ネギたちが風呂を済ませると生徒たちも風呂を済ませると程なく就寝時間となった。
「皆さん、就寝時間ですよー、自分の班部屋に戻ってください」
「はーい」
「あいよ」
ネギと龍斗は廊下に出ている生徒たちを部屋に戻していた。
「お疲れでござるネギ先生、修学旅行初日の夜にしては静かでござるな」
「まあ、仕方無いだろうな騒がせ所が皆寝ちゃたからな、酒のせいで」
「明日起きたら悔しがるわよー、皆」
「明日の夜が思いやられるでござるな」
すると楓はネギに耳打ちをした。
「龍さんには言ったでござるが、何やらまた大変な事になっていそうでござるな、拙者でよければ何時でも呼ぶでござるよ先生」
「あ、はいありがとうございます長瀬さん」
皆が部屋に入った事を確認するとネギと龍斗はアスナを連れてロビーまで降りてきた、すると刹那がホテルの入り口に何やら御札を貼っていた。
「な、何をやっているんですか?、刹那さん」
「これは式神返しの結界です・・・」
刹那は貼るのが終わるとネギと話すためにロビーの椅子に腰を掛けた。
「刹那さんも日本の魔法を使えるんですね」
「ええ、剣術の補助には最適だと師匠から教えてもらいました」
「師匠?」
「ああ、それについては僕から話そう、ネギ君も悠久の風は知ってるよね」
「うん、父さんが居た魔法団体だよね?」
「そうだ、僕もそこにチームで名前を登録してるんだけど、そのチームのメンバーの一人が今度から魔帆良で教師をするんだ」
「じゃあその人が刹那さんの師匠?」
刹那はこくりと頷くと龍斗は話を再開した。
「ああ、神鳴流の剣士だから刹那君には良い出会いになると思ってね、さて話を戻そう、刹那君が式神返しの札を使ってるってことは相手は呪符使いだね?」
頷く刹那に対してネギたちはピンときていなかったので刹那が呪符使いの説明を始めた。
「呪符使いは古くから京都に伝わる魔法、陰陽道を基本にしていますが、呪文を唱える間無防備になるのはネギ先生達西洋魔術師たちと同じ、それ故西洋魔術師たちが従者を従えているように、上級の術師は善鬼(前鬼)や護鬼(後鬼)という強力な式神をガードにつけるのが普通です、それを破らぬ限りこちらの剣も呪文も届かないと考えたほうがよいでしょう」
ネギは話を聞いて相手の強さに身を引き締め、アスナはゴキと聞いてある虫が頭に浮かんでいた。
「さらに関西呪術協会は我が京都神鳴流と深い関係にあります、神鳴流とは元々京を護り、魔を討つために組織された掛け値なしの力を持つ戦闘集団、呪符使いの護衛として神鳴流剣士が付くこともあり、そうなってしまえば非常に手強い敵と言わざるを得ません」
「まあ、今の時代そんな事は滅多にないよ、それより刹那君、君の方は大丈夫かい今の君の立場は奴等からしたら裏切り者だろう?」
龍斗が言うと刹那は俯いて手をぎゅと握った。
「今の神鳴流の理念が私のしたい事と違うのは百も承知、ですが仕方ありません私の望みは木乃香お嬢様を守りたい、ただそれだけです」
刹那は俯いた顔をあげて龍斗目を真っ直ぐに見た。
「うん、分かってるならいい、試すような事を言ってごめんよ君のその目が見たかったんだ」
龍斗はニコッと笑うと刹那の頭を撫でた、刹那には龍斗の姿が自分の師匠である恭輔と重なった、刹那は恭輔との修業の時の会話を思い出していた、それは修業の最終日の夜、恭輔と刹那は森の中で焚き火を囲んでいた、刹那はある秘密を恭輔に打ち明けようと話を切り出した。
「師匠、実は話したいことがあるんですが?」
