東方染色記   作:折れない黒鉛筆

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どうも、クリスマスに何かしようかな、なんて思っている割にずっと文字を打っているうp主の折れない黒鉛筆です。 こうしてまた今年のクリスマスも終わっていくんだな……
さて、そんな自分語りはどうでも良いので第十八話をどうぞ。

前回のあらすじ
魔法はじめました。
魔理沙が来たらしいが本を読むことに集中していて気づかなかった
ルーミアと出会った


第十八話 香霖堂の風変わりな店主

「えーっと?ここをこうして…」

「あんた最近そんな変な事しかしてないわね。」

「変なこととはなんだ。それに最近と言っても昨日の夜から始めたばっかじゃねえか。まだ最近の範囲じゃねえよ。」

霊夢にいきなり心外な事を言われ、思わず言い返す。

「まあ精々頑張ってみなさい。私は何も言わないから。」

もう既に何か言われている気がするが面倒くさかったので突っ込まないことにした。

俺は縁側にて魔法陣の二個同時生成に挑戦し直す。にしても、やっぱそう簡単には行きそうにないな……まあそれが当たり前なのだけれど。どうしても二個目を出す前に一個目が消えてしまう。ただ割と目標には近づきつつあるような気がする。後どれくらいかかるか見当もつかないが、こうやって試行錯誤しつつ努力して、一つの結果を得られるタイプの物事には俺はとことんハマってしまう性格だと思っているので、途中で出来ないからといって諦めることはないだろう。

「さて、もう一回チャレンジするか……」

そう適当に呟くと同時に一度魔法陣を全て消し、再挑戦しようとしたその時だった。

「おーい!霊夢に康介ー!遊びに来たぜー!」

賽銭箱の方角から聞き覚えしかない声が飛んでくる。もしアイツならちょっと頼みたい事があるから丁度いいんだけどな…まあ別にその頼み事は霊夢でも良いかもしれないが、どうせ霊夢のことだし『面倒くさい』の一言で断られるに違いない。

「縁側に居るからさっさとこっち来たら?」

霊夢が面倒くさそうに声の主にこっちに来いと促す。

「分かったぜー。今すぐそっち行くから待ってろよ?」

そんな会話を聞いていると、遊びに来たと言っていた声の主が縁側までやって来た。

「やっぱり魔理沙か。いらっしゃい。今お茶淹れるからちょっと待ってろよ…」

「いや、その必要はないんだぜ。遊びに来たとは言ったが……今良い事を思いついた。」

魔理沙に引き止められ、お茶を淹れるために台所に向かおうとしていた足を止める。魔理沙が考える良い事って何か嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか?

「康介、今日空いてるか?」

「別に今日は能力やらの特訓するだけだから空いてはいるが……俺をどうするつもりなんだ?」

俺がそう返すと魔理沙は少し思案した様子を見せた後、話を続ける。

香霖堂(こうりんどう)とか行ってみないか?確かお前、まだ外の世界のお金持ってて幻想郷のお金持ってないだろ。それに香霖だってお前のこと知りたがってたぞ?お前も香霖のこと知らないだろうし丁度いい機会だと思うんだが……」

どうやら嫌な予感は杞憂だったようだ。それに昨日から「香霖堂に行きたい」という思いはあったしこれぞ『渡りに船』というやつだ。そんなベストタイミングでやって来た船をそのまま見逃すなんて訳には行かない。ただ話の中で出てきた『香霖』って奴は誰だか分からないが。

「奇遇だな、俺も丁度この前魔理沙から聞いた話を思い出して昨日から香霖堂に行きたいなと思ってたんだ。良かったら魔理沙、香霖堂まで案内してくれないか?」

「お安い御用だぜ。じゃあさっさと支度してこい。私はここで待ってるぜ。」

魔理沙がそう言い、縁側に腰掛ける。魔理沙に言われた通りさっさと支度する為に自身の荷物を取りに行こうとしたが、ここでふと霊夢に許可を取っておいた方がいいかと思い、俺は霊夢の方に視線を向け、話し始めようとする。

「……はあ。霖之助さんの所でしょ。良いわよ。行ってきなさい」

「ありがとう霊夢。じゃ、さっさと行ってくる」

どうやら霊夢は俺が今からする事を分かっていたようだ。霊夢から許可を得ることができたのでさっさと自身の荷物を取りに行く。

 

「ほい、お待たせ。先に言っとくけど箒に乗る必要はもう無いからな。俺もう空飛べるし」

「……そうか。じゃあ行くぜー、しっかり付いて来いよー。」

そう言って箒に跨り飛んで行く魔理沙の後をついて行くように俺も博麗神社から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ほら、着いたぜ。ここが香霖堂だ。」

魔理沙の家がある魔法の森の入り口付近に、香霖堂はあった。人間の里で見たかのような瓦屋根の和風の一軒家で、上を見上げるとそこには『香霖堂』と書かれた看板が。香霖堂の隣には倉らしき物もある。

