無職転生if ―強くてNew Game―   作:green-tea

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今回の内容には多分にオリジナル設定が含まれます。

※ヒュドラの身体がどうなっているか原作では不明です。
完全な蛇型、2本足、4本足、有翼などがあると思います。拙作においては、蛇のように身体をくねらせて移動しようとすると、自分の鱗が自分を傷つけてしまうと考えて、4本足とします。(4本足でも腹這いになるときに鱗はやや邪魔ですが、外側よりも寝ていると考えています)



第110話_ラグランジュポイント_前編

--- 運命の方程式 ---

 

数日前の手合いはランドルフから望まれた物でありながら、こちらにも大きすぎる実りをもたらした。

実践形式の手合いであっても自主鍛錬や想定訓練では鍛えられない何かが得られた気がする。

本物の実践程のヒリ付く感覚はないにせよ、ランドルフ相手にどこまでの剣術と魔術が通じるか、通じないのはなぜかということを試していくことは意味がある。

課題も見えたし、戦術の整理も出来ている。

次は魔術を組み合わせた酔拳を試してみたい。

 

だから考えてみる。

七星酩酊拳にランドルフがどのように対応するだろうか、と。

接近戦を避けられない状況を想定した闘い。

水魔術と土魔術。それに闘気の組み合わせを使った攻防。

絶対に見逃してはならないのは打ち込みのタイミングだ。

闘気の表情を読めばそれは凡そ把握できる。

そこから攻撃方向と間合いを予測し、それを利用して打撃か魔術か回避か防御か。相手の技量から察するにカウンターを狙うのはリスクが高いだろう。

水帝と水王。肩書だけなら俺が格上と言えど、技量で勝っているとは思えない。

 

ランドルフは水神流の剣技もしっかりしているし、北神流の中でも北神二世や恐らく三世を想起させる剣筋を持った相手だ。

それらも一級品だと思うのだが、それにも増して目を(みは)るのは回避性能だろう。あらゆる回避不能なはずの攻撃に避け筋を見出してくる。

それは1つずつ潰してもまた新しいのが生み出される。

何をやっても有効打にならない。

攻撃、防御、回避性能。魔術無しのくせにいずれも高スペック過ぎる。

肩を赤く塗った戦士として砂漠でひと悶着ありそうな人だ。

 

「まさか至近距離から魔術を撃ってもなぜか躱されたりするのか?」

 

いや銃弾ではないのだ。

顔を背けたくらいで躱せるはずがない。

それよりは魔術をレジストされてしまう状況の方があり得るだろう。

例えば吸魔石を取り付けた対魔術用の装備で実体化した『岩砲弾』を消失させる。

 

前世の彼はそれを持っていたはずだ。

魔大陸での手合いでは使う場面がないとも考えられるが、ワイバーンでの市街戦では使う事も出来た訳で、それが意味するのは何か。

 

もしかすると『使わなかった』ではなく『使えなかった』。

或いは『持っていなかった』。

それはもしかするとあり得そうな話だ。

吸魔石の産出元と産出されて市場に出回った物が、もし俺の知るあの場所・あの時であるならだが。

 

しかし結論を出す前に、一度立ち止まる。

逆に『持っていた』として『使わなかった』というのは納得できないだろうか、と。

それも可能性の無い話ではない。

 

王都ワイバーンでの戦闘を再度、思い返す。

ランドルフは俺の攻性魔術を受けるのに水神流剣技で対処し、吸魔石を使わなかった。

だが、それは妥当な対応だ。

吸魔石は中和する魔術と同量の魔力を必要とするのに対し、水神流剣技での対処はテクニックと実行タイミングを要求されるものの必要な魔力はより少なくて済む。

そして水王のランドルフにはそのテクニックがあり、タイミングを見誤らない経験もあるらしい。

相殺と反射、どちらが便利かと言えば後者に軍配が上がる。

だから『持っていた』として『使わなかった』可能性は残っている。

 

だがそうすると別の疑問が出て来る。

なぜ前世の彼は吸魔石による対魔術レジストを必要としたのか。

考えてみたが答えはでない。

水帝クラスと称されている俺は吸魔石を必要とは感じない。

 

ならばと俺は今、ここにいる。

 

--

 

転移迷宮。

その最深部へと繋がる魔法陣の手前まで来た俺は、ここまでの道中のサポートとして呼び出した神獣『バルバトス』を小さな精霊へと分解して、代わりに懐へと手を忍ばせる。

取り出した2枚の石板それぞれを両手にして魔力を込めると、目前で疑似精霊が生み出され、そして集合して形を成した。

 

神獣『朱雀』と『フェンリル』は石板に描かれている紋様が待機状態を示しているためにただ立ち尽くしている。俺はその2匹に付いて来るように魔力を使って命じ、転移板へと踏み出した。

 

