東方染色記   作:折れない黒鉛筆

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どうも、テンション上がって小説書いてたら4000文字を超えかけたうp主の折れない黒鉛筆です。
そういえば、先日(第三話を投稿してから)UAが100を超えてました。ありがとうございます。これからも励んでいきますのでどうかよろしくお願いします。
ということで第四話です。前回戦闘描写すると言ったな、あれは嘘だ。実際に書いてみたら戦闘要素が薄くなったような気がします。ごめんね。
それでは、戦闘要素の薄いただ長いだけの第四話をどうぞ。

前回のあらすじ
魔理沙の提案で人間の里に行くことになった
上白沢慧音と出会い、お団子を奢ってもらった
悲鳴が聞こえて魔理沙に半ば無理矢理そこへ連れて行かれた

修正履歴
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+ストーリーに関係ない程度に文を追加
2018/05/04 段落頭に全角スペースを追加+一部表現等を修正・追加


第四話 人間の里でのハプニング(後編)

(えっと…どうしてこうなった…)

 今俺はついさっき悲鳴の聞こえた方にある少し開けた空き地にいる。もちろん魔理沙と慧音さんも一緒だ。

そして目の前にいるのは…恐らく妖怪。その妖怪はかなり大きく、ぱっと見2mくらいはありそうな体つきをしている。全身は錆びた鉄のような色をしていて、特に口が大きく、何でも丸呑みしてしまいそうな口だ。……まさかとは思うけど、俺丸呑みされないよな?

 ちなみに襲われかけていたのは子供で、先程俺達が駆けつけた瞬間隙をついて逃げていた。これで安心…じゃないよなどうすんだよこの妖怪。

「私は里の自警団の人を連れてくる!二人共、しばらく時間稼ぎしておいてくれ!」

 そう慧音さんが言い、俺達がここまで走ってきた方角へと走り去っていった。

「なあ魔理沙…こいつ、どうにかなるか?」

「大丈夫だぜ。このミニ八卦炉があればな!」

 魔理沙がそう言い、自慢げそうに懐から今朝俺に構えていた謎の箱?を取り出し、自身の前に構える。どうやら妖怪に攻撃を仕掛けるようだ。

「じゃあ行くぜ…そうだ康介、私から離れておけ。加減はしてあるが怪我するかもしれないぞ。」

「お、おう。」

 魔理沙の指示に従い俺は魔理沙から少し離れる。これから一体何が起こるんだ…?

「恋符!「マスタースパーク」!」

 魔理沙がそう叫ぶと、ミニ八卦炉と呼ばれた箱に光が収束し、光線となって妖怪に向かって発射された。

 俺はそれを見てただ絶句するしかなかった。何故なら魔理沙の出したマスタースパークはまるで、アニメや漫画の中に出てくるかのような光線そのものだったからだ。効果音とか聞こえてきそう。というか今朝もしこれが放たれてたら俺確実に死んでたな…

(いくら妖怪と言えどもこれは消し炭になったか…?)

 そう思っていると、マスタースパークが止んだ。その後の光景を見て、俺と魔理沙は驚愕する。だって無理もないだろう。

 どう見ても威力が高そうなマスタースパークを喰らってもあの妖怪は、傷一つ負っていなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「はあ…はあ…こいつ硬いな…」

 ついさっきから魔理沙は色々な魔法(と言っても俺から見た感じ大体同じ感じの魔法に見えるが)を打ち続けている。俺はそれを見ることしか出来ない。だが、妖怪は未だに傷一つ負っていない。更に言うと、妖怪は全く攻撃を仕掛けてこない。こちらが疲れ切ったところに攻撃を仕掛けてくるつもりなのだろうか。すると魔理沙が、

「すまん…魔法打ち過ぎた…」

と言い、地面にへなへなと座り込んだ。ヤバい。さっき考えた俺の仮説が正しいなら…敵の攻撃が来る!

