魔刺繍職人の花嫁修業(笑)   作:丸焼きどらごん

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27話 魔人ゲルニザウラ

 

 

「このヤロ、反則だろ!?」

「やめて、やめてぇぇぇ!!」

 

 魔人はニタリと笑って少女の"友達"をぐしゃっと噛み潰した。

 

「精霊を喰らうって、こういうことかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 

 飛行の魔法で森の中腹におりたエルフリードとハウロは、目の前に立ちはだかった魔物共を倒しながら湖への道を急いでいた。

 

「うっわウザー。こんな魔物、森にいたっけ?」

 

 そう言いながらも、余裕の表情で魔物をいなすハウロは短剣使いだった。

 短いリーチながら、その素早い動きで敵の懐にあっという間に潜り込んで急所をついていく。今も自身の身の丈二倍ほどもある熊の魔物の頸動脈を、分厚い毛皮ごと掻き切っていた。

 

 一方のエルフリードといえば、倒すよりも蹴散らして進むことを優先しているようで鋭く鞭を振るっている。それを見たハウロは「思ったより強い?」と首を傾げた。なにしろたかが鞭だというのに、魔物が重い鈍器で殴られたかのようにふっとばされていく。その様子は見ていて楽しいくらいだ。

 

 見るに、鞭には魔力がわずかに通っている。それ故の威力だろう。

 

 エルフリードは森に入ってからのあまりの魔物の多さに辟易して、無理をしてでも空を行くべきかと見上げていたが頭上を怪鳥が横切ったのを見て諦めたようだ。上空で戦闘になるくらいなら、地上を進んだ方が体力を温存できると判断したのだろう。そうなると状況判断能力もそれなりだなと、ハウロは感想を抱く。共に魔物の中を抜けていく相棒としては悪くない。

 

「本当に多いですね」

「多分、魔人と一緒に封印されてた配下も復活したんだろうねー。それか魔人の魔力にあてられて進化でもしたかな?」

 

 喋りながらではあるが、二人の進む速度は速い。自身の最高速度についてきていながら息切れ一つしていない青年を見て、ハウロは先ほど抱いた感想とあわせてエルフリードへの評価を上方修正した。食事の時の会話で仲間のアルディラとポプラはそれぞれAとBの位を擁する冒険者だと知ったが、エルフリードはDランク。せいぜい初心者が指導されているか雑務係かと思っていたが、これだけ動ければ上々である。

 

 そしてそのことについては嬉しく思うハウロだったが、現在起こっている事態に対してはひどく不満を覚えていた。

 

 

 

__________あーあ。お頭に良い精霊いたら、捕まえて来いって言われてたのに。よりによってそれを喰う魔人かよぉ。

 

 

 

 

 このあたりは以前から精霊界との境界ポイントがあると、ハウロの上司が目をつけていた場所だった。ハウロはその上司の命令で森に来ていたのだが、まんまと結界内に引きずり込まれてしまったのだから間抜けなものだ。

 精霊は探しても見つからないし、村から出るすべも見つからない。初めこそ降って湧いた休暇だと思って田舎暮らしを満喫していたハウロだが、半年も経つとそろそろ飽きてきた。刺激が足りない。

 

 そこに冒険者が現れて、やっと変化が起きたと思ったらこれだ。しかも魔人というのが精霊喰いだというから、本当にやってられない。

 …………この鬱憤はその魔人で晴らさせてもらう事にしよう。そうハウロがニヤリと笑った時。今までに無い質量の何かが、その巨体を跳躍させて目の前に重い音を立てながら着地し現れた。

 

 獣の咆哮が夜の闇をつんざく。

 

「え、マジ?」

 

 それにはハウロも少々驚いた。何しろ相手はこんな所で目にするとは思っていなかった魔物。……討伐ランクAのインフェルノパンテーラだ。これが配下となると、魔人の強さもまた、上方修正したほうが良いかもしれない。それもかなり上に。

 

