Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

8 / 76
ヴェルカム!ストレンジャー・・・どうも放仮ごです。イベントで心臓を狩りながら徹夜で仕上げました。

今回からオルレアンに突入。序盤なのもあって、原作通りの会話もあり長いです。今の邪ンヌとオルレアンの邪ンヌが違い過ぎて書くのが難しい・・・楽しんでいただければ幸いです。


第一特異点:邪竜駆逐百年戦争オルレアン
アイアンメイデンは勘弁だストレンジャー


「・・・え?私に、マスター適正が?」

 

 

第一特異点突入前。今回はカルデアから司令塔として頑張ろうとやる気を出していたオルガマリーは、ロマンから語られた事実に目を丸くした。彼女は元々、マスター適正が無くレイシフトができなかったのであるが、レフが語った通り一度死んだため冬木へと転移ができ、帰れなかったはずがディーラーの手で無理矢理帰還できた。そのため、今回は危険な目に遭わずに済むと思っていた矢先にこれである。いや、昔の自分なら心の底から嬉しいのであろうが。

 

 

「恐らく、彼の降霊儀式の結果なんだと思う。君はもう肉体を持った幽霊みたいな物だから、生前の(しがらみ)に囚われる事は無くなったんじゃないかな。ああ、僕達が全力を持ってサポートさせていただきます!」

 

「・・・貴方にカルデアの全権を渡すって宣言したからそれはいいんだけど、こういう事かしら?私も藤丸とそのサーヴァント達と共にレイシフトして、司令塔として、カルデアの代表として現地の偉い方達と交渉しろと?」

 

「具体的には、皇帝やら王様やら船長やら、立香ちゃんじゃ無礼を働いて関係をこじらせてしまうかもしれない、トップの人間との交渉役だね。なに、もし死に掛けてもディーラーが何とかしてくれるさ」

 

 

にこやかに説明するダ・ヴィンチちゃんにげんなりするオルガマリー。言っている事は分かる、分かるが、もうヘラクレスの様な大英雄と命からがら鬼ごっこするのは沢山なのだ。むしろ何で生きていられたのだろうかと自問するぐらいだ。

 

 

「笑えない冗談ねレオナルド・・・」

 

「実際、彼の装備は凄まじいよ?どんな原理か傷も体力も死んでいなければ必ず全回復してくれる「救急スプレー」に、君の命を繋げたハーブ各種類・・・体力、傷に微々たる回復を齎す緑ハーブ、緑と調合するとその回復力を救急スプレー並みに上げる赤ハーブ、体力を上昇させる黄色ハーブ、どんな猛毒でも解毒してしまう青ハーブ・・・これだけあれば、そう簡単に死なないよ?」

 

「武器だけでも規格外なのになにそれ・・・というか、チェイサーから逃げても息切れしなかった理由ってその黄色ハーブのせいか。ちなみに、マスター適正があるのなら私にもボディーガードのサーヴァントが呼べるのかしら?」

 

「呼べるだろうけど、もう石はすっからかんだよ。立香ちゃんが全部使いきってしまったからね」

 

「藤丸ゥウウウウウウウッ!」

 

 

思わず叫んで件の彼女をぶん殴りに全力疾走したのは言うまでも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一特異点オルレアン。百年戦争が終決した15世紀のフランスにてばったりと出くわした兵士をディーラーがナイフの早抜きで脅したところ、ジャンヌ・ダルクが悪魔と取引して復活し「竜の魔女」としてフランスに復讐を始めたとの事。

それが今回の異変だと断定したオルガマリーの指示で、竜の魔女が操りフランスの砦に襲い来るワイバーンの群れを撃退する事になったカルデア一行。

 

 

「・・・あんなので厄介だとかふざけてんのか?」

 

 

何故か旗を手にワイバーンに殴りかかる女性サーヴァントに加勢し、マシュが盾で殴り、セイバーがエクスカリバーで首を斬り、キャスターが燃やして一体ずつ応戦する中、前回の戦いから愛用品となったピストルクロスボウを手にワイバーンを妨害するオルガマリーの後ろで、ジーッとワイバーン達の挙動を観察していたディーラーの第一声がこれであった。何故かブチ切れていた。