 結論から言うと、悲しくも俺の仮説は当たってしまった。妖怪が魔理沙の方に手を伸ばし始める。このままだと魔理沙が食べられてしまうかもしれない。そんな最悪の考えが頭をよぎり、気づけば俺は魔理沙の方に駆け出していた。やることはただ一つ。間に合うか…?いや、間に合わせる。

 俺は全力疾走で魔理沙のもとに走り、その勢いで…魔理沙を突き飛ばす。幸いにも魔理沙は吹っ飛んでくれた。すまんな魔理沙。そして妖怪は…魔理沙の代わりにそこにいた俺を掴んだ。

「!!康介!」

「がッ…」

 魔理沙のそんな叫びが聞こえたが、今はそれどころじゃない。

 妖怪の腕力はかなり強く、今はその痛みに耐えるのに精一杯だ。もしかしたら骨折れるかもしれない。ていうかもう既にどこかがミシミシ言ってるような。幸いにもカバンと俺の両腕は握られていない。つまり両手ならまだ動かせる。

 今まで感じたことのない壮絶な痛みに耐えながらも、何とかカバンの口を開ける。ただ、朝に確認したとおり俺のカバンの中にはろくな物が入っていない。開けたところでどうにかなる訳でもない。

「クソがっ…!」

 悪態をつきつつも里の自警団の人が来るまでの時間稼ぎでもしようと思い、水が入ったペットボトルのキャップを開け、右手に持とうとする。

だが、ここで手が滑ってしまいペットボトルの中から水がほぼ全部こぼれ出てしまった。妖怪の手に溢れたペットボトルの水がかかる。妖怪の目に水をかけて時間稼ぎの目潰しを出来るかもしれない、と思ったのだが。

 しかし、妖怪の手に水がかかった瞬間、なぜか少しだけ妖怪が苦しんだような表情を見せた。慌てて周りを見ると、先程水がかかったところが少しだけ溶けていた。

(こいつ…もしかして水が弱点か…?)

「魔理沙!こいつは水が弱点だかr…ぐッ。」

 魔理沙に弱点を教えようとしていると、さらに締め付けが強くなった。あまりの痛さに途中で言葉が出なくなる。そして段々と妖怪の大きな口が近づいてきた。どうやら今の水で妖怪を怒らせてしまったようだ。

 段々と目の前が白みを帯びてくる。俺には既に走馬灯が見えていた。

(…よく考えれば楽しいとは言えない人生だったな…それにこんな若さで死ぬなんて…本当に最期までついてなかったな俺…)

 そして俺が意識を失いかける直前、俺の中に一つの願望が生まれた。

(ああ、もし大雨が降ったらこいつを倒せたかもしれないのにな…)

 そこで俺の意識はプツリと途絶えた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 私は、ただひたすら後悔していた。目の前で私の【友達】が喰われてしまう。それなのに私は何もできない。あまりの悔しさに、涙がこぼれる。

「くそッ…なんで打ち過ぎてしまったんだ…」

 康介は私に弱点を教えてくれた。だが、それを聞いたところで最早私には何かできる力は残っていない。

「ごめんな康介…ごめん…守りきれなかった…」

 私はただ妖怪に掴まれて今にも喰われそうな康介を見ながら謝ることしか出来なかった。康介は操り糸が切れた操り人形のように動いていない。おそらく意識を失ったのだろう。

 妖怪が康介を口のそばに近づける。もう駄目だ。康介は助からない。そう思い、私は目を瞑る。

 …すると私の手の甲に、何か冷たいものが当たる感覚がした。それと同時に妖怪が苦しみの声を上げる。

 思わず私は目を開け、上を見上げる。先程まで雲ひとつない晴れていた空に雨雲が広がっていた。そして、大雨が降り始める。

 雨粒が当たる度、妖怪が少しずつ苦しみながら溶けていく。どうやら康介が言っていたことは本当だったようだ。そして、とうとう妖怪は溶け切ってしまった。溶けた妖怪の跡らしき液体も、雨によってどこかに流されていった。