 だがその前にこいつをどうにかしなければと、ハウロは流石にエルフリードには荷が重いと下がるように声をかけようとした。が、すぐに再び目を疑う。

 インフェルノパンテーラは豹に近い姿をした四足獣だが、その大きさは建物二階ほどもある。それが突如として半分の大きさになったのだ。否、半身が地面に"沈んだ"。

 

影踏み(シャドウストーカー)

 

 エルフリードの声に、まさか魔法かとハウロは彼とインフェルノパンテーラを見比べる。

 

「え、これやったのお前?」

「ええ、まあ。底が浅いので全身は無理ですけど」

「いやぁ……これだけの範囲できりゃあ十分十分」

 

 ハウロは「影」の中に体が沈んで、出ようともがくインフェルノパンテーラを見る。目測だが、かなり大きい範囲の影に影響を及ぼしているようだ。

 たしか影踏み(シャドウストーカー)は以前何かで興味を持って調べたことがあったが、習得が難しい蒼黎術に属する魔法だったはず。その中で影踏みは下級の術だったが、これだけの範囲で、術者が同じ影の範囲に居るとはいえ離れた位置に術の効果を発動させられるとなると、恐ろしく練度が高い。

 

(こいつ結構使えるじゃん!)

 

 面白い物を見つけたと浮きだつハウロだったが、はてと内心で首を傾げた。たしか以前も同じ術を使う人間相手に興味をもたなかっただろうか? と。

 しかし沈んだ思考とは裏腹に、体は脊髄反射の域で敵を屠るべく動いていた。

 

 

 

輝石針殺舞踏祭(インクルージョンカーニバル)!』

 

 

 

 ハウロはその人間離れした身体能力を十全に発揮しつつ樹上へとあっというまに駆け上がると、その木の枝から跳躍してインフェルノパンテーラの背に乗る。そして片手をついて無詠唱で魔法を放った。

 すると巨体の獣は苦しさにのたうち始め、ハウロが仕上げとばかりに両手を上に引き上げる動作をすると、獣の体の内から色取り取りの鉱石で形成された針が皮膚を貫いて無数に生えた。

 

「!?」

「ヒヒッ、流石にでけーから、一発じゃ無理かなー?」

 

 ハウロの輝石針殺舞踏祭(インクルージョンカーニバル)は敵の体内で鉱石の針を発生させ、それを成長させて内側から串刺しにする技だ。針とはいえその数が恐ろしく多いことから、小さい生物だと使用後の惨状が凄まじいことになる。主にそれは破裂したように飛び散った肉片や内臓などで、よく仲間には服が汚れるからやめろと怒られていた。

 だが今回の相手は巨体で、確実にダメージを与えたものの死にまでは至らしめていない。

 

 追撃しようとしたハウロだったが、それは必要無かった。

 影から抜け出して反撃しようとしたインフェルノパンテーラを、エルフリードの蹴りが吹き飛ばしたのだ。それもただ蹴っただけでなく、見間違えでなければ頭部が破裂していた。あれでは生きていまい。

 

「ヒュウッ♪ ちょ、おま、サイッコーだな! なんかお(かしら)みてー! 何だよ今の力技ァ!」

「お頭が誰か知らないですけど、早く先に行きますよ!」

 

 ハウロの称賛にも倒したインフェルノパンテーラにも目もくれず、先を急ぐエルフリードを慌ててハウロは追いかける。

 

「マジ凄いって。ねえねえお前さ~。今倒した魔物の討伐ランク知ってる?」

「知りません。そんな事よりさっさと行きますよ!」

(あ、これ分かってないなぁ)

 

 ハウロは可笑しくてしょうがないと思いながらも、自分の楽しみのために教えることなどしなかった。だんまりを決め込んだ口はそれでも言いたそうにもにょもにょと波うっているが、絶対黙っていた方が面白い。

