謎の人型兵器の攻撃を振り切りなんとかマクロスに帰還を果たしたバーミリオン小隊。
輝は機体を空母プロメテウスの滑走路に着艦させる。すぐに整備員が懸架していた柿崎機のコクピットブロックを外したり機体の損傷具合などのチェックを始める。
輝もコクピットから降り、柿崎をコクピットから引っ張り出す。
輝「大丈夫か柿崎?」
柿崎「は、はい・・・助かりました隊長」
そこに機体を機体を置いたマックスも来る。
マックス「隊長、柿崎君、ご無事でなによりです」
輝「助かったよマックス。お前が足止めしてくれたおかげで柿崎も助けられた」
柿崎「ホントだよ。レーダーも通信も効かなくてオマケにミサイルまで使えないのによく戦えたよ」
マックス「ミサイルの狙いがつけられないなら、相手も避けにくいかな?って思ったんです。後は当てやすい位置に相手を誘導すれば・・・」
輝「俺だって一機撃墜するのがやっとだったのに」
柿崎「・・・ホント、天才だよなぁお前・・・」
マックス「そうかな?僕って天才なのかな?」
自分のやってる事が凄いという自覚が無い為か惚けた顔をするマックス。格納庫内に入ると金髪の男性が輝達の所へ近寄ってくる。
フォッカー「輝!この野郎!連絡もよこさないで何処をノンビリ飛んでやがった!」
男性はそう言いながら輝の肩に手を回す。言葉とは裏腹に顔は笑っている。
輝「イテテ!先輩勘弁してくださいよ。こちとら訳わかんない敵の新兵器に襲われてそれどころじゃなかったんですから」
輝に先輩と呼ばれたこの男性の名はロイ・フォッカー。バルキリー航空部隊、スカル大隊を預かる隊長であり輝達の所属する統合軍の誇るエースパイロットだ。輝とは軍に入る前からの知り合いで輝にとってはよき兄貴分といった所である。
フォッカー「敵の新兵器?そりゃ本当か?輝」
輝「機体のガンカメラを見れば写ってると思いますよ」
輝の言葉を聞いてフォッカーの表情が変わる。
フォッカー「ふむ・・・実はお前達が出撃してる間急に連絡が取れなくなったんでマクロスのブリッジが少し慌しくなったんだ」
マックス「やはり、そちらもそうでしたか・・・」
柿崎「レーダーもミサイルも無力化されちゃったんですよ!」
フォッカー「ふむ・・・。輝、帰ってきて早々で悪いが俺と一緒にブリッジに上がってくれ。そこの二人も一緒だ」
輝「え・・・今からですか?」
今からブリッジに行くと聞いて輝の様子が変わる。
フォッカー「今からだ。場合によっちゃ今後の戦略に関わってくるからな。何か気になる事でもあるのか?」
輝「あ、いや・・・別に・・・」
口ではそう言いつつも目が泳いだりソワソワしており何か隠しているのは明らかなのだが。フォッカーはその様子を見てピンと来て・・・
フォッカー「ハッハァーン?さては・・・ミンメイちゃんか?」
フォッカーにそう言われて輝はドキッとする。
フォッカー「図星だな?女の子待たせてるんじゃあしょうがねえ!行ってこい輝!俺たちは先に上がってるから終わってからとっとと来い!以上!」
そう言うとフォッカーは柿崎とマックスを連れて行ってしまった。
輝「せ、先輩・・・」
マクロスタウン
マクロス艦内に作られた街であり戦闘に巻き込まれ避難した南アタリア島の民間人達が暮らす居住区でもある。
元来南アタリア島に住んでいた住人達はその殆どが外から移住してきた人々であり、その中にはASS-1の改修作業を行う統合軍人や物見遊山で改修中のマクロスを見に来る観光客などをターゲットにした商売人も多くそれらの人々が中心となってマクロス周辺に街を作った。元々そういった経緯がある為か精神的に逞しく、フォールド事故に巻き込まれ冥王星に飛ばされた後も一緒にフォールドで飛ばされた街の残骸を回収してもう一度艦内に街を作って自力で生活を再開し始めた。
通常航行での長距離移動を余儀なくされたマクロスにとって戦艦の中という閉鎖空間で長期間過ごさねばならない状況にあってこの街の存在は避難した民間人だけでなくマクロスのクルーにとってもメンタル面で大きな助けとなっている。
パイロットスーツから急いで軍服に着替えた輝はマクロスタウンの中を走って移動していた。走っている間にも腕にはめた時計を気にしている。
やがて目的の場所に到着し、辺りをキョロキョロ見回す。
輝「やっぱり遅かった・・・か」
輝が諦めて帰ろうとすると突然後ろから何者かに両目を手で塞がれる。