動的契約変更の技術が無い場合、召喚魔術自体が希少価値の高い魔術であるせいで過去の記述方法のセオリーがどのような物かは正確には判らないが、予想するに『俺を守れ』とか『前方の敵を倒せ』というような指示に、もしくは『我が命に従え』のような指示となるだろう。

しかし、召喚魔術は今のように予め唱えておく魔術であって戦闘中のような臨機応変さとは無縁の魔術だ。前者のような使い方はそぐわない。一方で後者の命令はアバウト過ぎる。召喚獣が召喚に応じるとは思えないし、精霊召喚であっても疑似生命体の精霊にも意思があるので嫌がるだろう。

そう考えると、前世でペルギウスから学んだそれは召喚獣の運用において無くてはならない技術だ。石板の記述を単純化できるのも素晴らしい。

 

 

2匹を伴って転移すると、目の前に地下宮殿が現れる。

これまでの階層とは全く異なる装飾的な建造物、その屋内といった雰囲気だ。

立ち並ぶ柱は前前世の高層マンションに使われているような巨大な物で、大迷宮のラストセクションとしての威厳を十二分に演出していると言えよう。

しかして、その演出はこの部屋を建築した者のメインではなく、言うなれば次いでに過ぎない。なぜなら初めてここへと到達した者はそのような事を気に留める(いとま)を持たず、部屋の灯りが燦然と照らし出したモノに釘付けになるのだから。

 

柱に備え付けられた燭台とまばゆく輝く魔術の灯りによって入り口から真っ直ぐに伸びた先、転移した場から動かずともはっきりと見えるように一頭の守護者が鎮座する。

俺は2回目であるからこそ今しがたのように天井を見上げたり、柱に気を取られたり出来ただけだ。そうして漸く俺は前方に目を凝らした。

守護者を飛び越えてその後ろの結晶へ。

 

巨大な魔力結晶。守護者の巨躯に負けじとそびえ立つそれ。

俺が見たどんなものよりも大きい。

だが、そこへランダム転移する可能性は余りにも低く、今は剣と鎧と盾のようなものが見えるだけ。

取り込まれた人間らしき姿を見つける事はできない。

いや守護者の影になっている部分にはもしかすると……

 

(かぶり)を振る。

現世界で彼女は健在だ。介護の必要もなく暮らしている。

ここに居る筈がない。

 

記憶と現在。

どちらを優先すべきか。

俺にとっての母とは一体誰の事なのだろうか。

交通事故で亡くなった者。

ほんの数年の後に生き別れ、再会した時には呪い子になっていた者。

その女性と同じ姿で元気にしている者。

誰か1人を選ぶことが、選ばれなかった者達との思い出を捨てる行為にならないか。

そうはならないだろう、と俺は今まで自分に言い聞かせて来た。

 

だが、こうも思ってしまうのだ。

『過去に戻り、歴史を改変した時点でこれまでの思い出の全ては踏みにじられている』と。

 

それは俺の思い過ごしではない。

少なくとも俺は悪い思い出を改変している。

だが思い出に良し悪しを付ける事が主観でしかない限り、正確な表現とは言い難い。

正確を期すならば、俺がしているのは『思い出を無かった事』にする行為だ。

ならば悪い思い出も良い思い出も区別なく無かった事にしているに違いない。

そして、そうでないと思いたいのはただの我儘だ。

 

目の前の守護者にしたってそうだ。

俺にとってコイツを親の仇と認定すれば、今健在な2人を親ではないと認識した事になるのではないか。

こんな風に気に病む必要はないのかもしれない。

だが、そう思う限りはそうなのだ。

 

意識的に息を吐く。

それから大きく深呼吸をして顔を叩く。

 

「よし、始めるか」

 

--

 

守護者の間合いの僅かに外まで近づくと、応じるように守護者は寝かせていた9つの鎌首を順に持ち上げていき、孔雀の羽のように広げた。それぞれの竜の顔が俺を()め付けてくる。

俺は中央の一周り大きな頭に張り付いた目に視線をぶつけて返す。

 

転移の迷宮の守護者。それは地上で絶滅したとされる幻の多頭竜、マナタイトヒュドラだ。

ずんぐりとした胴体に9本の長い首を持ち、首それぞれに竜頭を生やした魔物である。

この魔獣。

遠距離から魔術を放つと鱗に魔力を流して完成した魔術すらも打ち消す。

かといって接近戦を仕掛けると3つの頭が同時に獲物にかじりつこうと襲い掛かり、頭を躱しても長い首が凶器として暴れまわる。

また高い生命力があり、おそらく迷宮から受けるバフ効果も相まって落とした首を僅かな時間で再生させる。

難易度Sの迷宮にふさわしい戦闘力を有している。

 

