戦火と人魂は夜闇に映ゆる   作:Red October

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更新遅くなりましたぁっ!誠に申し訳ありません!

いやぁ、2作品同時投稿は難しい…実践されている方々はどうやって時間を確保しているのやら。


それでは、ごゆっくりどうぞ!


第14話 第2次対霊戦(起)

「…いないな」

 

渓流、エリア6。

エリア中央を、浅いが幅がそこそこ広い川が通っているエリアである。南側には崖の上から落ちてくる滝があり、その影にエリア8へ続く洞窟がある。北にも滝があり、エリア7へ落ちていっている。

 

かつて幽霊と出くわし、戦った、その場所に、私達は来ていた。

エリア1、エリア2を通過してここへ来たのだが、怪しいものはなく、幽霊の姿もない。

 

「どうするの?」

「うーん…いないなら、仕方ない。他をあたるか」

「じゃあ、エリア7を抜けてエリア4、そこからエリア5へ入るのはどうッスか?」

「よぅし、それでいくか」

「トレスは大丈夫?」

「異存ないニャ。あと、この辺では特段ヘンなものは感じられないニャ」

 

…というわけで、エリア4に到着。エリア7は、探索したものの何も見つからなかった。数分かけてくまなく調べたが、エリア4にも怪しいものはなし。

 

「ったく、あの幽霊どこいったんスかね…?」

「まあ、満月だからって出るって確証があるわけでもないし…」

 

ジークとケートの会話を聞きながら、エリア5のほうへ向かおうとした、その時だった!

 

(我ガ時ヲ犯スハ、何者ゾ…!)

 

頭の中に、声が響いたのだ!

感情も何も感じられない、非常に冷たい声。聞いていてゾッとするレベルの冷たさだった。

 

「「「「え(ニャ)!?」」」」

 

3人と1匹が、同じタイミングで声をあげ、顔を見合わせる。

 

「お、おい、今の…」

「何なの、今の声!?」

「拙者にも聞こえたニャ」

「まさか…幽霊!?」

 

そんな会話を交わした時。

 

(我ガ聖ナル時ヲ犯スハ、誰デアロウト許サヌ…!)

 

再び、冷たい声。次の瞬間、エリア中央の廃屋が、大音響と共に木っ端微塵に吹っ飛んだ。

そして、そこに現れた異形の姿。ボロボロの服と帽子を着た人間のようにもみえる風貌。間違いない!あの時の幽霊だ!

その直後、各エリアへ繋がる獣道が、突如生えた大木に封鎖される。

 

「逸るなよ、ジーク!」

 

一声かけておいてから、

 

「ケート、行くぞ!」

「ええ!トレス、続いて」

「仰せの通りにニャ」

 

幽霊に向け、突撃を開始する。ここに、対幽霊戦の火蓋は切って落とされた。

 

 

キィィィィィー!

私達の接近を見た幽霊は、一声、鳴き声を上げた。のだが、その鳴き声が、猫に仕留められたネズミの断末魔のようで、聞くだけでも背筋が冷える。

そして鳴き声と同時に、球状の衝撃波を放った。

空気が震え、草がなびく。みるみる私たちに近づいてくる。

 

(やられる…!)

 

次の瞬間、目を瞑った私の耳元を、突風が吹き抜けていった。

 

(…あれ?)

 

てっきり吹っ飛ばされるものと思っていただけに、拍子抜けである。私は目を開けて、…目を疑った。

 

幽霊はその場にそのまま浮かんでいる。しかしその周囲が異なっていた。

空はこの世の終わりを連想させるがごとき、赤と黒の入り交じった色に染まっており、地上の草木はみな黒く枯死してしまっている。そして地面も、こびりついたまま固まった血のような黒の混じった、焼け焦げたような焦げ茶色に変色していた。

そして、私の横に、黒く焦げた、でこぼこしたものが3つ。2つは長く、1つは小さい。そして、3つの周囲には、装備品だったと思わしきものの残骸が散らばっていた。これの意味するところは、つまり…

 

(嘘だろ…あの一撃で3人とも…!)