 

 

「お前らみたいな時代遅れのトカゲが人類史脅かすな、ハンターに比べれば圧倒的にポテンシャル不足だ!」

 

 

この場の誰もが理解できない言葉と共に、シカゴタイプライターが瞬く間に駆逐して行く。その光景は、圧巻の一言。空が飛べると言う優位性の為セイバーですら苦戦していた難敵が、悲痛の断末魔を上げて次々とカトンボの様に落ちて行く様に絶句する面々。サーヴァントでもないと勝負にすらならないらしい。

 

 

「とどめだ、Die(死ね)!」

 

 

何時もより荒々しい台詞と共に、無限ロケランが砦ごとワイバーン五体を纏めて粉砕する。堪らず、ワイバーン相手に応戦していた旗のサーヴァント、調停者(ルーラー)のジャンヌ・ダルクと共に魔女・悪魔認定されたカルデア一行はすごすご森の中へと逃げ出した。

 

 

「ディーラー!なに、現地人の砦ごとエネミーを殲滅しているのよ!シカゴタイプライターだけで十分だったじゃない!」

 

「ムカついた。あんな低性能が勝っているとか気に喰わん」

 

「いや、ディーラーのは現代でもそう類を見ない高性能だから・・・ところでハンターって何?」

 

「マインスロアーの設計図を手に入れるため潜り込んだ研究所で俺を追い詰めた生物兵器だ。人間の遺伝子に爬虫類の遺伝子を埋め込み、堅牢な皮膚と身体能力を持ち、単純な命令に従い標的の首を狩って即死させる。未完成だったが透明にもなれる個体もいた、あんな空飛んで火を吐くだけのトカゲとは比べ物にならん」

 

「比べる方が可哀相だよ!?」

 

 

無駄に万能な上に殺傷能力の高い現代の生物兵器と比べられ逆ギレされたワイバーン達に思わず同情する立香。今更ではあるがこの武器(サーヴァント)、取扱い注意であった。

 

 

「あ、あのー・・・よろしいでしょうか?」

 

「あ、はい。事情説明をお願いしますジャンヌさん」

 

 

道すがら、ジャンヌ・ダルクはルーラーとして現界したが何故か弱っており、ルーラーに本来与えられる聖杯戦争の知識が無く、ステータスがランクダウンし真名看破や対サーヴァント用の令呪も使えないと言う事までは聞いていた立香が快く続きを促した。オルガマリーは未だに憤慨していた。

 

 

「分かりました。私も数時間前に現界したばかりで詳細は定かではないのですが、どうやらこちらの世界にはもう一人、ジャンヌ・ダルクがいる様なんです。フランス王シャルル七世を殺し、オルレアンにて大虐殺を行なったと言う竜の魔女と呼ばれるジャンヌ・ダルクが・・・」

 

「なんだ、別個体が勝手に暴走したのか?」

 

「別個体・・・?いえ、同時代に同じサーヴァントが召喚された、と考えるのが妥当かと・・・」

 

「そうか、忘れてくれ」

 

 

意味深な事を言ったディーラーにセイバーオルタ以外が疑問符を浮かべるが、通信でロマンが会話に入り、彼等にフランスと言う国家の崩壊=文明が停滞する可能性が説明された。人間の自由と平等を謳った最初の国は、それだけで多くの国に影響を与えたのだ。

 

 

「だったら話は簡単だな。ロス・イルミナドスの奴等をぶっ潰したストレンジャー(レオン・S・ケネディ)と同じように、完全に壊される前に元凶を倒す。そしてその原因はもう一人のジャンヌ・ダルク。恐らくはそこの騎士王様と同じように反転しているんだろうぜ。この聖女様がそんな残酷な事が出来るとは思えん」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「だろうな。恐らくは私と同じオルタだろう。だが、ワイバーンの群れを召喚すると言う現代の魔術師でも不可能な力・・・恐らく聖杯も持っているルーラーだとしたら、本当に強敵だぞ商人。何か手はあるか?」

 

「見た所この聖女様には機動力が無いと見える。ロケランで一発だ。ワイバーンの群れが居ようが関係ない、首魁を叩けばどんな強敵が居ようと解決できるぜストレンジャー」

 

