Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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どうも、新宿クリアしたはいいもののエルドラドのバーサーカーやら七番勝負の鬼コンビやらにフルボッコにされている放仮ごです。アサシンが足りない我がカルデアには辛い…

今回は魔神柱戦、強敵に次ぐ強敵に次ぐ強敵との最終バトル。ローマ編のラスボスとは一体誰でしょう…?今までになく内容が濃いですが楽しんでいただけたら幸いです。


魔神柱降臨だとよストレンジャー

 海から這い上がる。ただ、ただ彼女を求めてただ歩く。四つん這いになろうとも歩いて行く。ああ、我が身は変わり果てた……月の狂気よりも悍ましい物に余は当てられ、それを受け入れた。全ては、この愛がため。

 

どこだ…どこだ……どこに居る、我が愛しき●●よ。ああ、なんだ、記憶が、思いが薄れていく。だがこの愛は忘れない、忘れない、忘れない…余は誰を愛し求めている?

 

ああ、あああ、ああああ。薄れていく、愛が消えゆく。残るは…抗えぬ本能のみ。

 

 

「――――ネ゛ロ゛ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きていたのか、レフ・ライノール!」

 

「俺も人の事を言えないがよくロケランの直撃を受けて生きていたな」

 

「あやつが宮廷魔術師か。では、ああして携えている黄金の杯が聖杯か」

 

 

現れるレフ・ライノールの手にオルレアンでも見た金の杯が握られている事に気付いたカルデアの者達が臨戦態勢を取ると、同じく気付いて剣を構えたネロの言葉に、満足気に頷き笑みを浮かべるレフ。

 

 

「そうとも。私を殺してくれたそこのグズも、オルガも、所詮はサーヴァントと廃れた魔術師。悲しいかな、我が王より頂いた聖杯の力に勝つことなどありえない」

 

「ふざけるな!聖杯を渡せ、レフ・ライノール!」

 

「ストレンジャー、彼奴を刺激するな。以前の奴とは何かが違う」

 

「まったく、いっぱしの口を聞く様になったねお嬢さん。カルデアで初めて会った時の礼儀正しさからは信じられない愚行だ!聞けばフランスでも大活躍だったそうじゃないか、おかげで私は大目玉だ!

 本来ならとっくに神殿に帰還しているというのに子供の使いさえできないのかと追い返された!結果こんな時代で後始末だ。聖杯を相応しい愚者に与え、その顛末を見物する個人的な愉しみも台無しだ」

 

「相変わらず悪趣味ね。…本当に、私が信じたレフはただの演技だったんだ」

 

「…旦那様(マスター)が信じた?」

 

「…信じていたマスターを裏切ったのか?」

 

 

レフとオルガマリーの言葉に青筋を立てる清姫とアルトリアに、その隣でビクッと震えるマシュとディーラー。清姫はマスターが好きでさらに嘘が嫌いだからと分かるが、アルトリアは何が引っ掛かったのだろうか。

 

 

「貴様等もいい加減諦めろカルデア、特にオルガと藤丸立香!たった二人のマスターで、そんな凡百のサーヴァントをかき集めた程度で、このレフ・ライノールばかりか我が王を阻めるとでも?」

 

「貴方程度なら阻めると思うけど、私の記憶違いかしら?冬木で貴方の絶望した顔を覚えているのだけれど」

 

 

ふふん?と馬鹿にするようなしたり顔を浮かべるオルガマリーに、ぷちんと青筋が切れるレフ。見下していたオルガに馬鹿にされた事に、怒りを抑えられない様だった。しかし何を思いついたのかすぐさま嘲笑を浮かべる。

 

 

「ああ、せいぜい後悔させてやるよオルガ。あの場で潔く死ねなかった事をな!…さて、聖杯を回収し、特異点を修復し人理を守る…だったか?バカめ!貴様たちでは既にどうにもならない。結末は確定している、抵抗は無意味だ無能共!」

 

 

そう言って聖杯を取り込みにんまりと笑みを浮かべるレフの姿が変貌して行く。サドラーの時よりも常軌を逸した変貌に思わず後ずさる立香達。

 

 

「哀れにも消えゆく貴様たちに!今!私が!我らが王の寵愛を見せてやろう!」

 

 