輝「うわ!・・・まさか・・・ミンメイ?」
輝は手をそっとどかしながらゆっくり振り向く。
ミンメイ「女の子を待たせるなんて男としてどうかと思うぞ!一条 輝?」
そこには少し青みを帯びた黒髪をなびかせて少女が笑いながら立っていた。
輝「あ、ああ・・・ゴメン。今日、定時パトロールの当番だったから・・・」
ミンメイ「ふぅん、そうなんだ?軍人さんは大変だものね?」
約束より任務優先?とばかりにわざと軍人の部分を強調し意地悪く言うミンメイ。
輝「し、仕方ないだろ、任務なんだから」
ミンメイ「ハイハイ、軍人さんは大変だぁ〜♪」
ミンメイはその場でクルクルと踊った後ピッと敬礼のポーズをする。
ミンメイ「でもちゃんと約束守って来てくれたし許してあげる。あ、そうだハイ、コレ!」
ミンメイは一枚の手紙を渡す。
輝「コレって・・・?」
ミンメイ「私のバースデーパーティの招待状。叔父さんたら張り切っちゃって店を貸し切りにして盛大にやるっていってるのよ?」
ミンメイの叔父は南アタリア島のときから中華料理店『娘々』(にゃんにゃん)を営んでおりミンメイはマクロスの進宙式を見に叔父の家に遊びに来ていた事から今回の騒動に巻き込まれる事になった。
輝「もしかして、約束ってコレの為?」
ミンメイ「あ!もうこんな時間!バイトに遅れちゃう!」
携帯電話の時計を見たミンメイは急いで帰ろうとする。
輝「あ!ちょっと・・・」
ミンメイ「じゃあね輝!パーティ絶対来てね!」
呆然と立ち尽くす輝を置き去りにしてミンメイは足早に去っていった・・・。
マクロス ブリッジ
フォッカーは柿崎とマックスと共にブリッジに上がり実際に戦った二人の話を聞きながら艦長やブリッジクルーに定時連絡が途絶えた際の状況説明をしていた。
グローバル「・・・つまり戦闘が始まった途端、通信もレーダーも効かなくなったと?」
フォッカー「そのようです」
クローディア「新しいジャミングシステムか何かでしょうか?」
グローバル「うむ・・・機体のガンカメラの映像は出せるかね?」
ヴァネッサ「はい。バーミリオン1、一条機の映像です」
未沙「そういえばその一条少尉はどうしたの?」
フォッカー「一条少尉はちょいとヤボ用がありましてね。なぁに終わらせたらすぐに来ますよ」
未沙「ブリッジに報告に上がるより大事な用事ですか?それは是非聞いてみたいですね?本人の口から」
明らかに不機嫌になる未沙。元々軍人の家系の娘である為か性格も生真面目な所があるので仕方ないとも言えるが・・・。
フォッカー(輝、こりゃ覚悟しといた方がいいぞ・・・)
ヴァネッサ「映像、出ます」
ブリッジのモニターに輝が交戦した緑の機体が映し出される。
フォッカー「確かに今までのゼントラーディの兵器とは違う感じだな」
グローバル「君もそう思うかね?フォッカー少佐」
フォッカー「ええ、サイズも今までの戦闘ポッドよりも大型ですし、それに・・・」
クローディア「それに?」
フォッカー「武装が全て実弾だ」
未沙「そういえば・・・確かに」
フォッカー「今までのゼントラーディの奴らの機体は武装にミサイルは積んであってもメインの武器はビーム兵器だった。しかしこの機体達は実弾系のマシンガンやバズーカなどで武装しているのが気になる」
キム「手持ちの武器の方が互換性があるからでは?」
フォッカー「ならば実弾系の武器にする必要はあるまい?」
キム「あ、そっか・・・」
クローディア「艦長、どう思われます?」
グローバル「・・・・・」
グローバルは暫く考え込んでいたが輝とマックスの戦闘記録を見て呟いた。
グローバル「ジャミングか・・・」
未沙「え?」
グローバル「敵が使っていたジャミングだよ。ジャミングの影響下ではレーダーや通信、ミサイルが使えなくなる。
そうなると必然的に戦闘は直接敵機を認識しての戦闘、有視界戦闘が主となる」
フォッカー「なるほど・・・、確かに有視界戦闘なら射角が限定される固定兵装を増やすよりも携帯火器の方が効率はいいか・・・」
グローバル「ビーム兵器を使わない理由まではわからないがな・・・.。いや、機体の外観もゼントラーディのものとは少し異なるように思える。もしかしたら・・・」
モニターに拡大して映された緑の機体を凝視しながらグローバルは呟く。
グローバル「ゼントラーディとも異なる新たな敵かもしれない」