「相手が女性でも容赦ないんだ・・・」

 

 

そんなこんなで、ジャンヌにカルデアの説明をし、世界が焼却された事をオルガマリーとロマンから説明され、ジャンヌと共にオルレアンに向かい奪回、その障害であるジャンヌ・ダルクを排除する事が決まり、情報収集に訪れた街、命が全て燃え尽きたラ・シャリテで生きる屍(リビングデッド)と遭遇、ディーラーが一人で迎え撃った。

 

 

「・・・ゾンビか。死なせてやるよ、それがアンタ等にできる唯一の商売だ。手を出すなよストレンジャー共」

 

「うん、任せた。私達はワイバーンを!死体を喰うなんてこと、させちゃいけない!」

 

「了解です、マスター!」

 

 

ディーラーがハンドガンだけでリビングデッドを撃ち殺し、その側でマシュが攻撃を防ぎ、クー・フーリンが炎で怯ませたところにジャンヌが打撃で動きを止め、セイバーオルタが一撃でとどめを刺すと言うコンビネーションでワイバーンを駆逐して行くカルデア一行。

それを見て、オルガマリーはディーラーによる「役割分担」の授業が成果を出していると実感した。

 

 

「・・・身の程を知って、できる事をやる、か。この時代で私ができる事は・・・・・・ッ!ロマン、索敵!」

 

『はい?・・・待った!先程、この街を去って行ったサーヴァント反応が反転した!君達の存在を察知したらしい!どうして分かったんですか、所長!?』

 

「・・・レフの時と同じよ。嫌な感じが、いや、殺気を感じたの。それより数は?」

 

『冗談だと思いたいけど数は五騎!速度が迅い・・・これは、ライダーか何かか!?どうします、所長!このままでは、ばったり出くわします!三十六計逃げましょう!誰だって逃げますよ!一人でも災害なサーヴァントが五騎とか冗談じゃない!』

 

「落ち着きなさいロマニ・アーキマン。サーヴァントの数は辛うじて同じか。臨戦態勢よ、藤丸!ディーラー、ジャンヌにも使えそうな武装を渡しなさい!」

 

 

冬木の時とは大違いに的確な状況判断と指示を出すオルガマリーに驚きが隠せない様であるカルデア待機組を無視し、彼女の命令に頷いたディーラーはリュックから、自らが使いこなせないがこの時代の人間にとっては扱いやすいであろうそれを取り出した。

 

 

「ヒッヒッヒッヒェ。聖女さん、アンタ弓は使えるかい?うちの陣営は弓兵不足でなぁ・・・」

 

「い、一応・・・ジル達から護身程度には教わっていますが・・・?」

 

「弱っている今、旗で殴るよりは遠距離の方が適切だと俺は思うぜ、どうだこのコンパウンドボウは・・・?」

 

「あ、はい。確かに今の私は弱いので、ありがたく使わせていただきます」

 

 

折りたためる弓と、矢束の入った矢筒。時限爆弾式のもあるが彼女は運用を間違えて自爆してしまいそうなので通常の、静かだが高威力の矢である。ガナード程度なら頭部に当てれば一撃で殺せる凄まじい代物だ。使いこなすには人並み以上の筋力が必要だが、サーヴァントの筋力Eでも人知を超えた怪力なので問題は無いだろうと判断する。

 

 

「私もオルガマリーさんの案には賛成です。せめて真意を問い質さなければ、私は逃げられません・・・!」

 

「いい根性だ。アンタはストレンジャー二人(マスターと所長)と一緒に後衛を頼む。キャスター、今度は急造品じゃなくみっちり一日かけて作った槍を用意した。至高のロッドを改造し、文献のゲイボルクとやらを参考にしたから前のよりは使いやすいはずだ」

 

「おう!恩に着るぜディーラー!こいつでランサー相手に苦戦しなくて済むぜ!」

 

「冬木で苦戦したんだねキャスター・・・」

 

 

