ワーストトリガー   作:ぽていとぅ
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第13話

コンコンコン

「どうぞ〜」

ノックは三回。親しき仲にも礼儀あり、寄進の知れた相手であろうと最低限の持って接する。それは相手に礼儀を強制するためのものじゃない、あくまで互いに不快にならないためのものだ。

「よお努。今日は何の邪魔だ?」
「邪魔前提かよ、まあ邪魔するだけど」

仮に、そう仮に机に脚を置いて踏ん反り返るボサボサ頭がいても、仮にこちらに見向きもしないでコタツでゴロゴロしてる男勝りオペレーターがいても、互いに不快じゃなければ問題ない。元A級影浦隊隊長影浦雅人は粗暴だが根はまっすぐな人間だ、口が結構悪いがこの程度の欠点なら目を瞑れる

「お邪魔しまーす」
「いらっしゃーい、久々にお客さんにゾエさん嬉しい」
「・・・いらっしゃい」

影浦隊銃手(ガンナー)ゾエ先輩(北添尋)狙撃手(スナイパー)絵馬ユズルが友好的に迎えてくれる

「今お茶出すねー、努くん何が食べたい?」
「あ、良いよ良いよ。今日は用事で来たし」
「・・・用事?」

ゾエ先輩がもてなしてくれようとし、ユズルはそれを止めた俺の言葉に反応する。

「うん用事」
「・・・そう」

一度頷くと手元に置いてある本を読み始める。俺への興味薄いなぁ

「用事って誰に?カゲ?光ちゃん?」

コミュニケーション能力に難のあるカゲやあまり喋れないユズルと比べてかなり話しやすいゾエ先輩が話を振ってくる・・・その方が好都合だ

「ゾエ先輩、お願いがあるんだけど」
「ん?何々?珍しく努がお願いしてくれるんだからゾエさん頑張っちゃうよ?」

内容を聞く前から快く承諾してくれるが、頭を下げる。

「お願いします、俺にメテオラの使い方を教えてください」
「ちょちょちょっ!?頭上げて!?」

これは俺が立場が下でゾエ先輩が上。頭を下げなくてもゾエ先輩は優しい人だから教えてくれるだろうがそれではダメだ。ここで頭を下げないのでは俺の中でのケジメがつかない。

〇     〇     〇     〇     〇

「ええと、それじゃあ始めようか」

仮想訓練室で擲弾銃(グレネードガン)型のメテオラを装備してゾエ先輩と向かい合う

「まず、メテオラの特徴って分かるよね?」

これから教えてもらうことの基本を聞かれる

「・・・爆ぜること?」
「そうだね、メテオラを一言で表現するならそれに尽きる。メテオラの良いところも悪いところも言ってしまえば爆発することだ」

メテオラの良いところは着弾時の攻撃範囲の広さだ。他の弾では着弾時の効果が貫通しかないがメテオラだけは爆発することによって追加ダメージがある。これにより、他の弾と違い外してしまっても爆風で態勢を崩せるし、あわよくば撃破もありうる。悪いところはその効果範囲からくる巻き込み事故の多さ。味方がいる近くに撃てば味方が爆ぜるし最悪自分も食らう可能性がある。そうならないために射手(シューター)はメテオラを使う時に効果範囲を調整して撃つのだがそれは既にある弾殻(射程)弾体(威力)推進剤(弾速)の調整の上から更に別の調整を加えなければならないという操作のせいで手間にかかる。リアルタイム調整が難しいバイパーに隠れて分かりづらいがメテオラもかなり扱いにくいトリガーだ。

「メテオラの欠点、補うためにはどんなことが効果的だと思う?」

今まで考えたことのない問題を投げかけられる

「うーん・・・特攻?」
「標準運用が自爆って・・・神風じゃないんだから」

我ながら発想が貧弱すぎるな。

「・・・地雷?」
「味方が踏んだらどうするの」
「南無三」
「駄目じゃん」

真剣に考えてもなかなか良い案が浮かばない。こんな扱いにくいものの欠点を補う方法、それこそ効果範囲に入らず撃つぐらいしか・・・なるほど

「長距離爆撃はそういう意味もあったのか」
「そういうこと」

狙撃以外の長距離射撃として身につけるつもりだったがそういう側面があったとは思わなかった

「擲弾銃型が遠くまで弾を飛ばすのは射程が長い方が良いから、だけじゃない。味方を巻き込まず狙ったところの地形を変える。それがこのトリガーの特徴だよ」
「あ、ストップ」
「ん?どうかした?」

ゾエ先輩の言葉と自分の想定していた答えとの間に齟齬があり説明を止める

「俺、てっきりこのトリガーの運用って長距離から敵を削ってあぶり出すためのものだと思ってたんだけど」

もし俺の運用思想が間違っているなら今すぐトリガー構成を変えるべきかもしれない

「あー、うん。別にその使い方も間違ってはないよ、ただ少しどころじゃなく難しいけど」
「そう、なら良かった。ごめん続けて」

運用思想に間違いはなかったようなので安心する。

「このトリガーの特徴的なところは他にもある。このトリガーは射程が長い、それこそ狙撃手用トリガーと同じぐらい射程がある」

・・・思ったよりも長かった、精々突撃銃型より長い程度の認識だった

「弾速が遅いこと、相手がグラスホッパーでも積んでたら飛んでくるのを目で見てから避けられる」
「・・・遅っ」

あまりの遅さに驚かされる

「そしてこのトリガーが流行らない最後の理由、それは曲線を描く弾道。他の射撃用トリガーが重力に縛られずまっすぐ飛ぶのに対してこのトリガーは狙いがつけにくい。ゾエさんも正確に当てられないからレーダー頼りにそれっぽいところを向けて撃つけど当たることは滅多にないよ。だからさっき言ったあぶり出しみたいなことは狙ってするというより偶然出来る方が多いかな」

先ほど難色を示された理由がよく分かった。確かにこれは難しい

「どう?結構使いにくいけどこれでもやる?ゾエさんやる以上はビシバシ行くよ?」

最終確認とでも言うようにゾエ先輩が聞いてくる。是非もない、これは俺が決めたことだ

「もちろん、それでも俺には目的があるから」