 まず正常な冒険者、それもベテランなら後に魔人が控えているのにこんな魔物と正面からはぶつからない。自分は例外だとしても、きっとアルディラとポプラは何らかの方法で魔物を回避して行ったはずだ。しかしこのエルフリードという男、おそらくアルディラ達も同じようにこの魔物を倒して先へ進んだと思い込んでいる。それを容易い事だと、思い込みながら。

 

(きっとコイツはいつか自分の力について、主観と他人からの評価で食い違いが起きるな)

 

 それはとても面白そうだと、ハウロはほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、魔人ゲルニザウラの湖の祠。

 

「そこでワタクシ、言ったのでございマス。いかにアナタがた人間が優れた家畜であり、食料であるのカ! ですがワタクシの嗜好が最先端すぎたのか、なかなか仲間にも同意を得られず……」

 

 エキナセナとコーラルは魔人が作り出した岩の椅子に粘つく糸で縛り付けられ、先ほどから聞きたくもない魔人の昔話を聞かされている。分かったことと言えば人間を食料とみなす魔人は目の前の男を含めて少数であることと、何やら魔人内でも仲が悪い相手が居るという事だ。

 

「特にあの忌々しいマーリェドンナ! 封印されたワタクシをワザワザ笑いに来たのです! 腹立たしい……! アア、嗚呼、忌々しいと言えば精霊でしたね。封印されているワタクシに二重で結界をかけてくれて……おかげで復活が大幅に遅れてしまいましタ! 羽虫の分際で、なんと、おお、なんと分をわきまえない愚かしさヨぉォォ!!」

 

 何回かに一度の頻度で、ゲルニザウラは狂ったように裏返った声で叫びだす。ヒステリックな声は聴くに堪えなかったが、今まで震えるだけだったコーラルが彼の言葉に反応した。

 

「精霊……?」

「おやぁ? もしや、お知り合い?」

 

 ずいっと眼前に迫った白目の無い瞳と生理的に受け付けない表情を張り付けたゲルニザウラに、コーラルは顔を仰け反らせながらも問うた。

 

「みんなを、みんなは、どこいったの……?」

 

 消え入りそうな声も耳を傾けていたゲルニザウラには聞こえたらしく、魔人の男はうんうんとしたり顔で頷いた。

 

「ええ、エエ。知っておりますよォ? ほら、ココです」

「え……」

 

 彼が指差したのはその腹部。コーラルは先ほどの光景と想像を重ね合わせ、信じたくない事実に気付いた。

 

「お前! 精霊を喰ったのか!!」

 

 叫んだのはエキナセナで、ゲルニザウラは「正解デス♪」とステップとターンをきめながら両手を広げた。いちいち気に障る動作に、エキナセナの額に青筋が浮かぶ。

 

 一方コーラルは聞いた事実に先ほどの比ではない大きな感情の波に呑まれてしまいそうだった。

 村人たちが喰われた時は、ただただ恐ろしかった。……しかし、幼いころからコーラルを慰め励ましてくれた精霊たちが、目の前の男の腹に収まっているなど考えたくもない。

 

「酷い……!」

「酷い? 可笑しなことを言う。アナタ方人間だって、生き物を食べるでショウ? たとえば野に咲く花を美しいと思っても、手折って口に含むのは罪でしょうか? 可愛らしい子豚をこんがり焼いて食べるのも? 勘違いしないでいただきタイ! 単純に、我々がアナタたちにとって食物連鎖の上に居る存在である、たダ、それだけのコトでございマスから! ハッハハハハハハ!」

 

 魔人の哄笑にコーラルの意識が真っ黒に塗りつぶされようとしていた。体が冷え切り、思考が鈍くなっていく。……このまま好きにされるのが、弱い者の運命なのだろうか。

 

 村で蔑まれていた時と同じように?