ディーラーがマインスロアーとハンドガン・パニッシャーを構え、立香とオルガマリーもワイバーン襲撃に備えるべくそれぞれのハンドガンをコンパウンドボウを持つジャンヌの傍で構え、マシンピストルを腰に付けたホルダーに下げたマシュは己の盾を構え直し、セイバーはエクスカリバーを風の鞘で隠して気に入ったらしいハンドガン・レッド9を取り出し、キャスターはディーラーから投げ渡された色は金色だが己の槍に限りなく近い(言うなれば金色のプロトクー・フーリンの)槍を握り、それぞれが臨戦態勢で構える。そして現れたのは、

 

 

「ねえ、お願い!誰か私の頭に水をかけてちょうだい。不味いの、ヤバいの、本気で可笑しくなりそうなの!だってそれぐらいしないと、あんまりにも滑稽で笑い死んでしまいそうなのよ!」

 

 

表情が卑しく歪み、白く染まった髪と肌を持った、黒いジャンヌ・ダルクだった。

 

 

「ほら、見なさいよジル!あの哀れな小娘を!ああ、本当・・・こんな小娘(ワタシ)に縋るしかなかった国とか、鼠の国にも劣るちっぽけな物なのね!ねえジル、貴方もそう・・・って、そっか。ジルは連れて来てなかったわね」

 

「貴女は・・・貴女は、誰ですか!?」

 

「それはこちらの質問ですが・・・そうですね、上に立つ者として答えてあげましょう。私はジャンヌ・ダルク。甦った救国の聖女ですよ、もう一人の"私”」

 

 

白ジャンヌの問いに、呆れたと言う表情で返す黒ジャンヌ。

 

 

「・・・馬鹿げたことを。貴女は聖女ではない、私がそうでない様に。いえ、それはもう過ぎた事・・・語る事は無い。それよりも、この街を襲ったのは何故ですか?」

 

「何故かって、同じジャンヌ・ダルクなら理解していると思いましたが見当違いの様ね。属性が変転しているとこんなにも鈍いのでしょうか?馬鹿馬鹿しい問いかけです。そんな物、明白でしょう?この街を襲った理由なんて決まっている、ただ単にフランスを滅ぼすためです。私、サーヴァントですもの?政治的にとか経済的にとか回りくどくて仕方ない。物理的に全部壊し崩し潰す方が確実で簡潔でしょう?」

 

「馬鹿な事を・・・!」

 

「馬鹿な事?愚かなのは私達でしょう、ジャンヌ・ダルク。何故、こんな国を救おうと思ったのか。何故、こんな愚者たちを救おうと思ったのか。裏切り、唾を吐いた人間達と知りながら!・・・私はもう騙されない。もう裏切りを許さない。そもそも、(しゅ)の声なんて聞こえない。主の声が聞こえないと言う事は、主はこの国に愛想をつかしたという事でしょう。

だから滅ぼします。主の嘆きを私が代行します。全ての悪しき種を根本から刈り取ります。人類種が存続する限り、この憎悪は収まらない。このフランスを沈黙する死者の国に作り替える。それが死を迎えて成長し、新たな姿になった私の、ジャンヌ・ダルクの救国方法です。

 

まあ、貴女には理解できないでしょうね。何時までも聖人気取りで、憎しみも喜びも見ないフリをして、人間的成長をまったくしなくなったお綺麗な聖処女様には!」

 

 

「阿呆か黒聖女。正常なのはむしろこの白い聖女だぞ」

 

「・・・なんですって?」

 

 

オルガマリーも立香も、口出しできなかった黒ジャンヌの言葉に、物申したのはディーラーであった。どこか呆れており、馬鹿でも見るような目を黒ジャンヌに向けていた。

 

 

「サーヴァントは成長なんざしないんだよ。霊格アップできて関の山だ。反転したところでそれは変わらない、現にそこの騎士王は人間性は変わらなかったぞ」

 

「お前は私の何を知っているんだ」

 

「知らんが、あの時点でアンタがいい奴なのは知っていた。まあつまりだ、「成長」をしたって言うんならそれじゃあもうジャンヌ・ダルクじゃない。別物って事だ。正確には改造、変革だろうな。何者かにより記憶を改竄されたか、もしくはそう作られたか・・・アンタに聞いても分からんか」

