FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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アルバレス皇帝とその配下

ナツ達は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)6代目マスターであるマカロフ・ドレアーが、730ほどのギルドがひとつになって生まれた国アルバレス帝国へと自ら赴いていたことを知る。

そして同時に、アルバレスが手に入れようとしているものも知った。それがルーメン・イストワール。初代妖精の尻尾マスター、メイビスの体が中に入っている水晶であるその物体は、どのような存在下までは分からないが、少なくともとんでもない兵器だということだけは分かっていた。

アルバレスがそれを求めて、侵攻を開始していたのだが、評議院という存在がいたために向こうはその侵攻を中断していた。だが、冥府の門(タルタロス)との戦いにより評議院、並びに評議院の兵器の一つであるエーテリオンとフェイスの全てが失われた。

故に、マカロフが交渉に行くことでその間に立て直しができればいいという話なのである。そして、現に立て直しは完了したのだ。

だが、マカロフは戻ってきていなかった。おそらく、戻れない事態になっているのだろう。

それを知ったナツ達は、アルバレスに向かってマカロフを取り戻すために密かにアルバレスへと侵入していくのであった。

 

「……あれがアルバレスの城ですか。」

 

「そうみたいだな……」

 

「大きい……威圧感がすごいわね……」

 

望遠鏡で、アルバレスの城を覗くルーシィ達。今は城から離れた位置にある森の中でひっそりと身を潜めていた。

 

「さて……ここからは俺だけで行こう。他がいたら危険性が高くなる。」

 

メストが、そう言葉を放った直後に消える。有無を言わせないその行動に、ナツが少しだけ憤っていた。

 

「なんでだよ、俺も連れていけっての。」

 

「でもメストの言うことも一理あるわよ、だって私たちが入ってたら目立つし……それに、メストの魔力の消費もできる限り抑えておいた方がいいでしょ?」

 

「うぐっ……そうだけどよ……」

 

「あんなバカでかい城です、メストのジャンプもちょっとかかるでしょうし、できる限り目立たないし魔力の消費もできるに限ります。」

 

各々が喋り、メストの帰還を待つ。1分でも経てば、それはとても異常なことだろうと各々が理解しているため、ほんの数十秒待てばいいのだが。

そして、ほんの少しだけ待っていると、メストが戻ってくる。マカロフを連れて。

 

「じーさん!」

 

「マスター!」

 

「じっちゃん!」

 

「マスター!」

 

「わぁ!」

 

「良かった無事で!!」

 

「お、お前達……」

 

メストが、マカロフを連れて戻ってくる。それに嬉しそうに反応するナツ達と、驚いているマカロフ。

だが、メストがそれどころではないと言わんばかりに、驚きと焦りに満ちた顔をしていた。

 

「…どうしたんだメスト、マスターを連れてきただけにしてはやけにビビってるみたいな顔してるけど……」

 

「ビビる!そりゃあビビる!!ゼレフ!!ゼレフがいた…!」

 

肩で息をしながら、状況説明をし始めるメスト。どうやら、マカロフを連れてくる時にゼレフの顔を見たらしい。

 

「ゼレフがいるのか!?」

 

「この大陸に……!?」

 

「ワシも知らんかった…!皇帝スプリガンを名乗る男こそ、ゼレフ本人じゃ!!」

 

マカロフの言葉に、驚きを隠せない一同。しかし、それ以上に今はマカロフと再び会えたことが嬉しかったのか、すぐにほんわかムードになる。

 

「お前達がここにいるということは、事のいきさつはメストから聞いてる、という事か。」

 

「はい。」

 

「兎に角無事で良かったです。」

 

嬉しそうな雰囲気になる中、マカロフだけが拳を握って悔しそうな表情をしていた。それは恐らく、例の交渉の件についてなのだろう。

 

「…ワシの考えが浅はかだった。奴らは初めから、交渉に応じる気などなかったんじゃ。

ギルドの歴史を汚してまで、西方入りしたと言うに……全てが無意味、こんなに悔しいことは無い……!」

 

「無意味なもんか、この1年があったからみんな成長した。」

 

