戦火と人魂は夜闇に映ゆる   作:Red October

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ヒュ~ドロドロドロ…

Red Octoberだ…。

第5話の次回予告を、見ーたーなー…。

あの予告を見た者は、この6話を読み終えるまで、生かしてブラウザバックさせない…



…なんて、冗談。
あ、夜中に読むのがいいかもしれませんよ?(笑)

それでは、ゆっくりしていってね!


第6話 遭遇!緑の幽霊!

用心しながらエリア6に進入した途端、エリア8につながる滝のほうからナルガクルガが突っ込んできた。

先行していたマリウスが、とっさに持っていた木材を叩き付ける。が、木材が折れただけで、ナルガクルガは止まらない。

そのまま全速で私達に突進してきて、ぶつか……らなかった。

 

「え?」

 

戸惑うジークの声。

ナルガクルガは私達をよそに、翼を広げて滑空。そのままエリア7のほうへ姿を消した。

 

「チッ、追うぞ!」

「それどころじゃない!あれを見て!」

 

マリウスの声に、ケートの声がかぶさった。それだけでもわかる、いつも冷静な彼女はいつになく焦っている。

ケートの手は、エリア8につながる滝のほうを指していた。そちらに目をやって、驚愕に息を飲む。

 

滝を背景に、どうみてもありえない物が出現していた。夜の闇より黒い、真っ黒な球体。直径は目測で3メートルくらい。それが、地上1メートル程の所に、音もなく浮いているのだ。

 

「何なのこれ!?」

 

私の口から思わず声が漏れる。

 

突然現れた黒い球体は、10秒ほどの間そこに浮いていたが、ふいに、しぼむようにして消失した。

そして。

 

球体のあった辺りには、更に奇怪なものが現れた。

 

「モンスター…なの!?」

 

ケートの声が震えている。

モンスター…だと思いたいが、いくらなんでもソイツは生物としておかしすぎた。

 

まず、そいつの身長は、目測でざっと5、6メートル。下手すればイャンクックより小さい。

その容姿を一言でまとめると、「ボロボロのチュニックをと、ボロボロの帽子を身に付けた、人間のようなナニカ」というところだろう。

 

ホロロネコヘルムに似た、ボロボロの緑色の帽子(私の目にはそのように見えた)の下には、緑色に光る、目らしきものが2つ。

 

顔の皮膚(と言っていいのか分からないが)は白く、生気は微塵も感じられない。

 

顔?の下の、人でいう胴体にあたる部分には、縁を黒く塗り、生地は白のチュニック(っぽいもの、もちろんボロボロ)がある(目で見た限りでは、そう見える)。チュニック?の前面には、裾のほうを茶色に、首に近いほうを緑色に塗った、かろうじて木だと分かる模様が描いてある。

 

両肩(人間だとこの部位にあたる)には、ジエン・モーランの牙を、5回りくらい短く細くした、緑色の鋭い角が天に向かって生えている。良く見ると角は明滅していた。

 

…そして、何より…

 

「あ、足がない!?」

 

ジークの驚愕の声。そいつには足(と言っていいのかry)がなく、また翼もないのに、地上30センチくらいの所に浮かんでいた。そして、両肩の角と頭部?の回りには、青白い火の玉が無数に漂っている。

 

直感する。

間違いない。コイツが…!

 

「出たぁっ!幽霊!」

 

ケートとジークの声が重なった。

 

「なっ!?やはりコイツがそうなのか!?」

 

ジークに尋ねると、答えが返ってきた。

 

「じいさんの言ってた通りッス…かの霊、夜空に月の光が満ちる時、草木も眠る刻に現れん。かの霊は自然の体現者なり」

 

そういえばあの子もそんなこと言ってたな。

 

「ここ数十年くらいは見てないって皆言ってたのに、なんでよりによって今出るんスか!?」

「んなモンはどうでもいい!ナルガを追うぞ!」

 

叫んでエリア7の方へ走りだすマリウス。だが…

 

「何!?」

 

エリア7へ続く通路に、大木が突然生えてきて、通路を封鎖してしまったのだ。

 

「あっ、エリア5の方も!」

 

ケートの声。いつの間にか、エリア5への通路も大木が塞いでいた。これで手詰まりとなったわけだ。

 

横目でちらりと幽霊を見る。

幽霊は確実にこちらを見ていた。そして、生気のないはずのその目には、殺気のようなものが宿っている。

 

「やるしか、ないの…?」

 

幽霊恐怖症が出たか、ケートの声が震える。そして。

 

「うぉりゃぁぁぁっ!」

 

マリウスが正面から幽霊に突っ込んでいった。

 

「あっ、あのバカ!」

 

 

Side Change: 幽霊

久々ニ渓流ニ来タト思ッタラ、人間ガイタカ。はんたートカイウ連中ダナ。夜ナンダシ、寝テリャイイノニ。

 

「うぉりゃぁぁぁっ!」

 

…ン?コッチニ向カッテ来ルアノ男、アイツダケ他ノ3人ト雰囲気ガ違ウ。ソシテ我ハアノ男ノソレニ似タ雰囲気ヲ知ッテイル。

アイツ、「テンセイシャ」ダナ。

我ラノ前ニ現レル「テンセイシャ」ハ、全テ敵ダ。全力ヲ以テ、滅殺スル…。

 

 

Side Change: マリウス

ちっ、余計なヤツだ。だが、俺にかかれば敵じゃねえ。なんせ俺の転生特典はエライことになってるからな!

