Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。最近バイオハザード4にドハマリして、唐突に書きたくなった短編小説です。例にもよって人気が出たら続きます。

武器商人が限定仕様武器や隠し武器を手に人理修復に参戦します。楽しんでいただけると幸いです。


グッバイ、ストレンジャー

人類の未来を観測し守護する人理継続保証期間フィニス・カルデアにて、観測された未来に置ける人類絶滅の原因を探るためのレイシフト実験を前に、カルデア管制室で起きた謎の大爆発と火災。

その災厄の真っ只中に一人の後輩を救うべく乗り込み、崩壊に巻き込まれたはずの「48人目のマスター」である一人の少女、藤丸立香が目を醒ましたのは、突発的なレイシフトで飛ばされた生きた人間の気配の無い焦土と化した都市、特異点F。

 

デミ・サーヴァントと化した後輩、マシュ・キリエライトを連れ、襲い来る骸骨兵を退けながら同じくレイシフトに巻き込まれた所長、オルガマリー・アニムスフィアと合流した立香は、所長の指示で戦力なり得る英霊を召喚すべく、何もない状態で取り敢えずとばかりに魔術陣を描き、ただただ詠唱していた。

 

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 

願うは、マシュと共に自分と所長を守ってくれるそんな英霊。

 

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

 

願わくば、マシュを支えられるぐらい強くて頼りになる男性。

 

 

「汝三大の言霊を纏う七天」

 

 

さらに願わくば、気さくな話しやすい性格で。

 

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――」

 

 

事故直前で出会ったドクターロマンの様な頼りないヘタレではなく、何事にも動じない鋼の精神を持ったそんな英霊を、ただただ願う。

 

 

「ヴェルカム!」

 

「「「!?」」」

 

 

そして、地面に敷かれたマシュの盾の上に三つの光輪が集束して光の柱となり、光の柱が消えて聞こえて来たのは渋い独特の癖のある歓迎を意味する英語。

盾の前に立っていたのは、蒼い火の玉を傍に浮かばせ、大きな茶色いリュックを背負い、黒衣を着込んでフードを被り青い布で口元を隠したオレンジ色の目をした男だった。

 

 

「サーヴァント・ディーラー。いい武器を求める誰かの声に応えて売り込みに来たぜ。アンタが俺のストレンジャー(マスター)か?」

 

「えっ、はい…多分、そうです…?」

 

「ヒッヒッヒッヒェ…センキュウ!早速で悪いが、最初のオーダー(注文)はそいつらの排除か?」

 

「え?」

 

 

笑みを浮かべたディーラーが懐から大型拳銃を取り出し、立香の背後に向けて発砲。慌てて盾を構えて振り返ったマシュの目の前で、竜牙兵が粉々に砕け散る。顔の横で発砲された事により何が何だか理解が追い付かなかった立香と、ビビッてマシュの背後に隠れるオルガマリーと言った女性陣を庇う様に前に出るディーラーは自身の手に握られたそれを自慢する様に掲げた。

 

 

「コイツはハンドキャノン。反則以外の何物でもない高威力の大型リボルバーだ。もちろん高価な品だ。さらに限定仕様に改造しているから弾は尽きない。どうだ、欲しいか?」

 

「あ、うん…確かに欲しくなったけど、まだ来てるよディーラー・・・!」

 

「ならコイツだ」

 

 

迫り来る竜牙兵、骸骨剣士の集団を前に、隙が大きいハンドキャノンを懐に仕舞ったディーラーは今度は背中のリュックの中から回転式弾倉が付いた散弾銃を引っ張りだし、腰だめで構えてギリギリまで引き付けてから連射。100発もの弾丸が絶え間なく発砲され続け、人ならざる者の一団は瞬く間に全滅した。

 

 

「コイツはセミオートショットガン。限定仕様に改造しているから一度に100発もの散弾を込められ、隙無く連射可能な代物だ。生憎と近距離専用で遠距離には威力が下がるんだが、接近戦だとこうも効力を発揮する。どうだ、欲しくなったかストレンジャー?」

 

「あ、はい」

 

「なんなのよコイツ・・・本当に英霊なの?見た所アメリカかぶれのスペイン人みたいだけどどこの英雄よ…」

 

「おっと、俺は英雄じゃないぜ。…そうだな、魔術師なら知っているかは知らないが「死徒もどき」って知ってるか?」

 