 

「・・・耳障りな蠅ね、殺すわよ」

 

「ディーラー!」

 

「そんなっ・・・」

 

 

 

黒ジャンヌの一睨みで黒衣が燃え上がり、一瞬で炎に包まれて黒焦げで倒れるディーラー。思わず立香が叫び、ジャンヌが声にならない声を上げて安否を確かめるが、やはりと言うか死んでいた。武器商人はよく燃えるのである。それを見て、「プッ」と噴き出した黒ジャンヌはそのまま高らかに笑い出す。

 

 

「アハハハハハハッ!死んだ死んだ、あっけなく死んだ!こんなにも弱いのに口を出すなんて、何て馬鹿な奴!意味不明な事を喚くからよ、愚図め!」

 

「・・・貴女は本当に"私”なのですか・・・?」

 

「呆れた、呆れたわ!ここまで分かりやすく演じてあげたのに、まだそんな疑問を持つなんて!なんて醜い正義!この憤怒を理解できないのではなく、理解する気さえない!ですが私は理解しました、今の貴女の姿で私と言う英霊の全てを思い知った。

貴女はルーラーでも無ければジャンヌ・ダルクでも無い!私が捨てたただの残り滓にすぎない!貴女には何の価値も無い、ただ過ちを犯すために歴史を再現しようとする性質の悪い亡霊に他ならない」

 

 

そう言って手を上げる黒ジャンヌ。それを合図に、霊体化を解いて二体のサーヴァントが彼女の前に現れる。槍を構えた漆黒の貴族服を着た壮年の男性と、赤と黒の露出の激しいドレスと蝙蝠を模した仮面を身に着けた白髪の女性であった。

 

 

「バーサーク・ランサー。バーサーク・アサシン。その田舎娘と、そこのおまけを始末しなさい。雑魚ばかりで飽きてきただろうけど喜びなさい、彼等は強者です。今無残にも消えて・・・・・・・・・死んで行った男よりは間違いなく強い。特にそこの黒い女は気に入らない」

 

 

今だに死体を残しているディーラーに違和感を覚えながらも、セイバーオルタを睨みながら言葉を紡ぐ黒ジャンヌ。

 

 

「私が召喚したサーヴァントの中でも、貴方達は一際血に餓えた怪物です。勇者を平らげる事こそが貴方達の存在意義、存分に貪りなさい」

 

「よろしい。では、私は血を戴こう」

 

「いけませんわ王様。私は彼女達の血と肉、そして腸を戴きたいのだもの。そこの男は好きにしてくれて結構ですわ」

 

「強欲だな、五人も取るか。では魂は?魂はどちらが戴く?」

 

「魂なんて何の益にもなりません。名誉や誇りでこの美貌を保てると思っていて?」

 

「よろしい。では私が魂を戴こう!」

 

「私より美しい者は許さない。いいえ、それよりも・・・私より美しい者の血は、どれほど私を美しくしてくれるのかしら?ああ、新鮮な果実を潰すのが楽しいわ。果肉は捨てて汁だけ嗜む・・・これこそが夜の貴族の特権。私の宝具で一滴残らず絞り出してあげましょう!」

 

「・・・血、夜の貴族、美貌・・・バーサーク・アサシンと呼ばれたこの女サーヴァントの真名は恐らくエリザベート・バートリー・・・吸血鬼カーミラ!

そしてもう一人は、"悪魔(ドラクル)”と謳われ吸血鬼の発祥となった串刺し公、ルーマニア最大の英雄、ヴラド三世だと思われるわ!」

 

 

二人の発言から、真名を見抜いたオルガマリーの言葉に、バーサーク・ランサー・・・ヴラド三世の表情がこわばった。

 

 

「人前で我が真名を露わにするとはな。不愉快だ、実に不愉快だ小娘」

 

「いいではありませんか。悪名であれ人々に忘れられないのであれば、私はそちらを選びます。それに私はアサシンなどと呼ばれるよりも真名で謳われる方が好みです。恐怖と絶望、そのスパイスに仄かな希望。何時だって一番いい声で啼くのは、「これで逃げられる」と思い込んだ子リスたちなのですから。そちらが数で上回っていても勝てるとは思わない事よ!」

