Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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意外と早く更新できました。今回は題名通りの回。VSファヴニールです。ディーラーの持つランクEXの宝具がついに真名解放されます(明確に描写するとは言っていない)。楽しんでいただければ幸いです。


すまない出番はないぜストレンジャー

竜がひしめく城塞都市、オルレアン。その王座で、ジャンヌ・オルタは最も信頼できるカエル顔の男と共に彼の魔術で戦況を整理していた。

 

 

「・・・ライダーが自決しましたか。聖女は狂化しても、理性が残っていたとは困りものです。とはいえ、魔力の消費から見ても彼女は全力で戦ったのでしょう。それを葬り去ったとなると、油断なりませんね。次は私が出ます、今回召喚したサーヴァント達も連れて行きます。バーサーク・アサシンにも連絡を、バーサーク・キャスター・・・ジル」

 

「かしこまりました。かつての私であればお引き留めしたでしょう。しかし、今の貴女は完璧な存在です。ジャンヌ、貴女には武運すら不要!どうぞ、存分に蹂躙してくださいませ」

 

 

その言葉を聞いて、黒い聖女が思い出すのは自身を否定した薄汚い男の死体。ああ、思い出すだけで腹が立つ。あの時は燃やしてスカッとしたが、時間が経てば経つほど、苛立ちは募る。ああ、死んだはずなのに生きていた男。再び相対した時はこの手で何度でも殺し尽くしてやろうか。

 

 

「・・・その完璧な私をジャンヌ・ダルクではないと言った男が居ました。サーヴァントは成長しない、成長したならそれはもう別物だと。ジル、貴方はどちらが本物だと思います?私と、彼女と」

 

「もちろん貴女ですよジャンヌ。よろしいか、そんな男の戯言に耳を貸す必要はありません。貴女は火刑に処された。あまつさえ誰も彼もに裏切られた!あのシャルル七世は賠償金惜しさに、功労者であるはずの貴女を見殺しにした!勇敢にも貴女を救うために立ち上がろうとする者は、誰一人として現れなかった!・・・お恥ずかしながら、生前の私も含めてです。ああ、実に嘆かわしい」

 

 

今もワイバーンと竜の魔女打倒を目指すフランス軍を率いる生前の己を思いだし、やれやれと首を振るジルドレェ。しかしすぐにまた激昂し、言葉を続ける。まるで、誰かを誤魔化す様に、言い聞かせる様に。

 

 

「理不尽なこの所業の原因は何か?即ち、貴女が信じてしまった神だ!これは我等が神の嘲りに他ならない!そしてそれ故に、我等は神を否定する。そうでしょう、ジャンヌ。そんな事も知らない男の戯言など気にしなくてよいのです。貴女は間違いなく、ジャンヌ・ダルクに他ならないのだから」

 

「・・・そう、そうよね、ジル。もう私には何もない。率いる兵士は去り、渇望した民は逃げて行った。王は裏切り司教は神の名を下に私を罰した。つまり―――私は間違えていた。いえ、私が信じた物ではなく私というものを許容したこの国そのものが間違えていた。であれば、その間違いを正さねば。ジャンヌ・ダルクは間違いだった。私が救国するという行為そのものが致命的に間違っていたのだから」

 

 

確認する様に、静かに虚ろな声を上げるジャンヌ・オルタ。そこに、かつて救国のために旗を振るった聖女の姿は無かった。在るのは間違いだと定めた国を滅ぼそうとする竜の魔女だった。

 

 

「…………ジャンヌ。どうか、そこまで思い詰めないでいただきたい。これはただの天罰です。貴女の復讐は正しいものだ。貴女が救った国であれば貴女が滅ぼす権利がある。これはそれだけの話ではないのですか?」

 

「………そうね。ジル、貴方の言葉は何時だって極端だけど今回は頼もしい。行きますよ、バーサーカー、アサシン。…ややこしいですね、真名で呼びましょう」

 

 

そう言ったジャンヌ・オルタの前に控えるは、新たに召喚されたサーヴァント達。濃紺の甲冑を身に纏った騎士と、刃を手にした黒コートの男。

 

