無職転生if ―強くてNew Game―   作:green-tea

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今回の内容には多分にオリジナル設定が含まれます。


第089話_ノルンの冬

--- 教える事と教わる事 ---

 

 

ルディとの……じゃなくてルディ一家との旅。

川を渡り、山を越え、森を抜けた先にあったのはルディが用意したお屋敷だった。

大きさは復興途中のロアの屋敷よりも断然大きいけれど、意外でも何でもなく、むしろこじんまりとしているとさえ感じられた。

 

未来を予知し、フィットア領を災害から守った彼だ。

防ぎようのない災害から自分の大切な人達だけでなく、領民8万人を救った英雄。

王都の伯父さまはそんな英雄よりも普通の貴族達を評価せねばならないと言っていた。

けれど伯父さまはルディの凄さの一端しか知らないからそんなことが言えるのだ。

領民8万人を救う。ただ救っただけじゃない。復興のためのお金と食糧まで用意していた。

ロアの見習い騎士の給金が月に銀貨5枚。

冒険者で食べて行こうとすれば月に銀貨1枚は稼げないと食費に困る。できれば銀貨4枚を稼いで装備品のメンテナンス代を積み立てたい、というのは一緒に冒険をしたE級冒険者の言葉だ。

既に災害から1年が経過しようとしてる。けれど、元の生活に戻るには程遠い状態で、8万人に銀貨を月1枚用意する。

ざっとの計算だと金貨9万枚が必要になる。

さらにお父様たちがしている復興計画の資金。孤児院も橋の建築費もルディからの援助で建てられている。

フィットア領には大小20の都市と村があり、平均金貨2万枚。合わせて金貨40万枚の復興のための投資費用が必要だとお父様は言っていた。

つまり約50万枚。それをたった3年で稼いだのだ。

そんなことが出来る貴族がどこにいる?

アスラの王様にだってそんなことは出来ない気がする。

そんな彼が用意したお屋敷。

 

門をくぐれなかった荷車をバラバラにする手伝いをしたり、荷物を屋敷へと運び入れたりする。

そこへカラヴァッジョを厩舎へと連れて行ったパウロさんが戻ってきて、皆と同じように荷物を運び入れ始めた。

 

ルディのお父様、パウロさんは気さくな小父様だった。

小父様はお母様とギレーヌからはあまり好かれていない。

「碌でもない男だ」と言われていたけれど、私はこの人のことをどことなくお祖父さまに似た感じがして悪く思えない。ルディとも仲が良いのも高評価だ。

そしてそれはきっと凄い事だと思う。

ルディって何でも出来過ぎるから、努力してもどんどん遠くに行ってしまう気がして、たまに私は惨めになる。そんな子供の親でいるのは一体どんな苦労を背負うことになるのか? 想像も付かない。

 

 

 

 

そんな小父様は私の倒すべき相手だ。

 

--

 

ルディが役人に捕まって王都へ連行されたので、それを追いかけて王都に居たときの話だ。

ルディを心配して来てみたものの、ロキシーさんとルード商店の店主のエビスさんが話し合ってみると、私達には出来ることがないことが判った。2人の話し合いは小難しかったが、きっとルディはいつでも戻ってこれるだろうという結論になった。

このエビスという男。少し頑固者っぽい雰囲気で近寄り難さを演出しているが、話してみれば物腰の柔らかい人だ。頭も切れるらしく、ルディから店を任されているのも頷けるが、気配が妙に薄い不思議な人物だった。

 

まぁそういったことはどうでも良くて、もっと大事なことはアルスに逗留している間に起こった。或る日、商店の2階から通りを行き交う人々の気楽さを眺めていると、ギレーヌが言った。

 

「エリス、少し話があるのだが良いだろうか」

 

「何? ギレーヌ」

 

「そのだな……」

 

歯切れが悪いギレーヌは珍しい。でも最近彼女が何か考え事をしているというのは判っていたことだ。それを待つ。

 

「もしエリスがルディの所に行くのなら、頼みたいことがある」

 

