東方染色記 作:折れない黒鉛筆
まずは第一話を見てくださった方、ありがとうございました。拙い文章でしたが見てくださってとても嬉しいです。
さて、今回の第二話ですが、タイトルや前回の予告でも言ったように、「普通の魔法使い」が登場します。お楽しみに。
では、第二話をどうぞ。
(念のため)前回のあらすじ
康介が神社にお参りしようとしたら変な光に包まれた
気付けば康介は異世界的なところに飛ばされていた
霊夢と出会い、今自分がいるこの世界について聞いた
修正履歴
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+ストーリーに関係ない程度に文を追加
2018/05/01 段落頭に全角スペースを追加+一部表現を修正・追加
少女説明中…
「…どう?理解できた?」
「…はい、一応理解出来ました。」
霊夢の問いかけに敬語で普通に返す。どうやら俺の読みは当たっていたようで外れていたらしく、ここは"幻想郷"という異世界のようなもの(正確には異世界ではないらしく、日本と地続きになっているらしい)忘れ去られた物や人や妖怪がやって来る場所らしい。そして俺のような外の世界から来た人のことを外来人と呼んでいるらしい。…ってあれ?
「あの…もしかして俺って忘れ去られたんでしょうか?」
頭の中で情報を整理して出てきた一つの質問を口にする。
「いや、その可能性は低いわね。だって外の世界で普通に生きてりゃ忘れ去られることなんてほぼほぼ無いから。となるとアイツかしら…?」
霊夢がそう答えてくれるが、益々謎は深まる。何故俺は幻想郷に来てしまったのだろうか。もしかして境内に入ったときのあの光が原因か?というか俺、元の世界に戻れるのか?仮にもし戻れなかったら色々と困るんだが。バイトのこととか高校のこととかスプラトゥーンのこととか。
「そんな心配はいらないわ。私かもう一人アイツの力があればあなたを元の世界に戻すことができるわよ。」
「サクッと心読まないでくださいよ…で、本当に戻れるんですか?」
「ええ、私の場合だと準備に丸一日かかるけどね。あいつの場合はいつになるか分からないけど。ちゃんと元の世界に戻れるわよ。」
その霊夢の言葉を聞き、一安心。丸一日という時間はかかるが元の世界に戻ることは出来るらしい。
「但し、もし戻るならここでの記憶をすべて消させてもらうわ。外の世界に幻想郷があると知られると色々面倒だから。」
「はい。わかりました。」
「そういえばあなたの名前何?」
霊夢に聞かれ、そういえば自身の名前を名乗ってなかったと思い出す。俺としたことがすっかり忘れてた。
「俺の名前は天ケ原 康介と言います。よろしくお願いします、霊夢さん。」
「康介、短い間だけど宜しくね。あとさん付けしなくて良いから。」
「…了解。じゃあさん付けしないでおく。」
「…急にタメ口にならないでくれる?」
「俺の中ではさん付けしない相手はタメ口でいいんだよ。…そういえば、今日泊まるとこ無いな…どうする?」
もう日も落ち始めている。聞いた話だと幻想郷には妖怪もいるらしいので剣道以外でまともに戦えない俺が妖怪なんかと出くわしたら死しかないだろう。それに俺は今唯一の使える武器である竹刀を持っていない。そもそも竹刀一本で妖怪に立ち向かえるかと言われれば微妙なのだが。取り敢えず死なないためにはとりあえず今晩泊まれるところを探さなくては。
「あらほんとね。こういう時にアイツが来てくれたら私が泊めなくて済むのだけれど…」
霊夢が独り言のように言ったその時、微かに遠くの方から声が聞こえた。俺は思わず声が聞こえた方を振り向く。所謂条件反射だ。そこにはこちらに猛スピードで向かってくる箒に乗った少女が一人。
「おーい!霊夢ぅ!遊びに来てやったぜええ!!」
「あっ、噂をすればなんとやらね。」
霊夢の話し方からするにあの少女がついさっき霊夢が言っていた"アイツ"だろう。しかしその少女はスピードを緩めることなくこちらに向かってくる。
(あれ?このままだと俺あの子とぶつかるんじゃね?)
