FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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アタラキシアへ

西の大陸、アタラキシア大陸へ向かう為に一行は誰にも伝えず出発した。まずは、距離があるために間の島を1つ経由して補給しながら進んでいく為に、今はカラコールという島に向かって進んでいっているのだ。

しかし、大陸間の移動を…かつ最短距離を渡っていかねばならないので、当然その移動には船が伴う。

そして、残念なことに船は乗り物であるために揺れる。

 

「ふ、船で行くのかよ……うぷ……」

 

「何で行くと思ってたんだ。」

 

「ほら、メストの瞬間移動でピューっと……」

 

「そんなに長距離は無理だ。」

 

ナツは、思いっきり酔っていた。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の性とも言うべきか、乗り物には滅法弱いのだ。

そして、同じ滅竜魔導士であるマルクとウェンディも例外ではなかったらしく━━━

 

「ウェンディ…酔い止めの魔法……」

 

「うぅ……」

 

「ウェンディ……大丈夫かぁ……!」

 

「ウェンディ!マルク!」

 

ルーシィが、既にグロッキーになっているマルク達に近づいて何とか介抱しようとしていた。しかし、こればかりはどうしようもないのだ。

 

「すみません……なんか、私も…乗り物に弱くなったみたいで……うぷっ…」

 

「大丈夫…?」

 

「こうなるとウェンディにもトロイアは使えないわ。」

 

「魚食べる?」

 

「仕方ねぇ、寝室に運んでやるか。」

 

倒れている3人を、グレイがなんとか担ぎあげて船に備わっている寝室へと寝かせていく。

マルク達は、そのまま寝かされたままひたすらに酔い続けるという一種の地獄を味わっていた。

 

「これでOK。」

 

「服どこいったー!!」

 

「大声は、耳に響く……」

 

そんなことを呟きながら、マルクはなるべく酔いをマシにする為になんとか寝ようとする……が、船から降りるまで、寝ることは出来なかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルバレス帝国の船だと!?」

 

「なんでこんな所に……」

 

「カラコールはアルバレスの領土じゃないはずよ?」

 

「港で何かの検閲をやっているようだ。」

 

「これじゃあ島に近付けねぇぞ。」

 

ある程度時間が経った頃、一行はカラコール島の近くまで船を進めることが出来ていた。

しかし、そのカラコール島には何故かアルバレスの船が止まっており、迂闊に近づけない状況になっていた。

だが、寝室でもあまり落ち着けなかったナツ達が部屋から出てきて、酔いながら船のヘリに体を持たれさせていた。

 

「スパイの仲間を探してる……みてーだ……」

 

「スパイさんも、捕まってはいないようです……」

 

「どうやら……そのスパイってのがバレてしまったらしいですね……」

 

「え?」

 

ルーシィは、ナツ達が言ったことが一体何なのかは理解していたが、海から聞こえてくるのはカモメの鳴き声ばかりであり、人の声なんて言うものは大して聞こえていなかったのだ。

 

「あんた達港の声が聞こえるの?」

 

「微かにだけど……」

 

「どうする。」

 

「奴らに諜報員が捕まる前に接触せねばな……その為には、変装だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同は、船をカラコール島に付けて上陸していた。その際に、怪しまれないように色々と変装を凝らして、バレないように工夫をしていた。

諜報員がバレてしまった以上、恐らく妖精の尻尾(フェアリーテイル)というギルドは目をつけられているかもしれないからだ。ひとまず、水着を着て怪しまれないようにしていた。

 

「いいかナツ、大人しくしてるんだぞ。」

 

「分かってるよ……」

 

コソコソと、小声でナツに注意を入れるエルザ。島民観光客その他諸々……アルバレスの兵隊以外の人間は、港検閲のために1列に並ばされていたので、コソコソ話も楽でよかったのだ。

 

「次。」

 

兵隊が、次の人物を呼ぶ。次の番はナツ達である。男達は一歩下がっており、その辺の誤魔化しは女性陣に任せているのだ。

 

「あたし達観光でこの島来ましたー!!」

 

「あい!!」

 

「この島のスターマンゴーが絶品と聞いてな。」

 

「楽しみだね『お姉ちゃん』」

 