「引き受けるわ」

 

私は何かと聞かずに請け負った。でもそれは私とギレーヌの間ではよくあることだ。

彼女も驚かなかった。

 

「そうか。

 では、パウロを倒して欲しい」

 

そう彼女は付け加えた。なぜと思ったが理由なんてどうでも良いとも思えた。

 

「いいけど。折角だから一緒に倒せばいいわ」

 

「その誘いは魅力的だが、私は復興が終わるまで長くはロアを離れられそうにない」

 

なるほど。この状況で食客が屋敷を私事で離れるわけにはいかない。

 

「そうね。判ったわ。

 でも確かパウロさんってルディのお父様よね」

 

「そうだ」

 

「やっぱりギレーヌより強いのかしら?」

 

「いや、ヤツより私の方が強い。だが……」

 

言い淀んだギレーヌの胸の裡は判らない。

それでも言いたくないことがあるなら知る必要はない。

私は何も言わなかった。

 

「すまない。

 いきなりこんなことを頼まれても困るだろう。

 何と言えばいいのか。面と向かうと上手く言葉にできない」

 

耳を垂らして謝るギレーヌは珍しい。

ブエナ村で何かあったのだろう。

 

「別に良いわ。

 それに理由がどうあろうとギレーヌが頼むのなら、私はパウロさんを倒すだけだもの」

 

「そうか」

 

「ええ」

 

こうして私はギレーヌにパウロさんを倒すように頼まれた。

 

--

 

その話の続きがあったのは王都から戻った日のことだった。

ルディらと別れ、私達は孤児院に戻ると寝るためにロウソクの火を消して、ベッドの中に潜り込んだ。

すると声がした。

私とギレーヌは同室だ。声を出したのは当然ギレーヌだった。

 

「エリスには私の技を全て教えたいと思っている」

 

ギレーヌがポツリと言った。

 

「私もそうして欲しいわ」

 

私は最強の剣士を目指している。

そうでなければルディと並ぶことはできない。

なら師匠の技は全て手に入れる。

当たり前の話だ。

 

「だが、今のままではたぶん無理だろう」

 

今のままの私では無理?

 

「もっと厳しい稽古でも私、平気よ?」

 

「エリスのせいではない。

 問題は私にある」

 

「ギレーヌに?」

 

「そうだ」

 

「どんな?」

 

沈黙。

 

 

 

もう回答がないのかもしれないと思った時、また声がした。

 

「私自身が剣王になった方法は判っているつもりだ。

 でも正直に言うと、他人を剣王にするための方法が判らない。

 きっとその才能があるのに、どう伝えればいいのかが判らない」

 

「ギレーヌと同じようになることを目指せば良いのではないの?」

 

「それでは駄目だ。

 私とエリスのタイプは良く似ているが、全く同じではない。

 筋力量、瞬発力、闘気の性質。得意な間合い。駆け引きの仕方。

 微妙な違いに合わせたものでなければならない。

 全く同じでないのなら、それぞれ別の鍛錬方法が必要になることこそ合理に適っている。

 ならエリスに合った鍛錬方法が必要だ。

 なのに私にはその答えが未だ無い」

 

「なら私も考えるわ」

 

「それがいいと私も思う。

 だが打ち合う相手くらい居た方が良いだろう」

 

「それがパウロ小父様ってことね」

 

「そうだ」

 

私が自分で強くなる方法を考えるのに丁度良い相手がパウロ小父様、ということらしい。

 

--

 

そんな小父様と初めて手合せをしたのは旅の途中、まだアスラ王国の町アムドでのことだった。

手合せして判ったことがある。

小父様はルディの剣の師匠っていう話だったけれど、ルディの剣のスタイルとは全然違う。

それに少し前に利き腕の肘から先を失ってしまったのもあって、ギレーヌが言うほど強いとは感じなかった。

それでもルディとギレーヌとアルスの道場の人達の次くらいには強い剣士だ。

水神流の流に断。剣神流の無音の太刀。それに北神流の剣技らしきもの。こちらのタイミングをギリギリで躱してくるのが小父様の戦術。攻めるのも守るのも考え無しでは突っ込めない相手。私が強いと思った人達とは違った強さを持っている。

