サッカーバカとガールズバンド(仮題)   作:コロ助なり~

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第22話

 

 

 

―――これは事故。偶然の出来事だ。だから私は悪くない。悪いわけがないのだ。

洗濯物を洗濯しようとしたら、たまたま風呂から上がった遥君が出てきた。それだけだ。

 

ほら、私に一切悪いところなんてない。

 

だから遥君の鍛えられた肉体やある一部をガン見してもこれは幸運不幸な事故として処理される。あとで誰かにバラさないように口封じは必要になるだろうけど。

 

「―――ねぇ、千聖」

 

しまった。あまりに見過ぎて不快な思いをさせてしまったかしら……?

 

「俺の裸なんか見て面白い?」

 

「え……?」

 

言い訳の一つでも考えようとしたら遥君から予想外の質問が来た。

 

異性に裸を見られているというのに羞恥心はないのかしら? ……サッカーバカには無縁のようね。

 

「そ、それは……」

 

言葉に詰まる。

私だって年頃の女だ。異性の裸に興味がないわけじゃない。それが遥君のなら尚更。

しかし、正直に見たいと言ってはしたない女だと思われたくはない。

なんて答えたらいいか頭を悩ませていたら、遥君が言った。

 

「まあ、見たいなら好きなだけ見れば?」

 

…………ッ!? 「好きなだけ見れば?」、ですって……? そ、そんな素敵なニホンゴがこの世に存在していたのね!? ……今の言葉で襲ってもいいよと遠回しに言っているように聞こえるのは私だけかしら? まあ、それはともかく、本人の了承を得たのだからこれで心置きなく見ていられる。

 

「遥君がそこまで言うなら―――」

 

「ハル、ご飯が出来た…………あなた達はなにをしているのかしら?」

 

遥君を呼びに来た友希那ちゃんが私達を見てものすごい形相になっていた。このままでは叱られる―――かと思いきや、遥君の裸を見た瞬間に表情は変わらないが顔どころか耳まで真っ赤に染まり、目を逸らした。

幼馴染である彼女にも遥君の裸は刺激が強いようだ。

 

「うーんとね、千聖が俺の裸見たいって」

 

「ちょっと待ちなさい。その言い方だと誤解されてしまうでしょう?」

 

私は見たいとは一言も言ってないわ! ……ものすごく見たいけれど! 

 

早速誤解されて友希那ちゃんが私を見る目に殺意が籠っている。だけど遥君の方が気になるのかチラチラ横目で見ていた。

 

「これは事故よ。洗濯をしようとしたら遥君が上がってきて遭遇したのよ」

 

「……本当に?」

 

「そうみたい」

 

友希那ちゃんが出来るだけ下の方を見ないようにして遥君に確認をとるように尋ねた。

 

みたいじゃなくて本当にそうなのよ。

 

いつまもで三人がここにいるとリサちゃんまで来て、余計にややこしいことになりかねない。それならば今すぐにここを離れるのが吉だろう。

 

「遥君はすぐに服を着るべきね。湯冷めして風邪を引いてしまってはいけないわ」

 

この事故が原因で遥君の体調が悪くなるのは誰も望ま―――。

考えている途中で閃きがあった。

風邪で寝込む遥君。

そんな彼を手厚く看病しようとする私。

 

「遥君、私に出来ることなら何でもするから遠慮なく言ってちょうだい」

 

「じゃあ、背中拭いてくれないかな? 汗が気持ち悪くて……」

 

そう言って自分の服を脱ごうとするのだが、体調が余程悪いのか上手く力が入らず脱げそうにない。

 

「あらら……ごめん、出来れば脱がせてもらえると助かるかな」

 

「え、ええ! わかったわ」

 

異性の服を脱がすという行為に心臓が高鳴る。

 

「……なんだか、少しドキドキする。サッカーやってる時とはまた違ったドキドキ。……なんでだろ?」

 

「それは……」

 

続きを言おうとしたところで脳内ストーリーを中断した。

 

うん、ないわね。遥君に羞恥心なんてないのはさっきのでわかったじゃない。

実際にすることなってもちょっとエロチックなラブコメなんて起こるはずはないわ。……いっその事自分で起こすというのも十分にアリね。むしろそれが正解なんじゃないかとすら思えてくるわ。

