マクロス U.C.   作:真仁

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ブラインド・バトル

輝のバルキリーの前に立ち塞がる緑色の巨兵。その頭部にあるピンク色の1つ目が怪しく光る。

輝「うぅっ!」

輝はその巨体に一瞬怯んでしまうがすぐに落ち着きを取り戻し、操縦桿を傾ける。

輝の白い機体は右に大きく傾き、緑の巨兵を回避する。

敵は右手に携帯したマシンガンを構え、輝のバルキリーを狙って発砲する。しかし、高速で飛行するバルキリーを捉える事は出来ず銃撃を回避した輝は距離を取る。

輝「コイツ!これでも喰らえ!」

輝がミサイルの発射ボタンを押すとバルキリーの主翼下部に懸架されたミサイルが一斉に発射された。しかし・・・

輝「な、なんだ⁉︎どうしたんだ⁉︎」

発射されたミサイルはどれも見当違いの方向に蜘蛛の巣を散らす様に飛んでいってしまい敵機に一発も当たらなかった。

輝「くそ!もう一度!」

輝は再度距離を取り照準を合わせ、ミサイルを発射する。しかしまたもやミサイルは敵機に誘導される事なくメチャクチャな飛び方をして飛んでいく。

輝「ミサイルが使い物にならない⁉︎どうなってんだ⁉︎」

今まで何回かゼントラーディとは戦闘を行なってきたがこのような事態は初めてであった。事態に困惑しながらも輝は離れた場所で戦闘している部下達に通信を送る。

輝「柿崎!マックス!ミサイルが使い物にならない、注意するんだ!」

しかしいくら待っても二人からの返答はない。

輝「柿崎、マックス!聞いてるのか!聞こえたら返事をしろ!」

ザ・・・ザザ・・・

返答を求め、耳をすませる輝だったか聞こえてくるのはノイズ音のみ、二人からの返答はない。

輝「まさか・・・通信まで妨害されているのか⁉︎」

バルキリーの主力兵器であるミサイルが使えず味方機との交信すらも出来ない事態に次第に輝の中の焦りが大きくなっていく。そんな輝を追い詰めるかのように緑色の機体がマシンガンで攻撃する。

輝「くっ!」

輝は機体を回転させながら銃弾を回避、そのまま機首を敵機に向けるように方向転換をする。機体の正面に1つ目の巨兵を捉えた輝はそのまま敵機目掛けて突っ込んでいく。

輝「うおぉぉぉっ!」

突然突っ込んできた敵機に驚きながらも緑の機体はマシンガンを構えて発砲する。輝は操縦桿を細かく動かして機体を操りマシンガンを避けながら減速せずに突っ込む。

戦闘機が減速もせずに突っ込んでくる様子を見た緑色の機体は手に持っていた銃を手放し、代わりに片手持ちの斧のような武器を取り出す。どうやらギリギリまで引きつけたところで白兵戦で仕留めるつもりらしい。

輝のバルキリーが目の前に来たタイミングで緑色の機体は持っていた斧を振り下ろした。

しかしその瞬間、あり得ない事が起きた。戦闘機が後方へバックしたのだ。正確には目の前に来たタイミングでいきなり戦闘機が急減速したかと思うと後ろに下がったのだ。

振り下ろした斧は虚しく空を切り大きな隙が生じる。

バルキリーのコクピット内の輝はターゲットスコープを見つめ、操縦桿についているトリガーをゆっくりと引く。

ガガガガガガッ!

バルキリーの下部に搭載されたガトリング砲が火を吹き、たちまち緑色の機体は穴だらけになってしまう。緑色の機体のパイロットが最期に見たのは戦闘機のエンジンが下を向いて動いており、それがまるで「足」のように伸びている様だった。「足」の生えた戦闘機、その姿はまるで「鳥」のようだと思った所で機体は爆炎に包まれた。

輝「はあ・・・はあ・・・」

何とか敵機を一機撃墜する事に成功した輝。しかしミサイルやレーダー、通信が思うように使えないのではこれ以上まともに戦う事は出来ないだろう。

輝「一度退くしかないか・・・」

幸い、通信は出来なくても二人が何処にいるかは戦闘の光で確認出来た為、輝はその方向へバルキリーを向かわせる。

輝「接触通信くらいは使えれば良いけど・・・」

 

 

 

 

一方その頃、散開して迎撃に当たっていたマックス機も同じ問題に直面していたが・・・

マックス「それならば・・・」

マックスは青いバルキリーを巧みに操り敵の攻撃をかいくぐり接近する。先程、輝が相手をした機体とは異なるタイプのようでこちらは黒と紫のツートンカラー、ずんぐりとした体型に十字形の頭部を持っておりやはり頭部にはピンクの1つ目がある。

大柄の機体は携帯していた武装のバズーカ砲を撃ってくるがミサイルと違いまっすぐにしか飛ばず、尚且つ弾速も遥かに遅いバズーカ砲が当たるはずも無く容易に接近出来た。マックス機もまた敵機の前まで接近しロケットエンジンを逆噴射させて目の前で停止する。すると大柄の機体の胸部から突然激しい閃光が発せらる。

マックス「ッ⁉︎目眩しか!」

眩しさに一瞬顔を背けるマックス。その隙を逃すまいと大柄の機体は背中に背負っていた長い棒状の物を抜いて振り下ろそうとする。その刀身はマックスが昔見たSF映画に登場するビーム剣のように光っている。

マックス「そうはいくか!」

すぐに持ち直したマックスは素早くロケットを吹かしてその場で機体をクルリと一回転させて右に移動させ斬撃を交わす。

大柄の機体は続けて攻撃しようとするがその瞬間、特徴的な十字形の頭部に衝撃が走る。破壊された頭部のカメラが最期に捉えたのは戦闘機の後ろから手が出てきて構えた銃をカメラ目掛けて突っ込む様子だった。

マックス「まず1つ」

ガガガガガッ!