ウェンディが人間の姿に化けているシャルルに大してお姉ちゃんと呼ぶ。その事に男達は微妙な反応を返していた。

 

「お姉ちゃんって……」

 

「そんなキャラ設定いるか?」

 

「まぁ、一応誤魔化すにはいいでしょ……ギルドマークすら偽装してるんだし、俺としては別にいるとは思いませんけど……」

 

小声で男達は疑問を語り合う。女性陣と兵士達はそれに気づかないまま話を進めていく。

 

「その紋章はギルドのものか。」

 

「魔導士ギルド化猫の宿(ケットシェルター)です。」

 

ギルドマークを、上から隠して化猫の宿のマークを貼り付けた一同。ウェンディもマルクも、妙に懐かしい気持ちになっていた。

 

「聞いたこともねぇギルドだな。」

 

「そもそもイシュガルのギルドなんざ、数える程しか知らねぇよ。」

 

「……まぁ、大きいギルドではなかったけどさ。」

 

直でそういうことを言われると、さすがにショックだったのかウェンディもマルクも、微妙にしょげていた。

しかし、化猫の宿は8年前に無くなったギルドである。故に知らない人物がいてもおかしくはない……と、考えておかないとどうしようもなかったのだ。

 

「どうする?魔導士は特に厳しくチェックしろと言われてるし……」

 

「いや、そもそもスパイの仲間がギルドの紋章付けてやってくるか?」

 

「確かに。」

 

兵隊達は話し合い始める。しかし、今一同には時間が無いのだ。故に、こんな所で兵隊達の話し合いなんて待つわけには行かないのだ。

 

「ねぇ……早く通してくれる?」

 

「スターマンゴーが売り切れてしまうではないか。」

 

ルーシィ達は、胸を寄せて兵士達を誘惑する。微妙にウェンディがこれでショックを受けているようにも見えたが、如何せん水着な為にマルクはウェンディ達を直視できていなかった。

 

「わ、わかった!全員荷物を見せろ!!」

 

「……通ってよし!」

 

荷物を全員見せて、なんとか島の中へと入る事ができた一同。それに関して、ルーシィとエルザは妙に自慢げになっていた。

 

「流石だな〜」

 

「全く恐れ入るぜ……」

 

「人間のオスも大したことないわね。」

 

「シャルル、多分私達役に立ってないよ。」

 

何故か人間体になっているシャルルまでが自慢げになっているが、ウェンディは最早ショックを通り越して達観の域に達し始めていた。

 

「いやいや、そんな事ないぞ?ウェンディだって凄く可愛かったからきっと役に立っ……いや待てよ、そうなったらあの中にウェンディが狙う奴がいるってことに……ちょっと殴り飛ばして……ぐえっ。」

 

「お前までナツのようになってどうする……街中に兵隊がうろついている、迂闊なことは出来ん。」

 

マルクの首根っこを直で掴んで、マルクを止めるエルザ。周りを見渡して、街中の兵隊の数を見ながらそう呟く。

 

「ナツ、大人しくしててよ。」

 

「なんで俺ばっかり……」

 

「お前が1番潜入の意味を理解していないからだ。」

 

「分かってるって、あれだろ!俺の好きな『忍者』みてーなもんだ。」

 

「げほ、げほっ……忍者って昼間は一般人に紛れてるらしいんで今はあながち間違ってないみたいですけどね……ん?」

 

冷静になってから開放されたマルク。しかし、遠くから聞こえてきた声があり、それに視線を向けていた。

 

「お父さんを返して〜……」

 

「ム?」

 

「どこに連れてったの〜!お父さ〜ん!!」

 

「親父に似てこのガキも反抗的だな。」

 

どうやら、兵隊たちに父親を連れていかれた子供が、その兵隊達に父親を返すようお願いしている場面のようだ。

しかし、兵隊達はフルヘルムの兜で顔こそ見えないが、あまりいいように受け取ってはいなかった。

 

「っ……!」

 

「我慢するんだナツ。」

 

「絶対に奴らに手を出しては行けない。」

 

エルザとメストの静止により、ナツはまだ兵士たちに殴りかかろうとはしなかった。

だが、そんなこととは関係なく子供と兵士は段々と険悪になっていく。

 