 

「敵にいた忌々しい女は私の真名看破によればアーサー王だった。ならば貴方がふさわしい。湖の騎士、ランスロット。そして処刑人、シャルル=アンリ・サンソン。マリー・アントワネットが相手なら貴方以上の適任は居ないでしょう。ワイバーンに乗りなさい、私が先導します」

 

「………Arrrrrrthurrrrrrrrr!!!」

 

「了解しましたマスター。王妃の首ならば僕が再びこの手で。………ああ、マリー……マリー!マリー!マリア!―――やはり君と僕は、宿業で結ばれているようだ……!どうか聞かせてくれマリー。僕の断頭はどうだった? 君は最期に絶頂を迎えてくれたかい…?」

 

 

待ちきれないという様子で咆哮するランスロットと、何故か顔を紅潮させて震えながら叫ぶサンソンに、思わず引いてしまうジャンヌ・オルタ。

 

 

「…ねえジル、本当にあの二人で大丈夫なの?特に処刑人」

 

「…変質者であろうとも、その実績は本物ですよジャンヌ」

 

「貴方にだけは言われたくないでしょうね」

 

 

実績はあるのに、ジャンヌが死んでから狂い果て奇行に走った男にそうぼやくジャンヌ・オルタであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういう時の無限弾薬はいいな、敵が数え切れなくても弾切れの心配をしなくていい」

 

 

ガラスの馬車の屋根にボロ布を置いて胡坐をかいて座り、自身のとっておきの品であるシカゴタイプライターを撃ちまくりながらそうぼやくディーラー。ジュラの森を出発して早二日。ずっとワイバーンを駆逐していたためか何というか、飽きていた。

 

 

「すまない…役に立たない俺より彼の方がドラゴンスレイヤーの名がふさわしいと思うのだが…」

 

「いや、ジークフリートは休んでいて。呪いが消えて、体力も全快とはいえ魔力が足りないんじゃしょうがないよ」

 

 

そう言う立香の前に申し訳なさそうに座る長身の男。その名もジークフリート、名高き竜殺しの勇者である。リヨンで発見された彼は、立香達が来るよりも早くリヨンにて人々を守るべくジャンヌ・オルタの一団と戦い敗北。マルタに匿われるも呪いに侵されて弱っていたところを発見され、ディーラーの「緑+赤+青ハーブ」により体力全回復と共に呪いも解呪され、今現在魔力を回復するために待機中なのである。ちなみにではあるが、仮契約はやはりオルガマリーと行った。ジャンヌ・ダルクとの対決に置いてセイバーオルタの宝具はまさしく切札となり得るからである。

 

 

「そうよジークフリート。雑魚ならディーラーで十分だけど、聖女マルタの言っていた究極の竜種…ファヴニールには貴方の宝具が必要不可欠なの。今は回復に徹していいわ。アマデウス、何か魔力が早めに回復する曲とかないの?」

 

「無茶を言わないでくれないかマスター。音楽ってのはそこまで万能じゃないさ。せいぜい場を盛り上げるぐらいだよ」

 

「あら、いいじゃないアマデウス。ずっとガラスの馬車の中で過ごして皆さんお疲れだわ。貴方の音楽で癒してあげて」

 

「すまないマスター…空気が読めない様で悪いがこの気配、奴とサーヴァントが近づいてくる…」

 

『所長!報告は遅れたがサーヴァントを上回る超巨大の生命反応を察知した!猛烈な速度でそちらにやってくるぞ!』

 

「なんですって!?報告遅いわよロマン!」

 

「…ああ、やっこさん、ついにおいでなすったぜストレンジャー」

 

 

申し訳なさそうに報告して来たジークフリートの言葉と、ディーラーの言葉に慌てて窓から顔を出し、高速で走る馬車の前方にある街の方を見やるオルガマリー。そこには、巨大な影とワイバーンの大群が空を覆い尽くす光景があった。

 

 

