FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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妖精の尻尾(フェアリーテイル)に帰る途中、突然謎の光に包み込まれたマルク達。その魔法により、マルク、ウェンディ、シャルルの3人はグレイ達とはぐれてしまう。

匂いもせず、周りから声がする訳でもない。どうやら、完全に光によって飛ばされて強制的に別れさせられたということらしい。完全に途方に暮れて、ひとまず歩いていくことに決めたマルク達だったが、ウェンディ達に異変が起きる。

 

「……何、この声…」

 

「ウェンディ?どうした?」

 

「マルク、あんた聞こえないの?」

 

「シャルル…?」

 

ウェンディとシャルルは、何やら謎の声を聞いていた。しかし、マルクにはその声が聞こえていない。

魔法による通信だと考えれば、ウォーレンの念話という線が濃厚だが、しかしウェンディが声で驚いているところを見ると、どうやらウォーレンの念話では無いらしい。

 

「ギルドは……あっちね。」

 

「なんだ、方角がわかるのか?」

 

「私たちの頭の中に聞こえてくる声が教えてくれるのよ。ちゃんと味方だと思っていいわよ。」

 

「味方、か…まぁこの際なんでもいい。ギルドに迎えるだけでいいんだからな。」

 

謎の声に従って歩き始めるマルク達。この際、味方だと思えるものはなんだって信用していかないと、どうしようもない。

 

「よし、急ぐぞ。あの強制的にはぐれさせられた魔法が敵のものだったら……ギルド、というか初代の体が危ないかもしれない。」

 

「まったく同じこと言ってたわね、私達の頭の中に聞こえてくる声も。」

 

 

全く同じことを言っていたという事に、少し苦い顔をしながらもマルク達はギルドに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いことになってんな妖精の尻尾!!」

 

「お待たせしました!!」

 

「ウェンディ!マルク!!」

 

「シャルル!!」

 

大量の敵、そして、中心には盛り上がった土地。そして、まるでそこが玉座だと言わんばかりにそびえる妖精の尻尾。

土地が完全に変わっている。それが、相手の強大さを思い知らせる。

 

「天竜の咆哮!!」

 

「魔龍の咆哮!!」

 

2人のブレスが、敵軍団を薙ぎ払う。圧倒的な暴風と、魔力を食らう力が敵軍団を無力化していく。

ウェンディ達が到着した後からも、続々と妖精の尻尾メンバーは集結してくる。そして、他ギルドのメンバー達も参戦してくる。

だが、簡単に通すほど世界は甘くはないのだ。

 

「っ!?なんだあれ!!」

 

「地面から……ドラゴン!?」

 

突如、敵の中心からいくつもの竜の形をしたオーラが湧き出始める。そして、その頂点から一人の男が飛び下りてくる。

 

「ここから先には行かせねぇ……ゴッドセレナ(屍)ゴッド降臨!!」

 

「ゴッドセレナだと!?」

 

「ではさっさといかせてもらう!煉獄竜の炎熱地獄!!」

 

「炎の滅竜魔法!?」

 

突如現れたゴッドセレナ。そして、すぐさま攻撃を仕掛けるがナツと同じ……いや、質でいえば煉獄と称される程の火力である。

簡単に言えば、炎の質としてはナツよりも上だろう。しかし、格上ではない。ハッキリといえば、ナツの餌である。無論、魔法である以上マルクの餌でもある。

 

「メシだーっ!!」

 

「近接技じゃなくていいのかいゴッドセレナ!!」

 

2人は飛び込んで、ゴッドセレナの攻撃を全て喰らい尽くす。だが、ゴッドセレナに焦った様子はない。

 

「へぇ……だったら……海皇竜の水陣方円!!」

 

そのまま、片手で別の滅竜魔法を発動させる。2つ目の滅竜魔法、ラクサスやコブラと同じ魔水晶(ラクリマ)を宿している2世代目の滅竜魔導士だろう。

 

「炎と水の魔法を同時に!?」

 

「この水、すごい魔力……!それに、炎が混ざって……!」

 

「━━━無駄無駄無駄!!」

 