そして天井を突き破り、現れたのは黒い体表に赤い目玉とも言えない何かを無数に連ならせた、地に突き立つ巨大な醜い肉の柱。嫌悪感さえ感じるそれに、ネロが溜まらず吐き捨てる。

 

 

「な、なんだこの怪物は…!醜い!この世のどんな怪物よりも醜いぞ、貴様!」

 

『ハハハハハハハハハッ!ソレハその通り!その醜さこそが貴様等を滅ぼすのだ!』

 

「………何だろうな、サドラーのせいもあってか目玉を撃てば勝てる気がする」

 

 

ディーラーの言葉に頷くアルトリアと清姫、アシュリー以外の面々。何というか、人間態の方が強かったサドラーのせいでそこまで危機感を覚えなかった。

 

 

『この反応はサーヴァントでも無い、幻想種でも無い!伝説上の、本当の『悪魔』の反応か…!?』

 

『まったく優秀だなロマニ・アーキマン!それでは改めて、自己紹介しよう!我が名はレフ・ライノール・フラウロス!七十二柱の魔神が一柱!魔神フラウロス―――これが、王の寵愛そのものだ!己を知れ…!』

 

 

変貌したレフ…魔神柱の複数の目がギョロリと同時に動いて怪光線が放たれて、咄嗟に立香をマシュが、オルガマリーと清姫をアルトリアが守り、ディーラーをアシュリーが庇い、それ以外は己が武器で防ぐ面々。その威力と範囲に評価を改める。

 

 

「ぬぅ…弾き返してやろうとしたが防ぐのがやっととは…悍ましい、悪逆そのものではないか、これは!」

 

『無事か皆!…しかし七十二柱の魔神、だとすれば彼の言う王とは…』

 

「…魔術王、ソロモンだというの…!?」

 

『その通りだ博識なオルガよ!だがその名を迂闊に口にしてはいけないなぁ…滅びよ!死にぞこない共が!』

 

 

再び放たれる怪光線。しかしそれはマシュとアシュリーが跳躍して防ぐことで拡散させ、それと入れ替わりに突撃した二人の騎士王による斬撃が肉柱の根元を抉り切り、さらに退避したところにディーラーのロケットランチャーと清姫の炎がその傷に放たれ、爆炎が広がる。

 

 

『目障りだ!』

 

「っ!」

 

 

しかしすぐさま再生した魔神柱による攻撃が騎士王二人を薙ぎ払い、そのまま空から降り注いだ光の槍がアシュリーを貫き、マスター二人とディーラーも逃げに徹して光線と光の雨を掻い潜る。

 

 

『フハハハハハッ!無様ッ!』

 

「身動きもとれない癖に勝ち誇って…」

 

「ディーラー!目には光を!」

 

「なるほど…了解だストレンジャー!」

 

『ヌウゥウウウッ!?』

 

 

立香の言葉に、逃げながら構えた閃光手榴弾が強烈な光を放って魔神柱の全ての目を潰す事に成功。その間に瓦礫やらの物陰に隠れる立香達。

 

 

『無駄な動きをするなッ!』

 

 

殲滅砲撃が放たれるも、それがあっけなく防がれてしまったことに目の潰された魔神柱は気付かない。英霊達による反撃が、彼には無駄であるとしか認識できないのだ。

 

 

「…ほらな、悪魔共。人間の作った武器も中々に役立つだろう?」

 

 

マシュの盾により守られているディーラーの手に握られたハンドキャノンが火を噴き、魔神柱の中心を撃ち抜いた事を皮切りに反撃が始まる。

 

 

「必要なのは突破力、防御は捨てる…風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

「蹂躙してやろう…!」

 

 

まず、風の鞘を解放してロケットの様に突撃したアルトリアのエクスカリバーが大きく叩いて肉柱をへこませ、その目の前に着地したセイバーオルタが黒い魔力を纏った巨大な斬撃を幾たびも叩き込み、すぐには再生できない大きな傷を与えて行く。

 

 

「てやぁあああっ!」

 

「参ります!」

 

「たあっ!」

 

 

そこに飛び込んだ鎧アシュリーの肘鉄と、清姫の火炎弾が直撃。さらにネロの渾身の突きが炸裂。大きく鳴動する魔神柱。

 

 

『こうなればァアアアッ!…情報室、開廷。過去を暴き、未来を墜とす。焼却式 フラウロス』

 