きっとギレーヌなら光の太刀だけで小父様を圧倒出来ると思うけれど、私ではそれに及ばない。

つまりはギレーヌの言う通り、私はギレーヌのような瞬発力を持っていないから他の戦術を考えなくてはならない。私に合ったやり方だ。

 

ギレーヌの強さは剣神流、一撃必殺の切り込みからの一撃離脱。

相手が避けられない速さ、受け止めきれない重さの攻撃をどうやって打ち込むか。

私も同じタイプ。

 

水神流の道場で出会った人々のテクニックも参考にできる。

手首、肘、腰、膝、あらゆる関節がクッションになってこちらの剣勢を吸収する技。

だけどそれはこちらの動きをみて上手く合わせたときだけ。

だから相手のタイミングをずらす方法、動きに緩急をつけて自分の最高速度を見誤らせることで相手の技を崩すことができる。

 

ルディは私と本気で打ち合ってくれないから……こういうときはあまり参考にならない。

 

話は戻ってパウロ小父様。

小父様は闘気の扱いはそれほど上手くない。水神流の流や断も粗削りに見えるし、剣速の鋭さは私より劣る。

でも北神流の不合理に見える動きを基にした柔軟な立ち回りに加えて水神流の防御を混ぜられると、道場の人よりも圧倒的に対処が難しくなった。こちらが緩急をつけて攻撃しようとしているのに、それよりも深い緩急や誘いがある。挑発するのが剣神流相手には有効だと知っていて、無音の太刀を見せ技として使ってくる意地の悪さがある。

 

ならどうする?

 

ギレーヌが小父様に勝つ姿を想像する。

私とギレーヌには違いがあると言った。

でも似ているとも言った。

だからきっと勝ち方も似ている。

大筋はギレーヌの闘い方で良くて、そこから自分なりの合理を見つけよう。

 

--

 

ラノアに来てからも毎日早朝にルディと小父様と鍛錬をして過ごした。

そして日中は頼まれた町の警邏をした。

 

冬が来て雪が降り積もると、庭を雪掻きしてからの鍛錬はすれども、外出しての街の警邏が難しくなった。どうしようかと暇そうにしていたら、小母様たちにつかまって掃除、洗濯、裁縫といった花嫁修業が必要だと言われた。洗濯は復興中に沢山したので自信があり、料理はどうにも駄目だった。小難しい料理より大雑把な冒険者の食事が好きなのだ。でもそれでは駄目らしい。正直言って向いてない気がした。裁縫もどちらかというと向いていない。けれど冒険者の装備のメンテナンスだったり、自分にあった下地に調整する必要を考えれば、努力のし甲斐があると思えた。自分で合わせてみて、不具合をみつけて、直す予定を考える。考えが纏まったら小母様たちに相談する。じゃぁこうしてみたら? とアドバイスをもらう。アドバイスに納得してから自分で実際に縫い付けて、また不具合を確認する。その繰り返し。

そんな私を見て、ルディが研究の片手間に防刃服の素材を用意してくれた。ロキシーが大雑把なデザインを考えてくれたから、それに沿って自分で縫っていく。

 

そんなある日。

アイシャが魔術研究の手伝いをしたいと言い出した傍らで、ノルンは手伝わないといったやり取りがあって、それならとパウロさんと3人で庭で雪遊びをした。次の日はまた縫物をしようとしていたら、ノルンにまた遊んでと誘われた。私は快く引き受けて、それなのに直ぐに飽きてしまった。

 

「おねぇちゃん。つまんない?」

 

ノルンが少し悲し気にそう言った。

そう指摘されて、嘘を吐く気にもなれなかった私は、「そうね。ちょっと違う遊びにしない?」と返した。

 

「うん」

 

