このハーメルンで作品を見ていると、皆様新話をぽんぽん上げていっているように見える…見習わねば。
それでは、第2次対霊戦、続きをごゆっくりどうぞ!
追伸:夜中に読むといいかもしれませんよ!(笑)
わざわざタグに「夜戦」って付けたんですし…
世の中には、こんな言葉がある。
「草木も眠る丑三つ時」
具体的には、夜中の2時くらいを指す言葉である。
動物のすべてが眠りにつき、もはや動く物はなく、物音もほとんどしない。まるで、草木ですら眠ってしまったかと思えるほど、静かな時間。
この世界ーー人間と大自然の象徴たるモンスターとが共存する世界ーーにおいてもなお、それは同じである。
そのはずだった。
…人間が「渓流」と呼ぶフィールド。そのうち、便宜的に「エリア5」と呼称される場所の状況は、草木も眠る…には程遠かったのだ。戦闘が起きているのだから、無理もないが。
争う者は、二つに分かれている。
かたや、この世に生きる人間と、人語を解し話すネコっぽい生物。
かたや、この世ならざる者としか見えない者。足がなく、翼を備えるわけでもないのに、宙に浮き、生気の感じられぬ瞳を光らせる者。
ズドォォォォォン!
地響きと共に、根元から倒れこんできたユクモの木が、私のすぐそばの地面にぶつかる。地面は大きくへこみ、砂埃で視界が曇る。その中で私は、木が倒れた衝撃で舞い上がった木の葉が、鋭い刃に変化して飛んでくるのをかろうじて捉えた。
「くそっ!」
悪態をつきながら、刃を迎え討とうとする。が、ボウガンの火薬音がしたかと思うと、私の目の前で、葉の刃が次々に撃ち落とされた。ジークが散弾を撃って、援護してくれたのだ。
「ジーク、助かる!」
叫ぶ私の横で、倒れた木がひとりでに立ち上がり、何事もなかったかのように根を張って立つ。その姿は、まさにハリ○タの暴れ柳そのもの。そして、飛んできた刃ならぬ葉は、○ジカルリーフというところだろう。
(全くもう…少しは常識にとらわれてくれよ!)
毒づいても栓ない話なのだが、私はどうしてもそう思わずにはいられなかった。
現在の渓流エリア5は、もはやカオスという以外適当な言葉が見つからないような状況になっていた。
木は、根元から倒れこみ、その幹や枝は強力な打撃武器と化して私達を叩きのめそうとする。
草葉は、鋭い刃に変化して、肌を刺そうと飛びかかってくる。
花は、すさまじい芳香を放ち、私達の戦意を挫こうとする。
キノコは、噴火でもしたかのように傘から胞子を煙のように飛ばし、私達の視界を遮った挙げ句に状態異常を引き起こす。
切り株ですら、根を伸ばして足をすくおうとする。
常識が通用しない状態。これをカオスと言わずして、何と呼ぶのか。
先ほど倒れてきた木、その根が蛇のように動き、私の足に絡み付こうとする。しかし、そこに間一髪でボウガンの通常弾が撃ち込まれた。根はあわてて引っ込む。
その向こうでは、ケートとトレスが、幽霊…ユリス相手に格闘していた。
「うニャ!」
トレスが手にした斬ネコ剣ニャーレーでユリスを切りつける。
「えい!」
ケートは、乗りを狙って棒高跳びの要領で跳躍。トレスに気を取られているユリスに一太刀浴びせた。ユリスは、痛くもかゆくもなかったようだが。
ユリスの肩の部分から緑色の、やや太めのツルが伸び、ムチのようにケートを打ちすえようとする。
「させないニャ!」
しかし、トレスのブーメランで弾かれた。
そして、トレスはもう1つブーメランを投げる。それが見事に幽霊の頭に命中した。これで完全にユリスの注意を引いたらしい。ユリスは生気の感じられない瞳でトレスを見据える。
(今だ!)