睨み合いはこちらが仕掛けない限り、永遠に続くだろう。

そう思い俺はおもむろに手を前方へと突き出す。

そして無詠唱で一発、『岩砲弾』を飛ばしてみた。

岩の飛んでいくヒュンという音をかき消すようにヒィィィィンという音が鳴り、着弾の直前で弾丸は粉々に霧散した。

驚きはない。こんなことは上位の水神流剣士なら誰でもやって来ることだ。

 

次は既に召喚済みのフェンリルを(けしか)けてみる。

マナタイトヒュドラはそれまで腹這いのままだったが、フェンリルが接近してくるのに合わせて4本の足を立て起き上がる。もうその時にはフェンリルがマナタイトヒュドラへと飛び掛かっている。

一瞬の交錯。

フェンリルの鋭い牙が最も早く迫って来た1つの頭を華麗に躱し、その喉元へと食らいつくと硬い鱗をものともせずに噛み切った。

 

食いちぎられた頭がドスンと音を立てて床に落ち、繋がっていた首が無軌道に暴れまわる。

だがフェンリルに息つく暇はない。

すぐさまに別の1つを加えた3つの頭が迫りきていた。

フェンリルの頭を押さえようとする1つとフェンリルの後ろ足を狙う1つ。

そして絡めて動けなくしようとするのが1つ。

お互いが絡まり合わないように時間差で襲いかかってくる。

次々に迫りくる蛇の動きにフェンリルはただ躱すので精一杯。

その間にも初撃で落ちた首が再生していく。

 

そんなフェンリルとヒュドラの攻防を見守っていた。

俺が注視していたのは戦闘に参加していない6つの顔の動向だ。

こちらを警戒している頭が3つ。

ゆっくりと横に揺れながら交代のタイミングを待つ頭が2つ。

真ん中の一際大きな頭はやや後ろに下がり身体のバランスでも取っているのだろうか。

 

ふむ。

一通りの分析をしてから、俺は次のアクションとして新たにもう1匹のフェンリルを召喚する。

石板に描かれた通りにいくつかの種類の精霊が集まると、見慣れたフェンリルの形となり、そして足元で(うずくま)った。

 

と、攻撃魔術を放ってもいないのにヒィィィィンというガラスを引っ掻いたような音が耳をつんざく。

 

ほぅ。

フェンリルが何で出来ているかを理解したのかもしれない。

だが、残念ながらフェンリルは分解されない。

そこへ今召喚した2匹目も加わるために駆けていく。

 

前世で吸魔石については実験済みだ。

吸魔石には完成した魔術を分解する機能があるものの、制限もある。

1つ、分解可能な物は物質化していないエネルギー体か魔力から具現化した直後のものに限られる。

2つ、分解可能な物であっても分解するためには生成に必要とした魔力と同等の魔力が必要になる。

一方で神獣は疑似精霊の集合体が形を成した存在であり、こちらの解除によって魔力に還元できる。

だから本来、同量の魔力を込めれば分解可能のはずだ。

だが出来ない。

理屈は未だ判明していないが、前世のペルギウスはそれが初代甲龍王の『精霊のコピー』技術に関連するのではないかと話していた。

 

増援によってフェンリルは軽やかに攻勢に出始めた。

ズゥン、ズゥン。1アクションの間にヒュドラの首が2本落ちる。それが3回、一定のビートを刻むように。

9本あった首から6本の首が落ち、残りは3本となった。

傷口からグチュグチュと新しい頭を生えさせようとしたヒュドラだが、やおらに後ろに足を一歩、また一歩と退がっていく。

 

見覚えのある行動パターンだ。

次に来る攻撃を理解する。

契約変更でフェンリルを戻しつつ、隣に待機していた朱雀を前に出す。

丁度そこでヒュドラの3つの口が同時に開き、火炎の奔流がフェンリルを飲み込もうとする。

寸でのところで朱雀が羽を広げ、炎を堰き止めた。

だが荒ぶる火炎の奔流はその羽を越えて俺達に迫ろうとした。

このままいけば炎の中で焼け死ぬ。

そう思って咄嗟に氷の壁を自分を中心に円柱状に出し、フェンリルと己を護った。

 

半透明の氷の壁を炎が舐めるのを一瞬目にする。

しかし、すぐに壁の向こう側を蒸気が占めたのだろう。

まるで曇った窓ガラス。そして炎の動きは分からなくなった。

 

仕方がないので敵ブレス終了を条件に朱雀を後退させるように契約を再変更。

朱雀が動くのを感じるのを待つ。

秒数にして30秒くらいだろうか。

 

迸ったトリプルブレスの熱量に対して生成した氷の壁はほぼその形を保った。

それは氷が解けないように温度を下げる制御を行った結果であり、氷を構成する水が昇華せずに温度を維持した証だ。

朱雀が動いたことを契機に氷の壁に続けていた制御を解除すると、氷壁がみるみるうちに溶けて一部は昇華し、また一部は足元に湖を造った。

解けた氷の水分は部屋の容積に比べれば僅か。蒸し蒸しとした感じもなく、寧ろ壁の向こうにあった温められた熱い空気をチリチリと感じる程。

制御の間は魔力を消費し続けるが、どれだけの熱量が投入されるかも判らない攻撃への対処としてはおそらく正しい。

 