「ワイバーン共が何か増えて来たなと思いきや奴のお出ましだ。サーモスコープで見た所上に人影三つ、町の高台に一つ見付けた。十中八九サーヴァントだろうな。まずどいつを仕留める?」

 

「…町にいる人影が恐らくアーチャーよ。邪魔される前に倒せる?」

 

「俺の武器に不可能はないぜストレンジャー」

 

 

そう言ってディーラーが構えるのは、サーモスコープをくっつけた無限ロケットランチャー。狙うは巨大な影、ではなく前方の街で待ち構える女性の人影。まず一発、続けて二発連続で放つ。一発目は気付かれて弾かれてしまうが、続けざまに飛んで行くロケット弾頭二つは撃ち落とされる事無く、着弾。大爆発が街の一角を襲った。

 

 

「…今更だけど、人は居ないよね?」

 

「…もしいたとしても必要な犠牲と割り切りましょう。それより倒せた?」

 

「ああ、奴の矢の射程より俺の武器の方が一枚上手だったらしいぜ。前回のアーチャーとの対決で堪えた俺の腕前もあるだろうがな、ヒッヒッヒッヒェ」

 

 

そう言って、襲い来るワイバーンの群れの撃墜を再開したディーラーを余所に、ゆっくりと迫り来る巨大な影…十中八九、ジークフリートの宿敵である邪竜ファヴニールであった。その頭部に騎乗していたジャンヌ・オルタはディーラーと立香達を確認すると笑みを浮かべた。

 

 

「見付けた!ああ、見付けた!灼き尽くしなさい、ファヴニール!」

 

「おっとそいつはいただけないなストレンジャー」

 

 

街の中へと突入したガラスの馬車に向け、ワイバーンのそれとは比べ物にならないドラゴンブレスが放たれようとしたその瞬間、開いた口に大きく投擲された手榴弾が投げ込まれ、爆発。

さすがに口内への攻撃は応えたのか攻撃が止んで爆発にジャンヌ・オルタが怯み、その背後から二つの影が飛び降りて来て馬車が急停止するのと同時に、マインスロアーが連続発射。ランスロットとサンソン相手に立香達が戦いを始めた直後、顔面で連鎖爆発を起こして悲鳴を上げたファヴニールの巨体はそのまま街中へと墜落して行った。

 

 

「よしっ、こいつで黒聖女と馬鹿みたいにデカいドラゴンは一旦退場だ。さっさとその二人を仕留めるぞストレンジャー…!」

 

「うん!ジークフリートは休んでいて!行くよマシュ、皆!」

 

 

邂逅直後、その手にした黒い剣とエクスカリバーをぶつけ合うランスロットとセイバーオルタに続き、馬車から飛び降りる立香達。

 

 

「藤丸、クー・フーリンを貸しなさい。あの鎧の男は任せたわ。私達はもう一人をやる。…仮契約とはいえ、私のサーヴァントが目的みたいだし」

 

「分かりました!クー・フーリン、所長とマリーを任せた!」

 

「おうよ!」

 

 

セイバーオルタ、ジャンヌ、マシュが立香の指示でランスロットと。クー・フーリンとマリー、アマデウスがオルガマリーの指示でサンソンと。それぞれぶつかる中…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒聖女自らが来るとは僥倖だ。聖杯は恐らく本拠地のオルレアンだろう。だったら、首魁の黒聖女を人質にした方が一番効果的だろうな」

 

 

襲い来るワイバーンをライオットガンで撃墜しながら、ファヴニールの落ちた場所へ向かうディーラー。例にもよって独断行動である。ちなみに正当な理由こそぼやいでいるが、彼の目的はドラゴンスレイヤーでないと殺せないとか言われた巨竜、ファヴニール撃破だ。

アーマーも装着して一撃だけは耐えれる様にし、さらにオルガマリーの延命に用いたイエローハーブをグリーンハーブと一緒にバカみたいに使って体力を何時もより上昇させていて、今は耐久Cぐらいある。何時になく本気であった。

 

 

「…見付けた。さてどうするか」

 

 

