Fate/Grand Order【The arms dealer】 作:放仮ごdz
オルレアン最後の決戦。絶体絶命、立香達行動不能で単騎のディーラーVSサドラーです。ジャンヌ・オルタにはすまないと思っている…最後には新たなオリジナル英霊がさらに登場。楽しんでいただければ幸いです。
ジルドレェを撃破し、ジャンヌ・オルタの元に駆けつけるカルデア一行。相手は一人に対してこちらはマスター二人を除いても8人もいる。未だに英霊召喚中のジャンヌ・オルタに勝ち目など存在しなかった。
「思っていたより早かったですね。ジルは…やられてしまいましたか。まあいいでしょう、私一人でも復讐は成し遂げられる。手始めに貴方達を殺します。…一応挨拶をしておきましょう。こんにちは、私の残り滓。救国の聖女の残骸よ」
「いいえ、私は残骸でもないし、そもそも貴女ではありませんよ"竜の魔女”」
「…? 貴女は私でしょう。何を言っているのです?」
「…では簡単な問いかけです。貴女は自分の家族を覚えていますか?」
「……………………え?」
「やはり、記憶が無いのですね。貴女は、ただのジルの願望だ…貴方は怒りではなく哀れみを持って倒します」
「ほざけ!消えなさい、死ね!そうだ、そこの男の言葉が始まりだ!…私を不安にさせるなァ!」
己の持つ呪いの旗を掲げるジャンヌ・オルタに、ディーラーがナイフを手に飛び出した。
「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……特にその男へ向けた憎悪の炎!」
「いいぜ、俺をその憎悪で燃やしてみろよストレンジャー」
放たれるは、復讐者の名の下に自身と周囲の怨念を魔力変換して焚きつけ、相手の不正や汚濁に独善を骨の髄まで燃やし尽くす炎を纏った槍の雨。
「ッ…全ての邪悪をここに!今こそ、報復の時は来た!
――――
己とジルの怨念を魔力変換したそれは、大海魔により崩れた天井から見える空を覆い尽くし、ディーラーに、ジャンヌに、立香達に降り注ぎ、ジャンヌ・オルタは勝利を確信する。だがしかし。
「
――――
対してジャンヌが掲げた聖なる旗から放たれたのは、天使の祝福によって味方を守護する
己の持つ対魔力を物理的霊的問わず、宝具を含むあらゆる種別の攻撃に対する守りに変換するそれは、使用中は一切の攻撃が不可能になる代わりに、防いだ攻撃を旗に損傷として蓄積して行く。…そう、攻撃は出来ない。だからこその、ディーラーだ。
「アンタを苦しませたのは俺みたいだからな。終わりにしてやるぜ、ストレンジャー」
「嗚呼ァアアアアアアッ!」
咄嗟にジャンヌ・オルタが抜いて振り上げた剣はナイフで軌道を逸らされ、擦れ違い様に腹部に一閃。ジャンヌ・オルタが振り返ると、そこにはリュックから抜いたショットガンを片手で握るディーラーの姿が。
「GoodBye!」
「ッ!?」
至近距離から放たれた散弾を受け、大きく吹き飛ばされたジャンヌ・オルタは沈黙。ガシャコンとポンプアクションを行なったディーラーは勝利を確信し、彼女から目を離してマスターの方へと視線を向ける。しかし、立香の顔は驚愕に満ちていて、同時に変な違和感を感じた。…胸から、何かが生えている?それは、湾曲した鋭い針だった。
「ディーラー!」
「…があっ!?」
そのままディーラーは持ち上げられ、用済みとばかりに針と繋がった細長い何かが振られ、ディーラーは壁に叩き付けられてそのまま崩れ落ち、立香の背後で復活し何が起きたのかとジャンヌ・オルタの方へ視線を向ければ、同時に思い出す。今のは何時か見たルイス・セラの最期と酷似していた。ならば当て嵌まるのは、やはりというか見たくもない顔がそこにあった。
「サーヴァント・ランサー。召喚に応じ参上した。邪魔者を排除してみたがよかったかね?」
「ええ、ええ、ええ!よくやったわランサー。狂化はされてないみたいだけど十分よ、奴等を殺しなさい!」
血塗れの姿で立ち上がる事もままならないまま壁に背を預けて息絶え絶えの憎悪に満ちた顔で咆哮するジャンヌ・オルタに、彼女が吹き飛ばされると同時のタイミングで召喚されたランサーのサーヴァントは落ち着かせるように手をかざして立香達に視線を向ける。
