻ってきたら、私が戻るまでどこにも行かせちゃダメだよ!!」

 

そう言ってウェンディはシャルルを追うために飛び出していく。マルクは、別に大丈夫だろうと思いウェンディの言うことを聞くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると、雨が降り始める。それも小雨などではなく、大降りも大降り……豪雨だった。

 

「……俺ウェンディに傘渡してきますね。ルーシィさん、後はよろしくお願いします。」

 

「はーい、ガールフレンドに風邪引かせちゃダメよー」

 

ルーシィの軽口を聞き流しながら、マルクは傘2本を持って街を歩いていく。マグノリアは広い街なので、雨で視界が悪くなってる分探すのは困難になっていた。

 

「……にしても雨止まないな……ウェンディが風邪ひくだろうしタオルも持って行ってやった方が良かったかな……いや、そこら辺の店で大きいタオル買った方がいいな。

とりあえずまずはウェンディ探さないと。」

 

そしてマルクは走り始める。しかし、どれだけ探しても見つからなかった。

匂いは雨で流されてしまった上に、闇雲に探しても見つからないと来ればもうお手上げ状態である。

だが、しばらく走り回っていると、見知った顔が見えた。それは本来この街にいるはずのない人物。

 

「……!?おいあんた!!ジェラールだろ!!」

 

「っ!?」

 

目の前の人物は大慌てで顔を隠そうとする。しかし、既に顔を見られたというのを理解して、顔を隠すのをやめていた。

 

「なんで、何であんたがここにいる……」

 

「……信じてもらえないだろうが、俺はジェラールでは……いや、()()()()()()()()()()()()()()。俺は妖精の尻尾のミストガンだ。」

 

「この、世界……?あんた何を言ってるんだ。いや、でも……分かった、信じられないけど……信じるしかない。

とりあえずあんたは俺の知ってる……いや、エルザさんの知ってるジェラールでは無いんだな。」

 

マルクのその言葉にジェラールは無言で頷く。変身魔法では無いことくらいは、マルクには分かっていた。

しかしならば目の前にいるジェラールは何者なのか……それだけが謎だった。

 

「……もう一ついえば、ウェンディの知っているジェラールが私だ。七年前に会った時……俺は彼女にジェラールと名乗ってしまったからな。」

 

「……そうか、あのジェラールは『忘れた』んじゃなくて『知らなかった』のか……で?何であんたがここにいるんだ。クエスト報告か?」

 

「……もうすぐ、この街は消滅する。ウェンディに逃げるように伝えに来たんだ。」

 

「……おい待て、そりゃあ一体どういう事だ……?」

 

困惑したマルクを見て、ジェラール……いやミストガンは時間がないのを理解していながらも、少しだけ説明を始める。

 

「……私は、この世界とは別の世界『エドラス』からやって来た人間だ。そして、今そのエドラスは魔力が枯渇しかけている……エドラスから魔法が消えようとしているんだ。」

 

「魔力が……枯渇?回復しないってことか?」

 

「あぁ……エドラスでは、魔力は有限なんだ。それに、人間は体内に魔力を有さない。

その魔力がなくなりかけていて……エドラスは魔力を補充する魔法を作った。超亜空間魔法アニマ……この世界、アースランドの人間をエドラスに送る魔法……そして送り込まれた人間などを魔水晶(ラクリマ)にすることで新たに魔力を得る……そんな方法でエドラスは魔力を得ようとしている。」

 

「……その魔法で、今妖精の尻尾が……いや、マグノリアが消えかかってるって言うのか……!」

 

マルクは傘を放り投げて、妖精の尻尾に向かって走り出す。消える前に、せめて妖精の尻尾のメンバーだけでも助けようと思ったからだ。

 

「待て!もう間に合わない!!ウェンディも、もう……!」

 

「うるさい!あんたが何を言おうと俺はやることは変えねぇ!!ウェンディだって……俺と同じこと言っただろうよ。俺達はギルド妖精の尻尾のメンバーだ!仲間を……いや、家族が家族を助けにいかないでどうするんだよ!!」

 

そしてマルクは妖精の尻尾に向けて走り出す。だが、どう足掻いても間に合わないということを、ミストガンは知っていた。

 

「っ!?空が……」

 

雨が降り止まない空。雨雲が渦をなしていく。そして段々と渦は大きくなり……大きな穴となる。

それでもマルクは走った。だが……やはり間に合うことは無かった。

 

「ぐっ!?街の、景色が……!?」

 

景色が歪む、建物が消えていく。空の穴に、吸い込まれるように形をなくしていく。

まるで今までのことが夢だったかのように、街は消えて煙の様に天に昇っていく。そして、気づいた時には━━━

 

「………え?」

 

眼前に広がる白い大地、見えるのは遠くにある山だけ。そして天からは白い雪のようなものが降っていた。

雪が積もったわけでもないのに白い大地。そこにポツンと……マルクは一人立っていた。

 

「……君は、吸い込まれなかったんだな。」

 

「……ミストガン……さん。」

 

「所詮偽名だ、さんは付けなくていい……それにしてもなぜ君だけが吸い込まれなかったのか……」

 

