FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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砂嵐が止む頃に

突如として、マグノリアの街全体を覆い始めた砂嵐。その砂嵐は、アルバレス帝国のスプリガン12(トゥエルブ)の1人であるアジィールのもたらしたものだった。

アルバレス帝国と戦争やっている今に、視界を防がれてしまうという最悪の事態。現在、アジィールと戦っているのはエルザだが、そのエルザが勝つまでこの砂嵐に耐えなければならず、吹き荒れる砂によるダメージも少なからず続いていくのであった。

 

「くそっ……!いつまでこの砂嵐が…!」

 

「でも、耐えないと!!」

 

魔力の無駄遣いはできない。だが、それも相まってか一同の精神は磨り減っていた。

だが、この砂嵐はそう長くは続かなかった。突如として現れた砂嵐は、また突如として姿を消したのだ。

 

「砂嵐が……!」

 

「消えた!!」

 

「…っ!エルザ!!」

 

砂嵐が消える。相手が意図して消すという可能性は低く、そして、上空にある船の一つが崩れていくところを見ると、どうやらエルザが勝ったということが分かってきた。

だがエルザも無傷では済まされなかったのか、傷だらけで落ちてくるのがその場にいた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達の目に映っていた。

 

「ナツさん!!」

 

「お前も行ってやれ、ありゃひでぇ傷だ。」

 

ナツが、エルザを見て走り出す。気絶しているのか、それとも換装するほどの魔力も、体力も残っていないのか……エルザは落下してきていた。

ナツの後を追うように、そのままウェンディも走り出す。

 

「こっちは我々がなんとかする!」

 

「あんたも行ってあげなさい。」

 

「あい!!」

 

そして、ナツの相棒であるハッピーもそのまま向かい始める。その場に残されたのは、ガジル、シャルル、マルク、リリーの4人だった。

 

「さーて、これで心置き無く戦える。」

 

「だな、あの砂嵐鬱陶しすぎんだ……!」

 

二人とも、所謂『悪い顔』というのをしながら敵に殴り掛かる。アジィールがやられたこともあるのか、敵の動きに乱れが生じ始める。

 

「まったくあのバカ!」

 

「ガジルやナツの影響を、良くも悪くも受けているな。」

 

「けど……ここは通さないのは同じ!」

 

「おう!」

 

リリーとシャルルも、ガジルとマルクに続くように動き始める。既に少なくともこの場にいるアジィール隊とやらの指揮系統は崩れ去っており、簡単に敵を倒すことができるようなっていた。

 

「んだァ!?さっきよりも勢いがねぇぞゴラァ!!」

 

「部隊のトップがやられたら、下の者達は困惑する……組織にも言えることだが、トップ一強にしてたらダメだということだな。」

 

「あら、ついこの間までいた評議院のことでも言っているのかしら!!」

 

冗談を言い合いながら、アジィール隊を次々と倒していく一同。しかし、ある程度立ったところでマルクが上空を見上げる。

 

「ガジルさん!リリー!上任せていいですか!?」

 

「ぁ!?」

 

「さっさと船潰した方が早いってことですよ!地上の敵は俺達が倒しますし!」

 

「そうだな……リリー!」

 

「空か、次は乗るなんてことするなよ、ガジル。」

 

「うっせぇ!!」

 

リリーに軽口を言われながら、ガジルはリリーに支えられて空中へと身を乗り出す。それを少し見送ってから、マルクはシャルルと共に地上の敵を倒していく。

 

「で、どうするわけ!?」

 

「どうする、ってのは?」

 

「たった2人でこの軍勢倒すつもりなのかってこと…よっ!!」

 

「そんなの……当たり前だろうが!!」

 

敵を倒しながら、マルクとシャルルは会話をし続ける。しかし、もう少ししたらナツも来るだろう言う自信がある。

ウェンディは、エルザを回復させるために残っていなければならないが、ナツは回復魔法も、何かしらそれを補助するような魔法も持っていない。ならば、こちらに来るしかない。

 