 

「ふざけるな!!」

 

 しかし絶望の淵に沈みかけたコーラルの耳を打ったのは、鮮烈にして苛烈な声だった。

 

 自己陶酔していた魔人は不快感もあらわに声を発した人物……エキナセナを見る。彼女は体毛を逆立て、見開かれた瞳孔は縦に長くなっている。むき出しにされた犬歯は、魔人を威嚇していた。

 

「お前は知るといい! 喰らわれる獲物も、ただ黙って命を差し出すことなど無いことを!」

「獣人ですカ。まったく野蛮な獣魔と似ているだけあって汚らわ」

 

 魔人が言い切る前に、糸の拘束を引きちぎったエキナセナの爪の斬撃がその胴体を捕えた。

 

「ふん? 何かしました?」

「あああッ!」

 

 初撃をなんなく防いだゲルニザウラだったが、それを気にも留めずエキナセナは第二撃を叩きこむ。再び防ごうとしたゲルニザウラは目の前の獣人に起きていた変化に気付き息を呑んだ。

 エキナセナの体は淡い光を纏っており、一部空気に同化するように体の輪郭を滲ませていた。

 

「精霊憑依?」

 

 呟いたゲルニザウラの疑問は半分当たっている。

 人間にも精霊を体に宿す(すべ)はあるが、それは以前アルディラが言っていたようにどちらかの自由意思が縛られる。

 だが精霊と親和性の高い獣人族に限って、双方の同意によって力を同調させ高めることが出来るのだ。その同調率は外部によって無理やり契約をかわされる術を遥かに上回り、獣人と精霊の力を足すだけでなく乗算した力を発揮する。

 

 それは皮肉にも人間が獣人へ精霊を憑依させたことから発展した獣人独自の精霊術だった。

 

 

 先ほどから機を伺っていたエキナセナに、途中から何かを訴えかける声が聞こえていた。それは小さな妖精であったので精霊ほどの力を発揮しないが、体力が落ちている今のエキナセナには強い味方に思えた。

 エキナセナはゲルニザウラが好きに喋っていた隙に一時的にその妖精と盟約をかわすと、獣人特化型精霊術「友和の盟(パートナー)」を発動させた。

 

 詠唱も呪文も必要としない異色の精霊術はゲルニザウラの隙をつき、二撃目はその腹に拳が埋まる。更にエキナセナと同化した妖精の特性が発揮され、ゲルニザウラの体に裂傷が走った。どうやら妖精は風の属性をもっていたようだ。

 たまたま自分と相性の良い属性だった妖精に、エキナセナは口角をもちあげる。

 

「全部食べたと思ったの? お前に一泡吹かせたい者たちが、手を貸してくれたわ!」

「フゥん……。まったく、しぶといものデス」

 

 ゲルニザウラは驚きはしたものの、この時点では特に脅威を感じていなかった。

 

 しかしこの機を、隙が出来る場面をずっと影から狙っていた者たちが居る。

 

 

 

 

水華葬送撃(フューネラルアクア)!』

 

 

 

 

 透き通るような声が淀みなく響き渡り、それに気づいたゲルニザウラが振り返ると何やら視界が上下にずれている。不思議に思って見下ろせば、体が縦二つに裂けていた。

 

「オヤ?」

 

 疑問に思う間を与えずに、ゲルニザウラに追撃が迫る。

 

『サイレンスイロージョン!』

 

 音も無く、裂けた体に何やら絡み付くものがある。それは闇色の鎖で、ゲルニザウラを拘束するように地面から無数に伸びたそれは肌に溶けて同化し、次第に体内へと侵入していった。

 

『インクリース!』

 

 その一言でさらに鎖の量は増え、ぎっちりとゲルニザウラを地面に固定したうえで体内への進行が増す。

 

 

 ゲルニザウラを襲撃したのは、魔法のための詠唱を溜めこみ機を伺っていたアルディラとポプラだった。二人はエキナセナが反撃した隙を突き、一気に勝負を決めにかかったのである。

 

 実力差が明瞭ならば、反撃される前に仕留めてしまえばいいだけのこと。アルディラは初撃で現在持ちうる中で最高威力の技、水の妖精魔法と斧のスキルを組み合わせた必殺技を放った。それはシンプルな水の刃であったが、その鋭利さはミスリルをも容易く両断する。