 

セミオートショットガンを仕舞いながらオルガマリーにそう尋ねるディーラー。その目は楽しげに笑んでいた。

 

 

「ああ、2000年代の前後に世界中で見られた死徒の様なナニカ・・・ゾンビの事?ラクーンシティ事件から勃発した・・・」

 

「そいつだ。俺はそのゾンビ・・・の仲間の様な物、ガナード(家畜)の一人だ。それで、アメリカ大統領の娘が誘拐されたロス・イルミナドス教の案件を解決に導いた捜査官、レオン・S・ケネディを俺の商品でサポートした。アンタ達からしてみれば、舞台裏の功労者と言ったところだな。

俺なんかよりもレオンの奴やルイス・セラの方が呼ばれてもいいと思うんだが、俺の商人魂がアンタの願いに釣られちまった」

 

「じゃあ、英雄でもなんでもないの?真名は?」

 

「当の昔に忘れちまった。英霊としての真名は【武器商人】だから俺の事は気楽にエクストラクラス、ディーラーと呼んでくれストレンジャー」

 

「う、うん…何の事やらさっぱりだけど何とか分かった。せっかくだから護身用に何か売ってください」

 

「金はあるか?」

 

「少しなら」

 

「ヴェルカム!」

 

 

そう言ってディーラーがガバッと己の黒衣をはだけさせると、そこには大量の銃器と弾丸のケースがびっしりと装備されていた。

 

 

『軽く戦争ができる装備の数だ…』

 

「あ、ロマン。ディーラーを召喚してから黙っていたけどどうしたの?」

 

『いや、いきなりエクストラクラスだったから真名を探っていて…それより、立香ちゃんが銃を持たなくてもマシュとディーラーがいるんだから必要ないんじゃないかな?』

 

「ロマンの癖に真面な事言うじゃない。私も同意見よ。無謀に挑んで犬死でもしたら私、一人になっちゃうじゃない!」

 

「アンタもいるか?ストレンジャーの上司だ、安くしとくぜ」

 

「いらないわよ!」

 

 

立香の手首に付けられた端末から立体映像で現れた桜色の髪の男、ドクターロマンの言葉にやれやれと溜め息を吐くディーラー。

 

 

「甘いな。どこの温室で育てられたか知らんが、女だって戦わないと死んじまう。俺の知る大統領の娘は護衛がいなくても単身闇の中に立ち向かい、ランプだけで大の男を倒してしまった。中には、商売前から現れて買って行った女スパイもいた。こんな場所だ、護身用にしても、少しは自衛できる方がいいだろう」

 

『うっ、確かに何が起こるかわかったもんじゃないし、立香ちゃんに何かあったら困る・・・一理ある、かな…?』

 

「何言い負けてんのよロマン!」

 

「ほら、ストレンジャー。アンタにはこいつがいいだろう。ハンドガンマチルダ。照準が安定していて、一度に3発の弾を連射するバースト射撃ができるからさっきの様な雑魚ならこれで一掃できる。限定仕様だから100発まで込めているが、念のためにこの50発の弾倉は持っておけ。サービスだ」

 

「ありがとう!」

 

 

手渡した大型のハンドガンを無邪気に受け取ったマスターに満足気に頷いたディーラーは、即座に臨戦態勢を取ると懐から何かの弾倉を取り出し、リュックにもう片方の手を突っ込んで大きめのそれを引っ張り出して変形させながら此度のストレンジャーをさりげなく己の背後に促した。

 

 

「という訳で、所長さんの護衛頼んだストレンジャー。俺と盾の嬢ちゃんは、アンタ等を守る余裕があるか分からないからな」

 

「え?…まさか、サーヴァント…!?」

 

『た、確かにサーヴァント反応だ!気を付けて、所長、立香ちゃん!マシュ、君は警戒を・・・』

 

「その必要はないぜ。コイツはマインスロアー。値段にガッツを入れた特別品だ。何よりも特筆すべき特徴は・・・」

 

 

そう言ってガシャコン、とリュックから取り出したグレネードランチャーの様な大型の銃に弾込めし、前方に構えるディーラー。敵サーヴァントは得体のしれないサーヴァントがいるこちらの様子を窺っているのか出て来ない。しかし、ディーラーは関係ないとばかりに不敵に笑み、トリガーを引いた。