「それに、空にいる敵が全滅したら、こっちの敵も残等にまでなるだろうしな……さっさとこっちの敵は全滅させる!!」

 

「なるほど、ね!!」

 

「魔力を早く使い切りたいところだが…悪魔龍になって、空飛んで…ってしたいところだけど…温存しないと、俺もまずい。」

 

一瞬、空の方に視線を向けるマルク。空にいる船の部隊は、ガジル達が落としていっているのか、崩れゆく姿が良く見えていた。

 

「ガジルさんも、順調に船落としていってるみたいだし……オラァ!!かかってこいよアルバレス帝国!!」

 

大きく吠えるように声を荒らげるマルク。そして襲いかかるアルバレス帝国。

シャルルとマルクは、地上に降りた部隊を着実に片付けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……!」

 

途中で戻ってきたナツとハッピーも、ガジルと張り合うかのように船を落とし始めて、地上の敵も段々と減ってきていた。

しかし、魔力以上に体力の消耗が激しくなってきており、マルクとシャルルは肩で息をしていた。

 

「だ、大丈夫か?シャルル……」

 

「そ、そっちこそ…息が上がってる、わよ。」

 

「け、けど……今ので地上の敵は全滅したか…?」

 

「えぇ……ナツとガジルが船ごと敵を片付けてくれているもの。」

 

しばらくすると、目に見えて敵の数が減ってきていた。空に浮かんでいた船の数も少なくなってきており、そろそろアルバレスを向こうに送り返せそうな気がしてきていた。

 

「しっかし……本気でこっちを侵略しにかかってるな。」

 

「当たり前よ……それだけ初代の体が欲しいってことなんだから。」

 

「……もう暫く待機してよう。敵が降りてくる可能性も否定できない。」

 

「分かってるわよ。」

 

警戒しながら、マルク達は息を整え始める。体力をかなり消耗してしまったが、ひとまず警戒しながらとはいえ休憩出来るのはありがたい。

 

「……こっちは、俺達の勝ちかな。」

 

「えぇ、エルザも相手を倒したんだし……後は、街の方ね。フリードが術式を張っているとはいえ、油断は出来ないわよ……」

 

「たとえ術式を破られたとしても……なんとかしてくれてそうだけどな。全ての強い魔導士を、俺達みたいに外側に置いている訳じゃあないんだ。」

 

そう言いながら、マルクは街に残っているメンバーのことを思い出す。しかし、すぐさま思考を切りかえて敵の事を考える。

 

「けど、それが敵に大して油断していいって話しじゃない。スプリガン12 はまだまだいるんだ。」

 

「私達が倒したのは1人。まだあと11人要るものね。」

 

「あぁ……」

 

そして、最後の船が落とされるところをマルクは確認する。これで、西から来た的は全滅となり、こちら側は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の勝利ということになる。

 

「よっ……西の敵は全滅した!!」

 

ナツとガジルが側に降りてきて、ナツが大きな声を出す。ウォーレンが常に念話を開いてくれているので、そのまま会話につなげていく。

 

「聞こえるか!?オイ!!西の敵は全滅した!!」

 

「これで、フリードさん休めそうですね。」

 

「だな、あんな馬鹿でかい術式を張り続けんのは大分無理しなきゃなんねぇからな。」

 

そして、他のメンバーからも念話で状況報告が届き始める。ルーシィとカナがスプリガン12の独りを捕獲、なんとあのブランディッシュを捕獲したというのだ。

そして、フリード達が新たにスプリガン12らしき人物を倒したという。

 

『エルザは大丈夫なの?』

 

『エルザさんも無事です。』

 

「ウェンディ、そっちも大丈夫だったかしら?マルクが心配してるわよ。」

 

『うん、大丈夫って伝えて?』

 

念話を通して、シャルルとウェンディが短い会話を行う。そして、第1陣を凌ぎきったという事により、一旦外に出てたメンバーはギルドに帰還することになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドに戻る最中、マルクは後ろからやってくる強力なかつものすごい速度で迫ってくる魔力の塊を感じとった。