ギョロリとした複数の目をぱちくり動かし触手が数本うねうね動いている茶色い杖を手にした、豪勢な首飾りを首にかけた紫色のフード付きローブを身に纏って顔を隠している、両手の人差指と中指に金の指輪をはめた男が金色の目を輝かせながら頷き、ローブの下からグロテスクなサソリの尾の様な尻尾を出し、品定めをするように立香達を眺めて静かに嗤う。
「世界征服を成し遂げられずに滅びた私を召喚してみせた褒美だ、フランスを滅ぼせばよいのだろう?」
「ええ、そうよ。サーヴァントなら従いなさい!」
「ふむ、いいだろう。この
その言葉を聞き、ドシュッという擬音と共に溢れる鮮血に訳が分からない、と言った顔を浮かべるジャンヌ・オルタ。油断しきっていたジャンヌ・オルタの胸を、そのサーヴァントが彼女の背後まで伸ばしていた尻尾で先刻のディーラーと同じように背中から貫き、その身体を持ち上げて行く。
「人形如きが夢見た幻想にしては、火炙りにならないだけいい結末だろう?ジャンヌ・ダルクよ」
「なん…、で……」
貫かれたまま勢いよく床に叩き付けられ、耐え切れずに消滅するジャンヌ・オルタの跡に残っていた黄金の杯、聖杯を手にしたサドラーはニヤリと嗤う。その笑みに宿るのは、立香とマシュ、オルガマリーやジャンヌなどは見た事がなかった、純粋な悪意。
『な、何が起こったんだ!?サーヴァント反応が一騎消滅したぞ!?君達が倒したのかい!?』
「…違います、ドクター。ジャンヌ・ダルク・オルタが最後に召喚したサーヴァントが、彼女を殺害しました。聖杯はその男の手に…」
『なんだって!?』
「…俺は、この男を知っている」
状況が把握しきれていないロマンに説明するマシュを余所に、サドラーの姿を見てからどこかフラフラとしていたディーラーの呟いた言葉に、その場に居た全員が耳を傾ける。否、彼の夢を見た事がある立香とオルガマリーは思い至っていた。目の前の男の正体に。
「オズムンド・サドラー…ガナードの元締め。俺や村人共をガナードにした張本人、何か知らんがアメリカにコンプレックス抱いているカリスマ(笑)だ」
「言いたいことを言えて満足かね裏切り者の武器商人。私の支配から唯一逃れた君を、この手で殺す事が出来る機会を与えられ感謝してもしたりない。…君がレオンの支援をしなければ、彼は村で死に絶えていたというのに…つまりだ、私が滅びたのは貴様のせいという事だ…軽口叩きまくって死ぬがいい…!」
「マシュ!」
「はい!」
再び伸びて襲い掛かって来た尻尾を、立香がマシュに指示してディーラーから守り抜く。そのままセイバーオルタとクー・フーリンが飛び掛かるが、サドラーは滑る様な移動で後退してその一撃を回避。懐から紫色の液体(?)が入った注射器を数本取り出してにんまりと嗤った。
「邪魔者は御退場願おうか。宝具発動、
「ッ!?」
投擲されたそれらは迎撃しようと放たれた攻撃を掻い潜ってディーラー以外の全員の首筋に突き刺さり、自動的に注入されて呻き、よろよろとふら付いて倒れる立香達に目を見開き、シカゴタイプライターを取り出してサドラーに向けるディーラー。今のは、見覚えしかなかった。
「サドラー!貴様…!」
「貴様には私の支配は通じないとはいえ、動きを鈍らせる事は出来る。だがそこの愚民には意味が無い、私は英雄などではないから直ぐに殺されるだろう。だから、新たに埋め込んだ。時間がかかるとはいえ、今の我が身はサーヴァント。宝具としてのプラーガは、すぐに成長する。そうなれば我が支配による苦痛には貴様と違い抗えぬ」
その言葉を表す様に、苦しんで身動きが取れない立香達を見て間髪入れずシカゴタイプライターを撃ちまくるディーラー。しかし100発もの弾丸が撃ち込まれたというのにビクともしないサドラー。
「どうした?早く私を殺さぬと貴様のマスターとその仲間はガナードになるぞ?…それに貴様は知らないのだな、私にそんな物は通じんよ」
そう言ったサドラーの腕が奇妙にボコボコと膨れ上がり、両手の指先をディーラーに向けると、指先から今ディーラーが撃ったばかりの弾丸がマシンガンの様に放たれてきた。避ける事も出来ず、あっさりと撃ち抜かれて崩れ落ちるディーラー。立香の傍に現れるも、疲労していた。
