輝「コイツでトドメだ!」
輝のバルキリーはバトロイド形態で照準を合わせガンポッドとミサイル、頭部レーザー機銃の一斉射で最後に残った指揮官機のグラージを撃破する。
マックス「敵影無し、今のヤツが最後みたいですね」
柿崎「しっかし連中どうしたんだ?途中から動きがてんでバラバラだったぜ?」
マックス「それは確かに気になりましたね。途中まではちゃんと部隊として統率がとれていたのに最後の方は戦術も陣形もメチャクチャでした」
輝「考えるのは後だ。まずは・・・」
輝はバルキリーをZガンダムの側に移動させ接触通信を試みる。
輝「そちらの所属不明機、聞こえるな?まずは所属と状況を確認したいんだが・・・」
ルー「反地球連邦組織エゥーゴのルー・ルカよ。この機体はZガンダム」
輝「反地球連邦組織?」
マックス「地球連邦ってなんです?」
柿崎「俺に聞くなよ」
そこに戦闘の終了を確認したキャッツアイが到着する。
未沙「一条少尉、機体とパイロットの照会は済んだ?」
輝「それが・・・」
未沙「反地球連邦組織・・・Zガンダム・・・」
暫く沈黙していた未沙だったがやがて一枚の画像データをルーの元に送る。
未沙「ルカ少尉、この機体を知ってるかしら?」
それは以前輝たちが交戦した未確認機だった。
輝「それは・・・俺たちが戦った新型?」
ルー「新型?ジオンのザクの事?新型どころか旧式も旧式よ」
柿崎「だって俺たちこんな一つ目のデストロイド見た事ないぜ?」
ルー「デスト・・・ロイド?何言ってるのか知らないけどそのザクは7年前の一年戦争時代に使われてた機体よ」
マックス「一年・・・戦争?」
ルー「・・・まさか、一年戦争を知らないの?冗談でしょ?一体あんた達何者なの?」
未沙「やっぱり・・・」
輝「中尉?」
未沙「にわかには信じがたいけど・・・。でもそう考えれば辻褄が・・・」
柿崎「何の事ですかねぇ?」
マックス「もしかしたら僕達は異世界に飛ばされてきてしまったとか?」
輝「異世界だって?」
柿崎「ハッハッハッ!ないない!そんなSFみたいな話あるわけないだろ?やっぱお前変わってるよ!ハッハッハッ!」
マックス「そうかな?僕って変なのかな?」
そこに突然キャッツアイから連絡が入る。
未沙「一条少尉!至急マクロスに帰還するわよ!」
輝「へ?なんで・・・」
未沙「マクロスが敵の奇襲を受けてるの!しかもプロメテウスが損傷してバルキリー隊が殆ど出られないらしいわ!」
輝「なんだって⁉︎」
未沙「ルカ少尉、今お話した通りです。お伺いしたい事は沢山ありますが、今は一刻も早く私達の母艦に帰還する必要があります。今後の事を話し合う為にも我々に同行をお願いしたいのですが・・・」
ルー「・・・このまま漂流する訳にもいかないし・・・、こちらの身の安全は保障してもらえますか?」
未沙「それは約束します」
柿崎「でも人型の機体がバルキリーやキャッツアイについて来られるか?」
ルー「御心配無用よ」
そう言うと同時にZガンダムはアンテナが閉じて頭が胴体に引っ込んだかと思うとそのまま機体各部が変形して飛行機のような形に変わる。
ルー「巡航形態のウェイブライダー、これなら遅れる事はないわ」
マックス「すごいなぁ、ロボットがこんな変形をするなんて・・・」
ルー「アンタ達も似たようなモンでしょ」
輝「よし、至急マクロスに帰還する!」
マクロス艦内 市街地
アルト「うおぉぉぉっ!」
乗り手を失ったバルキリーに乗り込んだアルトはバルキリーを白兵戦に適したバトロイドに変形させガンポッドを発砲する。しかし撃ち出された弾丸は全てかわされてしまいそのまま後方に飛び距離を取ったリガードはミサイルを発射する。
アルト「くっ!」