「ん?、お前が烏族のハーフでタブーとされている白い翼をしていることか?」
「知っていらしたんですか!?」
「ああ、烏族のハーフは出会ったときに分かったが、翼の方は修業の合間に見たんだよ」
刹那は烏族のハーフでタブーとされている白い翼を持って産まれた、幼少の頃に両親を亡くし同族からも白い翼という事で毛嫌いされていた、その刹那を拾ったのが木乃香の父の詠春だった、詠春は刹那に神鳴流を教え刹那はその恩と木乃香を守りたいという思いもあり木乃香の護衛の任務を自ら志願した。
「刹那お前は強くなる、心の痛み知り誰かを守りたいという思いを持つお前は必ず強くなる、俺を越えるくらいのな」
恭輔はそう言うとニコッと笑って刹那の頭を撫でた、刹那にとって恭輔の言葉は暖かく気持ちの支えとなった。
「刹那君、君は一人じゃない担任のネギ君、さらにアスナ君もいるし及ばずながら僕も力になる」
刹那が龍斗の後ろを見るとネギとアスナが力強く頷いた。
「よーし、じゃあ僕は外の見回りに行ってくる」
ネギは張り切って見回りに出掛けた。
「じゃあ僕は中を見回りに行くよ、刹那君たちは疲れてたら休んでいても構わないよ」
龍斗も歩いて見回りを始めた。
「じゃあ私たちは交代でやろうか刹那さん」
「分かりました先に神楽坂さんから休んでください」
刹那たちは二人で交代で見回りをすることになり先にアスナが木乃香の護衛兼休むことにして部屋の前まで刹那はアスナを送った。
「すいません神楽坂さん、巻き込んでしまって」
「ううん、全然気にしないで」
アスナが部屋の戸を開けると自分の班のハルナ、のどかは滝の水を飲んで泥酔し、夕映はその滝の水を失敬して晩酌をしていた。
「あれ?木乃香がいない、刹那さん!!」
「どうしました!!」
「木乃香がいないの、部屋出る前は夕映ちゃんと一緒に水筒の水飲んでたのに」
確かに夕映が座っている椅子の反対側にはもう一人分の湯飲みが置いてあるが、それを使っていたであろう人物の姿がない、その瞬間刹那はすべてを悟りアスナと共に木乃香を探すため手分けしてホテルを探すことにした。
その頃龍斗は廊下を歩いていると台車を引く女とすれ違った。
「おい、お姉さんちょっと」
「なにかようですか?」
お姉さんはにこやかな笑顔で応対した。
「いや大したことじゃないんだけどその台車、何が入ってるのかなって」
「嫌やな、使用済みのタオルですよ」
「へえ、タオルにしちゃ台車がやけに重そうだね」
すると龍斗と女の間に小さな玉が投げられた、龍斗の目の前でその玉は眩しく光った。
「くっ、閃光弾か」
「千草!!、急げ」
少しすると龍斗の前にお姉さんの姿がなかった。
「ちっ、逃がしたか、木乃香君が拐われたと見て間違いないな」
お姉さんを逃がしてすぐ龍斗の携帯に着信が入った。
「はい、刹那君か木乃香君が拐われたんだね?」
「どうして知ってるんですか?」
「今犯人を見つけたんだけど、逃げられてしまった」
「どっちに逃げたんですか!」
「気を探ったら渡月橋の方に向かっている、君たちは先に行きなさい、僕は他の魔法先生に報告してから行くから」
龍斗は刹那の電話を切るとすぐに魔法先生の瀬流彦に電話をかけた。
「瀬流彦君か?木乃香君が拐われた、ネギ君たちが先に木乃香君拐った犯人追いかけたから、僕もホテル離れるからね」
龍斗は瀬流彦に了解をとると急いで渡月橋に向かった。
本当はここから電車に乗って別の場所でネギたちは戦うんですが、この作品では渡月橋で戦います、それではまた11話てお会いしましょう、感想評価お待ちしています。