「う…うわぁぁぁぁ!」

 

耐えきれなくなり、私は絶叫した。

 

…その途端、景色が不意に崩れ落ち、黒が緑に変わっていく。

 

「…あれ?」

 

目をぱちぱちさせる。空は、黒いビロードにクリスタルの欠片をぶちまけたような、満天の星空。そこに、いつもより大きく見える満月がある。

そこらじゅうを見れば、目に入るのはむせかえるような緑。

…まさか!

 

(さっき見たのは幻覚か!)

 

急いで隣の3人を見る。全員そこに立ってはいたが、足が止まっており、目は妙に虚ろだ。

 

(…もしかして)

 

「おい!」

 

手近にいるジークに呼びかけながら、装備の腰のところを蹴飛ばす。すると、ジークの目に光がさした。

 

「え?あれ?先輩、これは?急にユクモ村に戻ったと思ったら、いきなり地面から森が生えて、村が住民もろとも森に飲み込まれていくところを見てたんスよ…」

「話は後だ、ジーク。さっきの衝撃波は覚えてるか?あれは多分、当たると幻覚を見せるものなんだ」

「え?じゃあ、精神攻撃ってことッスか!?」

「そう。ケートとトレスを起こしといてくれ、私はこいつの借りを返す」

 

言い捨てて、再び走り出す。あと3メートル…リーチに捉えた!

 

「くらえ!」

 

駆け込みざま、引き抜いた双剣リュウノツガイを一閃。見事に幽霊の下腹部あたりに2本の焼けた筋が刻まれた。

 

「ベティ!」

「ニャ!」

 

ケートとトレスがこちらに走ってくる。目を覚ましたのだな。

だが、私がちょっと目を離した隙に、幽霊は10メートルくらい後退し、距離をとっていた。

幽霊の胸殻が、月明かりの照り返しか、かすかに光る。

突然、地面が揺れ始めた。地震なら、震度3か4というところで、あまり強い揺れではない。

 

(な、何だ?)

 

何が来るかわからず、私の足が止まる。

次の瞬間、苔むした石畳を突き破り、太く茶色い、ぐねぐね曲がったものが現れた。

 

(!?)

 

かわそうとした時には既に遅く、足を絡め取られた私は、派手に転倒することとなった。

ケートはとっさに操虫棍で跳躍したためギリギリセーフ、トレスも間一髪で回避に成功。ジークは…ガンナーゆえの目標との距離の遠さのため、無事である。

生えてきたものは、何だったのか。よくよく見ると、なんと木の根だった。

これが生き物のように動いて、足を掬ったのだ。

 

「この…えい!」

 

リュウノツガイを振るって根を切断し、足を引き抜く。直後に、何か不穏な気配を感じて、本能で頭を下げる。

次の瞬間、さっきまで私の頭があった空間を切り裂いて、サボテンのトゲが飛んでいった。もちろん、幽霊の撃ったものである。

さらに、周辺の雑草が切り飛ばされたように舞い上がり、ついで鋭い刃となって私達に襲いかかる。

これがほんとのハード○ラントやリーフブ○ードである。

 

(ったく、少しは手加減してくれよ!)

 

心の中で毒づきながら、草の刃をあるいは刀で防ぎ、あるいは防具で受け止める。

全てを受け流し、私は幽霊の緑の瞳を、真っ正面から睨み付けた。

 

「さて、楽しませてもらおうじゃないか…」

 

口元に獣めいた、獰猛な笑みが浮かぶのを自覚し、私は幽霊へと斬りかかった。




長く待たせた割に短くてすみません…
幽霊の攻撃パターンとか考えるが、思った以上に難航しまして…

次回予告です。


ついに幽霊との間に戦端が開かれた。
ベティたちと幽霊、双方が新たな技をもって、激突する…

次回「第2次対霊戦(承)」


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