氷壁で一度見失ったヒュドラを再び視界に収めると、もう5つの首が再生を終え、残りの1つも今まさに元に戻ろうとしていた。

律儀に9つの頭が生え揃うのを待ってみるも、再びヒュドラが前に出て来る事はない。

 

その理由。

それが手に取るように解る。

次にブレスを吐くためには間を置かねばならないからではない。

必殺の技を防がれたのだ。

俺の足元には2匹のフェンリルが健在。

先程と同じように攻撃を繰り返せば、このヒュドラは程なく首を全て落とされて死ぬだろう。

ヒュドラ自身もそれに気付いている。

たったそれだけのことだ。

 

そもそもヒュドラには守る物がある。

俺がラノアでそう感じるのと同じように、守りたい物があれば行動は狭まる。

だから逃げ出す事も出来ず、あくまでこの場に居座る姿勢を貫いている。

そう思って、ヒュドラの最も大きな顔を見た。

その目にあるのは俺と同じような……強い……意思ではない。

 

……何か違うな。

ヤツの目にあるのはもっと何かこう、淀んだ何かだ。

遠く昔、鏡の奥で見た誰かを思い出す。

無理矢理に迷宮の守護者にさせられて、こんな場所に引き籠らされて。

何処にもいけず、誰も来ず。

その結末がこれ?

 

「おまえ、本当はここから逃げ出したいのか?」

 

衝動的に口に出してしまった。

対する返事はない。

王竜はもしかして人間の言葉を解するかもしれないなんて妹が言っていたが、少なくともヒュドラには出来ないらしい。

 

前世のパウロの仇と言っても良い存在。

コイツを殺してしまったとして誰もそれを咎めはしないだろう。

むしろ前世を知っていればやろうとしていることに不義理だと腹を立てる者もいるはずだ。

だが……その批難は甘んじて受けようと思う。

朱雀を解除して、それからフェンリルに新しい命令を下すと、2匹のフェンリルは命令に従い、地に落ちた首へと駆けていった。

 

暫くして。

足元に集められた7本の首を前に俺は膝を突くと鱗を剥ぎ、持っていた袋に詰める。

作業の手を一瞬留めて、やっぱりいっそ殺してしまおうかと考えて見たりする。

そうすればきっとこのモヤモヤは馬鹿馬鹿しくなり、それでお終いになるはずだ。

だが結局、袋が一杯になるまで俺はそれをしなかった。

身を翻し、岐路に就く。

こいつには追い出そうとする兄弟もいないのかと考えながら。

 

--

 

その翌日。

手に入れた吸魔石の一部を持って馴染みの職人に会いに、ネリスの工房へ向かった。

工房の隅に作られた客間にはテーブルセットが1つ。そこに俺と職人が向かい合わせで腰を落ち着かせ、両者の間には俺が持ち込んだ素材が無造作に3つ。

 

「普通の魔石とは何か、毛色が違うな」

 

テーブルのそれを1つ手に取った職人が目敏くそう指摘する。

まぁ俺はいつも魔大陸の素材のような本来シャリーアで手に入り難い物を持ち込む。

一番まともなのが昔、シルフィの時に頼んだ緑の魔石だから、相手も注意深く持ち込まれた商品を見るのだろう。

 

「ええ、ちょっとしたレア物です」

 

「レア物、ねぇ。

 こいつを加工しろ、とおっしゃるんで?」

 

そう言った職人は魔石をテーブルに戻して腕を組む。

 

「ええ。

 掌に直接接触するタイプと作動キーワードでのみ魔力が流せるタイプの2つを用意して頂きたいと思います。

 ちなみに、石には表と裏があります」

 

「表と裏がある魔石?

 ますます聞いたことがない」

 

そういうと職人は組んでいた腕を解いて、一度左手で膝を打つ。

もう一方の手は顎元へと動いた。

 

「ルーデウスさん。

 あんたの持ってくる素材でウチは繁盛している。

 感謝してるよ」

 

「それはまぁ。

 商売ですからお互いに利益のある話ですよ」

 

「商売ね。

 あんたはルード商店もやってる。

 それにしてはだな」

 

それにしては? どういう意味だろうか。

何も言えないでいると職人は端的に答えを示す。

 

「あんたは隙があるというか、どうも商売っ気が足りない」

 

「あぁ。

 はい。そうかもしれません」

 

意図は分かった。が、急に言われて俺は同意するしかない。

まぁ俺は生来はニート。この世界では魔術師、剣士、冒険者だとしても商売人ではない。

 

「儂らは失敗の分も含めて多めに材料を買い取ってるし、成功したとしても材料からは端切れや欠片、削りカスがでる。

 そういった物を注文とは別に補強材や研究に使うのは普通だが、金の欲しい奴はそのまま別に使っちまうこともある」

 

「存じています。

 商売ならばそれは別に悪い事ではないでしょう」

 

「知っているなら、何が言いたいか分かりそうなものだが」

 

何か別の事を言いたいらしいが。

如何せん、話が見えてこない。

金額が安すぎるのか、いやそれとも高すぎるとか?