孤児院でも小さな子供の相手はどうにも苦手だった。

ギレーヌみたいにもふもふの尻尾や耳があるならそれでも良かったのだろうけれど。無いものはしようがない。

そんな私でも駆けっこなら、子供たちに喜んでもらえたことがある。私も楽しいし。

そう思ったら何かの工夫をすればきっとノルンと楽しめる遊びがあると思えた。

 

「ちょっと待ってて」

 

私は訓練用の木刀を持ってくると剣を構えた。

 

「撃って来なさい」

 

「雪玉を?」

 

「そうよ」

 

首を傾げるノルンを促して、雪玉を投げさせる。

 

パスッ

 

直球に近い感じで投げ込まれた雪玉を木刀で打ち払ってみせる。

幼女の作るひ弱な雪玉が砕けて粉雪になった。

 

「どんどんきなさい」

 

雪煙が消えるのを待ってそう言うと、目をぱちくりさせたノルンが言われるがままに次の玉を作り始めた。私も合い間を縫って玉を作りノルンがせっせと作っている玉置き場へと転がしていく。

20個程が出来上がったくらいで。

 

「いい? おねぇちゃん」

 

ノルンが雪玉を両手に持って確認する。

それに私は黙って頷いた。

 

投げられる雪玉を次から次へと打ち砕く。

後半はノルンが疲れたのか手前で落ちそうになるのを一歩踏み込んで残さず壊す。

 

「ほら、後ちょっと。

 全部投げて!」

 

優しくお願いすると、ノルンが笑いながら最後の雪玉を投げ込んでいく。

粉雪が舞い、その中で見得を切って木刀で納刀の所作をすると、雪の幕が下りてノルンがパチパチと手を叩いた。

 

「すごーい!おねぇちゃん!」

 

「でしょう。

 ノルンもやる?」

 

私は気安くそう言ったけど、ノルンは首を横に振った。

 

「一回だけやってみない?」

 

もう一度問いかけてもノルンは首を縦には振らない。

 

「そう」

 

私はまぁ良いかと諦めようとした。

 

「よぉ。面白そうなことやってんな」

「あ、おとうさん!」

 

声がした方に振り替えるとパウロ小父様が居た。

いつのまに……。

 

「小父様もやってみませんか?」

 

「あぁ。その木刀を貸してくれたらな」

 

なんとなくやりたそうな顔をしていた小父様を誘って、木刀を渡す。

 

「ヨシッ、どこからでも来い」

 

言われたノルンがまた雪玉を作り始め、私のときと同じように雪玉を投げ込んだ。

ハッ! ヨッ! 小父様は良く判らない掛け声とともに殊更にコミカルな動きで雪玉を打ち落としていく。そして最後の一個が投げ込まれる。

 

「どうだ!」

 

「凄い! 凄い!」

 

小父様が最後を決めると、ノルンが飛び跳ねて喜んだ。

 

「もっとこい! エリスも!」

 

「え? あたし?」

 

親子の楽しそうなやり取りを脇で見ていると、私もと言われた。

 

「そうだ2人で向かって来い」

 

偉そうに言い放った小父様がおかしくて、私も参加する。

 

「ホラホラ!」

「キャハハ!」

「コンノォォォ!」

 

煽られてだんだんと玉の数が増えていく。

ノルンも楽しそうに雪玉を投げる。

私としていたときよりも。

 

「……グァァァァァァ」

 

私が投げる雪玉の数とノルンの雪玉の数。

流石に全てを捌ききれなくなると変な断末魔のまま雪の中に倒れ、動かなくなる小父様。

両腕を広げて両足も広げて、わざとらしく倒れるのが見える。

そのままピクリとも動かなくなる。

 

 

まだ動かない。

 

「お、おとうさん?」

 

キャハハと笑っていたノルンもパウロの死に真似が長すぎて心配そうな声を漏らす。

その声を聞き届けて満足したのか顔だけムクリと動かすと、バァッハッハッハと言って笑う小父様が居た。

正直その流れは全然面白くなかったと思う。

でも、顔中に雪をつけて眉毛が真っ白になった小父様をみて、私もノルンも大笑いした。

 

