Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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はいどうも、バイオ4のprofessional水の間の洗礼を受けフルボッコにされながら何とか突破するも回復が全滅で意気消沈気味の放仮ごです。今のところノーコンティニューですがこの先絶望的…アレは鬼畜過ぎないだろうか。

今回は詰め込み回。オルレアンでの決戦です。二大聖剣、バルムンクとエクスカリバーが並び立ち。楽しんでいただければ幸いです。




少々飽きたが付き合うかストレンジャー

全速力で走るガラスの馬車の目と鼻の先に聳え立つは、夥しい数の竜に囲まれたフランス屈指の城塞都市。

 

そんなガラスの馬車の上で、のんびりとシカゴタイプライターを整備するディーラーの前で、目を瞑って佇んでいる世界屈指のドラゴンスレイヤーは、空を覆い尽くして迫り来るワイバーンの大群に向けて己が大剣を顔の前に構え、目を見開くと共に青い光を纏って黄昏の剣を振り下ろした。

 

 

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至る。…撃ち落とせ。

――――幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!」

 

 

放たれた半円状に拡散する黄昏の波が対軍宝具としての役割を果たし、次々とワイバーンの群れを撃ち落としていく。ファヴニールを打ち倒したその魔剣は竜種に対して絶対的な力を持ち、ワイバーン程度なら何匹居ようと一瞬で駆逐できる。懸念であったワイバーンの邪魔はこれで気にしなくてよくなった。

 

伝説の竜殺しと、つい先刻ファヴニールを単騎で打倒した最弱英霊が守りに付き、ガラスの馬車はワイバーンに乗って接近してきたバーサーク・サーヴァント三体に向けて突進し、クー・フーリン、ジークフリート、アマデウス、そしてディーラーがオルガマリーと共に飛び降り、それぞれの相手とぶつかった。

 

 

「ストレンジャー!今回ばかりは死んで駆けつけるが文句を言うなよ?必要事項だ。マシュの嬢ちゃん、セイバー。マスターは頼んだぜ」

 

「マリー、藤丸達を送り付けたらそのまま一緒に戦いなさい!頼んだわよ!」

 

「ええ!マスターをお願いね、アマデウス!」

 

 

そのまま城へと突入するガラスの馬車を見送り、クー・フーリンはヴラド三世と、ジークフリートはシュヴァリエ・デオンと、ディーラーがカーミラとそれぞれ相対、アマデウスを控えたオルガマリーは気を引き締める。ジャンヌ・オルタの最後の戦力であろう彼等をさっさと倒して、合流する。もし全員負けたら一人になってしまうが、そんな事は考えない。カルデアの人々に認められている事を知り、彼女は仲間を信じる事にしたのだから。

 

 

「ランサーには負けられねえ…アンタみたいな反英雄には特になあ!」

 

「すまない、相手取ってもらうぞ白百合の騎士よ…!」

 

「殺された借りは返すぜストレンジャー…!」

 

「さて、どのバッハがお好みかな?」

 

「…行くわよ、皆!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城の最奥にて、水晶玉でその光景を見ていたジャンヌ・オルタとジルドレェは焦りに焦っていた。それもそうである。フランスを滅ぼすには十分な戦力だったワイバーンは簡単に駆逐され、切札だったファヴニールはあっさりと倒され、バーサーク・サーヴァントもジルを除いて全て足止めされて敵の本隊がこちらに向かっているのだ。焦らない方が可笑しい。

 

 

「ファヴニールも滅び、バーサーク・サーヴァント達も圧倒され、ワイバーン達もこのままでは・・・」

 

「分かっています。ええ、分かっていますとも。全部あの男が居たからです。私のせいではありません、アレはきっと神が遣わした悪魔なのですええきっとそうです死んでしまえばいいのに何で死んでも死なないんですかアレ」

 

「あの、ジャンヌ?」

 

 

怒りと恐怖で混乱して意味不明な戯言を呟き始めたジャンヌを心配げにギョロッとした目で見つめるジルドレェ。数分も経たない内に正気に戻ったジャンヌ・オルタは深呼吸し、思い付いた限りで一番真面な策を提示する。

 

 

「こうなったらあんな理解不能でも殺せる新たなサーヴァントを召喚しましょう。ジル、その間は貴方に守りを任せます。頼みますね」

 

「畏まりました。我が宝具【螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)】で時間を稼ぎましょう。…否、倒してしまってもよろしいのですよね?」

 

「ええ、もちろん。では、武運を」

 

「ええ、ジャンヌ。どうかその栄光が、穢される事などありませんように」

 

 