 

 

「限定仕様にすると、弾が自動的に敵目掛けてホーミングする事だ」

 

「っ!?」

 

 

シュポッと言う軽い音と共に小型榴弾が発射され、瓦解した建物の影に身を潜めていたらしい敵サーヴァントに目掛けて地球の法則全てを軽く無視した軌道を描いて方向転換し、着弾。呻き声が上がり、マシュ達が身構えた数秒後、

 

 

「グアアアッ!?」

 

 

爆発が起きてバイザーを付けた女性の姿をした女サーヴァントが投げ出された。それを見て、マインスロアーをリュックに直したディーラーが構えるのは、ドラムマガジンの付いた45口径の短機関銃。

 

 

「見た所、ライダーか?だったらこのシカゴタイプライターの出番だ。反則級の品だが、アンタは中々に素早いらしい。俺は貧弱でな?無様に弾幕を張らせてもらうぜ」

 

「ッ!」

 

「マシュ、お願い!」

 

「はい先輩、させません!」

 

 

でたらめな性能を持つディーラーの銃器群に恐れをなしたのか、先制とばかりに鎖の付いた杭を投擲する敵サーヴァント、ライダー。しかし頭部を狙ったその一撃は、立香の指示で咄嗟に前に出たマシュの構えた大盾に防がれる。持ち前のスピードをフルに生かして高速で退避しながら弾かれた鎖を手繰り寄せるライダーであったが、その隙は明確で。

 

 

「ナイスだストレンジャー。どきな盾の嬢ちゃん」

 

 

盾が下げられた瞬間、既に構えていたシカゴタイプライターの、名の通りタイプライターを打つかのような銃声と共に放たれた弾幕が次々とライダーを撃ち抜き、その動きを鈍らせ。

 

 

GoodBye(地獄で会おうぜ),RIDER」

 

 

シカゴタイプライターをリュックに直すと同時に再び懐から取り出し構えられたハンドキャノンが火を噴き、無様に転がりながらも己の切札を発動しようと手にかけていたバイザーごと頭部を撃ち抜かれ、ライダーのサーヴァントは消滅した。

 

 

「ナイス判断だ。アンタは信頼できる顧客だ、これからよろしく頼むぜストレンジャー」

 

「…ストレンジャーって余所者って意味だよね?なんだか寂しいから自己紹介するね。私は藤丸立香です。こっちは・・・」

 

「マシュ・キリエライトです。こちらの偉そうな人が私達のリーダーであるオルガマリー・アニムスフィア所長。先輩の端末に映し出されている頼りなさそうな人がドクターロマンです」

 

 

安全を確認したからか笑みを浮かべて自己紹介していく立香とマシュに、ディーラーは目を丸くしながらも頷き口を開く。

 

 

「改めて、サーヴァント・ディーラーだ。俺の武器を有効活用してくれ、期待しているぜストレンジャー」

 

「だから、名前で呼んでください・・・」

 

「俺にとってストレンジャーってのはお客さんって意味だ。我慢してくれストレンジャー」

 

「はい…とりあえず、分かりました…」

 

 

頑なに呼び方を変えないディーラーに苦笑いしながらも、藤丸立香は初めて召喚したサーヴァントに、頼もしく思いながらペシペシと肩を叩く。

 

 

「これからよろしく、ディーラー!」

 

「 」

 

「へ?」

 

 

すると次の瞬間、ディーラーは声にならない声を上げて崩れ落ちた。堪らず静かになる一同。恐る恐るとマシュがディーラーに触って確かめ、血の気の引いた顔で一言。

 

 

「死んでます…」

 

「『「!?」』」

 

 

 

耐久値が低すぎて前途多難な人理修復は、ここから始まった。…いや、始まらないのかもしれない?




※武器商人は弾丸一発で死にます。ナイフが掠っても死にます。死んだふりかもしれませんが死にます。何故か卵は喰らっても死にません。サーヴァント化したせいでそれが顕著になっています。

ステータス:筋力D 耐久E- 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具EX

声はディジェネレーションのレオンの日本語版のガラガラ声なイメージ。

実際、限定仕様武器が現実にあったら本気でパワーバランスが崩れると思うんだ。限定仕様マインスロアーはチート、以上。

人気が出たら続き書きます。もう死んでるのにどういうことかって?それはお楽しみと言う事で…よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。

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