「邪魔するぜー、香霖」

気付くと魔理沙が既に入り口のドアから入ってしまっている。俺は急いでその後を追いかけるようにして店内へ。

店内には様々な物が置かれており、魔理沙宅程では無いが軽く散らかっていた。それでもまだ足元を気にせず歩けるから良いのだが。

「やあ魔理沙。よく来たね……とそこの男性は?」

ふと声がしたのでそちらの方を見ると、そこにはカウンターだと思われる場所の奥の椅子に腰掛け、本を読んでいた男性が一人。恐らくこの店の店主でこの人が魔理沙の言っていた『香霖』だと思うのだが……

その男性は銀色の髪を短くしており、その頭には一本だけ跳ね上がった癖毛が。そして眼鏡を着用していて服装はまるで着物のような黒と青のツートンカラーの服装をしていた。そして感じるこのオーラ的な何某、慧音の時や妹紅の時と同じように感じる。

「紹介するぜ。コイツは森近 霖之助(もりちか りんのすけ)。私とは幼い頃からの付き合いでここの香霖堂の店主だぜ。」

「魔理沙に紹介された通り、僕が森近 霖之助だ。えっと…君は?」

「ああ、俺は天ケ原 康介だ。宜しくな、えっと……霖之助。」

「ああ、宜しく。康介君。」

若干霖之助の呼び名で迷ったが、やはり霖之助と呼ぶことにした。……にしても君付けで呼ばれたのって地味に久々だな…

ふと魔理沙の方を見ると、既に店内の品物を物色している。俺も品物が気になってはいたので物色しようとするが、ここに来た本来の目的を思い出し、霖之助に尋ねてみる。

「そうだ霖之助、此処では外の世界のお金と幻想郷でのお金が両替できるみたいな話を聞いたんだが…それって今からでも出来るか?」

「ああ、そういえば君は外来人だったね。別に今からでも構わないけど…」

その霖之助の言葉を聞いて俺はバッグから財布を取り出し、中身を確認する。現在財布の中には諭吉が二枚。取り敢えず諭吉一枚、1万円分両替しておいて貰おうかな。もし元の世界に戻るとなれば全額両替しているとなると若干面倒くさくなりそうだから。

「じゃあ頼めるか?一応これを両替して欲しいのだが……」

そう言いながらカウンターの上に一万円札を置く。

「分かった。終わったら呼ぶからそれまで適当に店内を物色なりしておいてくれ。」

良かった。これでどうにかなりそうだ。そう言えば、最初に出会ったオーラ的な何某が人間ではあるけど人間ではないみたいな感じ、何故俺がそう感じたのか今なら聞けるかもしれない……

「り、霖之助。」

「何だい?康介君。」

霖之助が作業をしながら声だけ反応する。

「不躾な質問かもしれないが、もしかして霖之助って……人間じゃないのか?…いや別にどっちでも俺のとる態度は変わらないし変える気無いが」

その質問を聞いた瞬間、霖之助の作業をしていた手が止まり、俺と霖之助の間に気まずい空気が流れる。しかしそれも一瞬のことだった。

「……まさか初対面の人に見抜かれるとはなあ。まあ君の言っていることは強ち間違いでは無いよ。半分正解、と言ったところかな。」

この気まずい空気を打ち破り、そう言いだしたのは霖之助だ。半分正解という事は……どういう事だ?頭を捻っていると、霖之助が自ら答えを言ってくれた。

「僕は妖怪と人間のハーフなんだ。多分君は僕から感じる何かが種族が人間の人とは違うと思ったんだろうね。」

「やっぱりそうだったのか。そう言えばこんな感じ、慧音や妹紅の時にもあったんだよな…」

そんな独り言を呟くと、霖之助がその独り言に対してこう語った。

「それに関しては慧音さんや妹紅さんに聞くといいと思うよ。僕が今此処で言ってしまうのも彼女達に失礼だろうし、何よりそういう事は自分の耳で本人自身から聞くのが一番だからね。それに…いや、何でもない。ほら、両替終わったよ。」

「あ、ああ。ありがと。」

そう言って霖之助から一万円札分の幻想郷での通貨を受け取る。…にしても、気になるのは霖之助の最後の言葉だ。彼は何かを言おうとして明らかに口を濁した。別に追及しようだなんて思ってはいないが、気になってしまいしょうがない。まあ世の中には知らない方がいい事だってある。今回霖之助が口を濁したのはその所為だという事にしておこう。

取り敢えず此処での目的は達成したのでどうしようかと悩んでいると魔理沙が霖之助に声をかける。

「そうだ香霖、確か前にお前『使い方がわからない外の世界の道具がある』って言ってなかったか?もしまだその悩みが解決してなかったら康介に相談してみたらどうだ?」

「ふむ…確かにまだその疑問は解決していなかったな。康介君、少し協力して欲しいんだけど…良いかな?」

「全然大丈夫だ。で、俺は何をすれば良いんだ?」

今の二人の話の流れからして俺が今からすべき事は大体予測がつくが、念の為霖之助に聞いておく。

「うん、この店には色んな品物があるんだ。普通の道具に魔理沙のミニ八卦炉のようなマジックアイテム、そして…外の世界の道具。僕の能力は【道具の名前と用途が判る程度の能力】でね、一応道具の名前と用途までは理解することが出来るんだ。ただ、問題は使い方がさっぱり分からないというところなんだ。特に外の道具なんかはお手上げ状態になっている。つまり君にして欲しい事は…」