有名な死亡フラグ台詞を自信満々に告げた事に気付かずに、召喚した海魔を引き連れて去って行くジルを見送るジャンヌ・オルタは、先刻この目で見てしまったファヴニールの最期を思いだし身震いする。

 

 

「あんなのにジルの宝具でも時間稼ぎができていい方。でも、触媒も無しにあんなのに勝てる様な英霊を召喚する時間も無い…こうなったら」

 

 

そう言って、懐から取り出したのは自身の炎で燃やされたディーラーの亡骸…の心臓辺りから回収した、何かの生物の干乾びた死骸。それが寄生生物プラーガだとは知らない彼女ではあるが、これがあのサーヴァントに所縁ある物だというのは明白で。

 

 

「…似た様な化け物を召喚するしかないじゃない…!」

 

 

覚悟を決め、詠唱を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや、お久しぶりですなジャンヌ。正直申し上げて、こんなにも早くファヴニールを倒しこのオルレアンに乗り込んでくるとは感服いたしました。」

 

「ええ、久しぶりですねジル。私も、こんなにも早く、ここに来れるとは思いませんでした」

 

 

城の廊下にて相対し礼儀を表すかの様に頭を下げるジルドレェから醸し出される狂気に思わずマチルダを握る手に力を込める立香に連なる様にマシュ、セイバーオルタ、ジャンヌ、マリーもそれぞれの武器を構えた。実力は明らかに今までのサーヴァントより下、しかしその狂気はバーサーカーのランスロットでさえ凌駕する。

 

 

「先輩、彼は恐らくジャンヌさんと共にフランスを救った元帥、ジル・ド・レェです!」

 

「…また貴様か。安心しろマスター、コイツは私も一度面識がある。どこかも知らぬ聖杯戦争でのおぼろげな記憶だが…恐るるに足りん」

 

「ええ、感服いたしましたとも。人理修復を成し遂げようとするだけはある。しかし!しかしだ!ああ、聖女よ!そしてその仲間よ!…何故、私の邪魔をする!?私の世界に土足で入り込み、あらゆるものを踏み躙り、あまつさえジャンヌ・ダルクを殺そうとするなど!」

 

 

激昂し、その手に握った人の皮で作られた魔本を構える手に力を込めるジルに、何かを言い返そうとした立香を抑えてジャンヌが一歩歩み寄り、静かに問いかけた。

 

 

「その点に関して、私は一つ質問があるのです。ねえジル、ジル・ド・レェ。彼女は本当に、ジャンヌ・ダルク(わたし)なのですか?ディーラーさんが言っていた事がずっと引っ掛かってました。…例え私の別側面を召喚し、記憶を改竄したとしても、彼女にあるべきはずの記憶がない事はありえません。私にとっては原初の思いです。それがないのはつまり…」

 

「貴女が何と言おうと彼女は貴女の闇の側面!ジャンヌと言えどその暴言、許しませんぞ…!」

 

「…彼女は、私がフランスに復讐する事を望んだ、貴方の願望が生んだ竜の魔女。恐らくは、彼女の持つ力から見て聖杯を基盤とした貴方の理想を体現した人形。それが、英霊の座には決して存在しないサーヴァントである彼女ですね?

聖杯の所持者は竜の魔女ではなく、貴方だった。貴方はジャンヌ・ダルク(わたし)を作ったのですね?」

 

 

確信を突いた言葉に、立香達が動揺すると共に、ジルは動揺するどころかさらに目を飛び出させ怒りのまま声を張り上げる。

 

 

「私は貴女を甦らせようと願ったのですよ?ええ、そうだ。私の願いはただ一つだ。しかしあろうことかその願いは聖杯に拒絶された!万能の願望器でありながらそれだけは叶えられないと!

だが私の願望は貴女以外にはない!…だから、新しく創造しました。私の信じる聖女を!私の焦がれた貴女を!いや、ジャンヌ・ダルク…竜の魔女を造り上げたのです!」

 

 

まさしく狂気。立香とマシュ、マリーでさえも思わず怯んでしまう気迫に、物ともしないセイバーオルタの隣でジャンヌは凛とした佇まいで己の言葉を告げた。

 

 

「…無論、貴方は彼女に最後まで伝える気はないのですね。それはいいでしょう。しかしジル、もし私を甦らせたとしても決して竜の魔女になどなりませんでしたよ。例え貴方からの願いであってもです。

確かに私は裏切られたのでしょう、嘲弄もされたのでしょう。無念の最期と言えるかもしれません。けれど祖国を恨むはずがない、憎むはずもない。何故ならこの国にはジルが、ラ・イルが、サントライユが、私に付いて来てくれた貴方達がいたのですから」

 

「それがどうしたというのか!ああそうだ、貴女はお優しい。実にお優しい言葉だ。しかしジャンヌ、その優しさ故に貴女は一つ忘れておりますぞ。例え、貴女が祖国を憎まずとも――――私は、この国を、憎んだのだ……!全てを裏切ったこの国を滅ぼそうと誓ったのだ!