 もくろみ通り魔人を縦一直線に切り裂いたのち、止めを刺すためにポプラの闇の精霊術がゲルニザウラを襲った。闇の鎖は次第に敵の体内へ同化し、動きを制限する。浸食が進めばダメージを与えることも可能な、こちらもアルディラに同じくポプラの最高の術だった。

 

 あとは追撃を重ね復活が出来ないまでに細切れにするだけだと、アルディラとポプラが構えた、その時。

 

 

『あはははははははははははははははははっははははハハハハハハハハ!!』

 

 哄笑と共に、魔人を捕えていた鎖がはじけ飛んだ。

 それだけでなく体が裂けたことなど気にも留めない魔人は、それぞれの手で断面のずれた半身を合わせると高らかに言い放つ。

 

「マコト、誠! 人間とは卑しくもしぶとい生き物ダ! ハーハハハハハハ! ケド、ワタクシがこの程度でどうにかなると?」

「ハン! 強がりはよすんだなぁ! 拘束を解いても、姐さんの攻撃で減った魔力はごまかせないぜ!」

 

 ポプラが言うとおり、魔人ゲルニザウラは確かなダメージを受けていた。拘束を解かれようが傷を治されようが、魔力と攻撃力が直結している魔人は魔力を使えば使うほど弱くなる。今の再生で更に魔力は減少したはずだ。

 

 アルディラの眼鏡を使わずとも肌に直接伝わる魔力の波動でそれを感じ取ったポプラは、ニヤリと笑って曲刀を構えた。

 

 しかし、それにアルディラがまったをかける。

 

「待って! 様子がおかしいわ」

「え、でも……」

「あ……」

 

 小さく聞こえたのはコーラルの声だった。

 

 魔人ゲルニザウラは、自らの腹に腕を突き入れた。そしてそこから取り出された存在が、コーラルの目を奪う。

 

『こー……ラル……』

「レラスお姉ちゃん!!」

 

 ぐったりと魔人の腕に掴まれているのは、二の腕ほどのサイズの女性だった。陽光を閉じ込めたような輝く髪に一目で人でないと知れたそれを、いずれかの形で精霊術に通じるその場に居る面々は「精霊だ」とその正体を知る。

 

「もったいナイので、全部消化しないで腹の中で飼っていたんですヨォ」

 

 言うなり、止める間もなくゲルニザウラは口を大きく開け女性を口内に押し込んだ。

 

「イヤあァァァァァァァ!!」

 

 コーラルの悲鳴を背景音に、ゲルニザウラは人に似通った容姿を歪め、口の端をぴりぴりと広げ食事に適した大きさまで広げた。裂けた口は容易に精霊を飲み込み、閉じられた瞬間。ごりっと何かを砕く音がする。

 

「なんてこと……!」

 

 アルディラが吐き気を堪えるように口を押える。その横を風が抜けた。……エキナセナだ。

 

「破ァ!」

 

 気合の声と共に精霊の力を纏った足を振るうが、それは肥大し始めたゲルニザウラの皮膚に沈んで跳ね返された。

 

「!?」

「げ、何だよ、これ」

『ハハハハハハハ、魔力を回復したついでデス。ワタクシに傷を負わせた褒美に、ご覧いただきまショウ』

 

 ゲルニザウラの体を紫色の霧が包み、それが体に張り付くと質感を伴っていく。

 魔人は村で見せた、魔力で武装した巨大な姿を現そうとしていた。しかもそれにとどまらず、再び自らの腹から精霊を取り出す。

 

「このヤロ、反則だろ!?」

「やめて、やめてぇぇぇ!!」

 

 魔人はニタリと笑って少女の”友達”をぐしゃっと噛み潰した。

 

「精霊を喰らうって、こういうことかよ」

 

 

 

 

 戦況は、確実に悪い方向へと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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