 

「その顔はまだピンと来ちゃいないな」

 

「はぁ。そうでしょうか」

 

どうやら俺の顔にはその辺のことがしっかり書かれているらしい。

俺の気のない返事に「ハァ」と大きなため息を吐く職人がもう一度、左の膝頭を叩いた。

 

「よし、はっきり言ってやる。

 随分儲けさせてもらってるっていう自覚もあるしな。

 まどろっこしぃのは好みじゃない」

 

「はい」

 

「いいか?

 こういうのは変に横流しされると困るもんだ。

 やるなら自分の工房を用意してお抱えの職人に頼むしかない」

 

それはつまり、

 

「では今回の取引は止めておいた方が良いと?」

 

「まぁ、残念だがそういうこった」

 

という事らしい。

 

「商売が下手なお人だ」

 

「職人だから、なんてカッコをつけたりはせんさ。

 儂は命を粗末にしねぇんだ」

 

俺はそこで漸く理解した。

なるほど俺は分かっていなかったのだと。

この石も国家やどこぞの組織が欲しがる危険な物だという訳か。

 

--

 

折角手に入れた石だが、予定が変わってしまったのでリーリャに頼んで革製の籠手を1つ縫ってもらうことにした。

サイズはエリスでもパウロでもなくランドルフに合わせて。

リーリャは2、3日でそれを作った。

 

「早かったですね」

 

というと

 

「昔、宮仕えをしていた際に頼まれて革手を造った事があるの。あと鞭も」

 

鞭も!? と思ったが最後の意味はあまり聞かないでおく。

ランドルフに同じ図面の物を渡してよいのかと思わないでもない。

一応、物を確認してみたがテカリのない革でそこまであれがあれする感じではなくホッと一安心。

だが、それをランドルフに渡してみると意外な反応であった。

 

「これが有れば貴方の魔術を相殺できるということですか?」

 

「ええ。

 でも、それを使った相殺には同等の魔力が必要になりますから、水神流剣技で防げる物はそちらで防いだ方が闘気の消費量は少ないでしょうね。

 たとえば前回の手合いで使った落石を消去するのは厳しいかもしれません」

 

「しかし、これは面白い使い方が出来ますねぇ」

 

……やはりこの反応。

理解できていない何か別の運用方法がある、ということだ。

 

「困った時以外は使い道が無さそうですけれど。

 次の手合いでそれが見られると渡した甲斐があります」

 

想定通りだ。手合いでそれが見られるのならそれで良い。

そう考えて脳内でニヤリと笑いたい気持ちを抑えていると、

 

カタカタカタ。と目の前の骸骨の方がさもおかしそうに笑い出す。

何か笑いを誘う事をした覚えはなく、急に彼がそうする理由も思いつかない。

むしろ俺が笑いたいくらいのはずなのに、これでは真逆だ。

 

「いやぁ、失礼。

 幼い頃に親戚から聞かされた話を思い出しましてねぇ」

 

と笑い出した理由を口にするランドルフは続ける。

 

「自分を上手く殺させようと秘密のアイテムの場所を教えてくれる者が現れる話。

 子供に聞かせる与太話にしても理屈が通らないと思っていましたが」

 

まさかそういう輩が実際にいるとは、とでも言いたいらしい。

しかし、なぜそう思うのか。

 

「ランドルフさん……私は殺されたいなどと考えてはいません」

 

とはっきり口にしてみるが、ランドルフは首を横に振る。

 

「話から推測すると、これは絶滅したマナタイトヒュドラの鱗。

 吸魔石と呼ばれるかなり希少価値の高い代物です。

 ご存知でしたか?」

 

「えぇ」

 

「先程の説明の中で剣士よりも魔術師の方が使い勝手の良いものだと貴方は理解しているようでした。

 とすれば、ご家族の中ではロキシーとゼニスさん、そして貴方自身がそれに当たる。

 もう何年かすれば妹さん方もそれなりに使う事ができるようになるはずです」

 

「家族にも使いこなせる者には渡すつもりでいます」

 

「もし剣士で使いこなせる者がいるのならパウロ殿やエリス君に渡すのが道理でしょう。

 でも貴方はそうせず、私にこれを渡した。

 それは私がこれを使った面白い方法を持っていると知っているからに違いありません」

 

「だから親戚の話をしたのですか」

 

「そう。

 誰も知らないはずの最強の武具の場所を教え、他人のフィアンセが傀儡にされないようにアドバイスする」

 