マルクはゴッドセレナの起こす魔法を尽く食らっていく。近接技を行わないのは、面倒臭いからかまた別の理由があるのか。

それは分からないが、少なくともゴッドセレナは完全に遠距離で技を行っていた。

そして、ある程度離れていればマルクは相手の魔法を問答無用で食うことが出来る。

 

「へぇ、いいねぇ……なら!暴風竜の━━━」

 

「まだ同時に扱えるのか!?」

 

「問題ありません!食います!!」

 

「吟風弄月!」

 

今度はブレス技だった。だが、マルクは問題なく喰らおうとするが……突如、大爆発が起こる。

 

「くっ……」

 

「なんだ……!?」

 

「なんだ、今のは……魔法が消え…いや、割れた!?」

 

立ち込める砂煙…そして、マルクとゴッドセレナの間に一人の男が割り込んでいた。

 

「……よォ。」

 

「━━━ギルダーツ!!」

 

「腹減ってんだ……早くギルドに帰らせろや。」

 

ギルダーツ、妖精の尻尾最強の魔導士である。その登場に、ゴッドセレナは全く面白くなさそうな顔をしていた。

 

「ギルダーツだぁーっ!!」

 

「ギルダーツが帰ってきたーっ!!」

 

ギルダーツの帰還により、湧き上がる妖精の尻尾。来るだけで、味方の士気が上がっていた。

 

「カナちゃ〜ん!」

 

「キメェよ目の前に敵いるだろうが!!」

 

「おっ!そうだった……だが、こいつには生きた人間の魔力を感じねぇ。生きてりゃ、それなりの魔導士だったに違いねぇが……これじゃただの雑魚だ。」

 

「ははっ!言ってくれるじゃねーの……この八竜のゴッドセレナを相手に…!」

 

そして、2人はぶつかった。2人の強大な魔力が激突した影響で、味方まで被害を被っていた。

 

「ふぁっ!!」

 

「なんなのよこのデタラメな魔力!!」

 

「ギルダーツさん!それ俺が相手してたのに!!」

 

ただ1人、マルクだけが吹き飛ばされながらギルダーツに対して文句を言っていた。無論、マルクの力はゴッドセレナとかなり相性がいい力だろう。

だが、ゴッドセレナ自身も既にギルダーツを目標として定めてしまったために、戦うのは無理となっていた。無理にわりこめば、ギルダーツの魔法の餌食である。

 

「……大丈夫?ロメオくん。」

 

「だ、大丈夫じゃないよウェンディ姉…」

 

ウェンディの声がしたので、マルクは後ろを振り向く。どうやら、敵の力と数を見てロメオが臆してしまったようだ。

それを、ウェンディが励まそうとしているらしい。

 

「戦いが始まるまではあれだけ息巻いてたのに……こんなの…こんな圧倒的な的の数…!怖いんだよ!!

情けないよ…ずっと足が震えてる。」

 

「怖いのは、きっとみんな同じだよ。だから一緒に頑張ろ?」

 

マルクは、黙ってロメオの頭に手を置く。天狼島に行く前までは、目線の下だったロメオの頭が、こうして自分の目線と同じくらいの身長になってるのに、改めて時間の経過を感じていた。

 

「ロメオ、敵を見ろ。確かに数は多い……けどな、あいつらは俺達を怖がってないんだ。

それが、どういうことか分かるか?」

 

「へ…?」

 

「恐怖を感じてないやつは、俺達に勝てると油断してる。俺達を自分で倒せると考えてしまってる。

そんな奴らはな……負けてもこう言うんだ。『どうせ強いやつが倒してくれる』『負けるとは思ってなかった』ってな。」

 

マルクの言葉を、ロメオは目を見てしっかりと聞いていた。マルクの目が、敵を見つめていたから。

 

「だがな、俺達は怖いと思ってる。けど、それを乗り越えて……なお思ってるんだ。『家に帰りたい』ってな。

足掻いて足掻いて……足掻き続けられる……だから、俺たちの方が気持ちで何倍も優ってる。怖いって感情を、乗り越えろ…!」

 

そう言って、マルクは敵陣に1人飛び込んでいく。皆と一緒に。その言葉と、マルクの勇気がロメオに恐怖を乗り越える力を与えた。

 

「オオオオ!」

 

「みんなが戦ってる!ギルドへの道を作るために!!負けられねぇぞー!!」

 