起き上がって雪を払っても眉毛の雪に気が付かない小父様を見て、ノルンはまだ笑っている。

そんなノルンを後ろから捕まえた小父様。

 

「コラッ、いつまで笑ってるんだ」

 

コミカルな調子でそう言いつつ、ノルンを後ろから操る。

そうして、何処から取り出したのか小刀がノルンの手の中に納められる。

 

「よしエリス、小さいのを頼む」

 

そう言われた私は、言われるがままに小さめの雪玉をふわりと投げた。

それをパウロ小父様に操られたノルンの小刀が打ち砕く。

 

「お父さんと一緒にやろう」

「うん」

 

そのやり取りをみて私は頼まれる前に2つ目を投げ込んだ。

 

--

 

ノルンが疲れてしまう前に小父様は遊びを終わらせて、屋敷の中へと戻っていく。

小父様について屋敷に戻った私とノルンは彼にお風呂を勧められた。

ノルンは「お父さんも!」と言っていたけど、小父様は噴き出しそうな顔で「止して置く」と言った。

私の顔をみて。

とにかく、そんなやり取りの後、私はルディにお風呂を頼み、ノルンと2人で温かいお風呂に入った。

冷えた手と足先を揉み解し、肩まで浸かる。

 

「ねぇ、エリスおねぇちゃん」

 

天井に上る湯気をボンヤリと眺めていた私に、並んで座ったノルンの声がかかる。

私は彼女に顔を向けた。

 

「なに?」

 

「お兄ちゃんってどんな人?」

 

違和感のある質問だったけど、私も兄弟のことはよく知らないクチだ。

気にはならなかった。

むしろ私は実の兄弟たちのことをこの子程気にもしなかった。

直接訊けばいいじゃないの……喉までその言葉が出かかったがそれはノルンには難しいことのように思えた。

 

「ルディの事が気になるの?」

 

「うん……」

 

「変わった人よ。あなたのお兄さんは」

 

「え?」

 

困惑顔のノルンに私は続ける。

 

「自分の人生を自分で選べっていうの。貴族の娘によ?」

 

「それって、変なの?」

 

「変よ。

 世間知らずでそんなこと言ってるなら単なる馬鹿だけど、判っていて言うのは相当の変わり者だわ」

 

ピチョン。

目の前に天井から雫が1滴落ちて私の顔に跳ね返った。

顔を拭って言葉を紡ぐ。

 

「でもね。

 私も相当の変わり者だったから何か好きになっちゃったの。

 あなたのお兄さんみたいなタイプ。私の周りに居なかったし」

 

「……そうなんだ」

 

「ノルンはお父さんのこと好き?」

 

「うん」

 

「どうして?」

 

「優しいから」

 

「そうね。小父様は優しいわね」

 

「私は?」

 

「まだわかんない」

 

「そうなの」

 

少しじれったいと思った。でもこの子はこういう子なんだ。

良く言えば慎重なタイプ。これまで出会った中で言えば水神流の剣士に向いているだろうか。

こういうタイプはあまり高位の冒険者には居ない。

もしこの子が剣術を学ばないなら、きっと普通の、どこにでもいそうな女の子になる。

周りの大人もそれで良いと思っている。

 

本人が望めば、剣を教えてもいいだろう。

だけど、ルディの周りに居て普通で居られるだろうか。

普通であることを望んでも、今回の出来事のように周りの状況がきっとそれを許してはくれない。

そんな状況が彼女の人生に立ちはだかったとき、誰が彼女を守り続けてくれるのだろうか。

小父様? ルディ? きっと2人は守ってくれるだろう。

そうだとして、ただ守られる存在に甘んじることに耐えられるだろうか。

 

そう考えて、先程自分が口にしたことの矛盾に気付く。

本人が望めば、自分で人生を選べば、同じことだ。

ただの町娘が、貴族の娘が、どっちだって同じことだ。

誰であれ、自分の人生は自分で選ばなければならない。

きっとそうでなければ、生きている意味が、ない。

 

 


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