バルキリーを動かしミサイルを回避しようとするが反応が遅れ避けられず1発がガンポッドを持っていた右腕に直撃し前腕部が吹き飛ぶ。更に被弾の衝撃でバランスを崩し、立て直す事も出来ずフラフラと転倒する。
ミンメイ「ちょっと!乗った事あるんじゃないの?初めて乗った時の輝より酷いぞ!」
離れた場所の物陰から様子を見ていたミンメイが仰向けに倒れたバルキリーに向かってヤジを飛ばす。
アルト「んな事言ったって・・・」
アルトは機体を起こすが立ち上がった機体は油の切れたかのようにぎこちない動きをする。
アルト「くそ!なんだよこのバルキリーは!こんなんじゃ美星学園にあったお飾りのバルキリーのがまだマシだ!」
元々この機体よりも28世代先の後継機を愛用していたアルトにとってはこの時代のしかも基本操作系統が確立される前の初期型のバルキリーの操縦は想像以上に苦戦を強いられるものであった。アルトの時代にもコレと同型のバルキリーは存在するがそれらはアップデートを繰り返すことで性能は上昇してはいるがそれでも軍用機としては型落ちで退役、民間に払い下げされている有様である。
そして今アルトが乗る機体はソレよりも性能が低いのである。性能の差と操作感のズレなどが合わさり元の時代ではエース級だったアルトの足枷となっている。
アルト「この時代のバルキリーがまさかこんなに扱いにくかったとはな・・・。だが!」
ふらつきながらも一通り動作の確認をしたアルト。フラフラのバルキリーを見てリガードは再びミサイルを放つ。
アルト「反応が鈍いなら・・・俺がもっと速く動かせばいいだけだ!」
先程とは打って変わり機敏な動きでミサイルを回避しながら距離を詰めるアルト機。
アルト「うおぉぉぉっ!」
背部と脚部のバーニアを最大出力で吹かしジャンプしたアルト機はリガードの脚を残った左手で掴む。
アルト「これで・・・どうだぁぁぁっ!」
脚を掴んだまま自由落下の勢いに任せてリガードを地面に叩きつける。
ドォォォォンッ‼︎
叩きつけられたリガードは球体型のボディがボコボコにへこみ動かなくなった。
アルト「ハァ・・・ハァ・・・」
叩きつけた拍子に千切れたリガードの脚を持ったままピクリとも動かなくなるアルト機、どうやら機体の反応速度を超えたムチャな回避の影響で機体がオーバーヒートしたらしい。
ミンメイ「アルト!」
そこにミンメイが駆け寄ってくる。
ミンメイ「凄いわアルト!いきなり動きが変わるんだもの、ビックリしちゃった!」
アルト「こっちに来るな!まだ他にも侵入してきた敵がいるかも・・・」
ギギ・・・
他の敵がいないか周辺を確認しようとしたアルトの目にさっき倒したリガードのボディが微かに動くのが目に入る。
アルト「まさか・・・逃げろ!ミンメイ!」
ミンメイ「え?」
ギギィッ!
リガードのボディが殻を破るかのように割れて中から巨人が姿を現す。リガードを操縦していたゼントラーディ兵がまだ生きており中から脱出してきたのだ。
アルト「くそ!動け!動けよ!」
オーバーヒートで完全にガタがきていたアルトのバルキリーはピクリとも動かず直立不動のままであった。
ゼントラーディ兵「グオォォォッ!」
咆哮と共にバルキリーを殴り飛ばすゼントラーディ兵。アルト機はなすすべなく吹き飛ばされビルに叩きつけられる。
アルト「ぐあっ⁉︎」
ミンメイ「あ・・・あ・・・」
目の前に迫るゼントラーディ兵、ミンメイの姿を見て一瞬驚くような素振りを見せたもののすぐに殺意を込めた眼差しで睨みつけミンメイに迫る。ミンメイもゼントラーディ兵の殺意に当てられてしまったのかその場から動けなくなってしまう。
アルト「ミンメイ!」
アルトの脳裏に最悪の展開がよぎる。
アルト(もしここでリン・ミンメイが死んだらこの戦争は・・・!)