壁の向こうに頭を揺らしているファヴニールと、怒鳴っているジャンヌ・オルタを見付けて隠れ、考える。いくら体力アップさせていても自分はジークフリートに比べたらポテンシャルは圧倒的に低い。身体能力だってマシュより低いのだ。…ただでさえ強敵なエルヒガンテ二体にレオンはどう戦った?…答えは知っている、翻弄だ。そしておあつらえ向きに、巨竜が落ちたのは広場。周りにはまだ完全に崩れていない建物群がある。

 

 

「…マスター、許可をくれ」

 

《え、何の?というか今どこなの、ディーラー!》

 

「すまないストレンジャー。独断でファヴニールと対峙している。死ぬ気はないから聞いてくれ、宝具の真名解放をする。許可(オーダー)を頼むストレンジャー」

 

《…分かった。ジークフリートには私からお詫びするよ。でも戻ってきたらお説教だから。絶対に死なないで。あと、早く戻って所長達を助けてあげて、苦戦している》

 

「…オーライ、マスター。注文(オーダー)には応えるぜ」

 

 

小声で行っていた念話を切り、ディーラーは自らの勝利を疑わないマスターへ無言の感謝の意を送る。そして恐らく自分の存在に気付いてファヴニールの頭に乗り直したジャンヌ・オルタを見据えた。…まあ、ファヴニールを己の武器で倒せればそれでいいかと楽観的に考える。この際、黒聖女は逃がしても構わない。

 

 

「さあ、商売開始といこうかファヴニール。ジークフリートの旦那には悪いが、お前なんか敵じゃねえ」

 

 

そう宣言した彼の周りには、武器という武器という武器の山が。それこそ彼の在り方故に。

 

 

「ウェルカァムッ、ストレンジャー…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Gala……had…………Aaaa、Arrrrrrrrrrrrrrr!!!」

 

「っ、強い!下がって先輩!このバーサーカー…今までのどのサーヴァントよりまっすぐで、怖いです…!」

 

「何故、私を…!?」

 

 

セイバーオルタを突進で跳ね飛ばし、マシュの盾を拳で押し退け、ジャンヌに向けて猛追するランスロットにマシュは恐怖し、ジャンヌは立香の前で彼女だけでも守れるようにと旗を構える。

 

 

「そうだろうなマシュ・キリエライト。その盾を持つ貴様からしたら末恐ろしいだろう。奴は円卓最強の騎士、ランスロット!…お前まで、あのカエル顔と同じく私とジャンヌ・ダルクを見紛うか!…」

 

 

魔力放出で急接近し、その手に握られたエクスカリバーが黒い剣を弾き飛ばすと、今度は黒く染まった丸太を振り回し、クルリと回転させながら打撃を繰り出し建物を倒壊させるランスロットの猛撃を避けながらセイバーオルタは、座の自分が記憶している過去の聖杯戦争…第四次聖杯戦争で、自身に執着し己を苦悩させたバーサーカー、ランスロットと同じく、自身に執着していたキャスターを思い出しながら舌打ちした。確かに今の自分は黒化しているが、そんなにジャンヌは似ているのかと考え、思い至る。

 

 

「…いや、聖女よ。どうやら私と貴様は顔かたちではなく、魂の形が似ているらしい。それが光栄な事かは知らんが、滅びゆく国を何とかするために自らを捧げ、国を救うべく戦い、裏切られた…それでもなお、祖国のために闘い続けた。ああ、確かにそれは似ている…だが貴様が憎むのは私だ、アーサー王だ」

 

「Arrrrrrthurrrrrrrrr!」

 

 

魔力放出による圧で、己がここに居る事を醸し出すセイバーオルタに向けて、丸太を捨て黒い靄を消し魔剣と化した聖剣を振り上げて迫るランスロットに、セイバーオルタは少しだけ悲しげな表情を浮かべ、剣を握り直す。

 

 

「すまなかった。私が貴様を罰していれば…貴様がそこまで苦悩する事も無かった。あの私は、甘かった」

 

「Arrrrr…王…よ、私は…どうか…」

 