 心優しい貴女は裏切ったこの国でさえ赦すだろう!しかし、私は決して赦さない!神とて、王とて、国家とて……!!滅ぼしてみせる。殺してみせる。それが聖杯に託した我が願望……!

 

その体現こそが彼女だ!今の私にとって、ジャンヌは彼女。今の貴女は我が世界を踏み荒らす賊、敵に過ぎない!――――我が道を阻むな、彼女の復讐の邪魔立てはさせぬ。救国の聖女、ジャンヌ・ダルクゥゥゥッ!!」

 

「っ皆、防御を!」

 

 

その咆哮と共に、召喚され押し寄せてくるヒトデの様なタコの様な魔物、海魔の大群をマシュが盾を手にどっしりと構えてせき止め、引き金を引く立香と共にセイバーオルタとマリーが応戦する中、ジャンヌは静かに、その手にコンパウンドボウを構え、矢を番えて引き絞る。

 

 

「―――――そう、そうですね。確かにその通りだ。貴方が恨むのは道理で、聖杯で力を得た貴方が国を滅ぼそうとするのも、悲しいくらいに道理だ。

それでも私は、貴方を、竜の魔女を止める。聖杯戦争における裁定者、ルーラーとしても、貴方の友人、ジャンヌ・ダルクとしても。勇敢なるマスターと共に貴方達の道を阻んでみせます。ジル・ド・レェ…!」

 

「この匹夫めがァァァ!!」

 

「決着をつけましょう…貴方は私が止めてみせる!」

 

 

そう言って放った矢が海魔の一体を一撃で屠り、ジャンヌは素早く旗を手に殴りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻前、城前の広場にて三つの激闘が行なわれていた。

 

 

「我が名はシュヴァリエ・デオン。此度は悪に加勢するが―――我が剣に曇りは無い。さあ、悪夢を滅ぼすために全力で立ち向かって見せろ!」

 

「っ…!」

 

 

宝具を撃ったばかりで弱体化している身で、細身に似合わず筋力Aのデオンの一撃を受け止め、弾き飛ばされながらも斬り返して行くジークフリート。

 

 

「来たか。敗北は何よりの恥だ、余は不死身の吸血鬼を謳おうぞ。それが虚構であろうとも、余にはそれしか残されておらぬ…!」

 

「へっ、いいぜ。全力で戦おうか吸血鬼!オラオラア!」

 

 

 

杖を投げ捨て、再び槍を手にヴラド三世と真っ向勝負を行ない、ステータス差と血の槍で圧倒されるクー・フーリン。

 

 

「くっ…当てる事も難しいとはね…!」

 

「ちっ、弾幕張るぞ!ストレンジャーはさがっていろ!」

 

「男の血に興味はないわ。死にもしないのなら猶更ね」

 

「ああもう!ディーラー!何時もの無茶苦茶でどうにかしなさいよ!?」

 

 

アマデウスとディーラーの放つ弾幕を持ち前の敏捷で全て回避し、執拗に手を伸ばしてくるカーミラから必死に逃げるオルガマリー。

ただでさえマルタの様に多数対一でようやく勝てる様な狂化されたサーヴァントを相手に、未だに有効打を与えられない彼等。しかして、マスターの有無でサーヴァントの強さは変わる。

 

 

「ちっ…ストレンジャーが射線に被る、それ以前に当てられん…!」

 

「ディーラー、とっておきは使わずにやられたら意味が無いわ!アマデウス、アサシンを…いや、敵全員の動きを一瞬でいい、止めなさい!」

 

「ああ、任せたまえ!マスター、魔力を借りるよ。聴くがいい!魔の響きを!死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)!」

 

 

アマデウスが晩年に作り上げた鎮魂歌(レクイエム)が辺り一帯に響き渡り、壮麗で邪悪な音による重圧がバーサーク・サーヴァントを襲ってその動きを一時的に止める。一瞬さえあれば、局面は変わる。

 

 

「くっ、マリーにくっ付いているろくでなしの宝具か…!?」

 

「願わくば、正気に戻った貴公とまた剣を交わしたいものだ…」

 

「しまっ…!?」

 

 

耳を押さえるという、致命的な隙を晒したデオンは一撃で斬り伏せられ、

 