その目的は自分を殺させるため、か。

 

「そういう人物には関わるな。

 と親戚は言っておりました」

 

「では僕との関係を解消しますか?」

 

「いえ、実は別の親類のルールを適用すれば負けた相手の傘下に入るべきなのです」

 

そう言った後、「まぁ私はどちらの教えも守った事はないですがね」と続け、また不敵にランドルフは笑っていた。

 

--

 

書斎に一人。

椅子に座って宙を見上げていた。

ランドルフに言われた事が胸に響く。

既にフィリップに同じ事を言われた経験があるおかげか、ショックでうなされる状況には至っていない。

むしろ倒れなかったという事は、言われた意味を考える時間があるという事だ。

 

ラパンでのマナタイトヒュドラ戦に至る前世の出来事。

ロアを去った傷心の俺。

バシェラント公国で冒険者活動をしながらゼニスを探していると、エリナリーゼが現れてゼニスの居場所を教えてくれた。

情報源は魔界大帝キシリカ・キシリス。

雪で身動きが取れなくなっているところに、ラノア魔法大学から推薦状が来てヒトガミの接触がある。

2年の空白期間。きっと見ている未来に問題が起きたのだろう。

そしてそれを変えるには俺が必要なのだろう。

そう俺には利用価値があった。

 

ヤツはお告げをする。

「ラノア魔法大学に入学してフィットア領の転移事件について調べろ。

 そうすれば不能が治る」と。

不能が治るという餌に釣られて、俺はラノア魔法大学へ入学する。

そして言われた通り転移事件を調べたことでフィッツ先輩と仲良くなり、遂には彼がシルフィであることを知り、彼女の献身的な行為により俺の不能は治る。

 

おかしな話だ。

なぜ俺の不能を治させた?

俺の子孫が怖いなら不能のままにしておけば良いではないか。

だが未来日記を貰った後に現れたヒトガミの言葉に問いの答えを見る。

 

「どれだけ遠ざけても君はロキシーと出会い、結婚して子供を作ってしまう。

 君の子孫も君と同様にオルステッドの呪いが効かないからオルステッドに力を貸してしまう。

 そして僕はオルステッドと君の子孫とその仲間たちによって打ち倒されてしまう」

 

つまり不能はロキシーに会えば必ず治る。

だからどうせ治って子供が生まれるなら、ロキシーではなくシルフィとくっ付けようとする意図なのだろう。

でも俺はお告げを無視してロキシーと結ばれる未来を選んだ。

俺とロキシーが結ばれるのは「本来変わる事のない未来」。

それを俺自身の運命力で変えさせようとしてヒトガミは失敗した。

 

……ようにみえる。

だがヒトガミから聞いた話が引っ掛かる。

ロキシーは俺が行かなくても助かったらしいし、パウロも生きて帰って来れたというのだ。

その話は未だに信じたくない。

まるで俺に「ほらな」と後だしすることで、今後は奴の助言に従わせようとするような悪意がある。

 

でもだ。

それは全然、生産的じゃない。

全く共感できない。

ということはそこには俺がまだ分かっていない事が残っている。

だから考えてみたい。

 

もし魔法大学から推薦状が来た後、ヒトガミが助言に来なかったら俺はどうなったのだろうか。

雪解け後にエリナリーゼと徒歩か馬車でラパンへと向かったに違いない。

その結果はシルフィと結婚せずに不能のままロキシーと出会うルートだ。

先程も考えたように、このルートの場合はロキシーの力で不能を治すのだろう。

しかし魔法大学に行かなければ転移迷宮の謎に対するヒントをもっていない。

それでは転移迷宮の最下層には到達できず、マナタイトヒュドラと対峙しない。

結果、パウロの死ぬ可能性は低くなる。一方でゼニスは救出できずに気が付くまで長い時間がかかるだろう。

 

それでヒトガミに何か不都合があるのか?

はっきり言ってパウロの生死もゼニスの救出もヒトガミにとってはどうでも良い事だ。

だとすれば答えは一つ。

俺と交わったロキシーが妊娠する時期に彼女を殺してしまう方法が無いのだ。

だからこのルートを拒否する。

 

では次。

魔法大学から推薦状が来た後にヒトガミの助言に従ってベガリット大陸に行かない事にした。

こうなることでロキシーに会う迄の時間が稼げるだろう。

シルフィと結婚して不能を治せば、ロキシーと結婚しない芽が出て来るというのも、恐らくはある。

 

だがおかしいのだ、この助言は。

大学に行き、転移事件を調べたからこそ『転移の迷宮冒険譚』を読む事になったし、ナナホシと再会して龍族の隠された転移魔法陣を教えてもらって使ったからこそ前世のルートに入った。

それに転移の遺跡の造りを知らないと転移迷宮の最下層へと続くギミックに気付く事もない。

極めつけは「君は必ず後悔する」となぜ言わねばならなかったのだろうか、という事だ。

そんなことを言われずとも不能が治ると聞けば大学へ進学する道を選んだ筈。

不自然な助言には恐らく隠された意図がある。

だからもっと深く考えねばならない。

 

 

おかしな助言に従ったままギースから手紙が来ず、追加のお告げも無かったならどうなるか?

