FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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帰還

ナツの炎により、自慢の流砂の魔法の砂を蒸発させられ、そのまま殴り飛ばされるアジィール。

砂が蒸発した影響で、全員が流砂から脱出して戦闘態勢を取っていた。

 

「ははっ!こんないいパンチをもらったのは何年ぶりかな!いいぞ、もっと来い!!」

 

アジィールは、再び辺り一面を砂に変えてナツ達を飲み込もうとする。その前に、すかさずグレイとマルクが飛び出す。

 

「凍り付け!」

 

「ふん…乾け。」

 

「何っ!?」

 

グレイは、アジィールの動かしていた砂を凍らせて、動けないようにさせた。

だが、アジィールはその氷を乾かして氷の中の水分を完全に消し去った。ならば、とマルクがさらに前に出てアジィールの動かしている砂に自身の魔力をぶつける。

 

「魔力そのものを吸われちゃあ操作はできないだろ!!」

 

「━━━甘ぇよ。」

 

「ぐっ……下からっ!?」

 

砂は、そのままマルクの魔力によって魔力を吸われて地面に落ちるが、ほぼ同時にマルク達の足元から砂が現れて、一同の体に食らいつくようにまとわりついていく。

 

「この砂……まずいぞ!!」

 

「おのれぇい!!」

 

すかさず、マカロフが自身の腕を巨大化させてアジィールへと攻撃を仕掛ける。アジィールはすかさず避けるが、その一瞬の間にマカロフは全員を巨大化した腕で包み込んで、全員を守るように体で覆い隠す。

 

「ワシのガキどもは絶対にやらせんぞ!!」

 

「じっちゃんよせ!!俺達は戦える!!」

 

「ナツ、叫ばないで……」

 

「…へぇ、それで全員守れるとでも?」

 

アジィールは、笑みを浮かべる。マカロフの家族を守る気持ちに、笑みを浮かべたのだ。無論、その程度で守りきれるわけが無いという嘲笑の笑みなのだが。

 

「分かってねぇなぁ?スプリガン12(トゥエルブ)の力を。」

 

その言葉の後から、遠くの方で地鳴りが聞こえ始める。マカロフは何事かと、その地鳴りのする方向に視線を向ける。

 

「のまれろ!!死の砂に!!」

 

それは、砂の高波だった。アジィールの倍よりもでかくなっているはずのマカロフよりも、何十倍もの大きさを持つ巨大な砂の波であった。

 

「なっ……!?」

 

「メスト!瞬間移動だ!」

 

「どこにだよ!!」

 

「何があっても……お前達だけは守る!!」

 

「じっちゃん!!」

 

迫る砂の波に、マカロフは覚悟を決める。自分が犠牲になってでもナツ達を守ろうとする覚悟を。

 

「━━━必ず!!」

 

「終わりだ、この砂嵐は触れたもの全ての水分を消滅させる。」

 

「だからさっき、グレイさんの氷が効かなかったのか!!」

 

「妖精のミイラ誕生だな!!」

 

「オオオオオオ!!」

 

砂に飲まれいくマカロフ。もうだめかと思われたその時……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「雷……!?」

 

「ラクサス!!」

 

上を見上げると、そこには天に浮かぶ船に乗ったラクサスの姿があった。マカロフの手から出てきて状況を確認した一同は、その派手さに驚いていた。

 

「老けたな、ジジイ。」

 

「一旦引くぞ!」

 

「船に乗って!!」

 

「ここは敵地だしな。」

 

ラクサスの後から、ガジル、レビィ、リリーの声が聞こえてくる。その船は、一同も何度か見た事があった青い天馬(ブルーペガサス)の所有する船、クリスティーナだった。

 

「クリスティーナ!?え、なんで天馬の船に!?」

 

「つーかアレ船だろ!なんでガジルもラクサスも平気なんだ!!」

 

「グレイ様〜ジュビアもいます〜」

 

「お、俺にも喋らせろ!!」

 

「エルフ兄ちゃん、やめなよ。」

 

「これは滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)用にカスタムされた船なのよ。」

 