 

「ぬぅ…耳障りな…!」

 

「…よぉ、呪いの朱槍をご所望かい?残念ながらディーラー特製の品だが、喰らいな!」

 

「なに…があっ!?」

 

 

急造の物ではあるが、まるで杭の様な小さな銀製の槍をクー・フーリンが投擲し、ヴラド三世の心臓は貫かれ、

 

 

「今よ、ディーラー!」

 

「オーダー受け取ったぜストレンジャー。一発限りの特別品だ、Goodbye(受け取ってくれ),Assassin」

 

「そんな……嘘よ……!?」

 

 

オルガマリーの言葉に頷いたディーラーの、ラ・シャリテから逃げ出してから作っていた一発限りの銀の弾丸を装填した中折れ式マグナムによって腹を撃たれ、カーミラは崩れ落ちる。

 

マスターの有無と言う、圧倒的な差と準備万端のディーラーの装備により、バーサーク・サーヴァントは敗北を喫した。

 

 

「…さすがだ、竜殺しの剣士。私の敗北だ。これで我が身の呪いも解ける。貴公とそのマスターに感謝を。そして、愛しの王妃に謝罪を。申し訳ありません王妃よ、我が過ちを許したまえ…」

 

「…ここで終わりか。クランの猛犬など相手が悪いわ。余の夢も、野望も、またも潰えるか…なるほど、余は"悪魔(ドラクル)”。ならば墜ちるのも自明の理よ。良い、許す。

そしてそこのマスターよ、我が真名を見破った聡明なる女よ。次こそは余を召喚するがいい。であれば、その時こそ我が槍の真髄を見せてやろう。護国の槍―――仲間を、そして民を守る武器は、さぞ貴様の手に映えるだろう…」

 

「ああ…暗がりの中に戻るようね、同じ自分や女の子に負けるならともかく、こんな男に負けるとは。最後の瞬間…煉瓦の隙間に見えた、あの光…ああ、そう…やっぱり私は、エリザベート・バートリーは、生きても死んでも、ひとりきりと言う訳ね…」

 

 

それらの言葉を最期に、消滅するバーサーク・サーヴァント達を見送り、オルガマリーは引き締めていた顔を呆れた物に変え、拳を握ってディーラーに向き直った。

 

 

「じゃあやるわよ。私達も直ぐに追いつくから、先に行って藤丸を守りなさい。貴方のその宝具は、貴方の助けを求める客の元に行くためにあるんでしょ?」

 

「ご明察だストレンジャー」

 

 

ポカッと、軽くではあるがディーラーを殴りつけるオルガマリー。それだけで命を落とした商人は主の側へと意識を繋げた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフハハハハハ!!」

 

 

撃ち、殴り、斬り、蹴り、穿ち、しかしそれでも死体を糧とし永遠と復活して襲い来る海魔の波に、防戦一方の立香達。マスターである立香まで参戦しているがあまりに無力。一体一体が弱くとも、圧倒的な質量はそれだけで脅威だ。

 

 

「アーハハハハハハハハハハ!!如何かなァ?これぞ聖杯の魔力を受けしわたくしめのチカラ!この力でジャンヌを守ってみせようぞ!」

 

「これほど、とは…!矢が、もうありません!」

 

「ちっ、タコもどきが…!こっちも弾切れだ!」

 

「先輩…これ以上、持ちません…!」

 

「もう少し堪えて…纏めて倒せるセイバーオルタの宝具をここで使ったらマシュ達まで巻き込まれてしまう…どうすれば…」

 

「立香。私の宝具を使ってもいいかしら?いいわよね!」

 

「え、あ、はい!」

 

 

打開策を練っていた立香は、突如浴びせられた声に条件反射で応え、振り向くとそこにはガラスの馬に乗ったマリーの姿。彼女はこんな状況でも笑顔を忘れず、海魔の群れへと飛び込んで行く。

 

 

「マスターのお願いよ。私は、貴方達を黒いジャンヌの元に送り届ける役目があるの。さんざめく花のように、陽のように…咲き誇るのよ、踊り続けるの!」

 

 

そう言って、煌めく粒子を纏って海魔の群れの中を跳ね回り、次々と蹴り飛ばしていくガラスの馬は、さらに速度を増し、マリーは優雅にジルへ笑顔を向けた。

 

 

「いきますわよ、百合の王冠に栄光あれ(ギロチン・ブレイカー)!」

 

「ヌゥアアアアアアッ!?」

 

 

蹂躙、直後に体当たり。跳ね飛ばされたジルは壁に激突しながらも、執念のままに立ち上がる。しかし、さらに追撃。

 