「させるか馬鹿が」

 

 

度重なる攻撃に追い詰められた魔神柱が奥の手を発動しようとするがしかし。ネロ達が稼いでいた時間の間に、立香、オルガマリー、荊軻と共にディーラーが魔人柱を囲む様に設置していた総数28のロケットランチャーが、ディーラーの構えた無限ロケットランチャーと連なる様に同時に発射される。

 

ただでさえ冬木で爆発により木端微塵にされたレフの恐怖意識により動きが止まり、魔神柱を包み込む様に重なる爆発。直撃すればタイラントさえ屠るそれが28発同時+無限乱射。その力を停止させ、ブルブルと震えて咆哮を上げる魔神柱。

 

 

『なぜここまでの力をぉ…ッ!』

 

「これで終わり…荊軻さん、お願い!」

 

「清姫、宝具を!」

 

 

マスター二人の言葉を受け、片や己が刃を、片や己が扇を構える白装束の英霊二人。

 

 

「ここより己の死は恐れず、生も求めず……不還匕首(ただ、あやめるのみ)!」

 

『がっ、アアアアアアッ!?』

 

「これより大嘘吐きを退治します…転身火生三昧!」

 

 

決して届かなかった、皇帝暗殺への一撃を決して存在しないはずの死角から受け、深い傷口からエーテルを血の様に噴出する魔神柱に、追撃するべく青白い憤怒の炎が叩き込まれ声にならない絶叫が上がる。

その怒りは、マスターを裏切り殺したという男へ向けた物。愛は憎悪に変わり、人類の裏切り者だった肉の柱を灼き尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

炎が消えた時、全身を灼き尽くされて魔神柱から元の姿に戻り仰向けに倒れるレフがいた。

 

 

「…馬鹿な、たかが英霊如きに我らの御柱(みはしら)が退けられるというのか?いや、計算違いだ。そうだろうとも。何しろ神殿から離れて久しいのだ。少しばかり壊死が始まっていたのさ。それを突かれたに過ぎない」

 

「見苦しい言い訳ね。敗北を認めたらどうなの、レフ」

 

「しかし、私も未来焼却の一端を任された男だ。万が一の事態を想定しなかった訳でもない。古代ローマそのものを生贄に、私は最強の大英雄の召喚に成功している。喜ぶがいい、皇帝ネロ・クラウディウス。これこそ真のローマの終焉に相応しい存在だ」

 

 

オルガマリーの言葉に耳も貸さず、ただ自身を納得させるようにブツブツ呟いていたレフが聖杯を掲げてにんまりと嗤う。その全身はあまりにも酷い状態で立ち上がれもしないが本人は気にしない。

 

 

「ローマは世界だ。そして、決して世界は終焉などせぬ!」

 

「クハハハハッ!誇りも、方向を見誤れば愚直の極みでしかないか。ならばその目で見るがいい、貴様たちの世界の終焉を!さあ人類(せかい)の底を抜いてやろう!七つの定礎、その一つを完全に破壊してやろう!―――我らが王の、尊き御言葉のままに!…そうだウェスカー、貴様も隠れてないで手伝え!最高の助っ人を貸してやる!」

 

「ウェスカーだと!?」

 

 

突如レフの口から出た、倒したはずの男の名にどよめく面々。そして聖杯から魔力が溢れ、儚げな表情の少女が召喚された。

 

 

「来たれ!破壊の大王アルテラよ!」

 

「…もう用済みだ、貴様は」

 

「あ…?」

 

 

瞬間に、天井から飛び降りて来た黒衣の男が召喚されたばかりの少女の英霊、アルテラの胸に何かを取り付け、そのままレフの頭を踏み砕いて絶命させた。

一瞬の出来事に固まる立香達を見ながら、その男…ウェスカーは吐き捨てる様にレフの亡骸を見下し、その手から聖杯を持ち上げほくそ笑む。

 

 

「…ロムルスと違い、俺が生きている事を匂わせなかった事は褒めてやる。隙を見て奴等を殺させる気だったのだろうが。だが、認められない敗北に壊れてしまって俺の存在を露出した貴様はもう用済みだ。破壊の大王を召喚しローマを滅ぼそうとしたお前の役目は俺が引き継ごう。何分、キャスターでも無い俺では英霊召喚などできないからな」

 

「生きていたの…?」

 