「……」

 

あまりの騒がしさに、少し呆れるマカロフ。だが、状況は一刻を争っている状況であり、あまり悠長にしてはいられない。

 

「メスト!いるんだろ!!瞬間移動だ、この船に!!」

 

「了解!!」

 

メストの瞬間移動により、一同は船に乗せられる……だが、アジィールはそう簡単に逃がすつもりは無い。

 

「逃がすかァ!!」

 

「……逃げる?家に帰るだけさ……夕食に遅れちまう。」

 

ラクサスは、軽く手を振り下ろす。すると、飛んできた砂ごと辺り一面を巻き込み……巨大な雷の大爆発が起きる。

 

「……なんだ、お前先に来てたか。」

 

「メストが優先的に飛ばしてくれましたよ……他のみんなは部屋にいます。」

 

ラクサスの横に、マルクが突然現れる。メストがマルク1人をここに飛ばしたのだ。

マルクは魔力の感受能力が高いので、万が一追っ手が来た時はその魔力を察知することができるからだ。

 

「……あれで仕留められてねぇってのは、俺がいちばんよくわかってるよ。」

 

「……気づきました?」

 

「あぁ、なんかに防がれた。」

 

「……ラクサスさんの雷を一瞬で防ぐ程の魔道士……直前まで魔力は抑えてましたけど、出てきました。

あれが侵攻して来るとなると……」

 

「……今は、家に帰ることだけ考えとけ。」

 

「……はい。」

 

それだけを話し合って、マルク達は一旦ナツ達がいる場所へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスターもグレイ様もよくご無事で!!」

 

「何でお前らがここに!!」

 

マルクとラクサスの2人が部屋に入ると、そこでは全員がちゃんと部屋にいることが確認できた。

先にアルバレスに突入していたメンバーを除いて今いるのは、ラクサス、エバーグリーン、ビックスロー、フリード、エルフマン、レビィ、カナ、リサーナ、ミラジェーン、リリー、ガジルの11人と何故かいる一夜であった。

 

「マスターを助けるためにこっちも手を打っていたの。」

 

「その一つがラクサスよ。」

 

「抜けがけしやがって。」

 

「隠密作戦だったんだ。」

 

ガジルがエルザに詰寄る。恐らく、地下で話し合っていたことがどういう訳か漏れたのだろう。恐らくは、滅竜魔導士と聴覚を利用したガジルが盗み聞きしたのだろうが。

 

「すげぇなこの船!全然酔わねぇ!!つーか勝負しようぜラクサス!」

 

「うぜぇ。」

 

「マルクだけどうして離れてたの?」

 

「魔力感知能力に長けているからな。だったら、ってことで追っ手が来るか来ないかって判断をするために、別でワープさせてもらった。」

 

「皆……」

 

マカロフが周りを見渡して、涙を流し始める。それは、久しぶりに会った時に流したような悔し涙ではなく、笑顔で流す嬉しさの涙であった。

 

「最高の家族じゃ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)!」

 

「私は余所者だがね。」

 

「今は黙っててくださいよ、すいませんけど。」

 

「辛辣だ……!」

 

マルクが、微妙に拗ねている一夜を宥めようとするが、微妙に変な拗ね方をしている一夜には逆効果だったようだ。

 

「いや別に辛辣とかじゃあ……というかなんでいるんですか?それに、この船もそうですけど……」

 

「いいことを聞いてくれた。説明しよう。」

 

そう言って、帰りながら一夜はマルクに説明をしてくれた。まず、雷神衆とラクサスはギルドを再建し始めたばかりの時には、姿を見せていなかった。

しかし、評議院だった頃の情報網を利用してガジルはその4人が青い天馬にいることを突き止める。

そうして、迎えに行った時に素早く行けるということで一夜と青い天馬のマスターであるボブに快くクリスティーナを貸してもらったのだ。しかも、わざわざ滅竜魔導士用にカスタマイズされた特注品を、だ。

しかし、話を聞いた一夜は放っておくことが出来ずに、このまま着いてきたということらしい。

 

「そういう事だったんですか……ありがとうございます。」

 