アルトは最悪の事態だけは避けるべくバルキリーから降りようとするが先程殴られたショックでハッチが歪んでしまい外に出られない。
アルト「クソッ!」
力ずくでハッチをこじ開け外に出ようとするアルト。しかしゼントラーディ兵はすでにミンメイの目前に迫っていた。
アルト「間に合わない・・・のか?俺のせいで・・・?」
ゼントラーディ兵「グオォォォッ!」
ゼントラーディ兵は叫び声を上げながらミンメイ目掛けて拳を振り下ろす。
アルト「やめろぉぉぉっ‼︎」
ガガガガガガッ!
拳がミンメイに振り下ろされる直前、無数の弾丸がゼントラーディ兵に撃ち込まれる。ハチの巣となったゼントラーディ兵は吹き飛ばされると二度と動く事は無かった。
フォッカー「大丈夫か?ミンメイちゃん?」
ミンメイとアルトが声のする方を向くとドクロのマークを付けたバルキリーがガンポッドを構え立っていた。ガンポッドの銃口からは煙が上がっている。
ミンメイ「その声・・・輝の先輩さんね?」
フォッカー「艦内に侵入した敵はこれで最後だ。もう心配しなくていいぞ。それと・・・」
フォッカーはアルトの乗っているバルキリーの方を向く。
フォッカー「どうしたヘンリー!随分派手に壊したじゃないか、らしくないぞ?」
アルト「ヘンリー・・・あのパイロットの事か・・・」
アルトは自分達を庇って死んだパイロットの事を思い出す。
アルト(あの人も同じ名前とはな・・・全く)
フォッカー「どうした?返事をしろ!ヘンリー少尉!」
アルト「俺はヘンリー少尉じゃありません。そのパイロットは・・・俺達を庇って・・・」
フォッカー「何?・・・そうか・・・。戦闘機乗りのクセに機体だけ残して逝っちまいやがって・・・。君、名前は?」
アルト「アルト、早乙女アルトです」
フォッカー「アルト君、最後を看取った者として聞かせてくれ。奴は・・・ヘンリーは最後まで軍人としての責務を果たしたのだな?」
アルト「はい、民間人である俺達を守る為に・・・最後まで誇り持って戦いました」
フォッカー「そうか・・・」
フォッカーはハッチを開けて外に出ると破損した機体に向かい静かに敬礼をする。
アルト「・・・・・」
アルトもまた無言のまま壊れた機体に向かって敬礼をするのだった。
同じ頃、外の戦闘は・・・
クローディア「艦長、内部に侵入した敵機は全て撃破した模様です」
グローバル「うむ、マクロス周辺の敵機は?」
キム「こちらもほぼ全ての機動兵器の撃破を確認、しかしバルキリー隊の戦力が半減した影響でバルキリー隊、デストロイド隊の損害が大きいです」
グローバル「敵母艦の動きは?」
キャシー「はい、・・・え?なんで?」
クローディア「どうしたの?」
キャシー「敵の母艦が急にこちらに向けて回頭を始めてるんです!」
グローバル「何?・・・もしや特攻か?」
ヴァネッサ「特攻⁉︎」
グローバル「キム君、本艦に激突するまでの時間は?」
キム「は、はい!えぇと・・・約4分です!」
グローバル「・・・やむを得ん。マクロスはトランスフォーメーションを使用する。トランスフォーメーション完了後、ダイダロスアタックで敵艦を迎撃する。クローディア君、トランスフォーメーション発令、変形完了後艦内のデストロイド隊を至急ダイダロス艦首に集めてくれたまえ」
クローディア「イエッサー、全機関につぐ!これより本艦はトランスフォーメーションを開始する!繰り返す!これより本艦はトランスフォーメーションを開始する!」
輝「ッ!マクロスが見えた!」
柿崎「ああっ⁉︎プ、プロメテウスが!」
プロメテウスは側面部が抉られており内部が剥き出しになっており発艦用カタパルトも片方無くなっていた。
未沙「あれじゃあバルキリー隊が殆ど発進出来ない・・・」
ルー「あ、あれが貴方達の母艦?」
マックス「ちょっと大きいですけどね」