「通すかー!!この先の陛下の元には行かせんぞー!!」

 

皆がぶつかってる中……ギルダーツとゴッドセレナの戦いはもう終わりを迎えていた。

 

「魔法が、割れ…!」

 

「惜しいな…本来の力のアンタと戦ってみたかった。破邪顕正『一天』!!オラァ野郎共……ギルドは目の前だ!!進めぇぇえええ!!」

 

ゴッドセレナは吹き飛ばされ、掻き消える。ハルジオンでマルクが見た、死人を蘇えらせる魔法によって蘇った、屍人だったらしい。

 

「邪魔だどけええええ!!」

 

マルクの魔力が、戦場の敵の魔力を根こそぎ奪っていく。そうしてぶつかり合っていく中で、マルクは魔力を感じとっていた。

 

「この魔力……」

 

「マルク?どうしたの?」

 

「……どっかに、あの時間を止める奴がいるな。」

 

「それって、シェリアが倒した……」

 

マルクは舌打ちをする。シェリアが、未来の可能性全てを投げ打って倒した魔導士ディマリア。どこかに、そいつがいると聞いてキレかけていた。

 

「……あいつを倒せんのは、今は俺だけだ。あの空間の中で動けるのは、俺みたいなやつか、余程の強さを持ったやつしか居ない。」

 

そう言いながら、マルクはENDの事を思い出していた。ディマリアが唯一恐れていたであろう悪魔、END。

彼女は、あの悪魔ならば自分の止まった時の中を動けると言っていた。そんな奴が、あまりこの戦争に介入して欲しくはないのだ。無論、同様にアクノロギアも、である。

 

「けど、マルク……」

 

「安心しろ、多分向こうも多少のダメージはあるだろう。それに、今度こそは……!」

 

マルクは倒しきると、心の中で覚悟を決める。だが、ウェンディは別の心配をしていた。

仮にマルクが倒しても、その戦いでマルクの体は再び傷を負うだろう。そうしたら、また倒れて血を流すかもしれないのだ。

 

「……信用して、いいの?」

 

「今度はあんな血まみれになったりしねぇよ。」

 

敵を殴り飛ばしつつも、マルクは笑顔を浮かべてウェンディの頭を撫でる。

その言葉と、表情をウェンディは信じきることにした。

 

「……ま、その前に…!」

 

「ここの敵をどうにかして倒さないと!」

 

大量にいる敵を前に、マルク達は気持ちを切り替える。1万、いや下手をすれば100万は優に越えそうな数の敵を前に、一切の恐れも何も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

その光景を、1人見下ろす人物がいた。妖精の尻尾のギルドのてっぺんから、ギルドメンバー達が戦う姿とそしてスプリガン12(トゥエルブ)が戦っている姿を拝見している人物が。

息を潜め、屋根にうつ伏せでいて、出来る限りの気配を消している。

 

「………」

 

その正体は、マホーグであった。彼女は、敵の中心に偶然にも潜り込んでしまっていたのだ。

フィオーレ中が戦いになっている今、どこぞの誰かの魔法により今いた場所とは全く違う場所に飛ばされたマホーグ。最初こそ移動しようと思っていたのだが、なんと自分がいた場所は妖精の尻尾のギルドの屋根の上だったのだ。

オマケに、スプリガン12もいるせいで迂闊にこのエリアから動けないでいた。

 

「……どう、しよう。」

 

ぼそっと呟くマホーグ。しかし、そこには誰もいないが故に呟ける一言だった。

だが、まともな動きをすれば下にいる魔導士……緋色の髪をしたとんでもない魔力の持ち主に、ゼレフに感知されてしまうだろう。

いや、もしかしたら既にバレていて、無視してくれているだけかもしれない。

 

「……」

 

耳を済ませると、下からは3人の声がする。1人はゼレフ、もう1人は緋色の魔導士、3人目は少女のような声。

 

「……話を聞いてる限り、女の子の声が、ゼレフの目的…?」

 

そして、今下で少女のような声の持ち主は魔力を吸い取られているようだ。これが完全に終了してしまったら、どうしようもない。

 

「わ、私が……やらないと……!」

 

戦争を止めるために、マルクを守るために、今1人の無謀な愚者が敵中心に挑みかかろうとしていた。


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