 

「来ます、先輩・・・戦闘を開始します!」

 

 

ジャンヌの援護を受けたクー・フーリンがヴラド三世と。セイバーオルタとマシュがバーサーク・アサシン・・・カーミラと。それぞれぶつかる中・・・立香が指示を出す中、オルガマリーは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。出てきた奴は共に吸血鬼か。竜の魔女と言うだけあって竜に関係あるサーヴァントを召喚したのか。だとしたら他にドラゴンスレイヤー・・・ジークフリートとかも喚んでいるかもしれないな」

 

 

燃やされた直後、ラ・シャリテの外壁にて復活したディーラーは、小鍋に火をかけて純銀をゆっくりと溶かしながらオルガマリーと念話を繋げる。例外的に、立香とオルガマリーによって召喚された彼は、マスターは立香であるが二人にパスを繋げることができ、念話をする事が出来るのである。

 

 

『恐らくライダーは聖女マルタね。タラスクって言う悪竜なら五体ものサーヴァントを乗せて高速で移動できても可笑しくないわ。ジャンヌ・ダルク、ヴラド三世、吸血鬼カーミラ。反応にあった五体のうち四名まで真名が分かったのはいいけど、あと一体がアーチャーだとしたら厄介ね・・・弱点を作るのにどれぐらいかかる?』

 

「無茶言うな。早くて半日だ、今回は撃退するしかないぜストレンジャー。それと、双眼鏡で待機しているサーヴァントを確認した。いかにもな聖女と、男か女かも分からない剣士だったぜ」

 

『男か女か分からない・・・?恐らくフランスの竜騎兵連隊長、シュヴァリエ・デオンね。ナイスよディーラー、これで敵の戦力が分かった。あとはどう撃退して逃げるかだけど・・・』

 

「それなら、おあつらえ向きなのが来たようだ。俺は死んでいると思わせた方が後々便利そうだから、ストレンジャー(マスター)にはよろしく言って置いてくれ」

 

 

そう言って念話を一方的に切るディーラー。その目にはガラスの馬車(?)に乗ってこちらに向かってくる二体のサーヴァントが映り、そして脳裏には先程確認した女性サーヴァント、カーミラの逸話が過る。

 

 

「よりにもよって吸血鬼カーミラか・・・アイアンメイデンは勘弁してくれ、本当に」

 

 

身震いするディーラー。その脳裏に甦るのは、拷問器具の名を付けられるぐらい全身に棘を生やした異形の女性クリーチャーであった。

 




燃えたディーラーに純粋に驚くジャンヌと、キレる立香の違いである。

邪ンヌに瞬殺されたディーラー。レフやバーサーカーの時もそうですが、強敵に相対するとあっさり死ぬのが今作の彼です。序盤のワイバーンに対しての理不尽な逆ギレは、彼がマインスロアー(実物もしくは設計図)を手に入れる際に研究所に侵入したのではないかと言う仮説もしくは妄想の産物。何でアンブレラ製の銃を武器商人は持っていたのか永遠に謎。
ハンター系統に比べればワイバーンなんて怖くない。本気でリベレの飛行場籠城戦のファルファレロに何度殺されたか分からない私です。

弓装備ジャンヌと、レッド9装備セイバーオルタ、マシンピストル装備のマシュ、至高のロッド改造プロトゲイボルク装備のクー・フーリン。個性が分かる武装です。

(実際に)死んだふりして戦線離脱し偵察共に物資を整えるディーラー。これはオルガマリーのアイデア。立香の進言で不意打ちで死んだ場合に限ります。わざと死ぬのは許さない。
マスター適正に真名看破、殺気感知に適切な状況判断とオルガマリーは地味に優秀になってます。ディーラーレクチャーのおかげです。戦闘を補助する重要性はしっかり学んでます。

カーミラさんとバイオ4で連想するのはやっぱりアレ。僕は某アイドルよりはまだ好きです。某アイドルはビチビチ跳ねて噛み付いてくるから嫌いだ・・・

次回はもう一人のマリー合流。VS竜を鎮めた聖女になると思います。次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。