「うわぁーん!お父さーん!!」

 

「黙らねぇと殺すぞ!!」

 

「相手は子供だぞ!?」

 

「正気なの!?」

 

兵士達は泣いている子供に武器を振り上げて、一切の遠慮なく殺しにかかる。しかし、その武器は子供振り下ろされる前に……()()()()()()()()()()()()()

 

「何事だーっ!!」

 

「ったく……流石にここまで無視は出来ねぇって。」

 

「やっちまった……!」

 

エルザ、ルーシィ、グレイ、ナツの4人が兵士達を吹き飛ばしたのだ。そして、ウェンディが子供を守る体勢に入り、マルクがそのウェンディと子供をまとめて守る体勢になっていた。

 

「忍法、吹っ飛ばしの術だ。」

 

「ナツさん、これ忍法じゃなくて魔法……というかもはや体術ですよこれ。」

 

そう突っ込みながらも、マルクは手に魔力を込める。兵士達を殴り倒す準備である。

 

「もう島から出れねぇぞ……!」

 

「そうね、全員倒すまでは。」

 

「こっちは任せてください。」

 

そう言いながら、ウェンディは子供をこの場から一旦離れさせるために動いていく。

マルクはナツ達とアイコンタクトを取って、ウェンディについて行く。

 

「メスト、お前もいけ。」

 

「しかし……っ!!」

 

メストは、子供を安全な場所まで避難させようとするウェンディとシャルルに目線を移す。

何を思ったのか、少し赤面しながら2人をじっと見つめてる……所に、マルクが頭を掴む。

 

「おい、てめぇ今ウェンディ達見て変な考え起こしてる場合じゃねぇだろうが……諜報員と合流しろって言ってんだよ……!」

 

「そ、そうか……ここで騒ぎを起こしてるうちに……」

 

「いいアイデアだ。」

 

「忍法別行動!」

 

「みんな、気をつけろよ。」

 

マルクが一旦手を離したので、そのままワープでメストは諜報員と接触するために動き始める。

そして、マルクもウェンディ達について行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ、ウェンディ。」

 

「人の匂いで分かりづらいけど……この子の持ってたお父さんのものでどうにかなりそうかも。」

 

「そうか……っ!?」

 

「マルク、どうしたの?」

 

ウェンディ達は、子供のお父さんを探すために動いていた。ウェンディの鼻の良さを利用して、なんとか探し出そうとしていた時だったが、その時マルクがナツ達の方向に目線を向ける。

 

「……ナツさん達がいた場所に、とんでもなくでかい魔力の感じがする。」

 

「……っ!わ、私は集中しないとわからなかったけど……確かに、大きい魔力が、2つ…」

 

「……お父さん、急いで探さないとな。」

 

「……マルク、多分私達大丈夫だから行ってきてもいいよ?」

 

ウェンディが、真剣な顔でマルクに伝える。その言葉を聞いて、マルクは冷静に考える。

今こうやって、何事もなく子供の親を探せている以上、恐らくナツ達の方に戦闘員達は集中しているのだろう。

という事は、確かに戦えるウェンディとシャルルのふたりが残っても問題は起こりづらいだろう。

 

「……子供のお父さん探し、任せてもいいか?」

 

「うん!」

 

「私達がそう簡単にやられるわけないでしょ?もっと私達を信用しなさいよ。」

 

シャルルが片手でVサインを作って自慢げな顔をする。それに、つい笑ってしまうマルクだったが、しかしシャルルの言っていることも正論なのだ。

 

「なら、任せた。俺は……ナツさん達と合流してくる。」

 

「ナツさん達なら大丈夫だと思うけど……けど、マルクがいてくれるだけで安心だと思うよ。」

 

「そりゃまた何で……」

 

「だって、マルクは魔力を食べるんだもん。これ以上ない強さだよ。」

 

「……ま、そりゃあそうか。じゃ、行ってくる!!」

 

マルクはそう言って、足に魔力を貯めて一気に大ジャンプをする。大きな魔力が2つ。この2つに、マルクは勝てるかどうか多少の不安を感じながらも、向かうのであった。


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