「いや何、話を聞いた手前君達を放っておくことは出来ないだろう。無論、エルザさんの無事というのは私にとってはかなり重要度が高いのは事実だが、君達の無事も私の中では同じように重要度が高いと言うだけの話さ。」

 

「そういう、ナチュラルでかっこいいこと言いますよね。」

 

文章の後ろに『顔以外はほんとにかっこいいですよね』と付け加えかけたマルクだったが、どうにか喉元まで抑えることが出来た。

 

「さぁ、まずは戻ろうじゃないか妖精の尻尾に。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖精の尻尾正式に復活を祝して……かんぱーい!!」

 

「「かんぱーい!!」」

 

妖精の尻尾にて、ギルドの完全復活兼マスターであるマカロフが帰還したことによるパーティが妖精の尻尾で行われていた。

 

「おかえりマスター!」

 

「あれ?今のマスターはエルザだから……えーっと……」

 

「マカロフさん!」

 

「なんかしまらねぇな……」

 

このように他愛もない話をしながら、パーティも時間も進んでいく。しかし、全員がイキイキとしていたかつ楽しそうにしていた。当然である、ギルドもギルドの建物もメンバーもマスターであるマカロフも……全てが完全に揃ったことで、正式に復活したのがみんな嬉しいのだ。

 

「マスターで良い、私は辞退する。」

 

「じゃあ改めてマスターおかえり~」

 

「8代目ってことになるのか?」

 

「マスターやるの三回目ってこと!?何回生き返ってるの!?」

 

「死んでないし……」

 

「5代目と7代目がすぐに辞めてますからねぇ……」

 

マルクが苦笑いしながら、そう呟く。1番短いのは、恐らくギルダーツだろう。明確に全員にマスターだと宣言した時をマスター就任と言うならば、文字通り秒速でやめてしまってるのだから。

 

「こうなったら死ぬまでやってやるわい。」

 

「それぞ男!」

 

「それ、前にも聞きましたよ。」

 

「あははは!」

 

ストラウス兄弟姉妹(きょうだい)が、マスターの言葉を茶化す。だが、彼女たちも嬉しいのだ。

 

「……なんだ、お前も乗り物ダメになっちまったのか?」

 

「はい……」

 

「……実は、はいその通りで……」

 

ガジルが、ウェンディに向かって同情的な視線を送る。同じ滅竜魔導士として、乗り物がダメになってしまった時の気持ちは理解できるのだろう。

 

「俺はウェンディよりも前から、乗り物はダメになってましたね。いつからダメになってたかなぁ……」

 

「それ考えると酔い始める、なんてことがあると嫌だな…」

 

「まー、気にすんな!俺は昔からだ!」

 

「それ、慰めてるつもりなのか?」

 

ナツがウェンディに言葉をかけるが、リーダスはその言葉に驚く。自分のことを話されても慰めになる人はそうはいないだろう。

 

「もう馬車に乗れない。」

 

「そんなに残念?」

 

「というか生き物が平気なら、無理言って馬に乗せてもらったらダメなのかな。」

 

「あんた、それ試したことあるの?」

 

「無理だって言われた……」

 

「もう失敗してるじゃない……」

 

マルクは肩を落としているが、シャルルは呆れ顔である。ウェンディも落ち込みながら、同じように肩を落としていた。

 

「……やっぱり似たもの同士ね、あんた達。」

 

「「へ?」」

 

「お似合いって言ってるのよ、その行動のシンクロ具合とか。」

 

「……どぅううぇくぃ━━━」

 

「言わせないからなハッピー!?」

 

シャルルが、2人を元気づけるために敢えて別の話題を振って元気を取り戻させる。ただ、ウェンディとマルクが赤面しながら顔を背け合う所まで一緒になって、真面目に似たもの同士だということに拍車がかかっている事を考えていた。

西の大陸、アルバレス帝国、スプリガン12……色々な事がおきすぎて、気が滅入ってしまう所だったが、このマカロフ帰還兼妖精の尻尾完全復活パーティで、ある程度皆活気を取り戻していた。


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