「外の世界の道具の使い方を教えてくれ、ってところか?別にお安い御用だ。」

「ありがとう康介君。じゃあこの道具なんだけど…」

そう言って霖之助が椅子から立ち上がり、店内の一角に案内される。まさかこれを幻想郷で見れるとは思ってもみなかった。

「この道具は”てれびじょんせっと”と言うらしくてね、映像を映す為に使われていたらしいんだけど…この通り、それらしいスイッチを押しても叩いてもビクともしないんだ。」

そう言いながら、霖之助がテレビジョンセットことアナログテレビを叩く。取り敢えずそれを静止させる。

「それを使うには電気や電波などがいるんだ。どうやら電気なら妖怪の山の一部に通っているらしいが…電波は多分どうしようもないだろうな。という訳でそのテレビジョンセットことアナログテレビはほぼ文鎮化しているな。」

取り敢えず真実を伝えた。因みに妖怪の山の一部に電気が通っているのはこの前霊夢から聞いた。まあ自身で電気出せるから別に俺自身は大したことないが。

「成る程……まあ珍しいし置いておこうかな。じゃあ次なんだけど……」

そう言った霖之助に連れられ、俺は外の道具についての説明をし続けるんだな、と察した。まあ頑張るしかない。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ふむ、大方全部知れたかな。ありがとう、康介君。」

「うへえ……まさかこんなにあるとはな……」

思わず近くにあった椅子に腰掛ける。いくつあったなんてそんな事数えてない。とにかく大量にあってそれらを片っ端から説明されたのだから疲れるのも当然かも知れない。

「お、ようやく終わったか。」

俺が椅子に腰掛けたのを見て、今まで店内を物色していた魔理沙が声をかける。

「魔理沙まだいたんだな。先に帰っても良かったのに。」

「流石にそんな霊夢みたいな無粋な事はしないぜ。さて、そろそろ帰るか?」

「ああ、それもそうだな…という訳でお邪魔したよ、霖之助。」

椅子から立ち上がり、霖之助に軽く挨拶をする。すると霖之助は暫く考えていた素振りを見せると、時計を見る。

「そうだ、康介君。折角と言ってはアレだが、今からなら時間もあるし慧音さんや妹紅さんに聞いてきたらどうだい?君が感じた違和感の正体をさ。」

その提案を聞き、俺は少し考える。確かに気になったのは事実だ。しかし、慧音はともかく、妹紅の方は少し嫌な予感がするのは気の所為だろうか。だが気になったことをそのまま放置で良いのだろうか。否、良いわけがない。

「……そう、だな。悪いが魔理沙、少し寄る所が出来た。自分一人で帰れるから魔理沙は先に帰っておいてくれないか?別について来ても良いが……」

「いや、あいつらの事に関しては私は首を突っ込まない方が良いと思うから私は此処で帰るぜ。……そうだ、一応霊夢のヤツに康介が遅くなるってこと伝えておくぜ。」

「ああ、頼む。じゃあ今度こそお邪魔したよ、霖之助。」

「ああ、またいつでも来てくれ。」

「邪魔したぜー、香霖」

そう言って俺達は香霖堂を出て、店先で別れた。

俺が目指すは人間の里、寺子屋だ。少なくとも慧音はそこにいるだろう。そういえば能力の詳しい説明をまだしていなかったと思い出し、折角なので能力の詳細説明もする事にしよう。そう思った。

 

別に知る事が怖い事だとは思っていない。ただ本当に世の中には知らない方が良かった事だってあるのだ。それでも知らずに後悔するより、知って後悔した方がまだマシだ。だから俺は人間の里に向かう。この事は知っておいた方が良いと思ったから。

例えそれが、知らない方が良かった事だとしても───




次回予告
慧音と妹紅から感じた違和感の正体を突き止めるべく、康介は人里へと向かう。しかし今日は寺子屋がやっていた日らしく、仕方がないので少しだけ見学させてもらうことに。そして寺子屋が終わり、慧音から違和感の正体を聞く。そこに偶然(にしては出来過ぎだが)妹紅がやって来て、同じく聞こうとするが、妹紅の口から語られたのは……
次回 「第十九話 違和感の正体」(仮)

いかがでしたでしょうか。
自分の中では香霖はこんな感じかな、と思っていたり。
あと今回からは台本形式で書いていません。もし分かりにくい点等ありましたら教えていただけると幸いです。
では、また次回お会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。

因みにクリスマスには多分これといった小説投稿はしないと思います()

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