東方染色記   作:折れない黒鉛筆

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 どうも、調子に乗って5話目をノリだけで書き上げたうp主の折れない黒鉛筆です。
 実はこの前書きって第四話の前書きとかを書いたあとに続けて書いてるんですよね。つまり書くことが(ry
 ということで、第五話です。ややシリアス気味かもしれません。ていうか自然に書いてたらそうなりました。許して。
 さて、もう書くことがないので第五話をどうぞ。

前回のあらすじ
妖怪に出会った
(天候のお陰で)妖怪に勝利した
慧音と別れの挨拶をして魔理沙と一緒に空へ飛び立った

修正履歴
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+幾つかストーリーがズレない程度に文章を追加
2018/05/04 段落頭に全角スペースを追加+一部表現を修正・追加


第五話 出会いがあれば別れもある

 今俺と魔理沙は博麗神社に向けて幻想郷の上空を飛んでいる。おそらく一緒に飛ぶのはこれが最後になるだろう。

(どうしよう…何か凄い気まずい…)

 俺がそう感じている理由としては、前回の時は乗せてもらって飛んでいるときにどうでもいい雑談のようなものをしていたのだが、今回は互いに全く話さない。更に言うと前までと比べて飛行速度が少し遅いような気がする。乗せてもらってる身だから何も言えないし言うつもりは全くないが。

「…あのさ」

 なんの前触れもなく魔理沙が喋りだす。

「康介は…この幻想郷での短い生活、楽しかったか?」

「ああ、楽しかったに決まってる。辛いこともあったけど、それも含めていい経験になった。」

「…そうか。なら良かったぜ。」

 …ほんとに色んな事があった。それもこれもあのオンボロ神社にお参りしようなんて思わなければ起こらなかったことだ。そう思うと本当に思い出に残る旅だったな。まあ元の世界に帰るときにここでの記憶は全て消されてしまうので思い出に残る旅、というのも少しおかしい話だが。

「ほら、博麗神社が見えてきたぜ。」

 そうだ、魔理沙にお礼言っておかないと。

「…魔理沙、短い間だったけどありがとな。色々世話してくれて。」

「ああ、こちらこそだぜ。」

 そんな短い会話が俺と魔理沙の幻想郷の夕暮れ迫る空での最後の会話だった。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…お疲れ様、魔理沙に康介。里の妖怪の話、聞いたわよ。」

 博麗神社に着き、霊夢の第一声がこれだった。

「…いや、私は何もしてないぜ。たまたま雨が降ってきたから勝ったようなもんだ。」

 へえ。俺が気絶したあと雨が降ったのか。道理で俺の所持品が少し濡れてるわけだ。まあスマホは防水なので大したことないが。

「あらそう。ならいいわ。」

「…で、俺が帰れる準備は出来てるのか?」

「ええ、でもその前に…いるんでしょ紫。出てきなさい。」

 霊夢が突然何もない方向に向かって言葉を放つ。すると何もない筈の空間がパックリと開き、中から金髪の女性が出てきた。口には扇子をあてている。…さすが幻想郷、何でもありなんだな。

「あら、よく分かったわね。」

「…私の勘はよく当たるのよ。」

「えっと…霊夢、この人誰?」

「ああ、こいつの名前は八雲紫。簡単に言うと幻想郷を作ったスキマ妖怪よ。」

「紫よ。よろしく、康介くん。」

「お、おう。よろしく。」

 ところで何でいきなり幻想郷を作った妖怪さんが出てきたのだろうか。…まさか俺、何かしちゃいけないことしちゃったやつか?

「いえ、幻想郷から外の世界に帰るあなたに挨拶だけしておこうと思ってね。」

(またサクッと心読まれた…)

「そういうことか。」

 内心驚きながらも何とか返す。すると紫さんが俺の方をジロジロと見始めた。

「な…何なんだ?紫さん。俺の顔に何かついてるのか?」

「いえ、何もついてないわ。でも…」

 そこで紫さんが話すのを止めてしまい、

「…最後まで言えよ。気味悪いなあ。」

と思わず考えていたことが口に出る。しかし、紫さんは特に気にしていない様子だ。

「私が言いたいことはいずれ分かるわ。ふふふ…」

 なんかこの人胡散臭いな…まあ信じないようにしておくのが吉だろう。

「話は終わり?」

 俺と紫さんが話してたところに霊夢が割って入る。

「ええ…じゃあこれにて失礼。また会えたら会いましょうね。康介くん。」

 そう言うと紫はいつの間にやら消えてしまっていた。

(…あれ?なんであの人俺の名前知ってたんだ?俺名乗ってないのに。…まあいいか。)

「じゃあ…簡単に元の世界に帰るための説明をするわね。あなたがすることはただ一つ。あの神社の鳥居をくぐるだけよ。」

 そう言うと霊夢は博麗神社の鳥居を指差した。なるほど、俺は入ってきたときの逆再生をするってわけか。

「記憶については元の世界に帰った瞬間消えるわ。だから安心して鳥居をくぐりなさい。」

「なるほど、了解した。」

 これでやっと元の世界に帰ることができる。最初は早く帰ってスプラしたいと思っていたけど幻想郷も良い所だったな。また来れるなら来たいなあ。…到底来れる場所ではなさそうだけれど。