俺はそう思い、すぐ左に数歩ステップを踏む。ステップを踏み切ったその瞬間、俺の少し右を風切り音と共に少女が通過。少女はそのまま地面に激突し、激しい音と共に土煙が上がった。
(あっぶね…ステップ踏んでなきゃ多分死んでるか重傷負ってたぞ俺…)
「えっと…大丈夫か?」
心の中で冷や汗をかきつつ、土煙の中にいる少女に声を掛ける。
「心配しなくても大丈夫よ。魔理沙、早く起きたら?丁度あなたに用があったのよ。」
霊夢がそう声を掛けると、魔理沙と呼ばれたその少女が土煙の中から出てきた。
「いてて…着地またミスっちまったぜ…」
「あんた着地ミスるの何回目よ…まったく…」
魔理沙?と霊夢が軽く会話を交わす。すると魔理沙?が俺の存在に気づいたのだろうか。こちらを見て金色の目と視線が合う。
魔理沙と呼ばれた少女は一言で言えば魔法使いのような服装をしていた。リボン付きの黒三角帽のようなものを被っており、そこから片方だけおさげにした金髪が前に垂れている。白のブラウスらしき物の上に黒い服を着ており、あの着地のせいか土がついた黒スカートの上には白いエプロンが巻かれていた。
「ん、お前誰だ?この辺じゃ見ない顔だな。それに服も珍しいぜ。」
自身についた土を払いながら、魔理沙?が俺を見つめながら話し掛ける。
「俺の名前は天ケ原康介。ついさっきここに来たいわゆる外来人ってやつらしい。」
「お、外来人か。私の名前は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」
「やっぱり魔法使いか…てか魔法使いってほんとにいたんだな…」
容姿や箒に乗って空を飛んでいることから魔法使い系かと予測はしていたが、まさか本当に魔法使いとは。思わず声に出して驚いてしまう。
「魔法使いはほんとにいるんだぜ。よろしくな!康介!」
「ああ、宜しく。魔理沙。」
魔理沙と軽い自己紹介を交わしたところで霊夢が魔理沙に話しかける。
「魔理沙、少し頼みたいことがあるんだけど…」
「おう、なんだ?」
「この康介ってやつ、今晩だけあんたの家に泊めてもらえない?」
霊夢のその言葉を聞き、魔理沙があからさまに面倒くさそうな顔をする。
「え?なんで私がしないといけないんだぜ?霊夢がすれば良いじゃないか。」
「…面倒くさいのよ。」
「ま、そんなとこだろうと思ったぜ。仕方ない、今夜は私の家に泊めてやるよ。」
その会話を聞いていた俺は一安心した。これで泊まる場所の確保ができた。俺はこれと言って特に何もしてないけどな。というか本人がいる前で堂々と「面倒くさい」と言える霊夢がすごい。
「あんたならそう言ってくれると思ったわ。…んじゃ、後は宜しく。私は康介を外の世界に帰すための準備があるから。」
そう言うと霊夢は神社の中に戻っていった。今から準備をするのだろうか。巫女さんも大変だなあ。
「…じゃあ行くか。康介、箒の後ろ乗れ。」
「…え?何処へ?」
突然魔理沙に箒の後ろに乗るよう促され、俺は若干驚く。この魔法使いは何を言っているんだ。
「魔法の森にある私の家に行くんだよ。もう日が沈みかけだろ?」
魔理沙に言われて初めて気付いたが、もう日が沈みかけで辺りが暗くなり始めている。急がないと妖怪に襲われてマジで死ぬかもしれない。そう思った俺は箒に乗って飛ぶ準備をしている魔理沙の後ろに乗った。若干不安定だがどうにかなると思う。
「じゃあ行くぜ…飛ばすからしっかり掴まってろよ?」
「えっまだ心の準備g」
俺がそう言い切らないうちに魔理沙と俺を乗せた箒は宙に浮かび、そのまま猛スピードで進みだした。
─────
「ほら着いたぜ。ここが私の家だ。」
魔理沙のその言葉で俺は箒から地面へと降りた。箒が進むスピードはとても速く、博麗神社から3分程でここへ着いた。…にしてもよく箒から落ちなかったな俺。
ついさっきの魔理沙の話からするとここは魔法の森という場所らしい。なんかすごく神秘的な場所だ。何故かは分かんないけど。
そして俺の目の前には魔理沙の家がある。傍には「霧雨魔法店 なんかします」と書かれた看板が。
「魔理沙の家って自宅兼店舗なんだな。」
「ああ、今まで仕事の依頼で来た人はほぼいないけどな。」
じゃあ店舗の意味がないじゃないかと思いつつも、看板を見てふと湧いた疑問を魔理沙に問いかける。
「ところで、なんかしますって具体的には何するんだ?」
「そりゃなんかするぜ。妖怪退治とか水道管の工事とか……」
「割と何でもしてくれるんだな…」
そんな会話を交わしつつ、俺と魔理沙は玄関の前に着いた。魔理沙がドアを開け、魔理沙の次に俺が魔理沙の家へと入った。
「お邪魔しまーす…」
「一人暮らしだから誰もいないぜ?」
「それを早く言えよ。てか散らかりすぎだろ…」
魔理沙の家は色々なものが散乱していて、散らかっているどころの話ではなかった。俺の部屋も散らかってたけどここまで酷くないぞ。一体どうすればこんなに散らかるんだ…?