「……滅竜魔導士の特殊な魔力で吸収を逃れることが出来たか、俺にはそもそもアニマが効かない体質だった……いや、後者はないや。魔力は吸い取れても魔法が起こす現象は止まらないし。」

 

「……そうか、滅竜魔導士……となるとウェンディやナツ・ドラグニルも生きて……」

 

そこからブツブツと何かを呟き始めるミストガン。マルクは今起こった出来事を整理するために、頭の中を整理しようとするが、そんな簡単に出来るほど彼も大人にはなれていない。

 

「……予定変更だ、済まないが君もエドラスに向かってくれないか。」

 

「……『も』?他に誰か行く手筈なのか?」

 

「いや……元々これは私が解決しようとしていたことだ。だが、滅竜魔導士が生きているとなれば、きっとウェンディ達はエドラスに向かうだろう……事情を知っているものさえいればな。」

 

「……事情って、エドラスなんて誰も知ってるはずがないと思うが?それこそあんたみたいに向こうの世界から来でもしないと━━━」

 

「……シャルル、ハッピー……二人はエドラスの住人だ。いや、正確には、彼らの種族が住んでいる世界……か。」

 

「……は?」

 

未だ困惑しているマルクは、さらに困惑した。シャルルとハッピーはこの世界の住人では無かったということが。

 

「あの猫のような見た目……エドラスではエクシードと呼ばれる種族だ。昔、彼らは自分達の子供をこっちの世界に送り込んだ。

エドラスではエクシードは神のように扱われている……だから送り込まれた子供とはいえ、おそらくはエクシードを消そうとはしないだろう。

そして、恐らくシャルルならばエドラスの情報を知っている……シャルルが消えていないのならば、それをウェンディ達に伝えるだろう。」

 

「……そして、ウェンディ達がシャルルから情報を教えて貰って、エドラスに向かう……か。」

 

「恐らくは、そうなるだろうな……いや、そうなったようだな。空を見てみろ。」

 

マルクはミストガンの指差す方向に目を向けた。そこには二つのなにかが、天へと向かって飛んでいき……空高く上がったところで、その姿を消した。

 

「今のは……」

 

「恐らくウェンディ達……エドラスの情報をどうやらシャルルから聞いたみたいだな。」

 

「……何で、シャルルだと思ってるんだ?」

 

「シャルルには、兆候……いや、そういう素振りがあったように見えたからだ。そして先程ウェンディに会った時も、知っているような反応を見せていた。

だからシャルルだと思っている……」

 

ミストガンの話を聞いてから、再び天を見上げるマルク。猫……否、エクシードの相棒を持たない彼には飛行手段はない。だからああやってエドラスへ向かうことも出来ないでいた。

 

「……そういやさっき、俺にエドラスへ向かえって言ってたけど……どうやって向かわせるつもりだ?俺には飛行手段はないんだぞ?」

 

「その辺は大丈夫だ……私の魔法を使えば問題ない。そもそもあぁやって飛行するのは、エクシードがいなきゃできないからな。」

 

苦笑するように天を仰ぐミストガン。その方法が知りたいのだが、黙っていた方がいいのかと追求しないでいた。

ふと、ミストガンは何かを思い出したかのように懐から瓶を取り出して、その中身の球体の薬のようなものをマルクに投げる。

 

「……これは?」

 

「エクスボール……エドラスではたとえアースランドの住人といえど、魔法が使えなくなってしまう。その薬はエドラスへ向かったアースランドの住人に、エドラスで魔法を使わせるための薬さ。」

 

「なるほどな……ん?もしかしてナツさんやウェンディは、魔法を使えなくならないかこれ。」

 

「……そう、なるな。済まないもう二つほど懐に入れておいてほしい。彼らに渡すための薬を……」

 

「分かってるよ……ウェンディが向かったのなら、俺はもう覚悟は決まってる。魔法を使えないとなると、肉弾戦のできないウェンディはかなり危ない目に遭っちまう。

それだけは避けたいからな……俺は、エドラスへ向かう。」

 

マルクの答えを聞き、ミストガンは微笑んだ。そして、無言で軽くお辞儀をしてから背中に背負っている杖を、何本か取り出していく。

羽の生えたシャルル達とは違う方法で、どうやって送り込むのかと思っていたが……下に人一人分くらいの大きさの穴が形成される。

 

「へ?」

 

「アニマだ……とは言っても空の穴とは比べものにならないが……エドラスへ転送する魔法だと思ってくれ。

だが、注意してくれよ……その魔法は……細かい場所指定が━━━」

 

ミストガンが言い切る前に、マルクは穴に吸い込まれてそのまま転送させられてしまう。

マルクはなにがなんだかわからないまま……エドラスに転送されるのであった。

 

「細かい場所指定がなんだって!?おい、まさかできないとか言うんじゃねぇだろうな!?出た瞬間に壁に埋まってるとか、敵に捕まるとかそういうのは勘弁だからな!?ミストガン!?ミストガァァァン!!」

 

言いたい文句をミストガンに伝えられず、それは独り言のように虚空へと消えていくのであった。




エドラスへどうやって送ったのかちょっと分からなかったので、オリジナルにしました。
この後でエドラスに行ったあと捕まってた金髪星霊魔導士がいたので……こうなのかなと
もし単行本などで掲載されていたら申し訳ございません。

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