「さてと…霊夢も魔理沙も本当にありがとな。お陰で無事に帰れそうだ。」

「ちゃんと元の世界でもしっかりやりなさいよ?」

「ああ、お前はいつまでも私の【友達】だからな!」

「ああ、お前らも元気でやれよ?じゃあ…そろそろ行くか。」

 一息ついて、二人に背を向け、鳥居へと歩き出す。正直引っ掛かることはまだあるが、こうして無事に帰れるんだからこの際気にしないでおこう。

 ゆっくりと鳥居へ向かって足を進める。その途中でこの幻想郷での思い出が蘇り、涙がこぼれそうになる。我慢我慢。

 俺は境内から出る一歩手前で立ち止まり、くるりと霊夢たちの方を向く。そして、最後の挨拶として某有名漫画のあのセリフのオマージュを言うことに決め、息を吸い込む。

「短い間でしたが!くそお世話になりました!この御恩は!たとえ記憶が消されても!一生忘れません!」

 言いながら大きく頭を下げる。言ってる途中で涙が少し出たが気にしない。それにこの距離ならあの二人にもバレない筈だし。最後に大きく霊夢と魔理沙に手を振って、俺は境内の外に出た。

 ここに来たときと同様に眩しい光が辺りを包み込む。俺はこの前のときと同様に目を瞑る。

 こうすけ は めのまえ が まっしろに なった…

 これでようやく元の世界に帰ることができる。

 

 

 

 

…はずだった。

 

 

 

 

 俺が再び目を開くとそこには親の顔より見た…訳ではないがこの二日間数回見たとんでもなく長い階段が。まさかと思いスマホの電波表示を取り出して確認。……圏外だ。後ろを振り返って鳥居の文字を見上げるとそこには「博麗神社」と書かれている。嘘だろ…?そして境内に視線を戻すとそこには……遠くからでも分かる程驚いた様子の霊夢と魔理沙がいた。

「…あれ?俺これで帰れるんじゃなかったのか…?」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

「おれは 鳥居をくぐって元の世界に戻るはずが

なぜか 鳥居をくぐっても 元の世界に 戻れなかった…」

な… 何を言っているのか(ry

 とかいう寒すぎる冗談は置いといて。

 今俺と魔理沙は緊急会議として博麗神社にある霊夢の居住空間に上がらせてもらっているところだ。もちろん、霊夢もいる。

「なんで康介は元の世界に戻れなかったんだぜ!?」

「おかしい…準備段階で失敗はしていないのに…」

「失敗してないならどうして…」

 そう言い、俺は頭をフル回転させて考える。しばらく考えていると、霊夢が口を開いた。

「失敗していないのに元の世界に帰れない…だとするとあの可能性しかないけれど…ありえるの?そんなこと…」

「その可能性ってやつは何だ?取り敢えず聞きたいんだけど。」

 俺がそう誘うと、霊夢は「分かったわ」と言い、こう続けた。

「その可能性…それは、"康介が能力に目覚めた"可能性よ。」

「…は?」

 思わず素が出る。能力?なんだそれ美味しいのか?全く意味がわからん。それでも魔理沙は理解したような表情を見せている。

「あああ!それなら辻褄が合うんだぜ!」

「霊夢に魔理沙、一体どういうことだ?急展開すぎてついていけないんだが…」

「えっとね…私みたいな特別な能力を持った人間っていうのは外の世界では普通ありえない存在じゃない?」

 全く理解できていないので霊夢と魔理沙に説明を求めると、霊夢が説明を始めた。

「まあ…そうだな。」

「もし外の世界にその能力を持った人間がいたら世界はどうなると思うぜ?」

 霊夢の説明に魔理沙が続ける。ふと霊夢の方を見るとまるで私の説明を邪魔するな、とでも言うような目で魔理沙を睨みつけていた。まあそんなことは俺にはどうでも良いのだが。

「そりゃ、大変なことに…ってああああああ!そういう事か!」

 どうやら俺の中でも上手く納得したらしく、俺にしては珍しく大声を上げてしまう。

「ようやく理解したようね。そう、大変なことにならないようにもし外の世界が能力者を拒むとしたら…?」

 畳み掛けるように霊夢が問いかける。その問いに対する俺の答えは一つ。

「外の世界にその能力者は行けなくなる…?」

「そう、だから無いとは思うけどこの可能性しかないの。」

 霊夢がそう言って説明を終える。つまり俺は何らかの理由でここに来て、何故か能力を取得した、って訳か。ややこしいなあ。ここまで考えたところで、俺と魔理沙のお腹が鳴った。

「はあ…仕方ないわ、二人共、今日はここに泊まっていきなさい。もう夜も遅いし。」

「おう、ありがとな、霊夢。…そうだ、夕食は俺が作るよ。」

「あら、あんた料理出来るのね。」

「そうなんだぜ!康介の料理は美味しいんだぜ!」

 魔理沙の言葉を最後に俺は台所へと向かう。

「取り敢えず台所借りるぞー、霊夢。」

「別に構わないわ。」

 その日はオムライスを作った。何故かって?なんとなくだけど食べたくなったんだよ。どうやら二人共オムライスは見たことがなかったらしいが、美味しいと褒めてもらった。

 その後は一人づつ風呂に入らせてもらい、布団を敷いて(一応俺は別室にしてもらった)寝ることにした。

(今日は本当に色々ありすぎた…俺の能力とかもあるけど、取り敢えず疲れたから寝ますかね…)

 俺は布団の中でそう考えながら静かに寝息を立てた。




次回予告
まさかの二日目の朝を幻想郷で迎えることになった康介。もう帰らなくてもいいかな、と半ば諦めている様子。そんな中ついに康介の能力が判明する…!
次回 「康介の能力」(仮)

 いかがでしたでしょうか。まあ大体の人は察してたと思いますが案の定康介くん、帰れなくなりました。彼はフラグ建築士なんでガンガンフラグ建てていたのですぐ分かったと思います。
 さて、第六話ですが、康介くんの能力が判明します!ちなみに伏線らしきものは張ってあります。是非探してみてください。
 感想等お待ちしております。以上、うp主の折れない黒鉛筆でした。

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