俺に残されているのはヒトガミの言う通り後悔せずに終わるパターン。

それとヒトガミを信じた事に後悔して夢のお告げを信じなくなるパターンのどちらかだ。

 

そのパターンをロキシーとパウロの生存と組み合わせれば次のようになる。

『ロキシー生存、パウロ生存』:後悔しない。

『ロキシー生存、パウロ死亡』:後悔する。

『ロキシー死亡、パウロ生存』:後悔する。

『ロキシー死亡、パウロ死亡』:後悔する。

……一応言っておくが、他の捜索隊のメンバーが亡くなっても悲しみはするだろう。

だがここは敢えてロキシーとパウロに絞っておく。

 

後のヒトガミの説明通り、ロキシーもパウロも生存しているのならばこれで後悔はない。

前世よりも2年後にゼニスは救出でき、そこから1年を掛けてシャリーアへと帰還する。

ゼニスがあの状況ではパーティーの解散はシャリーアで、という事になるだろう。

つまりロキシーとそこで再会し、まぁ浮気になるかもしれないが俺達は結婚し、子供を産む。

これを回避したのだとすれば、その理由はロキシーが妊娠している時期が遅すぎて殺す方法が無いから、と推測できる。

またロキシーが死亡するパターンが見えているならば後悔の話も転移事件関係の話も無意味だ。

ロキシーが死ぬだけでロキシーとの間に子孫が生まれる問題は解決するのだから。

 

 

さらに次。

シルフィの妊娠から少し遅れてギースから手紙が届いた後。

ギースの手紙がヒトガミの指示ではなく独断だったとしても、ギースは使徒としてヒトガミに未来を見られている。

もしそれが不都合ならヒトガミはそれを止めただろう。

つまりギースの手紙はヒトガミの掌の上で転がった末に出て来た物だ。

 

指示が有ったかどうかはともかくギースの手紙によって俺は迷う。

だがヒトガミのお告げが無ければ、シルフィの出産に立ち会った後に救援に向かい、到着は8か月遅れる事になる。

ギースが本当に地図をばら撒いていたのなら、たとえ転移魔法陣を使ったとしても到着の時には沢山の冒険者が転移迷宮に挑戦しているはずだった。また徒歩で向かったとしたらその時には既にゼニス救出となっていた事になる。

そうしなかったのはやはりロキシーを殺せないからだろう。

 

ギースの手紙だけでは動かない俺。

そんな俺の夢の中にヒトガミは再び現れる。

 

奴は言う。

「騙していない。

 もしシャリーアで居を構えなければ、ノルンとアイシャはリーリャの実家に行っていただろう。

 今からでも、君はベガリット大陸に行けば後悔する。

 そして大きな機運を逃すことになる。

 リニアとプルセナが発情期になって迫ってくるのでどちらかと関係を持て」と。

ここまでの検討が出来ていればこの助言がトラップだったと理解するのは容易だ。

シルフィに操を立てた俺にリニアかプルセナとの浮気を勧めれば、心が動く。

ノルンが旅に出ようとして彼女を思い止まらせるだけでなく、俺自身が居残る事で浮気しないようベガリット大陸に行かせる動機を作ったのだ。

 

後悔する・しないを口にしてきた理由も判る。

ロキシーを上手く魔石病に罹らせるための時期調整をした結果、死ぬ必要のなかったパウロが死ぬ事への先回り。

その先回りは良く効いた。

助言を無視して動いたせいでパウロが死ぬという事態。

湧いてくる後悔の念。

時は満ち、ロキシーの妊娠と魔石病のキャリアが屋敷に現れる。

そしてヒトガミに唆された俺が地下室から鼠を解き放つか、それとも日記が届けられて鼠を凍死させることに成功するか。

 

--

 

ふぅ……溜息を1つ。

意識がゆっくりと切り替わる。

オルステッドはヤツの行いの悪意を以って信用できない悪者と捉えているし、未来日記を持ってきた俺はヤツを殺すことが生き甲斐だった。

出会った時から詐欺師のようなヒトガミ。

思い出したくもない前々世の姿を無理矢理見せてくるヤツのことは最初から気に入らなかった。

そして2人に感化された俺もヤツをラスボスとして対応することにした。

だけど前世でさんざん振り回されはしたものの俺はヒトガミを結局は憎まなかった。

 