「ああ、アーサー王を召喚した時は肝を冷やしたぞ。タイラントを盾にし、気配遮断で逃げおおせたがな。やはり耐久度だけは素晴しい出来損ないだ。そのまま天井からお前たちの動向を観させてもらおうとしたのだが…ロムルスにはしっかり見られ、レフには俺のいた天井を突き破られ、まったく仲間というのは居ない方がいいな。特にああいう世界を滅ぼす覚悟も無い輩は不必要だ」

 

「…それは、神祖ロムルスの事か?」

 

 

その言葉に反応するのはネロ。自身を認めてくれた偉大な男を馬鹿にされているのだ、怒りに満ちた冷酷な表情で剣を向けると、ウェスカーは何かおかしいか?とでも言う様に首を傾げた。

 

 

「それ以外に誰がいる。俺の意にそぐわぬ者は、新世界には不要な害虫だ。…お前達は、ここで駆除させてもらおう。俺の新しい犬がお相手しよう。さあやれ、アッティラ・ザ・フン」

 

「…了解した、マスター」

 

 

胸部に取り付けられた機械の蜘蛛の様な装置の影響か、ウェスカーの指示に従い、その手に握られた七色の剣ともつかない武器…神の鞭を横に構えるアルテラ。それに、嫌な予感がしてアシュリーが体を張って前に出た。

 

 

「命は壊さない。その文明を粉砕する……!――――軍神の剣(フォトン・レイ)!」

 

「っ、駄目…!?」

 

「アシュリー!」

 

 

そして、神の鞭を真正面から受け止めたアシュリーは、無敵の鎧で何とか軌道をずらす事に成功するも、そのまま吹き飛ばされ、消滅した。その消滅を目の辺りにした立香はアシュリーの頑張りを無駄にしないために令呪を使い、マシュの宝具で何とか相殺する。しかし、続けざまに振るわれた、伸縮した神の鞭が宮殿ごと広間を一刀両断。一矢報いようと宝具を使った瞬間に巻き込まれた荊軻もまた消滅してしまう。

 

 

「ほう。あの装置からTウイルスを注入してみたがやはり天性の肉体。肉体変形は起こらず肉体強化にだけ効果が及ぶか。数値にして…筋力A+++、またサーヴァント・荊軻の宝具を受けてもダメージが見られないところを見ると耐久の数値も上昇しているか。興味深い」

 

 

そう分析するウェスカーを余所に、神の鞭の猛攻を前にただ避ける事しかできないカルデアの面々。そして、ネロだけでも守ろうとディーラーがセミオートショットガンを手に特攻しようとしたその時。

 

 

「ネロォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

一瞬の出来事だった。破壊された壁から飛び込んできた巨獣が、アルテラの肢体に噛みついていた。事態は、ウェスカーですら想像もつかない方向へと向かい、ローマは終焉へと近づいて行く。

 

 

それは即ち、全て、狂気()故に。




完全敗北、魔神柱レフ・ライノール・フラウロス。そしてウェスカー登場、からのアルテラ洗脳、からのカリギュラG乱入。ローマの終焉をかけた戦いは混沌へ。

ロケラン掃射に、オルガマリーへの愛に溢れた清姫の怒りが爆発。レフは死ぬより辛い目に遭ってます。荊軻の宝具で体内を露出させたところになので本当に痛いです。よくアレで死ななかった。何気にアルトリアも、某魔術師殺しの記憶があるのかちょっとキレていた様子。まさしくオルガマリー陣営の仇敵でした。Wエクスカリバーの方がまだマシだったと思う。

天井に逃れ、用済みになったレフを踏み殺したウェスカー。前回ロムルスがちらっと天井を見たのはそれに気付いていたからでした。アルテラの本気も見た事があるみたいですしさすがローマ。レフとウェスカーからは散々な言われ様ですが。
例の装置でアルテラを洗脳し、思う存分野望のための実験をしていたら乱入して来たカリギュラに驚きを隠せないウェスカー。自分のしたことを責任は取れという事で。

今回のアルテラだけでアシュリーと荊軻が脱落。残る戦力で勝てるかどうかわからない事態になってきました。残る敵はウェスカーとGカリギュラ。どちらが残っても強敵ですがローマの運命や如何に。
次回、ローマ編最終回~愛はローマを救う~(仮)。次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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