頭部にガトリングガンを突っ込んだままトリガーを引き、機体を内部から破壊するマックス。やがて機体は爆発し、マックス機はその爆発を避ける為に距離を取る。

味方機の爆発を見た近くにいた他の敵機が何機か接近してくるが一瞬その動きを止める。爆炎を灯りにして宇宙空間に浮かび上がったその敵のシルエットがあまりにも「異様」だったからだ。何故ならばその敵機の姿は手と足が生えた戦闘機だったのだから・・・。

マックス「敵機確認、迎撃します」

レーダーが使い物にならない為、マックスは敵機を目視で確認するとそこ目掛けて操縦桿を傾ける。それと同時にコクピット内の「F」と書かれたレバーを下げる。手足の生えた戦闘機は途端に元の戦闘機の形に戻り、敵機の中に向かっていく。

マックス「ミサイルの誘導機能は使い物にならない・・・それなら!」

敵機はマシンガンやバズーカで攻撃を仕掛けるが、マックスの機体にはかすりもせず簡単に接近を許してしまう。

マックスは再び下げるレバーを「F」から「G」に変更する。その瞬間戦闘機は再び手足が生えた状態に変形し、その場を横にスライドするかの様に移動する。それは通常の戦闘機や人型兵器には出来ない機動だ。

マックスはコクピットのターゲットスコープを覗いて狙いを定める。

マックス「誘導が効かなくても、この至近距離なら!」

マックスはミサイルの発射ボタンを押して一斉にミサイルを発射する。ミサイルは輝の機体と同様に散り散りになって飛んでいくが敵が至近距離に密集していることもあって

何発かが命中、敵機は爆散する。辛うじて回避出来た機体もマックス機の構えたガトリングガンに狙われて撃墜されてしまう。

その場にいた敵機は全てマックスにより撃墜されてしまった。

マックス「敵は・・・もういないみたいですね。早く隊長や柿崎君と合流しないと」

そう言うとマックスは機体を再び戦闘機に変形させて、戦闘の灯りを目印にそちらに機体を向かわせた。

 

 

 

 

 

 

柿崎「うわぁぁぁっ⁉︎」

こちらはライトブラウンの柿崎機。元々他の二人と比べると操縦技術においては一歩及ばない所がある彼は、レーダーも通信もミサイルすらまともに機能しない現状においてパニックを起こしていた。その動揺が敵にも伝わったのか徐々に敵が集まってきて柿崎機を包囲する。

得体の知れない機体故に鹵獲しようとしているのか直撃は避けて攻撃を仕掛けてくる。その内の一機がワイヤーを射出して柿崎機の主翼に巻きつける。他の機体も同様にワイヤーを巻きつけ引っ張る。どうやらこのまま基地へ連れていく気らしい。

柿崎「た、助けてー!」

そんな柿崎の願いが通じたのかどうかは定かではないが輝のバルキリーが救援に駆けつけた。

輝「柿崎ぃっ!」

輝機はワイヤーで牽引している機体目掛けてガンポッドを発砲する。ガンポッドは牽引中の一機な命中、このままでは身動きが取れないと判断したのかワイヤーを切り離して戦闘態勢に移る。

輝「くっ!」

そこにマックスのバルキリーも合流、急加速で敵機に肉迫し、ミサイルを発射する戦法で敵機を攻撃する。

輝「マックス!」

マックス「隊長、ここは僕がくいとめます。今のうちに柿崎君を!」

輝「わかった!頼むぞマックス!」

マックス機が囮となり敵を引きつけている間に輝はあちこちから煙を上げて動かない柿崎機の元へ。

輝「柿崎、大丈夫か⁉︎」

柿崎機に接近する輝。どうやら近距離であれば多少のノイズは入るものの通信は可能なようだ。

柿崎「な、なんとか・・・。でも機体はあちこちやられちまって動けません!」

輝「わかった。コクピット部分だけ切り離すぞ!」

輝はバルキリーを手足の生えた状態「ガウォーク」形態に変形させてマニュピレーターで柿崎機を外部から操作し機首部分のみを切り離す。

切り離した機首部分を左腕に取り付ける。かつて輝自身もまだ軍に入る前にゼントラーディとの戦いに巻き込まれて訳もわからずバルキリーに乗って撃墜された際に現在の上官に同じやり方で助けられた事があった。

輝「いいぞ!マックス!この宙域を離脱する!」

マックス「了解!」

輝とマックスはバルキリーを戦闘機形態「ファイター」に変形させて高速飛行て離脱する。

敵の人型兵器も追撃しようとするがスピードがあまりにも違いすぎる事、機体の推進剤の残量もあり、追撃を断念した。そこに白く塗装された大柄の機体が出てきて僚機に通信を送る。

「逃したのか?」

「ハマーン様申し訳ありません。ただの宙間戦闘機と侮っておりました」

「おかげでこちらは地球圏に帰還する前に練度の高いベテランパイロットを多数失った」

ハマーンと呼ばれた白い機体のパイロットは不機嫌そうに返す。

「しかし敵の機体の一部を入手しました。必ずジオン再興のお力になるかと・・・」

ハマーン「ふん・・・どうだろうよ・・・」

ハマーンはコクピットのモニター越しに機首が無くなりボロボロになって破棄された柿崎の機体を見ていた・・・。

 

 

 

 




ミノフスキー粒子の設定に関しては人によっては見解が別れる所ですがミサイル等が全く通じなくても困るので作者の独自解釈で進めていきます。

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