 私はすぐに康介のもとに駆け寄る。康介はまだ意識を失っているようだ。だが息はしているので取り敢えず生きていることは確認できた。

「良かったぜ…それにしても何故雨雲が出て来たんだ?」

 気づけば雨は止み、雨雲が無くなっている。本当に不思議だ。すると遠くから慧音の声が聞こえてきた。

「おーい!里の自警団の人を連れてきたぞ…って妖怪は?」

「それなら謎の集中豪雨で溶けてしまったぜ…そんなことより康介が…!」

「ん?康介がどうかしたのか?」

「康介が妖怪に…そして今も意識を失ってて…」

 話す度に涙が出そうになる。だって私のせいで康介はこうなってしまったのだから。

「そうか…取り敢えず寺子屋に運ぶぞ。応急処置をしないといけないかもしれない。」

 慧音がそう言うと、すぐに里の自警団の人が康介を抱え、寺子屋の方へ向かった。

「頼むから目を覚ましてくれよ…康介…」

 そう願いながら私と慧音は寺子屋へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…知らない天井だ。」

 某アニメの台詞を口にしつつ、まずは状況整理。……ここどこだ?えっと確か、俺は妖怪に掴まれて食べられそうになった…けど死んではいないようだ。多分。足付いてる感触するし。取り敢えず体を起こす。全身がかなり痛かったが何とか起き上がれた。どうやら骨は折れていないようだ。

「お、起きたか。おはよう、康介。」

「おはよう。慧音さん。ところでここは…?」

「ここは寺子屋だ。安心しろ、日曜日だから誰も来ない。」

 あ、寺子屋かここ。じゃあ死んでないな俺。確信した。

 ふと時間が気になって時計を見る。午後4時半。まだ約束の時間ではなくて一安心。するといきなり扉が勢い良く開いた。ビビるからやめて。そこには魔理沙がいた。

「あっ魔理沙。おはy」

「ごめんな康介。私が不甲斐ないばかりに…」

 挨拶しようとすると、魔理沙がいきなり頭を下げる。どうしよう。いきなり謝られた。こういうの初めてだから対処法がわからん。取り敢えず…

「気にしてないぞ。それよりこっちもごめんな。いきなり突き飛ばして。それより体調はどうだ?」

「体調は少し戻ったけど…でも…」

「あのさ、結果的に俺も無事だったんだからいいだろ。俺も魔理沙も無事だった。それで十分だ。」

「…それもそうだな。」

 なんとか納得してくれた。これで次の話ができる。

「そうだ、魔理沙。少しお願いが…」

「なんだ?康介。」

「そろそろ博麗神社に行かないと行けないからさ、連れて行ってくれないか?」

「ああ、それくらいならお安い御用だぜ。」

 よし。これで博麗神社に遅れることはなさそうだ。そう思っていると慧音が俺に声をかける。

「そうか…じゃあ私とはお別れだな。」

「ああ、短い間だったけど楽しかったよ。ありがと、慧音さん。」

「こちらこそありがとう。君は私のことを忘れてしまうが私は君のことを忘れないからな。」

「おーい康介、まだかー?置いてくぜー?」

 そんな事を話していると、気付けば魔理沙が外に出て準備を済ませている。早く行かないと。

「おっと、じゃ…ここらで失礼しますかね。」

「ああ、あっちの世界でも頑張れよ。」

「…はい!」

 そう言って俺はカバンを掴み外に出て魔理沙の箒に飛び乗った。まだ体が痛かったので正直こんな事してる余裕なんかないのだが。

「じゃあ行くぞ。」

 魔理沙がそう言い、二人を乗せた箒は博麗神社の方へと飛んでいった。

 

「康介…不思議なやつだったな。」

 飛んでいく箒を眺めつつ、独り言のように慧音はそう言った。




次回予告
 別れを惜しむ康介たち。そこに現れる幻想郷を作った妖怪。
 彼女が不敵に笑っている理由とは…!?
次回! 「出会いがあれば別れもある」

 いかがでしたでしょうか。終わり方がかなり微妙でしたがこれ以上書くと4000字を超えてしまうのでやめときました。
 ちなみに次回予告のタイトルに(仮)とついていませんが、この後書きを書いている地点で既に本文は完成しています。つまり内容が決まっているので(仮)とつけなくていい、ということですね。
 次回ですが、とうとう幻想郷との別れの時間がやってきます。そしてようやく登場するのはもちろんあの人!
 それでは、ここらで失礼します。うp主の折れない黒鉛筆でしたー。

 ……そういえば、あの時何で急に雨が降り出したんですかね…?

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