 

「っ!?何かくる!!」

 

「っ!」

 

それは他のメンバーも感じとっているのか、一斉に後ろを振り向く。だが、それよりも早くマルクは大きく飛び上がって、近くの建物を足場として、魔力を溢れさせる。

 

「よく分からんが……なんか来る!!」

 

目を凝らしてよく見てみると、遠くの方から巨大な魔法が飛んできているのが、マルクの目に見えた。

つまり、遠距離射撃を敵の誰かが行ったということである。しかし、どこから撃ったのかも感知できないほど遠くからの射撃を正確に行える敵がいることに、マルクは少し恐れを感じていた。

 

「マルク!防ぐ気か!?」

 

「当たり前でしょう!!滅竜奥義!紫電魔光壁!!」

 

マルクは完全に防ぎ切れるように、大きなバリアを展開する。飛んできたレーザーは、そのままマルクの展開したバリアにぶつかる。

 

「ぐうっ!?」

 

あまりの威力に、足場の方が耐えきれなくなってくる。足場としている建物の屋根が崩れ始めてきていた。

だが、防ぎきらないとそのままレーザーがギルドを焼いてしまうのだ。

 

「重っ……!?どんだけ魔力を込めてんだ…!」

 

さらに足場が崩れ始める。ニルヴァーナによる砲撃でさえ、防ぎきれるほどの魔法である。直で防ごうと思えばそれ以上の魔法でさえ、簡単に防ぎきれる程だが、これを飛ばしてきた相手はそれさえも上回るほどの攻撃力を持っているということになる。

 

「マルク!手伝うわよ!!」

 

「っとと……!?シャルル!巻き込まれても知らねぇぞ!?」

 

「今更!!」

 

マルクの背中を、シャルルが掴む。足場が崩れても、これならば耐えきれるとシャルルもマルクも考えた。

だが、それでもなおもレーザーは消える気配を見せない。マルクの魔法によって、既に大量の魔力を吸収しているにもかかわらず、未だ威力が衰えることを知らない。

 

「ちょっと!!これ防ぎきれるの!?」

 

「やるしかないんだよ!!」

 

マルクのサポートをするためか、横からナツ達もブレスを放って威力を相殺しようと試み始める。それも相まって、恐らく半分以上の威力は消し飛ばすことが出来たが、それでも未だギルドどころかその周り一体を吹き飛ばせるほどの威力は持っているだろう。

耐えているうちに、マルクのバリアにヒビが入り始める。その時だった。

 

「私に任せろー!!」

 

「へっ!?」

 

突如、マルク達とレーザーの間に大きな影が入り込む。それは、青い天馬(ブルーペガサス)の保有する船、クリスティーナだった。

そして、その中から聞こえてきた声は━━━

 

「一夜さん!?」

 

「クリスティーナを盾に……!」

 

「何で一夜が…!」

 

一夜だった。一夜が、クリスティーナを操作してレーザーを防いでくれたのだ。

ある程度威力が抑えられていたからこそ、クリスティーナで完全に相殺することが出来たのだろう。

しかし、それによってクリスティーナは全壊してしまっていた。

 

「これは戦いだ…!しかし、君達だけの戦いじゃない…フィオーレ通信網オォォン!!聞こえるか諸君!!これは、『私達』の戦いだ!!」

 

一夜が、フィオーレ中に通信をかける。それは、この大陸に存在する数々のギルドに向けて送られたものだった。

この戦争、大陸を中心にしている以上避けられぬものではあるため、他のギルドも快く妖精の尻尾に味方してくれるのだ。

 

「い、一夜さんも運ばないと!!」

 

「エルザさん、もう少し頑張ってくださいね…!」

 

ガジルに担がれているエルザだったが、そこに追加で一夜が加わった。彼の力がなければ、妖精の尻尾に何かしらの被害が出ていたかもしれない。

マルクは、一夜に感謝をしながら皆と一緒にギルドに運んでいくのであった。


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