チャンスとみた私は、一気に駆け出す。幽霊の背中をざっくり切り裂いてやろうとしたのだ。
幽霊のやや右前方からケートが走り込む。後ろからは、私が迫る。この連撃を、避けられるか?幽霊よ。
だが…それは完全に慢心でしかなかった。
幽霊まであと5メートルと迫った時、いきなり足元から竹やぶが出現したのだ。
「うわぁぁぁぁ!」
竹に下から突き上げられ、はるか上空まで吹き飛ばされる。一瞬だが、月が少し近くなった。
そして次の瞬間には、重力に従って、ただ自由落下するのみとなる。
「げほっ!」
3秒程の落下の後、地面に叩きつけられた。飛びそうになる意識。それを気力で無理やり引き戻し、回復薬を求めてポーチを探る。横目で幽霊をちらりと見た…その瞬間、戦慄した。
幽霊は、さっきまでとは打って変わった印象となっていた。
白を基調とする、ボロボロのチュニック(ぽいもの)には、血管を思わせる赤い線がびっしりと現れ、胸元は怪しい緑の光を放っている。
生気がないにも関わらず、その瞳には鬼気迫る物ーー殺意と形容してもいいかもしれないーーが宿り、私たちをはっきり睨んでいるのがわかる。
…間違いない。この幽霊、完全にキレたな。
そう思いつつ、急いで回復薬グレートを呷り、ついでに携帯食料も流し込む。
そして、再び武器を取り直した。
「そうこなくちゃな!」
私の喉から、声がほとばしる。
幽霊がキレているのはわかるが、裏返すと、それはそこまでのダメージを私たちが与えた、ということを意味する。幽霊に傷らしい傷を与えることができて、私も高揚していたのだ。
「さあ、お楽しみといこうじゃないか!」
叫びざま、双剣リュウノツガイを頭の上で交差する。私の中でスタミナが急速に消費され始め、それに反比例して闘志は滾っていく。
双剣使いの代名詞、「鬼人化」である。
「うおぉぉぉぉぉお!」
叫び声…およそ女子らしくないが…をあげながら、縦横無尽に双剣を振るう。幽霊のチュニックに、幾筋も焦げた傷が走り、複雑な模様へ変化していく。
その時、
「えい!」
ケートが乗り状態を狙って跳躍し、乗ることはできなかったものの、幽霊の肩口に傷を付けた。瞬間、幽霊が横倒しになり、地面に落ちてもがく。
そのチャンスを見逃す私ではなかった。
「おおおぉぉぉぉ!」
私の心の中で、あるイメージが出来上がっていく。獲物を狩ろうとする、狂暴な狼のイメージ。その獣に心を飲み込まれそうになる寸前で制御し、飢えた狼が、絶対に獲物を仕留めようとしているかのような攻撃を浴びせながら、同時に人としての冷静な心を保つ。
私の得意技。
狩技「獣宿し(餓狼)」。
「おおおおおぉぁぁぁぁぁぁ!」
かつて、ここまで高揚した狩りがあっただろうか、いやなかった。こいつは、この幽霊は、間違いなく強い。下手するとあの竜…噂に聞いた、古龍化したリオレイア、スフィ……なんて名だったか忘れたが…それとも比肩しうる力がある。簡単に勝てる相手じゃない。でも、勝ちたい。
その思いを乗せ、私の剣は振り回された。途中で、バキリ、という妙な音がしたが、聞こえてもいなかった。
「ふぅ~…」
狩技も効果時間を過ぎ、効かなくなる。鬼人化を解除して、幽霊を見た。そこで気づく。
幽霊の肩から、天に向かって生えていた緑色の細長い、鋭いツノ、それが中程から折れて、先端がなくなっていたのだ。
(もしかして、部位破壊した!?)
私がそう思った時、
「ベティ!」
ケートが呼びかけてきた。
「すごいじゃない、部位破壊できてる!」
「ああ。だが、これ壊して何か意味あったのか?」
今のところ、何も変わったことはない。…と思いきや、あった。
私に向かって、倒れてきた木…私の頭をかち割ろうとしたようだが、倒れた後は倒れたまま動かなくなり、2度と起き上がることはなかった。さっきまで、普通に起き上がっていたのに。
「ケート!どうやら、どこかの部位を破壊したら、それに対応する能力が、制限されるようだぞ!とにかく、どこかを集中攻撃して破壊してみよう」
「わかったわ!トレス!」
「ニャ!」
それぞれの得物をかかえ、走り出す3人。怒り収まらぬまま、その攻撃を受け止めんとする幽霊・ユリス。
…戦いは、新たな局面を迎える。
やはり、幽霊の戦闘描写が難しい…!
もうちょっと表現力が欲しいところです…
次回予告。
幽霊が部位破壊可能、ということを知った3人。新たなる部位?壊そうとする、幽霊はそれに激しく抵抗する…
次回 「第2次対霊戦(天)」
表現が難しいのと、忙しさのため、更新が遅れるかもですが、今後とも拙作をよろしくお願いいたします!
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