ルー「大きいなんてもんじゃないわよ・・・。これじゃ戦艦というよりも要塞じゃない・・・」
一方キャッツアイの未沙はマクロスと通信を行う。
未沙「・・・了解、一条少尉!敵艦がマクロスに特攻を仕掛けようとしてるわ!」
輝「特攻だって⁉︎」
未沙「マクロスはトランスフォーメーション後ダイダロスアタックで迎撃するわ!マクロスがトランスフォーメーション完了するまでなんとか時間を稼いで!」
柿崎「時間を稼ぐっていったって・・・」
輝「こっちももう残弾数が心許ないぞ・・・」
未沙「マクロスが沈むかどうかの瀬戸際なのよ!なんとかしなさい!」
輝「くそ!そっちの言い分ばっかり!勝手なんだから!」
悪態をつきながらも輝達は機体を加速させ敵艦に攻撃を仕掛けている友軍に合流、そのまま戦線に加わる。
クローディア「トランスフォーメーション開始します!」
マクロスの両舷に接続されたダイダロスとプロメテウスが轟音と共にゆっくりと左右に開いていく。
ルー「な、何をする気なの?」
柿崎「トランスフォーメーション、マクロスが変形するんだよ」
ルー「変形⁉︎」
両舷の艦が真横に展開した後、マクロス後部のメインエンジンが真下に向かって、それに連動して艦首の主砲ブロックも真上に向けて可動する。僅か数分の内にそれまで水平だったマクロスはエンジンも主砲も垂直になりその様子はマクロスが直立したとも言い表わせるものだった。
ヴァネッサ「トランスフォーメーション完了しました!」
グローバル「敵艦との衝突までの時間は⁉︎」
シャミー「あと1分です!」
クローディア「ガンサイト1よりバルキリー 隊各機へ!本艦はこれより敵艦にダイダロスアタックを仕掛ける!バルキリー隊各機は周辺より退避せよ!繰り返す!バルキリー隊各機は周辺より退避せよ!」
ルー「今度は何よ〜!」
輝「マクロスが敵艦をぶん殴るんだよ!オタクも早く離れないと!」
予想外の展開の連続で軽いパニックに陥っているルーのZガンダムを引っ張りながら輝機は敵艦から離れる。
キム「艦長!デストロイド隊ダイダロス艦首に配置完了しました!」
グローバル「ピンポイントバリアをダイダロス艦首に収束!」
クローディア「ピンポイントバリア、ダイダロス艦首に収束します!」
直立したマクロスの右舷に接続されているダイダロスの艦首に向かって緑色の光が多数集まっていく。
グローバル「ダイダロスアタック!」
マクロスは突っ込んでくる敵艦に向かいダイダロスで文字通り殴りつける。艦首に張られたバリアのおかげでダイダロスの艦首は敵艦の装甲を突き破り内部に到達する。それと同時にダイダロスの艦首ハッチが開くと艦首部分に待機していたデストロイド部隊が全機一斉にミサイルを発射、敵艦を内部から破壊する。
内部から破壊された敵艦はミサイルの爆発でボコボコと膨れ上がった後、破裂するように爆散した。
クローディア「敵艦の撃沈を確認」
キム「ま、間に合った・・・」
シャミー「もうホントにダメかと思った・・・」
そこにキャッツアイから通信が入る。
グローバル「おお、早瀬君か。救難信号の発信元はどうだったかね?」
未沙「残念ながら発信元の船はゼントラーディ軍によって既に・・・」
グローバル「そうか・・・」
未沙「しかし生存者を一名救助する事が出来ました。ただ・・・」
グローバル「どうかしたのかね?」
未沙「・・・艦長の予測が当たったかも知れません。その・・・悪い方に」
クローディア「悪い方?」
グローバル「・・・そうか」
グローバルはこちらに接近してくるキャッツアイとバーミリオン小隊、そして彼らについてくるZガンダムの姿を確認する。
グローバル「・・・前途多難だな、全く・・・」
そう小さく呟くとグローバルはため息をついた。
補足
アルト搭乗機のカラーリングは一応ドクロマークの無い劇場版一条機のイメージです。
次回からは地球圏のストーリーに入れるかと思います。