ヒトガミ。

見るからに隠し事をしていて、信じる信じないの話をする奴。

今、自分のした助言は嘘かもしれないと宣う奴。

未来が視えているのに考えさせるように助言し、そして後からこうすれば良かったのにあぁすれば良かったのにと性格の悪い言動を繰り返す。

ペット屋の件でも、パウロの件でも。

確かにヒトガミは胡散臭い。

ヤツの意図には言葉通りの助言がある一方で、裏の意図もある。

鼠の話は助言ではなくお願いだが、まさにその最たるものだ。

表と裏、助言に潜む奸計、善意と悪意。

 

だがそれは捉え方の違いに過ぎない。

ヤツがチップにしているのはヤツ自身の命だ。

だから一挙両得、王手飛車取りを狙っている。

未来を視たのなら同時にいくつもの利益を得られるポイントに手を加えるというだけの話。

 

手を加える。

そう。未来を視る力があるだけではこの力は不完全だ。

自分の望まない未来を変えることが出来なければ、ただ漫然とその望まない未来を受け入れるしかない。

つまり未来視をして未来を変えるためには、未来を変える力が必要であり、もし自力で出来ないのであれば運命を変えるために運命力の強い者の協力が必要となる。

 

オルステッドにとっては有難い事にヒトガミは直接手を加える事が出来ない状態だ。

だが、俺としては迷惑な事にヒトガミは間接的に手を加える力を持っている。

人間の夢に出て姿を見せれば相手は勝手にヤツを信用する。

そしてお告げをし、神託はアドバイスとしてその者の行動を制限したり、変化させることができる。

そうなるのはヒトガミの能力という説明もできるし、それだけ強い運命力を持っていると表現しても良い。

運命力が強いからヒトガミは他人に関与して相手の運命を変えることができるのだ。

だがヒトガミの運命力に対抗できるほどの運命力を持っていれば、その力は拮抗し、簡単には従わなくなる。

まさにそれが俺なのだろう。

 

ではなぜヒトガミは俺に曖昧な助言を繰り返すのか?

これまではヤツの性格が悪いからで済ませて来たが、現世の俺はそうは思えない。

俺も前世の記憶から未来を知っていて、それを使って他人を操れば自分の望む未来がもっと簡単に手に入ったかもしれないと思いつつ、それをしなかったからだ。

人は己の人生を己で決めて歩んでいく。

誰かに助言を請うたとしても、助言に従うかどうかは己で決める。

もし助言を受け、選択肢の判断を助言に依存すればその人生はその人の手から離れていく。

自分の人生の所有権を手放す行為。

 

現世の俺の経験。

その経験は俺の行いがヒトガミに似ていると思わせた。

ならばヒトガミも俺と同じように考えている節がないだろうか。

未来を知って自分の都合の良い結果を導く。

何を選べば良いかを教えてしまう。

そうするとその未来は歪む。

歪むといって因果律のように因果のパラドックスを修復しようとする力が発生するから駄目だという事はない。

それは過去に転移した自分自身やオルステッドの行動が証明している。

 

否。やはり因果律は存在する。

それは異世界転移魔法陣が起動しなかった事からも確かだ。

とすると、因果律はあってもオルステッドのように理の外に居る存在の行動には通用しないという推測が成り立つ。

俺自身も因果律に打ち勝つ運命力があり、オルステッドの近くに居たことも相まって影響が小さくて済んだ可能性がある。

 

なるほど。

ギゾルフィの占術理論に従って整理すれば話は見えてくる。

ある宿命が存在する場合、そこから逃れようとして選んだ未来を宿命へと戻そうとする『運命の反作用』が生じる。

ヒトガミが理の中で生きる存在である限り、ヤツの助言もその呪縛から逃げる事はできない。

だとしてヒトガミが未来予知に従って思い通りの結果を得る事が出来るのは、ヤツの『運命の作用力』が反作用に(まさ)っているからだ。裏を返して作用力が反作用に負けた場合は、ヤツが望まない結果を得る事を意味する。

 

そう、例えばロキシーと俺の間に子供が産まれる宿命から逃れるために魔石病に罹らせる事で子供を産ませないように運命を作用させたのに、なぜか未来から来た自分自身がヤツの謀略を暴き阻止した。

 

ただ阻止しただけではない。日記には長らく俺自身が人生を賭して調べ上げた事が書いてあった。トリスの話はその後のアスラ王国政争で役に立ったし、魔導鎧はオルステッド戦のために制作したといってもシーローンでもミリスでもビヘイリル王国でも活躍した。隠された古代龍族の遺跡に書かれた転生と転移、ヒトガミの居場所、五龍将の秘宝の話はオルステッドの配下になった後はあまり有効活用できなかったが、知らなければ教えてもらえなかった話だろう。

 

そうなると運命とは振り子のようなものと言えるだろう。

無理矢理に引っ張って糸を断ち切ることができれば、宿命を逃れる事が出来る。

ただし、断ち切れずに手を放してしまうと逆側へと大きく振幅する。

押した分だけ『反作用』が返るような生易しい代物ではないのかもしれない。

 

 

 

 


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