「気づけばこんなに散らかってたぜ」
「サクッと心読むなって…ちなみに、片付ける気は?」
「全く無いぜ」
「ですよねー」
そんなどうでも言い会話を交わしつつ、何とか器用に足を動かして散乱している物を踏まないようにしつつ俺はテーブルの近くのイスに座る。気付けば魔理沙がキッチンに立ち、料理を始めていた。
「魔理沙って料理できるんだな。てか俺も手伝おうか?」
「ああ、大丈夫だぜ。客人へのもてなしってやつだ。」
魔理沙が食材を持ちながら言う。キノコを持っている辺りキノコ料理でもするのだろうか。
「魔理沙って意外と気が利くんだな。」
「当たり前だろ?デキる女は違うんだぜ。」
「まあ当たり前か。…そうだ、何も手伝わずにこの家にいるのは少し居心地が悪いから明日の朝食は俺が作るぞ。」
「本当か?じゃあ明日の朝食は頼んだぜ。…不味かったらマスパぶっ放すからな。」
「…本当にぶっ放さないでよ?それに何だよ、マスパって。」
そんな冗談?も交えた会話をしていると、魔理沙が料理を持ってこちらにやってきた。予想通りキノコ料理のようだ。
「料理出来たぜー。一緒に食べようぜ。」
「早いなオイ…じゃあ食べるか。」
「「いただきます。」」
その日は2人で美味しいキノコ料理を食べた後、一人づつ風呂に入り、外の世界について魔理沙が聞きたがっていたのでひたすら話した。そして気付けば魔理沙が寝落ちしていた。俺の話つまらなかったのかな…結構興味深そうに聞いていたのにな…残念。
そう思っていると俺も眠くなってきた。とりあえず寝るかと思い、俺はイスに座り直してそっと目を閉じた。正直なところこっちの方がよく寝れるんだよな。
…とりあえず明日の夕方まではこの幻想郷にいるんだ。どうせなら楽しもうじゃないか。そう考えて俺は眠りについた。
次回予告
幻想郷での初めての朝を迎えた康介。魔理沙の提案で2人で人間の里へ行くことになった。「人間の里ってどんなところなんだろうか」と期待に胸を膨らませる康介。その人間の里でハプニングに巻き込まれることも知らずに…
次回!「人間の里でのハプニング」(仮)
いかがでしたでしょうか。今回も3000字余裕で超えました。と言うか3000字超えがデフォルトなのかなと思ってきてます。
さて、次回ですが、康介くんと魔理沙が人間の里に行きます。そんで色々観光します。つまり平和回…と思いきや、ハプニングに巻き込まれる…予定です。
とりあえず、また次回お会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。
補足 康介くんが魔理沙に対して初めからタメ口だった訳
彼は幻想郷に来て緊張していました。彼は目上の人と話す以外に緊張すると人に対して敬語()を使ってしまうよく分からない癖があります。それで霊夢に対して最初は敬語だったのですが、霊夢の一言で緊張が解け、後に出てきた魔理沙にもタメ口で接した、ということです。