 

「これで、倒れて!」

 

「いい加減、黙れ!」

 

「ジャンヌ、瞬間強化…!」

 

「ありがとうございます、マスター!さぁ、覚悟なさい!」

 

 

マシュがシールドバッシュで殴り飛ばし、セイバーオルタが斬り上げ、最後に立香のスキルを受けたジャンヌが、先端が鋭く尖った旗を横に構えて跳躍、渾身の突きを魔本を握りしめた手の甲に繰り出す。

しかし、それでもなお執念のまま耐え続けたジルは新たに召喚した海魔の触手で三人を薙ぎ飛ばし、もはや理性すら消えている眼をさらに飛び出させ、咆哮する。

 

 

「まだだ……まだ穢し足りないィィ……最高のCooooooolをお見せしましょうううウウウウウウッ!」

 

「なっ…!?」

 

「すまないストレンジャー、今来た……ぜ……?」

 

 

絶叫したジルを、出現して行く海魔が触手で包み込み、取り込んでいく。ちょうどそこに立香の背後に現れたディーラーはそれを見て一言。

 

 

「…サラザールかよ」

 

「…誰?」

 

「誰得触手の坊ちゃん」

 

「言っている場合ですか!?」

 

「また、こいつか…」

 

「そんな…ジル、貴方はそこまで…?」

 

「皆さん、乗って!」

 

 

そんな事をぼやいている間にも、ジルを飲み込んだ海魔は召喚され続け、大きく肥大化して行く。そしてついには城の天井を突き破り、マリーの馬車で外に脱出した立香達が見上げるとそこには、巨大怪獣張りの海魔、大海魔が存在していた。

 

 

「デカ…過ぎる…!」

 

 

巨大な肉体を波立たせ、立香達の乗る馬車を襲う触手の波を、飛び降りたディーラーがマシンピストルを二丁手にして弾丸を放ち、怯ませて退かせた。それだけで以前、ストレンジャー(レオン)が戦っているのを見たラモン・サラザールの成れの果てと同じだと気付き、にやりと笑うディーラー。

 

 

「また化物か。少々飽きたが付き合うか?ストレンジャー」

 

「いや、無茶だよ!?今は所長と合流して…」

 

「セイバー、手伝え。やるぞ」

 

「…ああ。ついてこれるか商人」

 

「アンタこそ、ついてこれるか?」

 

「…ふっ。愚問だな」

 

 

城の前半部分を飲み込んでさらに巨大化して行く大海魔の眼前に並び立ち、各々の最強の武器を構えるディーラーとセイバーオルタ。そして、

 

 

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!・・・約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガ)ァアアアアアアアアアアアアアンッ!」

 

GoodBye(失せろ).Caster!」

 

 

黒い極光が大海魔の前半部分を消し飛ばして露出させた、中央に居たジルドレェ本体に目掛けて発射されたロケランが直撃。

 

 

「ああ…ジャンヌゥ…」

 

 

大爆発と共に、狂い果てた魔元帥は消滅し、フランスの空へと消えた。残るは聖杯であるジャンヌ・オルタただ一人。元凶が倒され最初の特異点はもう解決した…かに思われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「滅びた私を召喚してみせた褒美だ、フランスを滅ぼせばよいのだろう?このロス・イルミナドス教団のカリスマであるオズムンド・サドラーが君の幻想に終止符を打ってあげよう、マスターよ」

 

 

ジャンヌ・オルタの手で召喚されたのはディーラーにとって因縁の相手。事態は収束どころが、混沌となって行く。




ディーラーの死骸から入手されたプラーガの死骸を触媒に教団のカリスマ(笑)が登場。はい、バイオ4のラスボスです。え、速い?んなこたぁない。この先どんどんこんなカリスマ(笑)よりも強敵が出ますから。

バーサーク・サーヴァント、オルガマリーの指示とアマデウスの宝具に気を取られて敗北。ディーラーが作っていた銀を使った武器が役立ちました。時間が無かったので杭みたいな槍と一発の弾丸だけでしたが、吸血鬼の相手には効果抜群。

原作と異なりジャンヌ・オルタよりも先に行われたジル戦。バレンタインじゃないよ。大海魔まで出すも、Zeroで敗北したエクスカリバーでレオンのサラザール戦の如く露出した本体を一撃必殺されて消滅。ディーラーとセイバーオルタ、下手したらマスターよりも分かり合っているかもしれない。

次回はディーラーにとっての天敵、VSオズムンド・サドラー戦。ジャンヌ・オルタはどうなるのか。オルレアン完結です。次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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