「ぐっ…どうしたの、ディーラー…」
「…すまないストレンジャー。宝具の真名解放を使ったせいで10回分を失った。俺はあと三回しか死ねない」
「ええっ!?…マシュ、セイバーオルタ、皆…!」
「すみません先輩…私も戦いたいのですが、先程のアレが刺さってから激痛で真面に立てません…」
「サーヴァントは激痛だけですんでるかもだけど私達魔術師は魔術回路もろくに使えないわ…何なのよアレ、ロマン!」
『すまない皆!こちらも精一杯分析しているが全然分からない!今、以前ディーラーに教えられたBSAAという組織のデータベースを探しているが駄目だ、人理焼却の影響か真面に働かない!レオナルド、君は天才だろなんとかならないのか!?』
『プラーガのメカニズムが分かれば…ん?待てよ、確か一度カルデアで死んだディーラーの死体がまだ残っていたな…』
「フハハハ。ここにはいない者達が何かしている様だが抵抗しても無駄だ。子は親には逆らえないのだよ」
愉快とばかりに笑うサドラーに、ディーラーはショットガンを手に突進、尻尾の一撃を掻い潜り、その顔面に叩き込む。
「…じゃあ逆らっている俺はどうなんだサドラー」
「不出来な子供だ。仕置きをしなくては」
しかしそれでも一瞬怯むだけだったサドラーの掌底打を受け、ディーラーは胸がぺしゃんこに潰れて吹き飛ぶ。今度はサドラーの背後に姿を現しハンドキャノンを突きつけるも、そこには既にサドラーの姿は無く…
「どこだ…?」
「ディーラー、後ろ!」
「なに!?」
残像を残した速度で滑走してグルンと広間を大きく一周して来たサドラーの手が触手の様に変形して伸びてディーラーの首を捉え、そのまま床にクレーターができる程強く叩き付け、沈黙させる。
「結局私に勝てなかった女スパイに比べても貴様は弱い」
「ああ、そうかよ…!」
最後の一回だからと、壊れた屋根の縁に現れロケットランチャーを取り出して即発射するディーラー。しかし滑走で避けていたサドラーはサソリの様な尾を天井に伸ばしてディーラーの居る足場を破壊すると、何とか着地したディーラーに目掛けて高速で突進。
「蠅を撃ち落とした時を思い出す武器だな。あの時のレオンはいい顔だった。今の貴様の様に、怒りに満ちたな」
「クソが…!?」
ディーラーの手からロケランを奪い取ると、尻尾を脚に巻き付けて吊り上げて放り投げ、そこにロケランを炸裂させてディーラーの体は木端微塵となり、最後の彼は立香の傍に現れ、息絶え絶えでその場に倒れてしまう。
「…絶対に殺すぞ、サドラー…」
「ディーラー……もう、やめて!」
「ん?その男を召喚した人類最後のマスターとやらか。何をそんなに怒っている?お前とて目の前に蝿が飛んでいたら叩き落とすだろう?それと同じ事だ。私にとって命令を聞かないガナードなど目障りなだけの蠅に過ぎん」
「ディーラーを馬鹿にするな!」
溜まらず懇願するも自身のサーヴァントを馬鹿にされて俯せのまま怒鳴る立香ではあるが、怒りに反して体はこれ以上動こうとはしない。目の前に立つ男に、逆らおうとしない。ディーラーはこんな激痛に耐えていたのか、と戦慄する。どれだけ苦しんでいたのか。
「何を言う?その男は他人に縋るだけの小物に過ぎん。味方が居ない時は身の程を弁え決して私に逆らおうとはしなかった。そいつの心は私の支配には抗う事が出来るが、ガナードである肉体は私の命令に多少なりとも影響を受ける。勝ち目など無い。
なに、お前達もガナードになれば存分に部下としてこき使ってやろう。何しろ私にマスターなどいらない。魔力タンクになるだけの駒であればそれでいいのだからな。…だが女、貴様はいらん。レオンの様に歯向かう者は生かして置いても何の得にもならない事を私は生前で学んだ」
コツコツと歩み寄って来るサドラー。ディーラーが殺されたらもう後が無い。そう感じ取ったオルガマリーは、魔術回路を開いた苦痛に耐えながら指先をサドラーに向ける。
自身は一度、死んでいる。それも爆発に巻き込まれていて。この痛みが何だ、冬木では自分は御荷物だった、今こそその汚名返上の時…!