 

一瞬剣から魔力放出し、加速したエクスカリバーが一閃。斜めに大きく斬り裂き、ランスロットは勢いのまま大きく吹き飛ばされ、兜が外れて黒髪の隙間から狂気溢れる目で己を一撃の元に切り捨てた王を見据え、どこか満足したように消滅していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「君に二度も彼女を処刑なんかさせないぞ。シャルル=アンリ・サンソン」

 

マリーを執拗に狙うその姿に、生前の因縁からかクー・フーリンと共に立ちはだかるアマデウスに、狂喜の笑みを浮かべていたサンソンは露骨に嫌そうに顔をしかめた。

 

 

「人間を愛せない人間のクズめ、僕と君は相容れない。彼女の尊さを理解しない貴様に、彼女に付き従う資格は無い。…そして驚いた。死んだのに生きている。矛盾な様な存在がマリー、君のマスターなのかい?」

 

「…分かるのかしら。貴方なんかにマリーマリー連呼されるのは気分が悪いわね」

 

 

露骨に嫌悪の目を向けて来るサンソンに、レフの顔を思い出し内心舌打ちするオルガマリー。ああ、コイツにだけは、負けられない。

 

 

「我が処刑の刃は清らかなるもの。お前達の様に死を受け入れないものに使うものではないが…思えば、今やこの国全てが処刑場だ。その首、一撃で切り落としてやろう…!」

 

「…貴方にマリーは殺させない…私の二の舞は、させない!」

 

「無駄だ!」

 

 

アマデウスの音楽魔術を耐えながら突進、マリーの蹴りを刃で受け止めて押し返し、クー・フーリンの槍を切り上げてと、力任せの攻撃を行うサンソンに、オルガマリーは自らの手札の一枚を切る事にした。

 

 

「スキル発動、全体強化!」

 

「さぁて、ここからだ!」

 

「デクレッシェンド!フォルテッシモ!」

 

「サンソン、貴方はどんなダンスがお得意かしら?」

 

 

普段着ている礼装の下に、念のために着て来たカルデア戦闘服のスキルを発動。クー・フーリンの一撃に鋭さが増し、アマデウスの放つ音楽魔術の威力が向上し、マリーの舞うような蹴りの一撃も段違いに強くなる。短時間ではあるが、狂化がなされているサンソンを押し返してきた。

 

 

「くっ…せめてマリーだけは、この手で…!」

 

 

そう言い、マリーの前で手にした刃を振り上げると、顕現する処刑台がマリーを捕らえ、断罪の刃がその首に迫る。それはギロチンを考案した彼を表す宝具、かつてマリー・アントワネットを処刑した断頭台。

 

 

「刑を執行する。死は明日への希望なり(ラモール・エスポワール)!」

 

「させない…!スキル発動、オーダーチェンジ!」

 

 

しかしそれを見過ごすオルガマリーでは無かった。カルデア戦闘服のスキルを発動、マリーの姿が、オルガマリーの視界に捉えていたその人物と入れ替わる。場所を交換するだけのスキルではあるが、身代わりを立てるぐらいならできたのだ。俯せだったマリーと違い仰向けに現れたその人物は、眼前で驚き執行の手を緩めたサンソンに銃口を向け、トリガーを引いた。

 

 

「何っ…!?」

 

「面白い事ができるなストレンジャー。GoodBye(希望は見えたか?).処刑人」

 

 

その手に握られた中折れ式マグナムが火を噴き、その脳天を吹き飛ばして消滅させる。同時に断頭台も消失し、ディーラーはその場に降り立ってマグナムの弾込めをしてからリュックに直した。

 

 

「俺が機を窺っていた事によく気付いたなストレンジャー」

 

「ええ。マリーが近くに居たから迂闊に撃てなかったんでしょ?貴方のせいで死に掛けるかも、と思っていた保険の礼装がまさか役立つなんてね」

 

「備えあって憂いなしだぜストレンジャー」

 

 