「あたし達はまた集まることが出来たんだよ。」

 

グレイとルーシィが、マカロフを慰めるかのように言葉をかける。それだけではない、エルザも、メストもウェンディもマルクも……全員が、マカロフに何かしら慰みをかける。

 

「人を想って起こした行動は、必ず意味のあるものと信じています。それが、あなたの教えだから。」

 

「帰ろう、じっちゃん。妖精の尻尾へ。」

 

泣いて、俯いていたマカロフにナツが手を差し伸べる。それに、マカロフは涙を流す。

 

「つもる話もあるけれど、まずはこの場を離れましょう。」

 

「そうだね。」

 

「連続で瞬間移動(ダイレクトライン)を使いすぎた。今の魔力じゃみんなを連れて移動できるのは一回。」

 

「俺がモード悪魔龍を使って、メストの魔法をコピーしてもいいけど、あくまで魔法のコピーだから使い方わかんねぇんだよな……攻撃魔法とかならわかりやすいのに。」

 

「お前の魔力はなるべく、戦いに温存しておいてくれ……ともかく、その1回はソラノの……船?までの1回に使いてぇ。

瞬間移動で船まで行ける地点まで戻らねば……」

 

「━━━折角仲良くなれたのに、帰っちまうのかマカロフ。」

 

一同が相談している中、その外部から話しかけてくる人物が1人現れる。マカロフを助けたので、追っ手が来るのはわかっていたが余りにも来るのが早すぎるのだ。

 

「土産は持ったかい?土の中へは意外とすぐについちまう。」

 

「アジィール!」

 

「馬鹿な!!どうやってここに……」

 

「砂!砂はいい……全てを語ってくれる。」

 

そうやって、現れた男…アジィールは手から砂を零す。それだけで、砂を使う魔導士だと言うのはわかったが、問題はその魔力量である。

一同は、アジィールから感じる魔力がカラコール島にいた女魔導士、ブランディッシュと同等の魔力だと察したのだ。

その為に、全員が戦闘態勢に入る。

 

「いいねぇ……」

 

「よせ!戦ってはいかん!勝てる相手ではない!逃げるんじゃ!!」

 

「っ!けど……」

 

「マスターが言うんだ、引くぞ!!」

 

そう言って、全員が一斉に引き始める。エルザとマルクが、目くらましとばかりに攻撃を行いながら逃げていく。

 

「こっちに魔導四輪を用意してあるわ!!」

 

シャルルの案内の元で、一同は逃げていく。当然、さっきの攻撃でアジィールが倒せた、などとは微塵も思ってはいなかった。

 

「今のうちだ!乗り込め!!」

 

「車……」

 

「私が運転する!!SEプラグ接続!行くぞ!!」

 

そして、エルザは自身の魔力を最大限注入して魔導四輪をフルスロットルで動かしていく。

そうしてしばらく逃げ続けたあと。

 

「……来るぞ…」

 

「あ?」

 

「何あれ!?」

 

「砂!?砂の怪物!?」

 

魔導四輪で逃げている一同を覆うかのような恐ろしく巨大な物体が現れる。

まるで人型のように作られているそれは、砂の怪物と呼ぶにふさわしい姿を確かにしていた。

 

「おのれ……!」

 

エルザは運転しながら、砂の怪物の攻撃を避けていく。大きさゆえに動きがのろいのと、攻撃方法が殴るのみなのでギリギリで避け続けることが出来ていた。

 

「ルーシィ!迎撃するぞ!!」

 

「うん!」

 

「おぶ……」

 

「すまねぇな、ちょっと苦しいぞ。」

 

魔導四輪で酔ったマルクの上を通るように、窓から身を乗り出して魔導四輪の天井に乗るグレイとルーシィ。

 

「よせ!適う相手じゃない!!」

 

「やってみなきゃ……わかんねぇだろ!!」

 

グレイの体のほぼ半分が、黒く染まる。それは、彼が覚えた氷の滅悪魔法の力の一端であり、それを解放するのは本気を出す、ということである。

 

「うぐっ……グ、グレイさん……頑張っ……おぐぅ……」

 