「ガンド!」
「ぬう!?」
指先から放たれた呪いの魔弾は油断しきっていたサドラーを撃ち抜き、その動きを止めさせる。俗に言うスタンだ。ちょうどその時、カルデアの方でも動きがあった。
『ナイスだ所長!こっちもちょうど、レオナルドが打開策を思いついた!』
『オルガ、君の令呪でアマデウスに宝具を使わせるんだ!その、プラーガとやらを支配する力の正体は、奴の持つ杖から放たれている音響あるいは音波による特殊意思伝達法だと思われる!寄生体のみが感知できる音域で命令を伝え、意のままに操る力が彼の「支配」の正体だ。分かりやすく言えば犬笛の原理だね。
この仮説はディーラーの死体から採取されたプラーガの死骸から音を感知するらしき器官が確認されたことから推察したものだ。さらに記録によるロス・イルミナドス教団の教祖らは皆、特別な祭祀用の杖を携帯していた。それがあの杖だ、アマデウスの音でかき消している間にあの杖を破壊すれば勝機はあるぞ!』
「っ…オルガマリー・アムニスフィアが令呪を持ってアマデウスに命ずる!宝具を使いなさい!」
「ああ、喜んで…楽しみたまえ。公演の時間だよ!
オルガマリーの令呪により発動されたアマデウスの宝具による音楽が広間全体に広がり、体の自由を取り戻したセイバーオルタ達が飛び掛かる。
「ぬぅ…させん!」
しかし、いの一番に飛び出したセイバーオルタは尻尾で薙ぎ払われ、続けてクー・フーリンの放った炎を目暗ましに飛び掛かったジャンヌとマシュは杖を傍に突き刺したサドラーの両手による掌底打を腹に受けて吹き飛ばされ、ジークフリートとクー・フーリンは何かする前に尻尾の連打で近づけず殴り飛ばされ、マリーの舞うような蹴りも杖に当たる前に足首を掴まれ、頭から地面に叩き付けられてダウンしてしまう。
「強い…!?」
「…マシュ、突進して!」
「はい先輩、行きます!」
「終止符を打ってやろう…」
「ああ、私がな」
「なっ…!?」
盾を前方に構えて突進したマシュを掌底で吹き飛ばしたかと思えば、その影から魔力放出で宙に飛び上がったセイバーオルタに気を取られ動きが止まるサドラー。
「させるか…!?」
「後ろががら空きだぜ似非ランサー!」
間髪入れず正気に戻り迎撃しようとするも、咄嗟にジークフリートの手からクー・フーリンが掴み上げて投擲したバルムンクがその背中に突き刺さり悶絶して尻尾を引っ込めてしまい、その瞬間にセイバーオルタの一撃が杖を一刀両断、粉砕した。
「おのれ…!」
「決着をつけようぜカリスマ(笑)…!」
「低俗なガナード風情が!」
懐に手を突っ込んで突進するディーラー。自身のマスターを信じて自身目掛けて伸びて来た尻尾目掛けて突進し、
「ジャンヌ!マシュ!」
「はい!あと一人分だけですが…――――
「やああああ!」
「吹っ飛べ!」
ジャンヌの宝具でダメージを無くしたディーラーに気を取られたところに、マシュが背中側からサドラーを殴打、瞬間的にその口に現れた黄色い巨大な目玉に、
「グゥウウ…!?」
そして、弱点部位を突き刺され呻いていたサドラーの頭部が爆発。勝利を確信する立香達であったが、ディーラーだけは違った。
「…これから何度でも戦うかもしれないから覚えておけストレンジャー共。俺と違ってガナードってのは、特に支配種は…無駄に堅いぞ」
「え…?」
「フハハハハハハハハハッ!」
轟く笑い声。爆炎が晴れるとそこには、フードが外れただけでピンピンしているサドラーの姿。ダメージは響いてこそいるが、ガナードとは元より痛みをあまり感じない。ギリギリのところでナイフを引き抜き、守り抜いた目玉以外への攻撃はあまり通じないのだ。