 

「―――で、いつまで突っ立ってるの? 本当に風邪ひくわよ?」

 

未だに着替えようとしない遥君に着替えを催促したら、困ったように頬を掻いた。

 

「そうは言っても、二人がいると狭いから着替えられないんだけど。……着替えも見たいの?」

 

『…………』

 

私と友希那ちゃんは無言で後ろに振り返り、脱衣所から立ち去った。

 

 

 

 

 

風呂場で変な事故があったが特に気にすることはなく夕食タイム。

リサが作った甘口カレーを食べながら、世間話に花を咲かせる女子高生三人。

学校がどうたらこうたら、ファッションがどうたらこうたら。彼女達に共通するバンドについては言わずもがな。

女三人寄れば姦しいという諺が今の状況をそのまま表していた。

 

知らぬ間に三人が仲良くなったのは良いことだけど、アウェー感があるなぁ。自分の家なのに。リサや友希那の私物が日に日に増えてるけど間違いなく自分の家だ。……自分の家だよね? いつのまにか乗っ取られてたりしないよね?

 

ちょっとした不安を覚えながらもおかわりをよそって二杯目のカレーを食べる。

流れるBGMは変わらず女子高生トーク。時折日本語なのか疑わしい単語が出てきても些末なことだ。

 

……テレビでもつけるか。

 

ニュースが流れてる時間帯であることを時計で確認してリモコンの電源ボタンを押した。

 

『あなた! 私に隠れて浮気していたのね!?』

 

『待ってくれ! 誤解だ!』

 

『じゃあ、このメール相手は誰!?』

 

『……しょ、職場の後輩だよ』

 

誰かが見ていたチャンネルがそのままになっていたらしく、最初に流れてきたのはドラマのドロドロの修羅場シーンだった。そのシーンは前回のあらすじらしい。

まあ、だからなんだという話でこれといって特に興味が湧くこともなかったし、どちらかと言えばこれ以上先が見たくないから変えようとしたのだが千聖に待ったをかけられた。

 

「この女優さんの演技、勉強になりそうだからもう少し見させてくれないかしら?」

 

「いいよ」

 

流石にそう言われてしまうと断れない。

勉強熱心なことで。

リサと友希那も興味があるようでこのドラマに見入っている。俺も仕方なく退屈凌ぎに見始めた。

 

『ふぅ……なんとか誤解が解けたみたい―――ウッ……!』

 

のだが、本編が始まって開始三分で主人公らしき人物が死んだ。

 

「え……?」

 

「なるほど……こういう展開になるなんて予想してなかったわ」

 

「犯人は恐らく奥さんね」

 

「えー? アタシは後輩の人だと思うなー?」

 

「……いやいやいやいや! 君達おかしくない!? 開始三分で主人公らしき人が死んでるんだよ!? なのに平然と推理してる!? え、これ推理もの!? だったらおかしくは―――」

 

『いや、普通に恋愛ドラマですけど』

 

「どこがッ!?」

 

どう考えても恋愛ドラマに思えないのでリサに頼んで番組表の番組内容を見せてもらった。

 

『番組名:デスストーリーは突然に』

 

『番組内容:妻と後輩に挟まれ葛藤する会社員のお話。ちょっぴりビターな大人の恋、覗いてみませんか?』

 

なにがちょっぴりビターだよ。ビターどころかブラックじゃん、真っ黒でしかないよ!

 

番組内容から先はスタッフや出演している俳優の名前などが載っていた。

ちなみに主人公はやはり死んだ人で間違いないようだ。

 

いや、やっぱりどう考えてもおかしいよね? ぶっ飛び過ぎじゃない? なに? 最近のドラマの主流ってこんななの? 主人公の扱いってモブキャラみたいに扱われるの?

 

『ほらね?』

 

「突然すぎるわッ!」

 

番組内容にあと2クールはあるってなってるけど、どうすんのこのドラマ! 

 

結局、意味の解らない内容にドラマが終わるまで思考回路が一切働かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 






リサみたいなギャル系キャラと遥君を絡ませる番外編でも書こうかなって思ったんですけど上手く纏まりませんでした。
出すとしたら艦これの鈴谷とかデレマスの城ケ崎美嘉とか、かな?

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