「ちょっとあんたにまで影響あるの……?」

 

グレイが滅悪魔法の力を解放したせいか、車内でマルクが身を丸めながら横たわり始めていた。

多少の冷気は確かにあるものの、その魔力の質がどうやら冷気と混ざりあって軽くマルクにダメージを与えていっているようだった。

 

星霊衣(スタードレス)サジタリウスフォーム。」

 

そして、ルーシィの姿も変貌する。先程まで水着の姿だったのが、まるで星霊の着るような服をまとって、その手には大きな弓と矢が携わっていた。

それは、ルーシィと星霊達の絆を表した姿であり、この力を解放している時のルーシィは、纏った衣服の元となった星霊の力を使用することが出来る。更に、併用して星霊召喚も行えるため、同じ力を持った星霊とともに戦うことも出来る。

 

「アイスメイク━━━!」

 

「へえぇ、やるつもりかァ?」

 

「━━━銀世界(シルバー)。」

 

グレイの魔法により、辺り一面が氷漬けになる。そして、砂の怪物もまとめて氷漬けにされていた。それはまるで、凍らされた太陽の村を彷彿とさせるものだった。

 

「辺りが一瞬で氷漬けに!」

 

「凄い!!」

 

「やるぅ……!」

 

氷漬けになる前に、アジィールは砂の怪物から飛び下りて空中に砂をばらまいていく。ばらまかれた砂は、今度は羽の生えた怪物のような姿になり、魔導四輪に襲いかかろうとしてくる。

 

「砂が怪物になった!!」

 

「任せて!!スターショット!!」

 

矢を構えて、ルーシィは次々に怪物を撃ち落としていく。かなりの数がいるので狙えないものもいたが、そういうものはグレイが氷漬けにしていってサポートしていく。

 

「いいねえ、いいねぇ!!」

 

楽しそうにしていたアジィールだったが、その姿が突然消える。突然の事で、ルーシィ達は驚いてしまう。

 

「消えた!?」

 

「下じゃ!奴は砂と同化する!!」

 

「━━━蟻地獄ゥ!!」

 

マカロフのその言葉と共に、魔導四輪の下が流砂となる。一瞬のことだったのと、その大きさにより魔導四輪では回避できなかったのだ。

 

「しまったァ!!」

 

「くぷっ!」

 

「くそっ!!」

 

「アーハッハッハッ!いいねぇ!無様な姿が実にいいねぇ!」

 

「車から出るんだ!!」

 

この状態では既に魔導四輪は使いものにならないので、一同は魔導四輪から一斉に脱出をし始める。

 

「くそ……魔導四輪が……!」

 

「砂が!」

 

「まとわりついて……!」

 

「動けない!!」

 

全員の体に砂がまとわりつき、下へ下へと飲み込んでいく。文字通りの蟻地獄である。

 

「何人殺してきたかなぁ、いくつの街を飲み込んで来たかなぁ……この蟻地獄は終わりの扉、逃れられた者はいねぇ。

いいかァ!死ぬ前に一つだけ覚えておけぇ!!お前ら程度の魔導士は掃いて捨てるほど始末してきた!格が違うんだよ虫けらどもぉ!!」

 

アジィールは、高笑いしながら一同に上から目線でものを言い始める。しかし、その傲慢さは実力とこれまでの経験から成り立っているものだろう。

 

「イシュガルの血は神に見捨てられた!これよりアルバレスによって支配されるだろう!!悔しいだろぉ!?いいねぇいいねぇ!その顔ォォォォォォ!!」

 

瞬間、蟻地獄から灼熱の炎が吹き出す。表面の砂は吹き飛び、そして吹き飛ばなかった砂は全て白くなり蒸発していく。

一同のギルドマークが、書き変わっていく。猫のような絵だったのが、段々と変わっていき……妖精へと変貌していく。

 

「━━━神に見捨てられた?上等……まだ、妖精の尻尾がいるからよォ。」

 

「砂を蒸発……さ、びっ!!」

 

言葉を続けようとしたアジィールだったが、ナツに殴られて吹き飛ばされていく。ここからが、妖精の尻尾のターンである。


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