「まだ…まだ、何か手が…!」
「君達も分かっているだろう。今や正義が勝つなどというのは映画の中だけのクリシェなのだよ。だが、私の杖を破壊したのは君等が初めてだ。褒美として君達の幻想に終止符を打ってあげよう…そう、悪党の勝利という現実でね」
絶望を感じながらも睨みつけ、打開策を考える立香を嘲笑う様にそう言ったサドラーの人としての姿を突き破り、その姿が異形の物へと変わっていく。
首が長大に伸びて頭部の周囲に3本の巨大な牙が生え、首の根元からは巨大な4本の節足と数本の先端に刃のついた触手が生えて、手が触手状に変形した首以外の胴体を吊るして跳躍、広間の出口を塞いで着地するサドラーに怯む立香達。
ワイバーンはまだ、よかった。しかしここまでの異形を見たのは誰もが初めてであり、その異質さに顔を嫌悪に歪めた。しかし誰もが気付いた。節足の付け根に、先程呻いていた目玉が一つずつ付いていると。口からの目だけ閉じているが何の意味があるのか。
「…ねえ、もしかしてディーラー…?」
「…ああ、サドラーは人型の方が強い。レオンの奴は目を潰して怯ませたところにロケランを叩き込んでいた。…だがロケラン一発では死なないぐらいにタフだ。どうするストレンジャー?」
立香は考える。相手はタフだが、こちらには数がある。だったら…
「クー・フーリン。宝具でアイツを捕らえて!」
「おう、任せな!マスターの命令だ、とっておきをくれてやる・・・ランサーもどきを焼き尽くせ木々の巨人。
――――
立香達を押し潰そうとサドラーが跳躍するのと同時、炎を纏った無数の細木の枝で構成された巨人がクー・フーリンに召喚され、その手でサドラーをむんずと掴むと胸の檻の扉を開けて放り込み、丸焼きにしてしまう。その程度で倒れないサドラーであったが、複数の目でそれを捉え、かつて己を倒した男を思い出した。
「巨大化は死亡フラグだぜサドラー」
そう言ったディーラーの構えたハンドキャノンが、立香のマチルダが、マシュのマシンピストルが、オルガマリーのピストルクロスボウが、セイバーオルタのレッド9が、クー・フーリンのライオットガンが、オルガマリーから受け取ったマリーのブラックテイルが、アマデウスのシカゴタイプライターが、ジークフリートのロケットランチャーが、ジャンヌのコンパウンドボウが同時に火を噴く。
その中心にいる身動きの取れないサドラーへと、数の暴力が襲う。的がデカくなった分、狙うのは素人でも容易かった。
「アンタの言う通り俺は一人では弱いからな、ストレンジャーの力を借りて勝たせてもらうぜ。Goodbye!」
断末魔を上げ、ボロボロと崩れて消滅して行ったサドラーの跡に残ったのは、黄金の杯。それをディーラーが手に取り、第一特異点は修復された。
ジャンヌやマリー、アマデウスにジークフリートとの別れをすませ、カルデアに帰還した立香達。ロマンから初のグランドオーダー成功を称賛され、そのままダ・ヴィンチちゃんがディーラーから教えられた知識通りに作ったという機械で特殊な放射線を浴びてプラーガを駆除し、自室に戻る立香とディーラーはマシュやオルガマリーと別れ、二人で廊下を歩いていた。
「…大丈夫?」
「何がだ、ストレンジャー。傷も治した、魔力もまあまあだ。何も問題は無い。アンタこそ、プラーガ除去の苦痛は効いただろう?」
「それはまあ普通に痛かったけど…でも、あんなに感情を露わにしたディーラーは初めてだったから…」