そう言って立香の元に向かったディーラーを見送ったオルガマリーに歩み寄るアマデウス。憂いを帯びた顔だった。

 

 

「ん~……すまないマスター。正直、今回のステージは三流だった。…マリーの名を持つ君に助けられるとは、…でもアイツからマリーを守れてよかった。彼女、直ぐに命懸けちゃうからね。君が居なかったらと思うとゾッとするよ。礼を言うよマスター。正式に召喚された暁には君のために力を尽くす事を誓うよ」

 

「ありがとうアマデウス。私としてもすっきりしたからあまり気にしなくていいわ。それより、ファヴニールは…」

 

「その心配は必要ないですよ所長」

 

 

ディーラーが交戦したとも知らないオルガマリーがファヴニールが落ちた付近に視線を向けているとそこに立香達がやって来た。ジークフリートがさらにすまなそうに顔を暗くしていた。

 

 

「ディーラーが倒してしまったらしいです。黒いジャンヌはちょうどやって来たバーサーク・アサシンと一緒にワイバーンに乗って逃げたんだとか」

 

「…え?倒した?あの巨大なドラゴンを?」

 

「おう。一回も死ななかったから怒られる謂れはないんだがなぁ…」

 

「ジークフリートがいたから逃げるだけでもよかったのに何で戦うのか…」

 

「すまない…ファヴニール相手に役に立たなくて、本当にすまない…」

 

「ファヴニールを早めに撃破できた事は僥倖よ。とりあえず、先を急ぎましょう」

 

 

何とも言えない表情を浮かべていたオルガマリーの一声で、再びオルレアンへと出発する一行。今回は敵の戦力を大幅に削れ、ジャンヌ・ダルクも逃走した今がチャンスだ。次の戦いが決戦だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、オルレアンへ向かうワイバーンの上にてジャンヌ・オルタは憤慨していた。

 

 

「なんなのよ!なんなのよ、なんなのよアイツ!」

 

「落ち着きなさいマスター。貴女は傷一つ負ってないでしょう?」

 

「それでも、動けなかった!私を否定したあんな男に、臆してしまった!」

 

 

苛立っているのは自分の事だ。一瞬だった。何かを構えたディーラーの放った閃光で視界が一瞬遮られた直後、地獄を見た。それこそ火刑以上の地獄が自分の視界の中でファヴニールを蹂躙し、抵抗しながらも骨一つ肉片一つ残さず、バルムンクでしか倒せない最強だったはずの巨竜は、圧倒的な暴力によってこの世から消え去った。再度召喚する事は出来るだろう、しかしそのためにどれ程の時間を有する?あとどれくらいの時間で奴等はオルレアンに攻めてくる?

 

得体の知れない恐怖がジャンヌ・オルタを襲う。どうにかしなければ、ああ、どうにかしなければ己はまた否定されてしまう…

 

 

「…オルレアンに急ぎなさいワイバーン。戦力を整えて迎え撃つわよ。あんなふざけた奴等に負けられない…」




ディーラー「すまない出番はないぜストレンジャー」
すまないさん「えっ」
某先生&某アオダイショウ&某メキシコオオトカゲ「えっ」
オペラ座の怪人、バーサーク・アーチャー「えっ」

VSバーサーク・アーチャー(瞬殺)、ランスロットとサンソン。ランスロットはディーラーに対しては最強だったんですが、生憎カルデアにはセイバーオルタがいた為…サンソンはマリー的な意味での因縁でオルガマリーが撃破。所長は普段の服に、カルデア戦闘服の手袋が露出した状態です。あれだけを着て特異点攻略する勇気はチキンな所長にはないです。

アーチャーに対して現在無敵のディーラー。そして人外特攻のスキルも合わせて耐久度も底上げし(なお、一度死ぬと効果もリセットされる)、宝具の真名解放を使ってファヴニールを撃破。真名解放の名称は「ウェルカム、ストレンジャー」どういう宝具かはローマでお披露目の予定。

どんどん不安定になって行くジャンヌ・オルタ。次回はオルレアンでの決戦。二大聖剣並び立ち…!次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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