1つめ、俺がこの世界に持ち込んだ知識の再現。

2つめ、ワザに対する元ネタの融合。

この2つがあったから、さっきナルガに投げたグングニルが自動的に追尾して命中したって訳だ。

3つめ、最強の身体能力。蹴り1発でドスファンゴを昇天させられるんだぜ!

4つめ、最強のメンタル。たとえ相手がオストガロアでも、怖くも何ともねえ!

そして最後に、回復チート。どんな傷でも5分もありゃ完全回復だッ!

つまり纏めると、俺は最強だ、誰にも負けねぇ!幽霊だろうが何だろうが相手にならん!

 

背負ったエピタフイディオンを抜き、片手で持つ。これも、最強の身体能力のおかげでできることだ。

 

「うぉりゃぁぁぁっ!」

 

そして一気に距離を詰める。幽霊の目はこちらを見たままだ、何の行動もしない。

 

「うりゃぁっ!」

 

エピタフイディオンで思い切り斬り付けた、がしかし。

 

「何ッ!?」

 

たしかに剣は届いたのに、手応えが全くない。もう一度斬り付ける。

バカな!刃が体をすり抜けた、だと!?しかも龍属性のエフェクトも出ない。つまり、ノーダメ!?

 

「クソ、ならこれだ!」

 

5メートルくらい後ろに飛んで、距離を離す。からの!

 

「過去を刻む時計!」

 

十文字型レーザーを出そうとする、しかし幽霊の方が早かった。一瞬で右手?を上げる。その手に持ってるものは…

 

ズダダダダダダダ!

 

マシンガン!?しかも二連装だと!?…ぐ、ぁ、体が痺れて動かん。麻痺毒か。だがそんなもの!

無理やり体を起こし、右手に八卦炉を握りしめる。

 

「マスタースパーク!」

 

Side Change: ベティ

「何よあれ…」

ケートの声は、その場全員の総意を代弁していた。声もなく、1人と1匹(?)の激闘を見つめる。

私の頭は、次々と展開する事態に、思考が追いつかなくなりつつあった。

 

エピタフイディオンの攻撃が通らない!?私のリュウノツガイも通らないのか?いやそれとも、龍属性の攻撃を無効化する?

何だあれは!ボウガンの速射やしゃがみ撃ちより早く…しかし何を撃ってるんだ?

あ、マリウスが倒れた。麻痺か。あのボウガンは麻痺弾を撃てるらしいな。

マリウスが起き上がって…

ッ!?何だこのヤバい気配は!?

 

「マスタースパーク!」

 

マリウスが叫んだ瞬間、幽霊の前に緑の光の玉が出現した。そして。

マリウスが撃った黄色の光の束と、幽霊の緑の玉から発射された緑色の光の束とが、正面衝突した。一瞬の拮抗。だが…

 

「ぎゃあぁぁぁ!」

 

男の悲鳴。緑の光が勝った。緑の光の束に、マリウスが撃ち抜かれる。

光は視界を覆い尽くし、私たちは何も見えなくなった。

…しばしの後に視界が回復して、私達は見た。

 

宙に悠然と浮かぶ幽霊を。そして、その近くに転がる、ズタズタになっているモノを。

そいつは最早ピクリとも動かない。流れる川の水には、赤いインクのようなものが混じっていた。

 

「や、殺られた…」

「どうするんスかこれ!?」

 

ケートがへなへなと腰を落とし、ジークがおろおろする。

私は素早く周囲を見回す。相変わらずエリア5と7へは大木が封鎖していて行けない。だがエリア2や8ならば?

 

「強行突破だ!」

「えー!?」

「やれるんスか?」

「分からん、だがここに留まっても多分死ぬぞ?なら可能性に賭けるしかない!」

 

実際、やれるかどうかも分からない。だがそれでも、やるしかないのだ。

 

「ああもう、分かったわよ!」

「行けるッス!」

 

2人の声を受け、走りだす。

 

「皆、行くぞ!」




ゆっくりできましたでしょうか?

ふぅ…幽霊をなるべく想像しやすくするための描写に本当に骨が折れる…。
ああぁ、5話の次回予告の例えでいうなら、IS-2の122㎜砲とか、ティーガーの88㎜砲とか贅沢言わないから、せめてシャーマンの75㎜砲の威力程度の文章力が欲しいな…



次回予告です。


エリアから出られなくなるという、まさかの事態に直面した主人公パーティ。希望があるのは、幽霊のいる方角のみ。果たして、パーティの決断と行動の結果は…

次回「初めての対霊戦」 乞うご期待!


本格的な、ベティ達と幽霊とのファーストコンタクト(という名の戦闘?)となります。

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