「…俺にとって、サドラーは絶対に乗り越えられない壁だった。だがマスター達の力を借りたとはいえ俺の手でそんな奴に勝てたんだ、すっきりしているぜ。一つ心残りがあるとすれば、あの女だな」
「…黒いジャンヌの事?」
「狂気から生み出されたいたらいけない存在。アイツも俺も同類だ。あの様子じゃあもし座に記録していたとしてもサドラーに苦手意識を持つだろうし…まあ、お仲間だろうな。嫌われていたが、俺も気に入らなかった。同族嫌悪って奴だ。圧倒的な力の差を見せれば勝手に降伏するヘタレかとも思ったんだが、まさかサドラーを呼び出すとはな。あの執念には恐れ入った。今度会う時は一応謝っとこう」
「また会えるといいね。…ジャンヌや、マリー達にも」
「…そうだな。俺もストレンジャーやらに会いたいぜ」
「じゃあ召喚してみる?」
「いいのか?」
「私は当たる気がしないから少し自重するよ。ディーラーがやってみたら?」
「あまり期待しないでくれよストレンジャー」
そんな会話の後、召喚部屋に向かったディーラーと立香。そして。
「やっぱりハズレばかりだね…」
「可能性を上げるだけだからな。あと二回分だが…コスパもできんとは不出来な召喚システムだ」
所長に教えられた10回連鎖召喚を行なうディーラーと立香。ディーラーの言葉が癪に障ったのか、金色に輝く環と共に二人の前に現れたのは、二騎の英霊。
「「サーヴァント、ライダー。召喚に応じ参上した」」
「はい…?」
「…久しぶりだなストレンジャー」
全身甲冑を着込んで素顔を隠した小柄な英霊と、ヘルメットで顔を隠した特殊部隊の様な恰好をした男の英霊だった。
本当はバーサーク・サーヴァントの一人にしてワイバーンにプラーガを寄生させて戦力アップをするつもりだったけど大ボスの立ち位置になったサドラー。彼は根っからの「支配者」なので言う事聞くよりこっちの方が簡単にイメージできました。
サドラーが強過ぎると思いますが、殆んどゲームと同じです。ラスボスとしては弱いですが人型だと強いランサーのサーヴァント、サドラーさん。プラーガの力を解放しましたが瞬殺。ステータスは次回紹介します。
オルガマリーのガンドでピンチのディーラーを助けた所にエイダ・レポートで明かされた秘密をダ・ヴィンチちゃんが看破しアマデウスの宝具でピンチをチャンスに。アマデウスの宝具、攪乱に便利ですよね。
宝具を使うもジャンヌのチート宝具でディーラーに敗北してサドラーを召喚して早々、裏切られて殺されるジャンヌ・オルタ。レ/フとほぼ同じですが自分一人で戦っただけマシ。再登場は考えています。
前々回宝具を使ってストックを減らしていた事により、殺されまくり残り一まで追い詰められたディーラー。味方の援護がないと本当に弱いです。殺され方は僕の初見時の殺され方を抜粋。エイダの耐久低すぎてサドラーが異様に強くて死にまくった人はいっぱいいると思う。
別れのシーンは割合。立香達に埋め込まれたプラーガは普通に危険なのでディーラー協力ダヴィンチちゃん製作の例の機械で除去。描写しなかったのはアシュリー云々の理由から。
最後に召喚したのは、どちらも共にバイオ4の出身者のライダー。片方はディーラーと知り合いです。ローマで活躍する予定ですがどうなるかな…特に片方。
次回はサドラーのステータスの公開。その後はローマ!に行く前に一悶着。正直、ローマが一番書きにくいかもしれません。何故って?ローマ語が書けない。
次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。